何かキャラ会話が多くなってますねぇ(文才:E-)
※キャラ崩壊注意。
ゲストハウスの一室のベッドに、ゆっくりとヒナを寝かせてシーツを掛ける。
余程疲れているのだろう、あれほどのワーカーホリックなヒナが全く起きる気配がない。
…こんな姿だと、本当に幼い子供みたいだ。
「先生!ヒナ委員長は大丈夫なんですか!?今後の話し合いを…」
「先生!一体何があったんですか!?私達にも話を…え、アズサちゃん!?」
「先生、聞きたいことがある。ゲヘナの皆にも」
…騒がしくなってきた。
ヒナに落ち着いてもらうためにも、この部屋を離れるとしよう。
「エデン条約を自分達のものにした…やっぱり、アズサが聞いたのもそういう話なんだね」
「ああ。でも、分からない…なぜ、その条約を自分達のものにしたら、あんなものが現れるんだ?」
「あれはアリウスの持つ兵器とか、そういうのじゃないのか?」
「いや、少なくとも私はあんな物は知らない。
…私が居ない間に、何か手を打ったのか?」
「思えば、あのミサイルもおかしいです。
ヒナ委員長が言うには『対空防御システムも働かないようなミサイルはキヴォトスでも作れない』と…」
「…つまり、アリウスに第三者が手を貸していると?」
「ええ、その可能性は高いでしょうね。
…まあ、最もそれが誰なのかなんて知る由もないのですが…」
「その話、私も加えていただこう」
「「「「「!?」」」」」
「…お前」
異形。
本来、言葉を発するはずのない、いや、そもそもそんな機能など備えているはずのない木人形が、いつの間にか現れ言葉を発した。
先生は即座に立ち上がり、生徒達を自身の背に隠し、懐から―――――――
「やめておけ先生。私はそなたと争いに来たわけではない。
こんな場所で戦うのは、そなたとて本懐ではないだろう」
「………お前も、ゲマトリア、なのか?」
「然り。
何処かで出会ったが、あるいは知っているやも知れんが…今一度、名乗らせていただこう。
――――――――我が名はマエストロ。至高の芸術を探求する者」
「それで、一体何の話があるって?生徒達が怯えてるから、さっさと帰って欲しいんだけどね」
「―――――――――随分と嫌われているようだな、
…エデン条約について、お前達が知りたい情報を私は所有している」
「な…!お前、一体何を」
「アズサ。落ち着いて………それは、お前が何かしらアリウスに関わった、ってことでもあるんだろ?」
「その通り。
…アレは元々私の創り出した『作品』の1つであった。
だが、創り出しても行使することは愚か、顕現させる事すらままならぬ半完品…それを可能としているのはアリウスの存在…
いや、秤アツコのロイヤルブラッドと言ったほうが正しいか」
「アツコ?」
「…先生もアツコの姿を見た?顔が完全に隠れるマスクを付けているあの子だ。
…アリウスに居た頃から大切に扱われていた。それこそお姫様みたいに…」
「然り。たとえ他のアリウス生徒が私と『契約』を交わしたところであれ程に
あれはあのロイヤルブラッドの力があればこそだ」
「………」
その言葉に脳の血管がドクドクと脈を打った。
黒服の…ホシノの事もそうだ。こいつらは生徒の中の『力』にしか目を向けていない。
まるで、それだけのための素材とでも言うように。
「…気分を害したのなら謝罪しよう。
あの古聖堂の地下で、私と秤アツコは契約を交わした。
まあ、とある邪魔が入ったのだが…」
マエストロは自身の懐から1つ、何かを取り出す。
赤い…十字架のような、でも、十字架を名乗るには何かが足りていない。
「…ゲヘナの者達は見覚えがあるようだな。
当然だろう…これは
「近しい者?」
「…ゲヘナの地に住まうものでありながら、聖職者としての名を持つもの。
お前もよく知っているのではないか?先生」
「…シエル。
なら、それは…」
「…これは刀身を顕現させなければただの柄でしかない。
黒鍵…ユスティナ聖徒会が創り出した異端抹消の為の剣。
現代のキヴォトス人ならば剣を発する事すら叶わぬものを、彼の者は如何にして使用していたのか…
…話が逸れたな。一先ず、この剣は返しておこう。
…私が秤アツコと契約を交わそうとしたその時、その剣が頭上から幾十も降り注いだ」
「!?
でも、アツコは…」
「そう、秤アツコも、私も、その近くにいたアリウス生徒達も。
全員がこの通り無事だ
まあ、時間は取られたが…契約は無事成立し、ユスティナ聖徒会の複製達は顕現した。エデン条約の元に、という条件下ではあるがな」
「………そもそも、エデン条約がその複製の顕現になんの関係があるっていうんだ?
それはトリニティとゲヘナの和平条約だろ?」
「そう言えばアリウスも言っていましたね。
『元々我々が行使すべき権利』だと…」
「…そなたらはそもそも、アリウススクワッドと呼ばれる者達の
…アリウスはかつて多くの学園を統合しトリニティを成り立たせる『第一回公会議』においてまで反対の立場を取り続けた。
ゆえにこそ、彼女らは
…しかし、だ。これは裏を返せばアリウスもトリニティを名乗る資格があるということとなる。」
「えっ!?」
「ど、どうしてそうなるのよ!?だってアリウスは統合に反対したんでしょ!?」
「…ですが、統合するものとして彼女たちもトリニティになる可能性はあったはずです。
そして、今回エデン条約を結ぶための場所は…」
「然り。『第一回公会議』の舞台ともなった、通功の古聖堂。
今回の条約は、ある種ソレの再現でもあった。
…条約の内容はこうであったな。
『トリニティとゲヘナの間に紛争行為が起こった際、「エデン条約機構」がそこに介入し解決する』…
そこに、『「エデン条約機構」はアリウススクワッドが担う。』と書き連ねたのだ。」
「な…たったそれだけのことで、アリウスはあんなものを顕現できるようになったというのですか!?そんな…」
「だがそこにあった戒律は本物だ。
条約の戒律の権限がアリウススクワッドにある以上、ユスティナ聖徒会の複製は戒律の守護者たるあの者達を助ける。
たとえそれが、トリニティとゲヘナを討ち滅ぼすための兵力確保の名目であったとしてもな」
「……………」
「…機嫌を損ねたのならば済まない、先生。
だが、私は善人でもなければ、そなたのように何かを導くものでもない。
私はあくまで探求者。そこに求めるものや可能性があらば、手を伸ばさぬことはない。
…伝えるべきことは伝えた。後のことをどうするかは…諸君ら次第だ」
「…消えた」
「今思えば…あの巡航ミサイルすら計画のための道具に過ぎなかったんだ。
…サオリ達の目的は…兵力確保…それも、トリニティとゲヘナを滅ぼすなんて…」
「アズサちゃん…」
再び重苦しい沈黙が場を包む。
アリウスの経歴と目的。
そしてその場に立たされた、何も知らぬトリニティ生とゲヘナ生達。
…それを導くのは、私の役目のはずだ。
だが、どうやって?
何百年も積み重なってきたアリウスの恨みを、あれ程の兵力を用いるほどの執念を、私一人でどうこうできるのか?
「…失礼いたします。先生…おや、ゲヘナの皆様に、白州アズサ様も。ちょうど良かった」
「?ちょうど良かった、って…」
「ナギサ様が皆様にお話があるとのことでして…先生と、アズサ様と、それとゲヘナの風紀委員長のヒナ様…は、お休みのようですね」
「私が代わりにいきましょう。イオリ、チナツ。
ヒナ委員長の面倒見はよろしくお願いします」
「分かりました。それでは他の皆様はごゆるりと…」
「…よくぞいらしてくださいました、先生。
そして、アズサさん…と、ゲヘナ風紀委員行政官様」
「…ナギサ、一人だけ?」
「ええ、他の方にはとある
と、ナギサが笑みを溢す。
…その笑みは、何だか薄気味悪くて。
「…っ」
思わず一歩、足を引いた。
それに気がついたのか「おや、何かおかしなことでも言ってしまったのでしょうか…」とナギサが呟く。
そのどこか飄々とした、普段の彼女からは感じられない気味の悪さが何だか恐ろしく感じてしまう。
「…早速ですが、本題に入らせていただきますね?
…お三方とも、アリウススクワッドについてはもうご存知ですよね?」
「それは、我々風紀委員会の一人が重傷を負ったと知った上での発言ですか?」
「ええ、勿論存じ上げていますとも。『念の為』、というものです。
機嫌を損ねてしまったのなら、申し訳ありません」
「………
それで、ソレがどうしたのですか?」
「私共もまた一人、アリウスによって手痛い被害を受けた生徒が居ます…それも、生徒会に当たるティーパーティーの生徒が。
我々は同じものに虐げられた被害者…そこでです、改めて手を結びませんか?」
「…?」
「我々トリニティとゲヘナの戦力を集結させ、現在我々に害をなすアリウススクワッド…及びその拠点となる場所も暴き出し、彼女らを完全に討ち滅ぼしましょう」
「――――――――は?」
その声は誰のものだったのだろう。
私かも知れない。アコかもしれない。アズサかもしれない。
ただ、その一言の後。
「…な、何を言っているんです!?
あんな事のあった後でそんな」
そうアコがまくし立てた。しかしナギサは顔色一つ変えず
「あんな事があった後だからこそ、ですよ。
今こそがトリニティとゲヘナが手を結ぶに相応しいタイミングなのです。
両校の重役がアリウスの被害に合い、その上他の多くの者達にまでその手は伸ばされようとしている…
そんな悪党共を被害者であった両校が手を組み討つ。
しかも、その両校はちょうど和平のための条約を結ぶところだった。
…とても素敵な物語になるとは思いませんか?」
悪寒が走る。
本当に素晴らしいことのように笑顔で語るナギサは、つい先日までの彼女と同一人物なのか、と疑いすら抱いてしまう。
そんな自分たちを気にも止めようとせず、ナギサは「つきましては、ゲヘナ風紀委員会の皆様の戦力把握と、その指揮を取っていただく先生と戦略会議を…」と、話を進めようとする。
「ちょっと待ってほしい。
…それは、もう決まった話なの?」
そのナギサに待ったをかけるように問いかけるアズサ。
しかしナギサは…またしてもごく自然に笑顔を浮かべて、
「ええ。他トリニティの主要生徒達も多くが賛同して頂けましたよ。
…まあ、『滅ぼされるぐらいならゲヘナと手を結んだほうがマシ』という言い分が殆でしたが」
と語る。
それも、話の途中で苦笑いまで溢してみせて。
更に「ああ…でも、アズサさんは別段何もするつもりはありませんのでご安心を。もう立派なトリニティの生徒ですから」と続ける。
「…ただ、元アリウスという立場上、少し話していただきたいことや、監視の目をつけなくてはならなくなりそうですね…」
…何なんだ。
どうしてそんな風にして居られるんだ。
分からない。
いや、分かりたくないのか?
ダメだ、それすらも…
「ナギサ様。
…そのお話は、本気なのですか?」
後ろから声が聞こえた。
ハナコ、サクラコ、及びシスターフッドの関係者達が部屋に入ってくる。
「おや、ハナコさん。それにサクラコさんも。
…そう言えば、先程の会議にはご参加なさっていなかったのでしたね。
お伝えが遅れてしまい、申し訳ありません」
「その様な話をしにきたのではないです。
トリニティとゲヘナの連合軍でアリウスを壊滅させる?
本気で言っているのですか?」
「あら、ハナコさんは私がこの状況で冗談を言うような人間だと思っているということですか?
少し淋しいですね…」
「…嫌味を言う余裕もあるのですね。
にも関わらず、正気を疑うような提案は出来ると…」
「………ふーむ。困りましたね。
では一つお聞きしても?
一体私の提案のどこがそんなにおかしいのでしょうか?」
まるで自分は正常であるかのように、ごく当たり前のようにそう話す。
その上「お互いの身内を傷つけられ、その相手は自分たちまで傷つけようとしているのに…それを討つのはおかしいでしょうか?」と続けてみせる。
「し、しかし…その様な野蛮なやり方では…!」
「…野蛮?」
「…ッ!?」
ナギサの雰囲気が、サクラコの一言とともに豹変する。
先程までの余裕に溢れた、しかしその上でそこの見えない泥沼のような恐ろしさが消え、
代わりに…地獄の煮えたぎるマグマのような怒りを見せ。
ダンッ!と机を荒々しく叩きつけながら立ち上がり。
「何が野蛮ですか!!だったらアリウスの連中は何だと言うのです!!?
皆さんも見たのではないのですか!?巡航ミサイルによって破壊された都市、無尽蔵に湧き出る敵兵達!!あんな物を好き勝手に使役できる奴らのほうが余程野蛮ではないですか!!
そしてもう、その矛先がいつ我々にも向けられるのか分からないんですよ!!撃たれてからでは遅い…!!
何百年も前の古臭い復讐などに固執する下らない連中などに滅ぼされるなんて、そんな事あって良いはずがない…!もう我々に失態は許されないのですよ!!」
――――――――嵐のようにまくし立てたナギサは、フゥー、フゥーと肩で大きく息を整え…やがて、力尽きたように椅子にどすりと腰掛け項垂れた。
「…申し訳ありません、突然…汚らしい言葉まで…
……ですが…私も、…必死だということを分かってほしかったのです………」
…それ以上は、何も言えなかった。
私も、アコも、アズサも、ハナコも、サクラコも。
突然見せたナギサの豹変が、そしてその後の弱音が、あまりにも痛々しすぎて。
「…すみません。
しばらく…一人にさせてくださいませんか…後のことは、追って連絡しますので…」
「……………皆、行こう」
机に突っ伏しそう呟いたナギサに背を向け、その部屋を後にする。
…その際に聞こえた、嗚咽のような泣き声は、気の所為だと思いたかった。
「お、お帰りなさい、先生…その…」
「…ごめんヒフミ。今は…ちょっと…休みたい」
「あ、わ、分かりました…一応、皆さんにも伝えておきますね!」
「…うん。ごめん…本当なら、私が何とかしてあげないといけないのに…」
「…先生だって一人の人なんですから、そういう時があっても良いんじゃないでしょうか…私はそう思います。
…とりあえず、今日は私達もここで休むことにしたので…お休みなさい、先生」
「…うん。お休み」
――――――――ああ。
なんて、罪深い。
なんて、役立たず。
何を眠ろうとしているんだ。
大人なら、先生なら動かなきゃいけないんじゃないのか。
生徒にあんな物を抱え込ませて、苦渋の思いをさせて。
大切な人を失うかも知れない苦しみを味あわせて。
役立たず。役立たず。役立たず。
「――――――――うる、さい」
役立たず。
その上で疲れたから休むなんて、あまりにも愚かだ。
「うるさい、うるさい、うるさい――――――――
分かってる、分かってんだ、そんな事は――――――――!」
だったら何故何もしようとしない。
何故大人しく眠ろうとしている。
本当に役立たずになりたいのか。
「―――――――っ!」
誰に言われているのかもわからないようなその言葉に、奥歯がぎりぎりと軋む。
くそ、眠れない。
休むといったくせに、休める気配なんてない。
『うるさい、良いから眠れ。
話が進まないだろう』
え?
突然聞こえた聞き覚えのある声に、意識が引きずりこまれた。
「…あれ、ここは、ティーパーティーの…?どうして…?」
「…やあ。来たね、先生」
「君は…」
「私は百合園セイア。トリニティのティーパーティーの一人だ…それと、
「…もう一人?」
その視線の先。
とても見覚えのある少女が一人、椅子に腰掛け紅茶を啜っていた。
青いショートカットに紺色のロングコート、そして、首から下げているロザリオ。
「――――――――シエル?」
「…来たか、先生」
清川シエルが、そこに居た。
皆が苦しそうな顔になってます
可愛いね。