愉悦部 in キヴォトス   作:山崎五郎

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※キャラ崩壊注意。


26話

からだがあつい。

 

 

めのまえがまっしろになって、こんどはまっくろになった。

 

 

うでもあしもぐちゃぐちゃになって、うごかない。

 

 

なにもみえない。でもこえはきこえる。

 

 

 

とおくから、だれかがちかづいていくる。

 

しえる、しえるとおおきなこえではなしながら、ちかづいてくる。

 

だれだろう。なんでそんなにわたしのなまえをよんでいるんだろう。

 

 

こえがふえた。

 

しえる、しえるとさけんでいるだれかに、おちついて、とおおきなこえではなしている。

 

 

 

くるまのおとがきこえた。

 

まただれかがちかづいてきて、わたしのうでやあしをさわる。

 

 

こんなにめちゃくちゃなのに、すごくいたいはずなのに、なにもかんじない。

 

 

なにかにのせられた。とびらがしまって、くるまのおとがまたきこえた。

 

―――――――――ずっと、だれかがわたしのてをにぎっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐ…ここは」

 

「…!気がついたんだ、リーダー」

 

「ミサキ…何が起こった?

 

…そうだ、姫は…アツコは!?」

 

「大丈夫。

 

………リーダーの後ろだよ」

 

「…………………」

 

「…そうか。ならいい。

 

…ヒヨリは?」

 

「え、えへへ…ここです…びっくりしましたねぇ、さっきの…アレって…」

 

「………巡航ミサイル、だね。

 

撃ち込んだのは…だいたい察しはつくかな」

 

「………一度退くぞ。

計画を練り直す必要がありそうだ」

 

「…了解。でも、倒れている連中はどうする?

 

………いや。心配すること無かったかな」

 

 

 

先程まるで現れなかった複製達が一人、また一人再び顕現し始め、倒れていたアリウス生徒達を抱え始めた。

 

 

「…随分と融通が効くみたいだね、アレ」

 

「す、凄いですねぇ…それに、さっきも盾になって私達を爆風から守ってくれましたし…」

 

「………懸念事項はこの場になくなった。

退くぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………何、これ」

 

「…アズサか。久しぶりだな」

 

「サオリ…一体何を…!」

 

「どうするのリーダー、相手する?」

 

「……………いや、撤退を優先する。

四人で相手すれば撃退するのは容易いが…それで時間を稼がれても面倒だ。こちらも手負いだからな」

 

「了解。ヒヨリもアツコも、早いとこ撤退しよう」

 

 

「待てっ!!…っ!?」

 

足止めのために放ったアズサのアサルトライフルの弾丸は、アリウススクワッドとの間に壁になるように現れた複製達により防がれる。

 

そして、更に壁を増やすように十数体が顕現する。

 

「…そいつの足止めをしろ。だが殺すな。

 

改めてこの世界の真実を教えるまでは、生きていてもらわなくてはな」

 

「何をっ…!!くっ!」

 

「わざわざ正面から特攻とはな。お前のお得意なゲリラ戦はどうした、アズサ。

 

…そんなに私達を殺したいのか?」

 

「……………」

 

「どうした。まさかそんな事を言葉に出すこともできないほどに甘ったれたのか?

トリニティで随分と牙を抜かれたようだな」

 

「違う、私はそんな…くっ、この…!」

 

「無駄だ。我々がエデン条約機構(ETO)である限り、それは私達の意のままに動くし、いつまでも現れ続ける。

…我々のヘイローを破壊し、死に体にでもしない限りはな」

 

「エデン条約機構…?それは、トリニティとゲヘナの条約のはず…」

 

「知りたければシャーレの先生…その近くにいたゲヘナ風紀委員会にでも聞くと良い。

 

…もっとも、連中がそこまでの余裕を保っていられれば、の話だがな」

 

「っ、待て…!!」

 

 

アズサの怒号も、幾度となく現れる複製の前に虚しく響くだけ。

…アリウススクワッドは、再び行方をくらました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トリニティ総合学園は荒れに荒れていた。

 

学園の主要人物が集う古聖堂に(未遂とはいえ)巡航ミサイルが撃ち込まれ、その上正義実現委員会が誰かと戦っている映像が流れたのだ。

 

そして、その上映像が途中で途切れた。

戦っていた相手は誰なのか、そして巡航ミサイルを撃ち込もうとしたものは誰なのか…残念ながら、トリニティ生徒の出した結論は一つだった。

 

いや、それしか答えを持っていないと言ったほうが正しいのかもしれない。

 

 

 

「あんなのゲヘナの仕業に決まっているわ!」

 

「わざわざ自分達の身内まで引き込んであんな物を撃ち込むなんて…なんて野蛮人なのでしょう!!」

 

「やはり条約なんて結ぶべきじゃなかったのよ!ゲヘナを根絶やしに…!!」

 

 

 

 

そこに一台の車が到着する。

 

黒い高級車を思わせるそれには、英単語の『J』を元にしたであろうシンボルと、『Justice』の文字。

正義実現委員会の所持する車両だった。

 

その中から一人の少女がゆっくりと現れた。

 

 

 

 

桐藤ナギサ。百合園セイアが負傷し、聖園ミカが転覆容疑で監禁状態にある現在、トリニティにおける最高権力者。

 

通功の古聖堂に留まっていた彼女が、トリニティへと帰還した。

 

 

 

戻ってきた人物は一人ではない。

 

同じ車両から他の正義実現委員会の主要メンバーである剣先ツルギ、羽川ハスミ、静山マシロが降りてくる。

更にそこにもう二台車が到着し、そこからシスターフッドやその他一部のトリニティの権力者達が降りてきた。

 

 

 

「ナギサ様!ご無事だったんですね!」

 

「一体何が起こっているんですか!?」

 

「あのミサイルを撃ち込んだのは!?」

 

「やはりゲヘナですか!?そうなのでしょう!?」

 

「ナギサ様だけでなく多くの者の命まで脅かそうとするなんて!!今こそゲヘナに宣戦布告を「皆さん。」

 

…ひっ!?」

 

桐藤ナギサのその声は、まさに鶴の一声だった。

 

怒気とも威圧感とも取れるそれをはらんだその声に、数秒前まで荒波のように騒ぎ立てていたトリニティ生徒達は全員が押し黙った。

 

状況が把握できず混乱するのは分かります。

 

 

ですが、だからこそ冷静になることをお忘れなく。常に余裕を持ち優雅に、ですよ

 

…ティーパーティー及び学園主要関係者に連絡を。ただ今より緊急の会議を開きます。

お伝えすること(・・・・・・・)も、ありますので」

 

 

そのままナギサはスタスタと足早に学園の中に去っていった。

その場にはただ、沈黙だけが残る。

 

 

 

 

ピーポーピーポー‼

 

 

 

突然の救急車のサイレンが、その沈黙を打ち壊した。

その救急車はトリニティの前で停車し…中から一人のゲヘナ生徒が降りてきた。

 

「失礼します。トリニティの救護騎士団の関係者の方は…」

 

「はい!救護騎士団の鷲見セリナです!」

 

「同じく朝顔ハナエです!どうしましたか!?」

 

「初めまして。

ゲヘナ学園救急医学部の氷室セナと申します。

 

現在、重症者を一名搬送中でして。宜しければ、お力をお貸し願えませんか」

 

唐突に飛び込んで、唐突に告げるゲヘナの女医。

その言葉にまたしても静寂が打ち壊される。

 

「ど…どうしてゲヘナの負傷者なんかのために…!」

 

「…念の為、患者の状態を確認させていただいても?」

 

「ちょっ…!?」

 

「…どうぞ。ですが、予想以上に状態が酷いです。

 

どうか自己責任で。」

 

「失礼します…………ッ!!

 

ハナエちゃん!すぐに救急搬送です!治療の準備をしますよ!!」

 

「………!!はい、了解です!!」

 

「ちょ、ちょっと二人共正気なの!?ゲヘナなんかの負傷者なんて…………ひっ!?」

 

「ちょっと、どうしたのよ………え、何アレ」

 

騒ぎ立てていたトリニティ生は皆、それ(・・)を見た途端に絶句した。

 

足はあらぬ方向へ折れ曲がり、肌や髪は黒く焼け焦げ。

 

ぽっかりと開かれている口と目。

 

生きているのかすら怪しい、そんな物を見れば余程のものでも無い限り言葉を失う方がむしろ正常だろう。

 

 

 

 

 

 

 

「…何なのよ、アレ…本当に患者?

 

もう死んでるんじゃないの?」

 

 

 

 

 

「………は?」

 

一人のトリニティ生徒の何気ない呟きに、地獄のマグマのような煮えたぎる怒りをその一言に凝縮し反応したものが一人。

 

 

 

空崎ヒナ。

 

 

『もう死んでる』と言われた患者…清川シエルの幼馴染にして、ゲヘナ最強の風紀委員長。

 

その小柄な体格に到底収まりきらない怒りを顕にしながら、トリニティ生徒に歩み寄っていく。

 

「ねえ」

 

「な、なによ…ひっ!?げ、ゲヘナの風紀委員長…!?」

 

「今、貴女なんて言ったの?」

 

「な、何って…」

 

「2度も聞かせないでよ。なんて言ったの?」

 

「ひ、ひっ、や、やめ、く、来るなぁ!!」

 

「なんて言ったのかって聞いてるのよッ!!!」

 

尻餅をつき、涙目になりながら後退りするトリニティ生徒に向けて怒りのままに拳を振り上げるヒナ。

その腕を、別のゲヘナ生徒の腕が阻む。

 

「委員長、やめろっ!!」

 

「落ち着いて下さい!!この状況でそんな事をしては…」

 

「煩いッ、退けッ!!!

そいつが、そいつがシエルが死んだなんて、そんな、そんな事言うからッ!!!

離せ、離せッ!!!」

 

 

 

 

「ヒナッ!!!」

 

 

 

「「「「!?」」」」

 

 

「…せん、せ」

 

「ヒナ。やめるんだ」

 

「で、でも」

 

「でもも何もない。拳を収めて。」

 

「……………ごめん、なさい…」

 

途端に全身の力が抜け、ヒナは前進にへたり込む。

今にも崩れ落ちそうなその小さな身体を、先生が抱きとめた。

 

「わたし、わたし、なにもできなくて、しえる、しんじゃうって、いわれて…

 

でも、そんなのやだ…しんじゃやだよぉ………」

 

「大丈夫。セナと救護騎士団の二人を信じよう。

シエルは戻ってくるから、ね?」

 

「ひっく、ぐす………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………!せ、先生!!」

 

「あ…ヒフミ。

それに、コハルとハナコも」

 

「ど、どうしたのこの状況…って、その人って!?」

 

「コハルちゃん。今はそっとしておきましょう…先生、ゲヘナの救急車がなぜここに?風紀委員会の方々も…」

 

「…さっき、アリウスの生徒たちと戦ったんだ」

 

「「「!?」」」

 

「それで、ゲヘナの生徒の一人が重傷を負って…ゲヘナ領まで戻ったら手遅れになるかもって言われたから、トリニティの救護騎士団にも手を貸してもらうことにしたんだ」

 

「………なるほど。

まだ色々と聞きたいことはありますが…一旦どこかで落ち着きましょう。

ゲヘナの皆さんも、その方が良いでしょうから」

 

「………そう、ですね。

 

先生、一先ずヒナ委員長だけでもどこかに…」

 

「………!やだ!

わたしシエルのところにいくの!きずをなおしてからでいいから、そばにいてあげないと…!」

 

「い、委員長、ですが…!」

 

「…ヒナ。

今は、待っていよう?ヒナも疲れてるでしょ?」

 

「せんせい、でも」

 

「大丈夫。大丈夫だから。

 

一回、ゆっくり眠ろう。落ち着いて、ね?」

 

「……………うん」

 

そう一言つぶやき瞼を閉じると、ヒナは糸の切れた人形(マリオネット)のようにパタリと先生に倒れかかって眠る。

すぅすぅと寝息を立てて眠る彼女に風紀委員長としての面影はなく、一人の少女としてゆっくりと安らいだ表情を浮かべていた。

 

「…と、ヒナが落ち着いたのは良いけど、この後どうしたものかな…」

 

「って、何も考えてないのか!?」

 

「………先生!」

 

「あ…サクラコ。

良かった、サクラコも無事だったんだね」

 

「は、はい…私達も正義実現委員会の皆さんと戻ってきまして…というか、その方は…」

 

「あー…ちょっと色々あってね。

良かったら、どこかで休ませてあげたいんだけど…ゲヘナの皆と、私も含めて」

 

「…分かりました。

確か、ゲストハウスに少し空きがあったはずです。

 

そちらにご案内します」

 

「ありがとう。じゃあ、皆行こうか」

 

「わ、私達も行きます!」

 

先生が眠るヒナを抱きかかえ、その後を風紀委員会メンバーと補習授業部三名が着いて歩く。

現在のキヴォトスの事態に比べれば些細なことだが、ある種コレも異質な光景と呼んで差し支えないだろう。

 

「…あれは、ヒフミ達?」

 

それを白州アズサは見つけた。

少女はある事実を確かめるべく、先生達のもとに向けて駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トリニティ総合学園、緊急会議会場。

 

「…皆様、緊急でお集まり頂きありがとうございます。

 

一部欠席も居ますが、それについては目を瞑っていただけるとありがたいです」

 

「そのようなことはどうでもいいのです、ナギサ様!一体何が起こっているのですか!?」

 

「何が起こったかなんて、決まっているでしょう!?どうせゲヘナの連中が騙し討ちしたに決まっています!!」

 

「というか、第五ゲートにやって来たゲヘナの救急車は何なのですか!?しかも、あの風紀委員会まで連れているとか!!」

 

「何やら重傷者がどうとか言っていましたが、ゲヘナ生徒を抱え込むなんて救護騎士団は何を考えて…!」

 

「兎にも角にも黙っていられません!ナギサ様、至急ゲヘナとの全面戦争の準備を

「お静かに。」………ひっ!」

 

有無を言わさぬ威圧感に、先程まで餌を運ばれた雛鳥のように騒ぎ立てていたトリニティ生徒達は黙りこくる。

そして、ナギサは再び話し始めた。

 

「皆さん。物事を主観だけで決めつけるのは宜しくありませんよ?一先ず、彼女達から話を聞くとしましょう」

 

「入って下さい」というナギサの言葉とともに扉が開き、そこから三人の人物が足を踏み入れる。

 

剣先ツルギ、羽川ハスミ、静山マシロ。

正義実現委員会の三名である。

 

「ハスミさん。貴女達が戦ったという者達についてお話していただけますか?」

 

「はい。

 

…単刀直入に申し上げます。

 

敵はゲヘナではなく…アリウス。先日聖園ミカ様と共にトリニティに攻め入ってきた者達以外のアリウスの部隊が、トリニティゲヘナ両校を奇襲し、現在に至ります」

 

「アリ…ウス?」

 

「ミカ様がクーデターを起こしたことは知っていますが…アリウスというのは知りませんでしたね…」

 

「無理もありません。アリウスは数百年以上前にキヴォトスから姿を消した存在ですから。

 

理由は…トリニティとの併合を拒み追放された恨みから、でしたか?」

 

「はい。ヴァルキューレに収監された者は、そう…」

 

「なっ…只の逆恨みではないですか!!」

 

「ゲヘナ以上に野蛮だわ…!」

 

「他にもアリウスは…先程街に着弾した物も含め、3機もの巡航ミサイルを発射しています。

加えて詳しい方法や理由は不明ですが…ユスティナ聖徒会を複製した兵隊達をほぼ無尽蔵に操れる、と」

 

「ゆ、ユスティナ聖徒会!?それこそ数百年も前のものではないですか!?」

 

「一体何をどうしたらそんなものを…!」

 

 

 

 

 

 

 

「…要するに。アリウスがトリニティにとってもゲヘナにとっても脅威であることは事実なのでしょう?」

 

「………ナギサ様?」

 

「ええ、ええ。実に単純な話ではありませんか。

…確か、現在ゲヘナ風紀委員会が当校に避難しているのでしたね?」

 

「は、はい。確かにその通りですが…」

 

「更に報告では、何やら風紀委員会のお方がアリウスのせいで重傷を負ったとか…ふふ、なるほど」

 

「………?」

 

ハスミはナギサの…その笑みにひどい違和感を覚えた。

口元を抑え、穏やかな笑みのはずなのに…、まるで汚濁のようにドス黒い何かを幻視するほど、不気味な何かを感じた。

 

「…ゲヘナ風紀委員会の方々に、こちらにおいでくださるよう連絡を。大事なお話がある、と」

 

「…大事な、話…?」

 

「我々は共にアリウスに狙われ、事実2名もの被害者が出ています…それも両校の重要人物が。

つまるところ我々は、同じ敵に危害を加えられた者同士…ということになるわけです」

 

「そ、それは…そうですが…」

 

「な、ナギサ様…何をなさるおつもりなのですか…?」

 

「…今こそ、エデン条約を正しい形で結ぶとしましょう。

アリウスが我々に敵意を向けるのならば…応えてあげようではありませんか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「トリニティとゲヘナのもと、連合軍を編成し…アリウスを、今度こそ討ち滅ぼします。

彼女らには、エデン条約の為の第一歩として…消えて頂きましょう。」

 

 

 




ワァ…シエルが皆のために行動したら皆がおかしくなっちゃったよ!アハハ!(暗黒微笑)
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