愉悦部 in キヴォトス   作:山崎五郎

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8話

私の名前は清川シエル。

 

肩書はゲヘナ学園中等部一年にして、風紀委員会委員長代行。

風紀委員長たる幼馴染みこと、空崎ヒナが事情により動けぬ場合は、その権限や職務を代行することもある。

 

今回はその職務を果たすべく、私はとある場所までやってきた。

 

 

 

…このキヴォトスを訪れた『先生』ならば必ず最初に訪れる場所…連邦生徒会本部だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、以上が先月ゲヘナにて起こった顛末だ。

なにか質問は?」

 

「いえ、問題ありません。改めてご足労いただきありがとうございました」

 

と、目の前の女…七神リンは頭を下げる。

うちのヒナも大概だが、彼女もまた現在の連邦生徒会の実質的なトップである以上こうして話すこと自体珍しいな。

 

「…それでは、本日の要件は以上となります。お疲れ様でした」

 

「こちらこそ貴重な機会に感謝する。

…ところで、少し連邦生徒会の中を少し見て回っても?」

 

「…?

ええ、構いません。

ただ、中には重要機密となりうるものもありますので、そこには注意を」

 

「…了解だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…おや、あなたは…」

 

「ん?……………ああ、誰かと思えば」

 

…前世では、ついぞ牙を剥く瞬間を拝めずじまいだったな。

不知火カヤ。

連邦生徒会の防衛室長であり、SRT特殊学園のFOX小隊を傀儡としてシャーレ解体を目論んでいた女。

 

まあ、私が覚えている限りでは彼女自身に大した能力は無かったと思うのだが…

彼女の元にFOX小隊が付いていることや立場を考えれば、この先厄介になりかねない。

目を光らせておかねばな…

 

……………いや、折角だ。

少しばかり、悪い癖を出してみるか。

 

「お初にお目にかかる、か?不知火カヤ。

先の戦いではカイザーの連中に囚われていたと聞いたが、無事なようで何よりだ」

 

「あら、そのことをご存知とは…『ゲヘナの風紀委員長代行は鼻と耳がよく効く』とは聞いていましたが、これほどとは」

 

「褒め言葉として受け取らせてもらおう。

…この際だ、少しだけ個人的に質問をしても?」

 

「ええ…答えられる範疇であれば」

 

「感謝する。では…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…貴方はシャーレの活躍ぶりをどう思う?」

 

「…」

 

案の定、押し黙った。

元々理由は不明だがシャーレを良く思っていなかった様だからな。

こういう反応は予想通りではある。

 

「実際問題、アビドスやミレニアム、トリニティやゲヘナ間の抗争…SRT…その他多くの学園の問題を解決してきたのはシャーレ…もとい、それを指揮する先生だ。

元々それらを取り扱っていた連邦生徒会からすれば、出過ぎたマネと思われても仕方がないかと思うのだが…」

 

「…その割には、表情が随分とにこやかですね?

あなた自身、先生の事は気に入っていらっしゃるのでは?」

 

「ふ…まあ、否定はせん。

あの人と付いていれば飽きない上に、他の生徒たちの見られない一面を垣間見ることもできる。

…本来発揮し得なかったような実力を引き出すこともな。

かつての連邦生徒会や生徒たちでは不可能であったことを、彼は難なくやってのけているのだ。

これを気に入らずしてなんとする」

 

「…まあ、確かに。

ですが…それを気に食わない生徒が居ることもまた事実ですから。

仮にも防衛室長としては、なかなか頭の痛い話ですねぇ」

 

「そうだな。

例えば…自らの戦闘能力に自負を持つもの(・・・・・・・・・・・・・・・)であれば、それも頷けるだろうが…まあ、それはそれだ」

 

「……………」

 

「……………」

 

沈黙。

どうやらこれ以上は話を聞けそうにもないな。

 

そもそも、こういう誘導尋問は私の仕事ではないしな。

 

「さて、私はそろそろ失礼するとしよう………

 

 

 

 

……………ああ、それと最後に一ついいだろうか」

 

「………?」

 

 

 

 

 

 

「人は誰しも人の上に立つことを望むものだ。それは認めよう。

だが…人にはそれぞれ見合った役目というものがある。

 

…自らの器を測りもせず、過ぎた力や権威に固執すれば…いずれ身を滅ぼすかも知れないぞ?

 

防衛室長(・・・・)殿」

 

「……………ご忠告どうも。

しかしなぜそれを私に?」

 

「いや、何となくというやつだ。別段気にする必要はない。

…心当たりがなければ、の話だが」

 

「……………」

 

「では、改めて失礼する…折角だ、SRTの連中に差し入れでもしてやるか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういうわけで諸君、差し入れだ」

 

「…いや、突然来て『そういうわけで』って言われても訳がわからないんだが」

 

そんなわけで子ウサギ公園。

そこら辺のコンビニで買った適当な品々を持ってやって来た。

 

「「「「…………」」」」

 

「どうした?食べないのか?

人の好意は素直に受け取るものだと先生に学んでいるものだと思っていたが」

 

「…まあ、確かに言われはしたが。

お前清川シエルだろ?

この間ゲヘナの生徒会長に『差し入れのプリンだ』って言って激辛の唐辛子とか山椒を大量に練り込んだ杏仁豆腐を渡したっていう…」

 

「他にも『ピリっとワサビのポテチ』を引くほど大量の醤油とバターとマヨネーズ練り込んだ自作ポテチにすり替えて渡して大変な目にあわされた話も聞いたよ~」

 

「あ、あと、『からあげさんチーズ味』にチョコシロップと生クリームを仕込まれてたって話も…」

 

「……………まあ、たしかにそれは事実だが。

今回は本当にただ買ってきただけだ。気にする必要はない」

 

「…そう言って、本当は後々これをネタに揺するつもりなのでは?」

 

「ふ…さあな。

そうだとしても、お前たちの不利益になるようなことは言わないつもりだ。

少なくとも、私はお前たちを大切に思っている先生を裏切るつもりはないからな」

 

「…ふーん。

ま、貰えるって言うならありがたく貰っちゃおっか?」

 

「…そうだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…そう言えば、一つ諸君に確認しておきたいことがあるのだが」

 

「…何でしょうか」

 

「私は先生…彼は、キヴォトスに無くてはならない存在だと考えている。

意味はまあ…色々な意味で、と言っておこう」

 

「…それがどうしたんだ?」

 

「RABBIT小隊諸君。

…お前たちは今後、何があろうと先生の味方で居られるか?」

 

「「「「……………」」」」

 

流石に押し黙った。

SRTが閉校となったのは元を辿れば連邦生徒会長の失踪が原因だ。

加えてほぼその直後に現れ、ファーストコンタクトがアレだった事もあり、彼女達からの先生の評価はよろしくない。

 

…まあ、前世で私が彼女達をシャーレに引き入れることができていなかったせいで理解を深められていないというのも原因のひとつなのだろうが…

 

「あ、あの…」

 

「ん?」

 

「わ、私は…碌に役に立たないゴミクズですけど…先生には、色々と助けられていますし…

余程のことがない限りは…」

 

「…まあ、確かに普段の言動はアレだが、世話になってるのも事実だからな」

 

「先生って普段からそれでなくとも色々と巻き込まれてるからね~付いていけば色々と…」

 

「………まあ、確かに色々とおかしな疑いを立てられたり、実際にそういう行いをしていることもまた事実ではありますが。

それ以上に私達も救われた身ですから。少なくとも、あなたや先生が悲しむ事にはならないと思いますよ」

 

「…そうか。

なら、安心した」

 

 

 

 

 

…この先がどうなるのかは、私ですら知る由もない。

だが、少なくとも。

 

不知火カヤやその傀儡たるFOX小隊…連中の望むようにならない事だけは、確信を持って言える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、この先、それ以上の何かがこのキヴォトスに降りかかることもまた、確信を持って言える。

 

私の全ては、ヒナと先生の幸福のために。

…その為に、私に出来ることはすべて行おう。




当シャーレにはRABBIT小隊はモエしか来てません。

キャラでおかしいところがあったら私の勉強不足です…申し訳ありません
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