2人目の誘拐と潜水艦
5/3 八丈島西側の崖下の海岸 0:40
そこにはコナンと阿笠博士がいた。
明らかに濡れているコナンと走って、コナンに駆け寄り、灰原哀の安否を尋ねる阿笠博士。
深刻な顔をしているコナンは決意をにじませた顔でこう答えた。
「俺が必ず灰原を奪い返す。」
コナンのそんな声を聞いたところで、
影に隠れていたレンは2人に見えるところに出てきた。
「君にできることがあるのかい?」
レンはそう問いかけた。
レンの認識では、面白いことを考えるし、良いところに気づくし、何よりも行動力があり、その結末まで見据えて行動できるところはそこら辺の小学生どころか防衛省や警察庁で見てきたバカ共よりもすばらしかった。
しかし、彼はあくまでただの小学生である。
「できる。いや、やらなけらばならない。」
そこでコナンは気づく。こいつは誰だ?
その顔を見てレンはあ~、自己紹介してないわと気づいた。
「いやはや、悪かったなボウズ。自己紹介がまだだったな。警察庁情報通信局の藤堂だ。パシフィックブイの安全確保のために来てる。」
そう彼は言ったが、コナンは顔を振った。
「いや、お兄さん違うよね。もしかして気づいていないと思っていた思った?お昼にパシフィックブイにいた時、お兄さんの部下の人にすごく見覚えがあったんだ。変装はしていたみたいだけど、骨格までは騙せないし、あの人すっごく美人だからね。」
そう言われて、レンは驚いた。七海の防衛省にいるときと警察庁の時の服装は制服も違うし、メガネをしていて、メイクも大きく変えているのだ。
普通の人間ならまず気づかない。
「これは、驚いたな。」
「お兄さんって、防衛省の人だよね?そして、そこの影に隠れてるお姉さんは藤井七海一等海佐だよね?」
影に隠れていた七海も出てくる。
「驚いたわ。1回会っただけなのに。」
その姿を視認してコナンは続ける。
「なんで、防衛省が動いているの?そして、どうしてここに?」
それを聞いて、レンは非常に面白いと感じていた。
最近はスパイ狩りで楽しさを見つけられなくなっていたのだ。
防衛省の情報作戦ではあまり派手なことは起こらないし、CIAみたいに世界を股にかけて活動するわけでもない。
そこで舞い込んできたのがこれだったのだ。
「江戸川コナン君か。おもしろいな。防衛省が動いている理由が何か分かるか?推測は立っているんじゃないのか?」
それを聞いて、コナンも答える。
さっき灰原を取り返そうとウォッカとピンガを追って、海に入ったとき遭遇した潜水艦、藤井七海一等海佐に会ったときも海だったこと。
「国籍不明潜水艦がどこかで発見されたとか?」
それを聞いて、七海が驚く。あのスパイ事件の時も頭は良いと思っていたが、潜水艦のことも知らないのになぜそれが分かるのか。
しかし、レンは違った。
「ボウズ、どこで潜水艦を見た?」
そう聞いたのだ。国籍不明の潜水艦は国家機密だ。ただのガキやその親?の名探偵が知れるレベルの情報じゃない。
そうすると、潜水艦をどこかで視認していないと辻褄があわない。
「今、攫われた子を見つけに海に飛び込んだとき。」
そう答えると、七海が足早に後ろに下がり電話する。
その間にレンは話を続ける。
「なるほど。それは有力な情報だ。情報提供感謝する。」
そして、俺が知りたいのはなぜその、灰原って子が攫われたのかだ。
それを聞くとコナンは黙った。灰原の秘密は人に言えるものではない。彼と協力している安室さんや警察の人達も知らないのに。
「黒の組織。」
レンは1つのカードを切ることにした。
それを聞いたコナンは固まる。なぜこの人がそこのことを?
日本で黒の組織を捕まえるために動いている組織は公安警察だけかと思っていたのに。
あながちそれは間違いではなかった。黒の組織は公安の領域。
そういう認識は合っていたのだが、レンが興味を持ってしまった。そして、潜水艦を持っていることを知られてしまった。
特務機関の任務、いや存在意義は日本の安全に脅威を与える敵勢力を削り、情報を集め、将来的に殲滅するためである。
だから今は何も強いことはできないChinaに対して水面下で攻防戦を繰り広げ、日本の国防技術を狙う世界各国のエージェントと戦闘し、自衛隊内や防衛省、防衛産業内のスパイを炙り出しているのだ。
潜水艦。それは海上輸送に食糧やエネルギーを頼るこの国にとって天敵である。彼らが暗躍すれば我が国の海上交通は麻痺し、ただでさえ忙しい海上自衛隊が忙殺されかねない。
そしたら中共が得をしかねない。
また、良識ではなくとも国家関係を持つ国の潜水艦ならまだしも国際シンジゲートが潜水艦を持つ?そんなことは許されなかった。
既に特務機関にとって黒の組織はCIAや中国公安、FSBと同格の警戒を行っていた。
そして、ここにいる少年。彼は彼らに対する有益な情報を持っている。
日本の国益を確保する者としこれは見逃せなかった。
「教えてくれないかい?彼らが一体何者なのかを。私が信頼できないかい?君は気づいているみたいだから言うが防衛省情報本部の力を舐めない方が良い。公安なんかと一緒にされては困る笑。」
そこからコナンの独白が始まった。
コナンがレンを信頼したのだ。
赤井さんと同じ感じだ。
彼と違うのは元々彼らを追っていた組織ではない人間が協力するという点であった。
そこでコナンはキャンティが確保された情報を知るのであるが、それはまた別の話。
その話はレンにとっても、特務機関にとっても信じがたく、さらに言えばかいつまんで離されたことなのでさらに裏深く、信じたくないが世界の裏であった。
また、防衛省情報本部では、七海から八丈島近海に潜水艦がいることを確認し、その中に人質が2名おり、内1名が国家にとって重要な人物であることが判明し、近海待機中の海上自衛隊護衛艦ひゅうがに命令を下す。
特殊作戦及び対潜水艦作戦の用意である。
自衛隊が本気になる瞬間は刻一刻と近づいていた。