キリエ・エレイソン(お気に入り登録&UA&高評価&誤字報告&感想ありがとうございます)
この更新にお気づきになられた皆様は『愉悦部!?消されたんじゃ…』や『何やってんだお前ェっ!!』と思われていることかと思われます。
なので、こちらをご覧になっていただけますとありがたいです。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=320231&uid=301779
今回の話はイベント『陽ひらく彼女たちの小夜曲』のお話となっております。
月光に舞う愛のビッグバンド プロローグ
2月、もうじき日付の桁が一桁から二桁に変わろうという頃。
世間では俗に言うバレンタインデーが近づいていることもあり、浮足立つものがチラホラと見え始めている。
如何にゲヘナといえど、そういうイベントを楽しむものは少なくないらしい。…まあ、私こと清川シエルにはとても無縁な話だが。
とはいえ何もしないというのも退屈だ。チョコレート…を作るのは面倒だ、やはりカレーを…そうだ、ありきたりではあるがカレーにチョコレートを隠し味としていれるものがあった筈だ。
ならばそれを…
ジリリリリリリン!
…む?連絡か?
これは…タマキからか。
「もしもし?」
『おう
万魔殿の議事堂の前で温泉開発部が暴れてんだと』
「無視しておけ。
『ほォ、よくわかってんじゃねェか。
とはいえ、仮にも治安維持組織として売ってる
「知ったことか。私の救うべき対象のリストにあの女は入っていない。イブキとイロハその他なら話は別だがな。
さて、私はこれからバレンタインに備えてカレーを作らなければな。もう連絡は」
『ヒナ委員長も駆けつけてるみたいだぜ?』
「総員出撃用意!!!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
というわけで、埋葬機関総員(ナビゲーターのタマキを除く)で万魔殿の議事堂までやって来たのだが。
「ひ、ひ、ひえええぇっ!!!」
「泣いちゃった!!!」
温泉開発部が部長、
…どうやらヒナの姿を見てああなっているらしい。
「…! シエル!あなたも来たのね」
「あ、ああ…その、とりあえず応戦すれば良いのか?」
「? それ以外に何かあるの?」
「……………いや、その。何でもない」
まあ、怒りの矛先を向けられるのは温泉開発部の自業自得ですし。どこぞの小さくてかわいいやつみたいになっているところを悪いが、容赦なく追撃させてもらうぞ!!
「うっわわ〜…やっぱりダメかぁ!風紀委員会とヒナ委員長はともかく、埋葬機関も
「ど、どうしましょう!?」
「うーん、部長もこんなんで大変だし…うん、これは無理だね!みんな撤退!逃げるよ〜!三十分後にアジトに集合!」
という
「…アコ、シエル。追いかけるよ」
「はい!委員長!」
「了解だ。タマキ、温泉開発部のアジトを…」
「ちょっと待ちたまえええ!!」
「な、何ですかマコト議長!?」
「周りをよく見ろっ!!
お前たちが何をやらかしたのか…!!」
…議事堂は見るも無惨、壊滅的…というより完全に壊れ崩れてしまっている。私たちが今立っている駐車場も全壊こそしていないものの、あちこち大穴が空いたりコンクリートが吹き飛んだりと散々な様相だ。
…だが。
「それがどうかしたんですか?」
「どうかした、だと…!?
お前たち風紀委員会…と、埋葬機関が暴れ回ってくれたせいで、竣工式すらできずに壊れてしまったんだぞ!
どう責任を取るつもりだ!!」
…頭が痛い。そもそも指示を無視してこの場で開発作業を始めたのは温泉開発部の独断だし、知らなかったとは言えそんな連中に依頼をしたのは他ならぬマコトだろう。
我々が止めなければむしろ被害は拡大する一方だったであろうに。
「てゆーか、責任ならむしろマコト議長が取るべきよねぇ?」
「そーそー。今やゲヘナ領外ですらテロリストとして名高い温泉開発部によりによって依頼するとか…ブフォw世間知らずにも程があるでござるよwww引きこもり乙www」
と、ノエルとアマロのヒソヒソ話が私の言いたいことを代弁してくれた。…声のボリュームがどう考えてもヒソヒソ話の音量出ないことは内緒だ。
「それで?」
「「「え?」」」
「それはもう終わったことだろう!」
「「「……うわぁ。」」」
「スゥーッ、フゥーッ……」
ああダメだこれは。思わずため息を我慢できなかった。
さっきまであんなにノリノリで煽っていたノエルもアマロも先生と一緒にドン引きしている。
「とにかく
まったく、せっかくシャーレの先生も立ち会うはずだったのにな!」
…あ、そういえばしれっと居たな、先生。
あまりにも自然にその場に居たのでスルーしてしまっていた。
「こうなった以上は責任を取ってもらうぞ…風紀委員会!
いや!風紀委員長空崎ヒナ!…並び、埋葬機関!」
「我々だけは全員か?」
「当然だ!私もこの目で見ていたが、好き放題暴れていたのはどちらかと言えばお前たちの方だろう!そしてそんな連中に好き勝手させていたのはリーダーであるお前の責任だ、空崎ヒナ!
組織のトップとして責任を取るのは当然のことだ!」
……コイツは自分を客観視するとか、そういうことが出来んのか?『組織のトップとしての責任』などと偉そうにほざいているが、それをたった今放り出して責任転嫁しているのは誰なのか。
「マコト、いくら何でもそれは…」
「分かった。それで、あなたは私にどうしてほしいの?」
「委員長!?」「ヒナ…?」
先生の窘めるような一言を言い終わる前に、ヒナが答えた。
その答えにアコも先生も驚きを隠せていない。
…まあ、マコトが“先生”という言葉を出した辺りから薄々こうなるとは思ったのだがな。
とはいえ当のマコトもさすがに予想外だったようで、「こうもすんなり行くとは…」と不思議がっている。
改めてどうしてほしいのか聞かれていても、困ったように唸っているだけだ。
「…ただし。責任を取るのは私だけにして。
シエル達は関係ない」
「む?それは…」
「『組織のトップとして責任を取る』んでしょう?
だったら
「………いや。残念ながらその意見は聞かん!」
「…何ですって?」
「そもそも以前から埋葬機関の連中の暴れようは目に余るものだった!周囲への損害はお構い無し、武器や弾薬も必要以上に消費する、そいつらだけでゲヘナの経済は真っ赤に塗りつぶされていると言っても過言ではない!!」
「さすがにそれは過言じゃないかな…」
先生からのフォローが入った。そうだな、少なくとも
銃を使うことも少ない、投擲に使用した黒鍵は後ですべて回収している。
「うむ。その意見はその通りだろう。
だが、貴様の後ろにいる者たちに同じことが言えるか?清川シエル!
貴様も曲がりなりにも組織のトップだ、責任を取らなくてはな!」
「………」
「「「………」」」
後ろを見た。
「ヒナ、そういうことだ。我々も要求に応じよう」
「シエル…!」
「それでなくても
後ろからぶーぶーと文句を垂れる声が聞こえてくるが知ったことか。恨むならば普段の暴れ放題な自分たちを恨め。爆竜戦隊でもないくせに。
「そういうわけだ、マコト議長。我々に何を望む?」
「む…何を…か。むう……よし!
空崎ヒナ、及び埋葬機関!お前たちには今回の埋め合わせとして、このマコト様が用意しているパーティーの手伝いをしてもらおうじゃないか!」
「手伝い…?」
「会場や料理の用意を手伝えとでも?」
「ふむ…それも勿論考えた。が、それでは埋め合わせとしてやや釣り合わん!そこで、だ…
まず空崎ヒナ!お前にはオープニングのピアノ演奏を担当してもらおう!」
「ピアノ…私が?」
「そして埋葬機関!」
「む…」
「お前たちには……
―――パーティーの余興を担当してもらおうか」
「「「………余興?」」」
「キキッ、その通りだ」
(…ハッキリ言って
埋葬機関は風紀委員所属でもあるシエルが率いる組織、そのトップであるヒナが醜態を晒せば…芋づる式にシエル達にもそれは及ぶ!
キキッ、我ながら己の頭脳が恐ろしい…!)
『よォ、ちょっと待ちな』
「キッ?これは…ドローン?」
「あ、この声タマキでしょ」
『そのとーり。さすがだなァ先生。ま、それはそれとして…
マコト様よォ、ちょいと確認させてもらってもいいかい?』
「……何だ?」
『条件みてーなもんがあるんだったら今のうちに“全部”話しといてもらおうと思ってよ。後になってやっぱりアレだ、コレはダメだなんっつて言われても困るってワケ』
「ふむ…条件…か。強いて言うならば、お前たち全員が参加する、というところか?」
『そりゃあさっきも言ってたな。埋葬機関が全員参加してりゃあ後は文句ねェ、ってことでいいのかい?』
「ああ。」
(……埋葬機関の面々が“治安維持の名目で暴れ回りたいだけの集まり”であることは承知済み。そんな連中に何か一つの芸をこなすなど出来るわけがない!)
『つまり、逆に言えば
「ああ!なんならここで契約書の一つでもしたためてやろうか?」
『必要ねェよ。こっちで録画録音はバッチリだ。
あ、それと温泉開発部のアジトも突き止めといたぜ』
「…なら、すぐに追撃を開始しましょう。
マコト議長も、それで構わないわね?」
「ああ…演奏と余興、楽しみに待っているぞ?キーッキッキッキ!!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「さーて、余興と言われてもどうしたもんかね〜っと」
「どうしたもんかね〜じゃねーっつーの!!
何勝手に約束してくれてんのよ!!私たちまで赤っ恥かくことになったらどうするつもり!?」
「フン、日頃から暴れたい放題している代表格がよく言ったものだ。なんなら貴様を最前列に立たせてやってもいいのだぞ」
「う…」
この程度の言葉で反論もできなくなるとは、情けないやつ。
とはいえ、全員で披露するという条件付きはなかなかに面倒だな…大道芸でも披露するか?
…いや、そうだ。いまこそ前世の知識を活用するとき!
『全員で披露』という条件を満たしつつ、それなりに盛り上がりかつ『メインとして立つのは3人だけ』という好条件を満たした楽曲を私は知っているのだ!!
「タマキ!」
『はいよ〜』
「今から指定する連絡先に連絡と交渉を!
それとパーティーまでの日程は?」
『後5日だなァ。どうにか出来んのか?』
「“出来るか”ではなく“する”んだ。
お前たちも
「「「お、押忍!!」」」
こうして、我々埋葬機関の名誉をかけたプロジェクトが始まったのであった。
名付けて…プロジェクト“ムーンライト・ビッグバンド”!