愉悦部 in キヴォトス   作:山崎五郎

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クリスマス特別編です。
慌てて書きました(白状)。
なのでガバいです。許して




聖夜、冬は白き降来者と色とりどりの包みとともに

12/24,12/25。

俗にクリスマスイブ、そしてクリスマスと呼ばれるこの2日間。

 

元々聖キリストの降誕を祝うキリスト降誕祭、聖誕祭と呼ばれるこの日は、街を煌びやかに輝かせ、人々を浮かれ騒がせる日でもある。

 

冬場でありながら、街には浮かれた人々でごった返す。

そしてそれに便乗するかのように、店という店はクリスマスムードを前面に押し出して商売に乗り出す。

 

そしてこの私、清川シエルの住むキヴォトスにもクリスマスの文化は根付いている。

そんな誰もが浮かれ騒ぐ日の朝に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私をはじめとした埋葬機関の面々は雪かきに追われていた。

 

前日、唐突にやって来た寒波により、キヴォトス全土は大雪に包まれた。

無論私が住まうこの教会…及びゲヘナ領も例外ではなく、温泉と火山の地熱すら大して効果をなさなかった証明が、起床後の眼前に広がっていた。

 

当然この調子では何も出来はしない。

総員(8名)で教会周りの雪かきに乗り出すこととなった。

 

「きつ゛い…さむい…痛い…もう疲れた…」

 

私の近くで雪かきに興じていたノエルが、ぜえぜえと息を荒げながらそうこぼした。

吐いた息が白く吹き出されやがて消えていく。

 

「まだ四分の一すらどかせていないぞ。

ハルバードは軽快に振り回せるくせに雪はどかせないのか」

 

「それとこれとは話が別だっての!!

こんな寒い中で体はガチガチで動かないし、雪はかさばると重さを増して動かしにくくなるし、いっぺん掬ってどかせてもまだ次の雪がうんざりするぐらい残ってるし…なんでこんな面倒なことしなきゃいけないわけ!?」

 

「これでも教会だからな。ましてやクリスマスとあれば敬虔な信徒たちが訪ねてくるのは目に見えている。

そんなときに周りが雪まみれではいい笑いものか怒りを買うことになるだろう」

 

「ソレ困るのアンタとその信徒だけじゃないの?

…つーか、こんな大雪にこんな辺鄙な教会訪ねてくる気まぐれなバカなんてそうそう居るかっつーの」

 

「ふむ…それもそうか」

 

「でしょ?

んじゃ、私は街でクリスマスセールに…」

 

と、雪かき道具を投げ捨てて駆け出すノエル。

が、作業から解放される喜びで自分が何をしていたかを忘れてしまったのか。

 

足元のそれらに足を取られ、まっすぐに倒れた。

白い絨毯に人形の穴が開きました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後。

タマキの急造した温風装置&地熱装置により、雪は大半が片付いた。

ちなみに先程すっ転んで雪の中に埋まったノエルは、暖炉の前で激しく震え、けたたましくクシャミを響かせながら暖炉の前で毛布にくるまっている。

 

しかし、教会周りでこれなのでは、本当に本日の来訪者はない可能性が出始めたな…もし万が一来るとしてもここよりもトリニティの方に向かいそうだ。

 

中継の映像でも存分に金をはたいたであろう巨大除雪車が猛威を振るっている。

…ふむ。ちょうどいいな。この場にも全員揃っている…

 

 

「ところで、埋葬機関諸君。

一つ尋ねたいのだが…

 

予定に空きはあるか?

 

「この後ショッピング行くから(絶対面倒事に付き合わされるわ…)」ノエル

 

「ふ、冬コミの新刊が…(ぶっちゃけクリスマスに外とか出たくね〜でござる。リア充乙)」アマロ

 

「特にないね!」シルベ

 

「……………(外に出る意思はないことをアピール)」アルハ

 

「クリスマスセールで部品や道具の調達ぐれェか?」タマキ

 

「………外に出たくないんだけど」クスミ

 

「私も特に用は無いですけど、寒い中わざわざ出るのは…」エミリ

 

 

 

ふむ、案の定外に出ようとする意思はほぼない、あるいはあったとしても私に付き合うつもりはない、と。

成る程…ならば、仕方ないな。

 

「ふむ。そういうことならば致し方ない。

私は私の用事を済ませる、諸君も各々望み通り過ごすといい」

 

そう告げ、背を向け歩きその場を離れる。

後方から雑談や予定の確認、おそらくガッツポーズをしたであろうノエルの声が聞こえたことを確認し…携帯を取り出して連絡をする。

 

 

 

「もしもし先生か?」

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

「ああ、予定が空いてな。

以前から計画していたシャーレ名義でのクリスマスパーティーに私も参加が叶いそうだ。

 

ん?他のものか?いや、ソレが聞いてみたところ既に予定を入れていたようでな…イヤ全く、本当に残念だとも。

まあ、私も用意を済ませたら向かう。そちらもできうる限りの準備を頼むぞ」

 

先生との電話を終え、後ろを振り向く。

ノエルやエミリをはじめとした埋葬機関の面々が、座っていた椅子から身を乗り出すなり、興味深そうに笑みを浮かべるなり七者七様のリアクションでこちらを見ていた。

 

「――――――――と、言うわけだ。

さて諸君、念の為、改めて聞いておくが…

 

予定に空きは、あるか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその夜。

多くの生徒の助けを借り、本日の業務を完遂させた先生の元、貸切会場にてクリスマスパーティーは開かれた。

 

アビドス・ミレニアム・ゲヘナ・トリニティをはじめとした代表的な学園の生徒以外にも、百鬼夜行や山海経、SRTやレッドウィンターの生徒などもパーティーに出席していた。

 

ちなみに、大会場から離れた別室では表立って顔を出せない一部の生徒が料理を味わっているのだが…それは別のお話。

 

そして、パーティーが始まってしばらく経った頃。

突如として会場が暗転。

 

何事かと騒ぐもの、周囲に落ち着くよう促すもの、電気を探すもの、様々な反応が確認できる。

すると、会場のステージにライトが集まる…

 

 

 

 

 

ブォォン…ブォォン…

 

「…?これ…」

 

「先生、大丈夫?」

 

「あ、ヒナ…うん、私は平気だけど、それよりもこれって…」

 

 

と、ヒナと先生が話していたところで更に会場がざわめいた。

会場の灯りが戻り、壇上の人の姿がはっきりと見えるようになる。

 

そこに居たのは…

 

 

 

 

「埋葬機関、初代局長やらしてもらってるシエルですけどォ!

今日はァ、仕事忘れてクリスマスパーティー存分に楽しませてもらうんで夜露死苦!!」

 

「「「「「「夜露死苦!!!!!!」」」」」」

 

 

 

 

 

「「「「「――――――――は?」」」」」

 

壇上にはバイクが数台。そして高らかに名乗りを上げるシエル。

声が響く壇上とは裏腹に、会場はその一言だけを絞り出し静まる。

しかしそんなことは気にもとめず自己紹介は続く。

 

「埋葬機関のヨ!乱闘生のヨ!ノエルだけどヨ!

好きな言葉は…んっ、グッ………ッハァ!!麦茶だこれ!!!」

 

「ブッ」

 

「クフッ」

 

ノエルが手にしていたビールっぽくした麦茶を飲み干し叫んだ。

おそらく元ネタを知っていたであろう数名の生徒は吹き出した。

 

「埋葬機関乱闘生のよォ!!アマロなんだけどよォ!!

拙者なんか今日お母さまにィ!!『アマロ!今日はクリスマスね』って言われたけど無視しましたァ!!

 

バッキャロォォ!クリスマスに誰も彼も予定はいってると思ってんのかよォ!!

でも拙者にはクリパ誘ってくれる同士いたんで!嬉しいんで夜露死苦!!」

 

「「「「「「夜露死苦!!!!!!」」」」」」

 

これまた一部の生徒がダメージを受けうつもややウケ。

 

「埋葬機関乱闘生のクスミだけどォ、恐らく今日この日も厨房にこもって料理してるであろう顔見知りの料理人にズバッと一言ォ!!

 

…正直ちょっと尊敬する。

今日ぐらいは楽しんでいいと思うんで夜露死苦!」

 

「「「「「「夜露死苦!!!!!!」」」」」」

 

おそらくこの声を聞いたであろう厨房のとある生徒から『ちょっと今からもう数品作るね!』という声が。

いや休みんしゃい。

 

「埋葬機関乱闘生タマキィ!!

…すいませんがァ、普段から働き詰めてると糖分不足なんでェ…

クリスマスとか関係なしにケーキ、ワンホール食ったりしてますゥ…

 

夜露死苦!」

 

「「「「「「夜露死苦!!!!!!」」」」」」

 

「埋葬機関乱闘生アルハ…

 

奥さん、クリスマスのご馳走用意するの、本当大変だよね。

今日はそんな苦労を忘れて食べて飲ん…

 

え?何?そんなもん惣菜で済ませる?

今どき自分で手間隙かけて用意なんてしない?

 

―――――なんだそら。夜露死苦!」

 

「「「「「「夜露死苦!!!!!!」」」」」」

 

「…埋葬機関!乱闘生!エミリ!

 

私ィ!冬は寒いし雪かき面倒いとか言われがちだけどぶっちゃけ言うほど気にしたことない!!

 

だってェ!自分鍛冶やってんでェ!

寒さとか大して関係ないんでェ!!

 

…会場の視線が痛いんで夜露死苦!!」

 

「「「「「「夜露死苦!!!!!!」」」」」」

 

 

 

 

 

「………あの、何をしてるの、シエル」

 

「おや、なぜ私だけに問いかけるのだ、先生?」

 

「いや、だってその…ねぇ?」

 

先生が右へ左へと視線を動かす。

顔を赤らめ涙目になりながらシエルを睨みつけるノエル、ちょっと危ない目になっているアマロ、目頭を押さえため息をつくクスミ、バイクに腰掛けやりきった笑みを浮かべるタマキ、あいも変わらず無表情のアルハ、口元がピクつく笑みを赤面しつつ浮かべるエミリ。

 

「それで平然としてるシエル見たらさ…」

 

「まあ、概ね正解だ。

私としては教会の用事で参加は難しいものだと考えていた。

 

どうせなら派手に乗り込んでやろうと思ったわけだ」

 

「まあ、うん、確かに派手なんだけど…ね?」

 

 

 

 

と、一悶着あったものの。我々埋葬機関は無事クリスマスパーティーに合流した。

ヒナに怖い視線を向けられながらも、パーティーの料理を楽しむシエル。

ちゃっかり先生の側をキープしつつ楽しむノエルとエミリ。

甘いものばかり口にするせいで救護騎士団に救護されそうになるタマキ。

以前の騒ぎで難癖をつけられるも、ぞんざいな態度を取るお陰で粛清されかけるアルハ。

あいも変わらずフラフラと好き勝手に楽しむクスミとシルベ。

 

おそらく他生徒に妙なちょっかいをかけようとして犬神家にされているアマロ。

 

 

 

 

 

 

そうして、楽しんだところで。

ふと、しばし喧騒から離れたいと思い外に出た。

 

…すると。

 

 

「や、シエル。

パーティー楽しめてる?」

 

本日の主役と言っても過言ではない存在が隣にやってきた。

今頃会場は大騒ぎではないのか?

 

「まあ、そうだな。

フウカ先輩とルミ会長をはじめとした面々の料理は相変わらず美味い。

 

私の用意したアレも思いの外楽しんでもらえているようだ」

 

「だね。にしてもシエル、あんなのどこで仕入れてきたの?」

 

「ふ…秘密だ」

 

「秘密かぁ」

 

「そうだ、秘密だ。

いい女には秘密がつきものと言うだろう?」

 

そうして、外の寒さも忘れくだらない話を繰り広げる。

…しばらく話すと、「あ、そうだ」と先生が懐に手を入れ…

 

「―――――はい。お誕生日おめでとう、シエル。

それと…こっちも。メリークリスマス」

 

「……………」

 

ああ、そうか。

そういえば、今日は私の…

 

「わざわざ2つとも用意したのか。

まとめてプレゼントということにもできただろうに」

 

「ハハ、確かに。

でも、大切な生徒との大切な日なんだからさ。

 

ちゃんと、一つ一つ祝ってあげたいって思って」

 

「――――――ああ、そうだな」

 

 

お前はそういう人間だったよ、先生。

だが、同時に…

 

「そういうところだぞ、先生」

 

「え?シエル、それはどういう…ん?

 

あれ、ユウカいつの間に…え?ユウカへのクリスマスプレゼント?

いや、それはあるけど…え、手渡し?

あ、うん、ソレはもちろんそうだけど後で…あれ、シロコ?

ちょっ、みんなも急に…!」

 

ほらな。

生徒一人にそんなことをしてしまえば、当然反応するものはいる。

いい加減自分の影響力というものを理解してほしいものだな…

 

などと考えながら。

残った料理を楽しもうと、「ちょっとシエル!シエルからも説明して!ちょっ、あの…ちょっと!行かないで!」という先生の声は聞かないフリをしながらその場をあとにしたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と思ったら。

 

『シエルへ お誕生日おめでとう』

というヒナの書き置きとともに、いくつかのプレゼントが用意されていたのであった。

 

私の幼馴染も、中々どうして粋なはからいをしてくれるものだ。





クリスマスパーティーではシエル達の名乗りの元ネタでもある数取りゲームが行われたり、事前に打ち合わせしていたイタズラ☆ストレートのライブ(シエルが仕込んだ曲あり)が行われたり楽しい時間となったようですよ。


清川シエル

誕生日ボイス(12/24)

「本日は私の誕生日だ。

とはいえ、世間一般的にはクリスマス。
プレゼントに関しては頭を悩ませる事になるだろうが…

まあ、一言だけ言っておくとしようか。

…期待しているぞ、先生?」
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