黒金の魚影2
5/2 15時 パシフィックブイ
「おい、直美アルジェントはどこ行った?」
レンはなかなか帰ってこない凄腕技術者兼美しい女性に気づいた。
その声で周りの白鳥警部やエンジニア達も彼女の机の方を見る。
「おかしい!もうトイレに行ってから10分以上は経っているわ」
グレースがそう言うと、エドがパソコンで直美を探し始めた。
その様子を見ていたレンは、違和感を感じた。
10分以上もトイレに籠もるはずもなく、もうそろそろ実施試験を始めるというのにエンジニアである彼女が戻らないわけない。
「おかしいですね、トイレから出てきているのは清掃員だけ。」
そこには清掃員がカートを押して、トイレから出てきている場面が防犯カメラに写っていた。
「あれれ~、あのカートって人一人が入りそうな大きさだよね」
そこであの少年が爆弾を放り込んできた。
レンの頭の中で高速に思考が始まる。
行方不明の直美。
謎の2人組の清掃員と人一人が入りそうなカート。
老若認証システムでも見つからない直美。
そして、開発者である直美。
「まさか...」
それを聞いて七海も気づく。
「拉致の可能性が高そうですね。」
「ああ、すぐさま探し出さなければ彼女の持つ情報は我が国や友好国を危機的な状況にしかねない。」
それにしても、あの少年...
あれれ~だと?あれは気づいていたな。
江戸川コナン。
彼が何者か非常に気になるが、今は重要なエンジニアを見つけ出さなければ..
「七海、探し出せ。あのトイレにはもういないだろう。このパシフィックブイから外に出るとしたらヘリか船...いや、まさかとは思うが潜水艦か... ?取り敢えず、各部屋を探してくれ。」
七海が飛び出していく。
さらに、その数秒後コナンくんの推理からたどり着いた白鳥警部やエンジニア達も飛び出していく。
彼女の大捜索が始まった。
「ダメだ!いません。」
「老若認証システムでこの清掃員を探し出せ!」
現場はなかなか見つからない彼女に焦燥を募らせていく。
2人も協力するが、なかなか痕跡は見つからない。
その時、海に繫がるハッチ前に犯人が着替えたロッカーが開いており、そこから出た痕跡が見つかった。
「ここから、出たのでしょうか?」
白鳥警部がそう言うと、牧野はそれはありえないという。
「外側の海に繫がるハッチはコントロールセンターの許可がないと空かないんです。」
「まさか...!?」
白鳥警部はある結論にたどり着いた。
パシフィックブイの中に犯人の協力者がいるということに。
「とりあえず、事情聴取をした方が良い。」
黒田管理官がそう言うと、彼らはコントロールセンターに戻っていった。
その頃、七海に探しに行かせてレンはとある人にお話に行った。
「やぁ。君が江戸川コナン君かい?」
それは、間違えて白鳥警部達の船に乗ってしまってパシフィックブイに来ていた江戸川コナンくんの所だった。
「うん!そうだよ。」
コナンは少しでも情報が欲しかったが、彼から呼び止められたので止まらずにはいられなかった。
「君は何か気づいているのかな?さっきから清掃員2人組のことをよく見ていたが...」
コナンはそれを聞いて、警戒する。また、組織の人間か?
そう思ったが、コナンはあくまで迷子を装い、そのままたわいもない会話を少ししてレンは離れていった。
5/2 17時 八丈島 スズキラグジュアリーホテル
「直美アルジェントが何者かに攫われました。」
レンは情報本部にそう連絡を入れた。
情報本部特務機関司令の有賀は思わず、額に手を当てた。
「すみません。よく見ていたら良かったのですが...」
「いや、起こってしまったことはしょうがない。それよりも、潜水艦の影があったのか?」
「いえ、まだ推測です。しかしながら、海中ハッチから工作員が侵入し脱出したと考えるならば小型潜水艇、さらには母艦がいてもおかしくありません。」
レンはそう報告した。未だ、パシフィックブイのソナーには何も映っていなかったが、それは探知圏よりも外にいるだけの可能性も高かった。
「それと、あの毛利探偵とよくいるガキがいまして、彼の非常に興味を持ちました。」
それを聞いて、有賀も気になる。
「彼はたしか、半年前のイージス艦スパイ潜入事件で協力してくれた少年だな。」
「ええ。それで気になって調べてみましたら、多くの事件に関わっていたことに気づきました。」
東京タワー爆破未遂事件、例のマリンアリーナ、あとは、七夕連続殺人事件。
「それは、確かに怪しいな。特にマリンアリーナだと?」
マリンアリーナは事件化はされていないが、警察庁や防衛省でかなり問題となった事件であった。
「そうです。あの、国籍不明のオスプレイが八景島シーランドの大観覧車を機銃で攻撃した事件です。」
「表向きはただの停電とホイールの火災爆発で済ませましたが、かなりいろんな機関が動いていたとか。」
「そうだ。あの件の後始末は特務機関にも聞こえてきた。警察庁と警視庁の公安がそのほとんどを仕切っていて聞こえてきたのは断片的な情報であったが。」
有賀もレンも黙った。双方が思考を整理していた。
「たしか、黒田管理官って元警視庁公安部だった気がします。今は管理官ですけど。」
それに、有賀は眉間にしわを寄せた。
「あいつら、勝手に動いているな。まぁ仕方がない。レン、公安と協力しても良いから直美アルジェントを取り戻せ。手段は問わない。」
「承知しました。」
「あと、横須賀の潜水艦隊からそうりゅう型が一隻八丈島近海に向かっている。有事のためだ。到着は明日の15時の予定だ。」
そう言うと、レンは電話を切ろうとした。もう話もないだろうという考えである。
それを有賀が遮った。
「最後に1つ。国際シンジゲートブラックって知ってるか?」
レンはそれを聞いて、手を止める。どこかで聞いたことがあったからだ。
「どこかで聞いたことはあります。」
「我々の任務にはあまり関係がないから知らなくても当然だが、軍諜報関係者の間で話されている噂で世界中の未解決犯罪に絡み、世界の闇に潜むやつららしい。」
それを聞いて、レンは考える。
「一理あります。なぜならば老若認証は日本とヨーロッパの防犯カメラを追えます。もし、直美アルジェントが彼らの痕跡を消すことができたら公安やヨーロッパ諸国の諜報機関にとっては打撃でしょう。」
「そうだ。何としても奪い返せ。もしくは、奴らごと海の底に沈めろ。」
「承知しました。」
ブラックか。そういえば、いくつかの日本の重大事件の報告書に黒い服を着たやつらを見たという証言や、爆発事件で関係のないところが爆発したと言ったものも合った気が...
レンの夜は更けていく。