愉悦部 in キヴォトス   作:山崎五郎

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本日はカレーのお話。
はいはいカレーカレー。


14話

キヴォトス晄輪大祭。

2年に1度、キヴォトスほぼ全ての学園が合同となって行われる大運動会。

このブルーアーカイブと呼ばれる世界においてのオリンピックと呼ぶに差し支えないものだ。

 

もちろん健康優良児生徒たるこの私、清川シエルも例外なく出場する………と思っていたのだが。

 

 

 

『いや、貴方一応中等部ですから出場するのはちょっと…』

 

『せめて高校に飛び級とかだったらまだ納得できるんですけどね…』

 

『な、何だってーーーーーーーーーーっ!?』

 

 

 

 

というわけで、私は出場叶わず会場となるアスレチックスタジアムまでやって来ていた。

 

…え?なぜ選手でもないのにわざわざ会場までやってきたのか、だと?

当然、他に目的があるからに決まっているだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハイハイいらっしゃーい!!ゲヘナ学園のカレーの申し子、清川シエルのカレー屋台だよー!見ていっとくれー!」

 

そう、屋台出店という目的がな!!

 

「スタンダードな野菜や肉中心のカレー、ハッシュドビーフソースのカレー、更に気合を入れたいお方や普通のカレーなんかじゃ満足できない方にオススメの激辛仕様、サラリとしたスープとホロホロの鶏肉や野菜が美味しいスープカレーなんかもあるよ〜!

更に本場インド人風のバターチキンやグリーンも!

さあさあ食っていきな!!」

 

「…シエル…?」

 

「ん?ああ先生か。いらっしゃいませ

カレー食べたければ列に並びな。はいいらっしゃいませー!」

 

「いや…何してるの?

これ屋台?カレーってシエルが作ってるの?」

 

「当然だ。晄輪大祭への出場が叶わないと分かったその瞬間から目的は屋台出店にシフト。

それに合わせて給食部から何台か鍋とそれ用の特製コンロ、その他調理器具や皿を調達したら前日のうちからカレーを仕込んでおいた。

カレーは一日寝かせてからが本番と相場が決まっているからな。

お陰で大好評だ」

 

「…確かに、凄い盛況だね…」

 

「それで、食べていくのか、いかないのか?

食べたきゃ列に並んでどうぞ。はいいらっしゃいませ」

 

「……………とりあえず並ぶかな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はいどうぞいらっしゃいませ先生。

こちらメニューです」

 

「…凄いなこりゃ。普通に店のメニューと遜色ない…

えっと…オススメとかある?」

 

「ならこのスープカレーだな。

セットにはサラダとドリンク付きだ。スープはトマトベースとココナッツスープベースの2種類だがどちらにする?」

 

「…じゃあココナッツスープベースでセット付き…ドリンクはこの烏龍茶にしようかな」

 

「ちなみに辛さは1〜10までのランクで選べるぞ。

私としては10辛がオスス「中辛の4で」………かしこまりました。

ご注文入りました~!あ、席は7番テーブルな。

次のお客様どうぞー!」

 

「………」

 

何だろう。こういうのは失礼だと分かってはいるのだが、どうにも普段自分が知っている彼女の姿と現在の彼女の姿が頭の中で重なることがない。

有り体に言ってしまえば、『誰だアイツは』となってしまっているのだ。

 

「…っていけない。7番テーブルだっけ?早く席につこう…」

 

 

 

 

そうして席についてまもなく、セットのサラダがやって来た。

…野菜はどれもシャキシャキで美味しい。時々入っている韓国海苔もいいアクセントになっている。

この和風ドレッシングもそれぞれを邪魔することなく食べやすくしてくれている…ん?

 

「『野菜は私が作りました』…ってジュリじゃないか。

しっかりしてるなぁ…」

 

「おまたせしました」

 

「ん、どうも…おお」

 

いざやって来たスープカレーは、正直予想の倍以上に美味しそうだった。

あえて大きめに切ってあるニンジンやピーマンやナス、半分に切られて浮かんでいる煮卵、真ん中には堂々とメインである鶏肉。

スパイスの香るスープには油分が丸くなって表面に浮いており、こってりとした味が既に見て取れる。

 

普段からカレーにはうるさいシエルだが、まさか普通に作った分にもこれほどの物とは。

どれ、早速頂こう…

 

「いただきます…ん。美味いな」

 

中辛にしたものの、ココナッツスープベースだからかほんのりと甘い。

野菜も人参はホロホロ、ナスはスープを吸っており独特の美味さ、ピーマンは少し固めなもののしっかりとカレーの味が染み込んでいる。

煮卵は黄身が固めになるほど煮込んでいるにも関わらずスッとスプーンが通るほどに柔らかく、スープを絡めて食べると卵の味とカレーの味が見事に調和していて美味しい。

 

そして何よりこの一際目を引く大きな鶏肉。

弾力のある鶏肉はホロホロに柔らかく、スープを少し吸っているのかうっすら辛味を感じる。

しかしカレーの味の後にしっかりと鶏肉自体の味がやって来る。

少し固めなはずの軟骨もコリコリと少しかじって食べられるほど柔らかく煮込まれている。

一体どれくらい前から仕込んであったのだろう。

 

そして忘れてはいけないご飯。

柔らかすぎず硬すぎず、ベストな塩梅に炊かれている真っ白な白米がカレーや具材一つ一つの味を引き立てている…

 

うん。総評すると『美味い』としか言えないな。これは凄い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして晄輪大祭の諸々の用事が片付いた後。

再びシエルの出店まで来ていた。

 

「お…まだいた」

 

「ん、ああ先生。

色々大変だったようだな、お疲れ」

 

「まあね…シエルは店じまい?」

 

「ああ。お陰様で大盛況だったよ。ついさっきまで客がいた」

 

「そりゃあ凄いな…今回でシエルのカレーに対する執念が再確認できたよ」

 

「フフフ…私がキヴォトス1のカレー大使に任命される日もそう遠い未来ではないかもしれないな」

 

「そうかもね。よかったら今度私にも…」

 

 

 

「先生」

 

「ん?ヒナ!

どうしたの、今日一日姿が見えなかったけど…」

 

「…まあ、色々あって。

先生、それはそうと…シエルを見なかった?」

 

「え?シエルならここに…

 

 

 

 

 

 

 

 

え?居ない…?

あのヒナ、シエルがどうかしたの?」

 

「…今日、色々な学園や、その他一般の客から『ゲヘナ生徒の出してる店のカレーがとても美味しかった』ってお礼が来てる。

1つ2つじゃなくて沢山」

 

「へえ…そりゃ凄いね。

たしかにあれは絶品だった…うん」

 

「……………問題は、それが一切の許可を取らずの出店だったってこと」

 

「………ええ?」

 

「……………それで、今は証拠集め中。先生、シエルの店や料理の写真持ってる?」

 

「えっと、それならここに…あった、この写真…」

 

 

プツッ

 

写真が削除されました

 

「えっ」

 

「…!見つけた。

 

先生ごめん、また今度」

 

「あ、うん…」

 

 

その直後、デストロイヤーを構えたヒナはどこかへ走り去っていった。

 

翌日、『もう1つの晄輪大祭』というタイトルでヒナとシエルが街中を駆け回っている様子が、クロノススクール発行の新聞の表紙を飾ることとなったのだった…

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