「うん、そっちの書類はもう終わっているから返しておいてくれ」
「…」
「うん?これは温泉開発部か。書類をわざわざ提出するとは珍しいな。
…まあ読む価値も無いのだが」ボッ
「………」
「ふむ。どれも別段大した内容でもないか…これは承認、これはボツ。これは…」
「……………あの、シエルさん」
「ん?何だ横乳駄犬女。フリスビーで遊んでほしいのか?
それともシャボン玉とか伸びるロープか?」
「誰が駄犬ですか!!
…そうではなくて、なぜヒナ委員長が居るはずの場所に貴方が居るのかって事ですよ」
ここで読者の皆様にこんにちは。
空崎ヒナの幼馴染みにしてゲヘナ学園中等部1年の清川シエルだ。
なぜ私が
「私がヒナの代理としてやって来ているからに決まっている。
本人の許可も貰っているから心配しないでくれよ、わんわん」
「人を犬扱いするのそんなに楽しいですかね?
…前々から思っていたのですが、あなた本当に中学1年生ですか?年齢詐称でもしているのでは?」
「私はれっきとした中学1年生だ。無論、そんじょそこらの連中より賢く強いという意味では差があるがね。
書類と経歴を見ればすぐに分かることだろうに、その小さな脳ではそこまで思考が回らないのか?」
「………………………」
「失礼…げっ、シエル」
「やあ足舐め女。人を見るなり『げっ』とは酷いな」
「そのあだ名だって十分酷いだろ!?」
と、入ってきてそうそうキャンキャン騒いでいるこの銀髪女は銀鏡イオリ。風紀委員会の一員だ。
ブルアカに詳しい先生も、そうではない先生も、とりあえずこの女の足を舐める事は覚えていることだろう。
まあ案の定というべきかこの女も私のことを嫌っている。
全く持って心当たりはない。
ちょっと落とし穴ドッキリをしてその様子をSNSに上げたりやべー内容の雑誌を彼女に向けて送ったりしたが、断じて心当たりはない。
「…というか、何で中等部のお前がここに居るんだよ。ヒナちゃ…委員長は?」
「サラッとちゃん付けで呼ぼうとしましたね。
…ヒナ委員長はお休みだそうです。あくまでこっちの性悪娘から聞いただけですけど」
「ふーん。…まあ委員長も普段から働き詰めだし、そういう意味じゃちょっとした休暇みたいなもんかな。
で、シエルはその代理ってこと?」
「まあそういうことだ。こっちの駄犬と違って物分りが良くて助かるよ」
「…………………………」
「…………………………」
「し、失礼します…あれ?シエルさん」
「やあチナツ。どうしたんだ?そんなに慌てて」
火宮チナツ。
風紀委員会どころかゲヘナの中でもヒナと同じくかなりまともな部類に入る珍しい生徒だ。
ブルアカの道に踏み込んだ先生なら誰しも一度は戦闘を共にする所謂
「あ、いやその…ヒナ委員長は…」
「私が代理だ」
「え?」
「「………………」」
「で、何があったのかね?」
「…えっと、万魔殿の方々が…」
「失礼するぞ!
…ん?おい、ヒナの奴はどこだ?」
「やあ
…今日だけで何度この下りを話をしたか分からないな」
突然入ってきたこの銀髪女は羽沼マコト。
このゲヘナにおける生徒会
一体どれほどの愚行…功績を重ねたのか、はたまた金を積み上げたのかは知らないが、こんな女がこの学園のトップとは全く持ってこの世はどうかしていると思わざるを得ない。
「…私も同意ですよ、シエルさん」
「ありがとうイロハ。他の連中も色々と話にならないが、こっちの面々も頭が固いから話の通じるやつは助かるよ」
「サラッとこの場の全員をディスりましたね」
「何のことでしょう?
というか、私も正直早く帰りたいのですが…」
この本を片手に面倒くさそうな態度を隠そうともしないモコモコ女は棗イロハ。
一部の戦闘では人権扱いされ、虎丸くんを乗りこなす彼女に助けられた先生もそれなりに居るのではないだろうか。
…まあ私は彼女をついぞ一度として使うことはなかったのだが。
手に入れてないし。
「それで、わざわざ万魔殿の方々がなんの御用かな?
イブキ殿の遊び相手なら便利屋68にでも頼んでほしいのだが」
「サラッと便利屋に押し付けようとしてるし…」
「キキキッ…それはそれとして頼むとしても、そんな些末な用だけで来たのではない」
「そうか。そのゴム毬のように軽い腰も、少しは責任感が存在しているというわけだ」
((うわあ…))
「フフッ、珍しく気が合いますねシエルさん。
普段ならどちらも本当に迷惑極まりないですが今回ばかりはありがたいです」
(ちょっとシエルさん!そんなことを言っては駄目でしょう!?)
「…あら。つい思ったことと言うことがあべこべに…」
「「「「…………」」」」
「それはそれとして一つ聞きたいのだが、肝心のイブキ殿が居ないぞ?」
「ハッ、何を言っている?
そんなチャチな嘘で誤魔化そうなど…なぁっ!?
い、居ない!? 本当にイブキが居ないぞ!?どこだ!?」
「落ち着いてくださいマコト先輩。
…イブキなら『忘れ物をした』とかで本部に戻っていましたよ」
「何ィっ!?なぜそれを早く言わないんだ!待ってろイブキ!今戻る!!」
「……………はぁ。
失礼しました」
「…やれやれ、はた迷惑な嵐は去ったか。
さて、私も業務がほぼ片付いたし、昼飯でも食べるとしよう」
「ちょっ…今の話聞いてなかったのか!?」
「そうですよ!あの様子だと所詮一旦帰っただけ、またすぐに戻ってくるんじゃ…」
「ああ。それなら心配はいらない。
…連中はもう
「…はい?」
「そもそも不自然だと思わないか?
あれだけ普段から無駄に結束力の強いあの烏合の衆が途中で『忘れ物をしたから帰る』など。
それも普段からまるで宝同然に祀り上げられているあのイブキが先んじて帰って、イロハが平然としていたこともだ」
「………まさか、とは思いますが。あなた…」
「当然、私の仕込みだ。
万魔殿の連中がやって来ると聞きつけたときに、イブキに『トリニティで話題の限定プリンを1ダースプレゼントするから言うこと聞いて』と言っておいた。
今頃そのプリンをたらふく食べて昼寝していることだろう」
「………それで、解決したのか?
ソレはソレでって戻ってくるんじゃ…」
「普段からあの高飛車女がイブキをどれだけ護っているかは周知の事実だろう?
そんな女がイブキの安眠を妨害すると思うか?」
「「「………」」」
「そういうことだ。では私は昼食に参ろう…
…にしてもこの程度のトラブルも何とかできないでヒナの代理ヅラとは。横乳姉ちゃんは不甲斐ないなあ。
脇と背中と腰まで丸出しにしてから出直すがいい。
はっはっはっは、あーっはっはっは!!」シュバッ
「……………(怒)」
「「……………(呆)」」
「そういうわけだからフウカ先輩、いつものをくれ」
「何が『そういうわけ』なの!?さっぱり分からないんですけど!!」
こちらの特徴的な二本角に髪をかけたツインテールのエプロン姿が特徴的なお方は愛清フウカ先輩。
私が数少なく尊敬するゲヘナの先輩の一人だ。
彼女はこのゲヘナ学園における給食を一手に引き受けており、その苦労は計り知れないのだが仕方がない。
何と言っても彼女の作る料理は絶品なのだからな。
何を隠そう私も虜の一人だ。
「…まあ、とりあえず普通に食べてくれるのはありがたいけど…はい。
いつものスープカレーセット辛さ5倍ね」
「ありがとう先輩。では、いただきます…
…ムッ!ぬっ、く、はぁ…」
辛い。だがこの辛さが私の心を昂らせる…
「フゥ、ムゥ、はっ、ふ…」
(見てるだけでこっちまで辛くなってくるわ…)
「ご馳走さまでした。
ふう…今日も絶品だったよ、先輩」
「お粗末様でした。
…毎度のことながら、あなた本当に好きね、この激辛カレー」
「別に毎回激辛を好んでいるわけではないぞ?
この間の鶏肉とブロッコリーのクリームパスタも素晴らしかった」
「それはどうも。
…で、いつものってことはこれもいるんでしょ?ハイ、チョコレートサンデー」
「ふふ…よく分かってくれてるな先輩。そういうところも大好きだ」
「はいはいどうも。というか、わざわざ激辛食べたあとにチョコサンデーって…」
「後で味わうからこその悦びもあるんだぞ?
まあいい。いただきま」
ドッゴオオオオオオン!!!
「「………………」」
「お邪魔しま〜〜〜す☆」
「失礼いたしますわ、フウカさん…あら?シエルさんではないですか」
「何してるの~?あ、美味しいもの食べてた!?そうだよね?とってもいい匂い!」
「ていうか辛い匂い!?は、鼻の奥がジンジンする…!」
「……………フウカ先輩。済まない。
少し、散らかすぞ」
「……………給食設備に問題がなければもうこの際どうでもいいわ…好きにしなさい」
「……………………承知した」チャキ
「…えっ」
「ど、どうしたのシエル…そんな怖い顔してサーベルなんか構えて…」
「悪いがこれはサーベルではない。それと…
今日はもうお前たちと口を聞くつもりはない」
数分後、何故か万魔殿にすごい勢いで美食研究会が突っ込んできて建物が半壊することになったのだが、それはまた別のお話…
清川シエルのゲヘナ学園生徒達の評価
ヒナ→幼馴染み。大好き
アコ→駄犬。大人しく首輪つけて先生にワンワンしてろ。
イオリ→いじり甲斐があるので好き
チナツ→それなりに役に立ってくれるから好き
マコト→死ね
イロハ→まあ都合よく動いてくれるからそれなりに好き
イブキ→可愛いね。
ハルナ→倫理観をなんとかしろ。話はそれからだ
ジュンコ→激辛団子ならあるが…食うか?
アカリ→食事の話は先生にしろ
イズミ→何だお前(の舌)
アル→おもしれーなお前
ムツキ→天敵。
カヨコ→言われたことやってくれるから好き
ハルカ→ヒエッ…
フウカ先輩→しゅきぃ〜♥
ジュリ→ちょっ…やめろ!私はフウカ先輩の食事を食べに来たんだ…!やめろ!そのフライパンを私に近づけるなと言ってるんだ!やめろォ!!
メグ→興味なし。
セナ→いつもお世話になっております(薬の拝借的な意味で)