キリエ・エレイソン(お気に入り登録&UA&高評価&誤字報告&感想ありがとうございます)
最終編第四話です。
頑張りました。
「はぁ、はぁ、はぁ…!!」
アビドスと呼ばれる地域の、とある砂漠。
とあるオートマタが、何かから逃げている。
呼吸器官などとうに捨てたはずなのに、まるで人間のように怯え荒れ乱れた呼吸音を立てながらひたすらに走る。
事の始まりは彼が発掘作業中に見つけたとあるものだった。
真っ白く、眼がなく、ウナギの頭部のような頭をしたそれ。
それが突然動き出し、自分の隣にいた同僚のオートマタを喰った。
比喩表現ではなく、文字通り喰ったのだ。
バリバリと装甲を歯で噛み砕き。
メリメリと腕や脚を圧し折り。
パーツの欠片一つ残さず喰らい尽くした。
それを見た彼は逃げた。
生存本能のままに、他者に危険を告げることもなく逃げ出した。
それから5秒と経たずに自分の後方から悲鳴が聞こえてきた。
「は、はひ、ひひひひひひひひ!
夢だあ、夢だこれ、夢に決まってる…!!」
とうとう精神が
ギャリギャリ。
「ひいぃっ!!?」
ガギ、グギギ、ギャリギャリと、獣のような歯軋りのような鳴き声を上げながら、
「わあああああああああああ!!」
オートマタは近くに転がっていたSMGを夢中で拾い上げ、白いそれらへ向けて発砲。弾丸が白い身躯を抉り、打ち抜き、赤い飛沫を撒き散らす。
数秒後、弾丸を打ち尽くし。
白いそれらは赤い水たまりの中に仰向けで倒れ込んでいた。
「…は、はあ、はあは、はは!
や、やった。やった!!あははははは!!なんだよこいつら、全然たいしたことないじゃない、か…」
喜びは瞬きの間に消え失せた。
倒れていた白いそれらは何事もなかったように起き上がり。
流れていた鮮血も、空いていた風穴も、『そんなものははじめから無かった』と言わんばかりに消えていた。
彼は笑った。もうそれしかできることはなかった。
そして、狂笑は悲鳴と破壊音に変わった。
発掘現場は静寂に包まれた。
機械による発掘音も、それらを動かすオートマタたちの声も、怪物の叫び声も、その場から全てがなくなった。
ピクン、と怪物の一匹が反応を見せる。
他のものも同じような反応を見せ、そしてゆっくりと動き出し、密集し始めた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
連邦生徒会のとある一室。
この場もまた、ただならぬ緊張感と静寂に包まれていた。
『清川シエルが先生を連れ去った』というニュースが速報され、直後に連絡網が遮断されてから数分。
『二人を連れてくる』と言って聖園ミカが飛び出してから何かが変わることはなく、あいも変わらず静まり返っていた。
「…おい、代行。一体いつまで我々をここに縛り付けておくつもりだ?この状況を保ち続けることに意味はあるのか?」
「…何者かに情報網は遮断され、先生も清川シエルさんも、その上聖園ミカさんも現在行方知れずの状況です。
ここで皆さんにこの場を離れられるのは、かえって混乱を招くことに繋がりかねないかと」
「フン、言い訳にしても三流だな。
そもそも先生の存在の重要性はお前たち連邦生徒会が最も理解すべきところだろう?
ならば寧ろ血眼になってでも捜索を行うべきではないのか?」
「ですから、それは…」
「全く何なんだ!せっかくおいらが自ら出向いてやったというのに、カムラッドが攫われただの出迎えのプリンもないなど…!
もういい!おいらは帰らせてもらうぞ!」
「な…」
「ま、待ってください、リン先輩の話を…」
「そもそもおいらは『
「…」
奥歯同士が擦れ合い口の中でぎり、と音を立てた。
こんなにも、私は信用されないものなのか。もしここにいたのが先生だったのなら、あるいは
そんな歯がゆさにリンは周りに気づかれぬように歯を食いしばる。
「チェリノ、あと皆、ちょっと待ってくれるかな」
「えっ…?か、カムラッド!!?」
「やっほー皆。ちゃんと連れてきたよ☆」
「………」
「目論見が外れて残念でしたね、マコト先輩」
「フン、なんの話だ?」
「…とりあえず、詳しい経緯を話したほうが良いかな?」
「お願いします。
…事態が事態なだけに、全員の納得を得られるかどうかは分かりませんが」
「…とりあえず。リンちゃん、プロジェクターでこの映像を再生してもらえるかな?」
「…? 分かりました」
リンは手渡された端末をプロジェクターに接続し、指定された録画映像を再生した。
映された映像には…
「…ヴァルキューレの警官が撃たれている映像、ですか?」
「うん。状況を説明すると撃ったのはシエルで、この後に私は連れ去られた…ってことになったのかな」
「なった…ということは先生は誘拐されたわけでは無いのですね」
「………そうだね」
「?」
若干苦笑いを浮かべながらも肯定する先生。その後ろでミカも同じようにばつのわるい笑みを浮かべたが、状況説明を続けた。
「それで…ここを見てほしいんだけどね。
ヴァルキューレの子たちが乗ってきたヘリなんだけど…」
「…戦術輸送ヘリ、ですか、これは」
「そう。でもおかしいと思わない?
ヴァルキューレは財政難で弾丸を補充するのも一苦労な筈なんだ。…いくら私の護衛のためだからってこんな事簡単にできると思う?」
「「「………」」」
「で、その違和感を決定づける証拠がこの映像の中に更に隠されてたの。
だよね、先生?」
「うん。…ちょっと、映像を進めるね」
再び映像が再生された。
撃たれたヴァルキューレ生徒が手元を押さえ動転している様子が映り…そこで映像を停止させた。
「…これが“証拠”なのですか?一体どこが…」
「…ここと、ここだね」
先生が指したのはヴァルキューレ生徒の手、そして暗がりになっていてはっきりと確認できない戦術輸送ヘリの内部だった。
ヴァルキューレ生徒の手元とヘリ内部を映した部分を拡大し…
「えっと、これをこうして…」
「…!これは…!」
ヴァルキューレ生徒の手には風穴が空き、そこからは血ではなく火花が散っていた。そして明度を調節したヘリの内部には…
「カイザーの、PMC…!?」
「そう。私もシエルにこの映像を見せてもらってようやく分かったんどけどね。
ヴァルキューレに変装したカイザーの連中が、私を拉致しようとした。…ってことになるんだと思う」
「ちょ、ちょっと待って!?じゃあヴァルキューレにはカイザーと通じてる奴がいるってことに…」
「…流石に、みんなが皆カイザーと
「………随分と穏やかではない会話ね」
「アオイ…?」
「…本日、未だに姿を見せない防衛室長。SRTの埋め合わせをカイザーのPMCで埋め合わせようとした、無記名の書類。
そして、先生が誘拐されかけた事実。…はじめはリン先輩、あなたの計画だと思っていたけど。
…カヤ防衛室長は、カイザーと癒着していた疑惑が生じる」
「「「………」」」
「…それに関しては、後で話そう。今はシエルの誤解を解くことと、遮断された情報網を回復させることが先決だよ」
「ってなると…サンクトゥムタワーに行くってこと?」
「D.U.中の情報網を遮断させるとなると、そこを掌握するぐらいしか…しかし、この状況を見ると…」
「恐らく、いえ、ほぼ確実にサンクトゥムタワーはカイザーの支配権にあると考えていいでしょう。
そして、それにつながるシャーレの建物もまた…」
「PMCたちが制圧している可能性が高いわね。
まあ…ほぼ無人の状態になったとあれば乗っ取らない手は無いでしょうけど」
「…何にせよ、シャーレを奪還するのが最優先事項なわけだね。
それについては…」
「…さっきから聞いていれば、何をいちいち迷っているのだ!」
「ん?…チェリノ?」
「カムラッドの本来いるべき場所が、そこにいるべきでは無い連中に乗っ取られているということだろう!
…つまり、これはクーデターだ!ならばカムラッドはそれを鎮圧して当然だ!こんな簡単なことも分からないのか!?」
「「「「「………」」」」」
「…うん、そうだよね。
ありがとうチェリノ!」
「…んん?今のは感謝されるようなことなのか?
まあ、悪い気分ではないな!」
こうして先生らは、この状況を覆すために動き始めた。
だが、彼らはまだ知らない。
「制圧部隊!応答しろ!!
クソッ、一体何が起こっているのだ…!?」
「―――――その連絡は無意味よ」
「…!? 誰だ!」
「今ごろ…皆
この状況は…いや、物語はとうの昔に歪み、覆され、形を変え。
全くの別物に変容していることを。
予告
「物語は疾うの昔に歪みきっていたのだ、先生よ」
「ビナーから更に謎の反応が!」
「それだけじゃない、これは…」
「何故、アレがこの世界に…!?」
「世界は一つになる。希望も恐怖も無い、等しく一つにね」
「畜生、殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる!!!」
「やだ…もう嫌だッ!!!」
「他人だから何だって言うんだ!!」
「前方から巨大な熱源反応!」「そんな生易しいものではありませんよこれは!!」
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
※ほぼ拾われない可能性の高い嘘予告です。