概ね本編通り。
「それで先生、…意気揚々と出てきたのは良いけど、これからどうするの?」
「まずはナギサと…それから風紀委員会と補習授業部の皆と作戦の確認と摺合せかな。一先ずは…」
「―――なさい!今どういう――――」
「そもそも―――が――」
………あれ。
おかしいですね。また誰かが言い争ってる声が聴こえてきますヨ?
気のせいだよね?
「…先生、念の為確認しておいたほうがいいんじゃない?『先生』としては」
「デスヨネ。
よし、じゃあちょっと寄り道。ヒナも付き合ってくれる?」
「うん。」
トリニティ総合学園の離れ、その一つの牢獄…にしてはいささか広く快適な空間。
その部屋の中で、トリニティの少女達が言い争っていた。
「退けと言ってるのが分からないの!?」
「これはナギサ様直々の命なのよ!?逆らってどうなるか分からないわけじゃないでしょう!!」
「………っ
そ、それでもこんなのダメ!言うこと聴いてくれないからこんなこと…バカな私でも駄目だってわかるのに!!」
「…コハルちゃん」
「コイツ、いい加減に…!」
「…ちょっと待って。この子、どこかで見たような…」
「え?ただの正実の一生徒でしょ?」
「いや、そうなんだけど…どこがもっと違うところで…」
「その子は下江コハル。補習授業部の大切な生徒だよ」
「…え、せ、先生!?それに、ゲヘナの風紀委員長!?」
「…せ、先生?」
コハルは聴こえてきた男性の声と、その姿に安堵を覚えた…直後に、彼の表情を見て思わず恐怖を覚えた。
「君たち、話を聞くにナギサからの命令でミカに何か頼んでたんだよね?
それなのに、どうして寄ってたかってコハルを責め立ててるのかな?」
先生はトリニティの少女達に問いかける。
この上ない
…まあ、全く持って隠せてなどいないのだが。
「そ、それは…」
「…ねえ、もう行きましょうよ。どのみちあれじゃ
「………」
「ひっ…!し、失礼しました…!」
「…ふう。ミカ、コハル、二人共大丈夫?」
「う、うん。私は頑丈だから…平気」
「…せ、せんせぇ…」
「コハル、ミカの事を庇ってたんでしょ?
よく頑張ったね。カッコよかったよ」
「う、うぅ…!」
(…これが、トリニティの現状なのね。
表向きだけを見れば、生徒間の争いもなく、トップもしっかりと動いている…ゲヘナよりもずっとマトモな場所だと思ってた、けど…)
「あはっ☆どうしたのゲヘナの風紀委員長ちゃん?
…トリニティって、思ったよりひどいとか考えてる?」
「……………まあ、そうね」
「ふーん。正直じゃん。
でもまあ…恥も外聞もなく暴れられるそっちの方が、寧ろ清々しいかも?」
「…意外ね、貴女大のゲヘナ嫌いって聞いてたけど」
「うん、嫌いだよ?やることなすこと目茶苦茶だし馬鹿みたいだし、気持ち悪くて本当に嫌い。
…でも、皆真っ直ぐなのは、羨ましいかも。
あーあ。私もあなた達みたいに、バカ正直に言ってやってればよかったのかな…なーんて」
「…ミカ」
「冗談だよ先生。今更そんなこと言ったってしょうがないもんね?
…それで、この後どうするつもりなの?」
「…うん、その為には皆に集まってもらわないとね…ヒナ、コハル、行こう」
――――――朝日が登る。
罪人にもそれを裁くものにも平等に、夜の帳は開けるらしい。
光が差し込むとともに、暗がりで薄暗く光っていた
『ウオオオオオオオン――――――――』
「ひええ…大きいですねぇ…とっても不気味ですねぇ…アレが例の…」
「………『アンブロジウス』。
あの人形の言っていた『戦術兵器』か。しかし、あれはもはや…」
「ただの化け物、だね。
しかし、
(スッ、ススッ―――)
「『太古の教義』を元にして作られた失敗作…?
あの人形、失敗したってこと?」
(フルフル―――――
スッ、ススッ、スーッ、スッ…)
「難しいことはよく分からないけど…失敗作ではあっても、戦術兵器としては申し分ない、ってこと?」
(コクコク)
「なら良いけど。
…リーダー、そろそろ動いた方がいい。
いくら
「…昨日の負傷者の治療もほぼ完了している。
複製も申し分なく動く…待機部隊に連絡を。
トリニティへの進撃を開始する」
サオリの言葉に呼応するように、次々とユスティナ聖徒会の複製達が顕現し、進軍する。
そして、それに合わせアリウススクワッドも…
「…あ、そういえば…」
「?どうしたの、ヒヨリ」
「えっ、ええと…アズサちゃん、結局来ませんでしたねぇ、と、思って…」
「………先程念の為建物も調べて回った。
負傷者が襲われたという報告もない。
――――――――ここまで来ると、寧ろ哀れとすら感じるな、アズサ」
「………」
「まあいい。
あえてその腑抜けたやり方を貫き通すというなら…こちらも正面から捻じ伏せるまでの話だ。
―――行くぞ」
アリウススクワッド、進撃開始。
目標、トリニティ総合学園。
――――――――両者が再び相まみえたのは、この物語の全てが始まった場所。
それは単なる偶然なのか、それともある種の運命なのか。
『通功の古聖堂』、その前に、トリニティ・ゲヘナ連合軍とアリウススクワッドは相対した。
「…まさかトリニティに辿り着く前に、ここで相対することになろうとはな。
それとも…これもお前の仕組んだことか?先生」
「―――さあね。
でも、そんな事君達には大した問題にならないんだろ?」
「よく分かっているようだな。
見たところ、トリニティの正義実現委員会やシスターフッド…ゲヘナは風紀委員会か。大した数だ、が…数の優位など
「………サオリ」
「アズサか…この際だ。一つ聞かせろ
…昨晩のうちに我々を奇襲すれば、半壊させることも…その気になれば完全壊滅すら叶ったはずだ。何故そうしなかった?」
「………」
「…答える気力もないか。そこまで腑抜けたとはな。
まあいい…ならば、ここでお前も殺すだけだ
どれほど抗おうと…絶対な力には敵わない。
全ては虚しいという現実を、改めて刻みつけてやる」
「…ッ」
冷や汗が頬を、首を伝って落ちる。
本当に作戦は上手くいくのか。そもそも上手くいったところで、私がサオリに勝てるのか。
信じると決めたはずなのに、そんな考えが、震えが止まらない。
やはり、私は…
「アズサちゃん」
「…ヒフミ?コハルに、ハナコも…どうして」
「一緒に戦うためです。アズサちゃん一人で前に立つなんて…やっぱり納得できませんから」
「………成る程、そいつがお前にくだらない理想や叶いもしない夢を吹き込んだ連中か、アズサ。
…くだらん。お前達のような一般生徒と何ら変わらない者が出てきて何になる?」
「…確かに、私は所詮普通のトリニティのいち生徒に過ぎません。
アズサちゃんとは産まれた世界も、過ごしてきた日々も、何もかもかけ離れていました。
あの時の…私達を無理矢理退けてでも、アリウスの元に向かおうとしていたアズサちゃんも、本当のアズサちゃんなんだと理解もできました」
「…何だと?」
「私達とは本当は何もかも違っていて、本来なら隣りに居るべきではない…そう考えてるんですよね。
…でも!!!
アズサちゃんもアリウスの皆さんも、とても大きな勘違いをしています!!」
「「…?」」
「…」
「………」
私とコハルの目があう。
先生は何故か苦笑いを浮かべている。
「ヒフミ…?」
「アズサちゃん、そしてアリウスの皆さんにも私の本当の姿をお教えします!
私の正体、それは…!」
ヒフミが突然紙袋を被った。
数字の『5』がマジックで書かれた…え?
「『覆面水着団』のリーダー、ファウストです!!」
「…?」
「…え?」
「…」
「…」
「…!?」
「…」
「…」
私だけでなく、コハルや…アリウススクワッドの四人ですら頭に疑問符を浮かべている。
「見てください、この恐ろしさ!アズサちゃんと並んだって、全然見劣りしないほど不気味でしょう!こっちのほうが恐ろしくて怖いと言う人だって居るはずです!」
「…ひ、ヒフミ…?一体何を―――」
「だからっ!!
だから私たちは、違う世界に居るなんてことはありません!
同じです!隣にだって居られます!
だから世界が違うなんて…一緒に居るべきじゃないなんて、そんな事言わせません!!」
「…ヒフミ…
でも、この場で私のためにそんな嘘を言ったって…」
「誰が嘘だって!?」
「!?」
「こ、今度は何ぃ!?」
思わずコハルが声を上げる。
そして、どこかに隠れていたのか、赤、青、緑、ピンクの色とりどりな目出し帽を被った生徒が現れた。
「いや〜何だか大事なところみたいだねぇ?」
「あの覆面、まさか…!?」
「…来てくれたんだね、みんな」
「目には目を、歯には歯を、無慈悲に、孤高に、我が道のごとく魔境を行く……」
「ん、それが私達のモットー」
「普段はアイドルとして活動してますが、夜になると悪人を倒す副業をしてるグループなんです♧」
「別にそれ私達のモットーじゃないから!あと変な設定付けないで!!」
『覆面水着団のリーダーであるファウストさんのご命令で、集合しました!』
「………!?」
「え、えぇ…?」
「実在してたんですね…」
「………あいつらは…」
「詳細なデータは無し。少なくとも、トリニティでもゲヘナでもない第3勢力なのは確か。
…まあ、
「う、噂では聞いていましたが…本当に居たんですねぇ…覆面水着団…」
「………」
「……あと、あいつらヘラヘラしてるけど注意はしたほうが良さそう。少なくとも、油断してると痛い目にあう」
「なーにうちのリーダーを泣かせようとしてるのかな〜?ねぇ、そこの君たち?
どこの誰なのか知らないけど、知らないよ?うちのファウストさん、怒ると怖いんだから」
「何せファウストちゃんは最終的に、カイザーコーポレーションの幹部を倒しちゃったようなものなんですよ♧」
「ブラックマーケットの銀行だって襲える。朝飯前に」
「それにこの間なんて、自分で指揮してカイザーPMCを砲撃で吹っ飛ばしたんだからね!」
「そうだよ、恐ろしいんだよ〜?生きて動く災いって言っても過言じゃないし、暗黒街を支配するボスみたいなもんなんだから」
「うん、それがファウスト」
「「「「ファウスト!ファウスト!!ファウスト!!!」」」」
「………」
「………」
「………」
「………………」
…盛り上がる覆面水着団とは裏腹に、ファウスト…ヒフミが被っていた紙袋を取った。
…心做しか、顔が赤い。
「ああっ、ファウストちゃんが紙袋を取ってしまいました!?」
「あ〜…流石に恥ずかしかったのかなー…?」
「せ、せっかく乗ってあげたのに!」
「私は何も恥ずかしくないけど」
「シロコ先輩も、堂々としてないで早く取って!」
「………ん」
「え、ええと…とにかくですね。
アビドス廃校対策委員会、今度はヒフミさんを助けに来ました!」
「…ありがとうございます。対策委員会の皆さん」
「…トリニティの主要戦力、正義実現委員会、ティーパーティー、ゲヘナからは風紀委員会…そして、アビドスの対策委員会か」
「それがどうした。どれほどの実力者かは知らないが、頭数が増えたところで無尽蔵に増殖する
むしろ好都合だ。この場の連中全員に思い知らせてやる。
この世界の真実…殺意と憎しみに満ちたこの世界で、あらゆる努力は無駄なのだと。
足掻こうと何の意味もない、全ては無駄なのだということを!!」
「………」
「………」
ヒフミが一歩、前に踏み出す。
アズサの、コハルの、ハナコの、先生の、その場に集った生徒の先頭に立ち…アリウスに向かい合った。
「…アズサちゃん。
私はどうしても、あの人たちに言いたいことがあります。
殺意ですとか、憎しみですとか、それがこの世界の真実ですとか…それを強要して、全ては虚しいのだと言い続けていましたが…」
それでも、私は…!
私は、アズサちゃんが人殺しになるのは嫌です………そんな暗くて憂鬱なお話、私は嫌なんです。
それが真実だって、この世界の本質だって言われても…私は好きじゃないんです!
私には、好きなものがあります!
平凡で、大した個性もない私ですが……自分な好きなものについては、誰にも譲れません!
友情で苦難を乗り越え、努力がきちんと報われて、辛いことは慰めて、友達と慰め合って…!
苦しいことがあっても…誰もが最後は、笑顔になれるような!
そんなハッピーエンドが、私は好きなんです!!
誰がなんと言おうとも、何度でも言い続けます!
私たちの描くお話は、私たちが決めるんです!
終わりになんてさせません、まだまだ続けていくんです!
私たちの物語…
私たちの、