やあみんなこんにちは。
清川シエルだ。
本日の私はいつもの如くヒナの代行…ではなく、今回は本当に個人的な用事でミレニアムサイエンススクールにやって来た。
「…フフ。にしても、私の用事に必要な存在だったとはいえ…同行してくれてありがとう、先生」
「ハハ…突然『今からミレニアムに行くから同行願えるか』って言われたときは何事かと思ったけど、生徒の頼みとあったら断れないよ」
…
私自身女性ばかりのキヴォトスでもかなり高い部類に入る背丈だと自負してはいるが、それでも少し見上げるくらいには高い背丈、仕事疲れからか少しだけくたびれているものの色男に違いない顔つき、並の女性ならばすぐさま口説き落とせそうな鼓膜を震わす声。
それにあんなお人好し属性が加わればそりゃあモテることだろう。
…話が逸れた。
先生を傍らになぜ私がミレニアムまで来たのかというと。とある部活に用事があったからだ。
普段から盗聴機とかで色々と世話になっているヴェリタスやエンジニア部もそうだが、今回は違う。
今回私が尋ねるのは…
「御免下さい。」
「うわ!シエルだ!それに先生!本当に来たんだね!」
「ようこそ、先生。…シエルさんも、どうも」
ピンクと緑のネコミミ形ヘッドフォンカチューシャ。
そしてそれを付けた…いや、
そう、今回私が足を運んだのはゲーム開発部。
メインストーリー二編及び最終編にて様々なトラブルに巻き込まれたものの、見事解決し今なお様々なゲームを開発している。
かくいう私も楽しませてもらっている者の一人だ。
…にしてもミドリめ。
一応挨拶した私よりも先生に対して先に反応するとは…やはり卑しか女であったか…
「…あ!先生!それにシエル!こんにちは!」
「おやアリス。こんにちは」
「こんにちはアリス。元気そうで良かった」ナデナデ
「えへへ…♪」
「……………むぅ」
「………あ、あー!あの!それで、シエルはなんの用事できたの?一応連絡は貰ってたし…
でも、先生が来るとは聞いてないよ!」
「ああ、それはすまない。今日の私の用事には、どうしても先生が必要だったんだ」
「必要な存在…なるほど!つまり今の先生はキーキャラですね!」
「う、うん…そう、なのかな?」
「…で、先生が必要ってどんな用事なんですか?」
「ふ………簡単だ。
ゲーム開発部…諸君に先生を主役としたギャルゲー系ファンタジーライトノベルゲームを開発してもらいたい。」
「「「!?」」」
「せ、先生が主役のギャルゲー!?」
「そ、それはつまり…プレイヤーが先生になって、次々生徒を攻略していくってことですか!?」
「その通りだ。更に、完成度をより高めるために本人にも立ち合ってもらう。
私もシナリオや原案として協力させてもらおう」
「…!
パンパカパーン!先生とシエルがパーティーに合流した!」
「ちょ、ちょっと待ってシエル!そんな話一度も聞いてないんだけど!?」
「そりゃあ今の今まで言ってなかったからな。
ゲーム開発部に伝えたのもたった今初めてだ」
「いやダメだよそんな唐突に!モモイ達も困って…」
「…んー。私達は別にいいよ?面白そうだし!」
「えっ」
「そうですね。今は特に目立った用事も無いわけですから…先生を主役としたゲームなんて、きっとすごく注目されます!腕によりをかけてカッコよく作りますね!」
「ちょっ」
「ピロン!
アリスはクエスト『ゲーム制作』を受注しました!」
「……………」
「生徒の頼みは断れないのだろう?先生?」
「………………………ハイ」
フッ、勝ったな。
「そういうわけでこれが簡単な概要だ。各自目を通してもらえるか」
「はーい…って分厚っ!
ええと…おーいユズ!ユズも見てよ!」
「……………」
…何となく居るとは思っていたが、やはり花岡ユズ部長はロッカーの中か。
一応面識はあるのだが、どうも彼女には苦手意識を持たれてしまっているらしい。
何故だろうか…
ゲーム開発部には真摯に向き合っているはずなのだが。
「………」ガチャリ
お、出てきてくれたな。
………しかしやはり改めて思うが。
ゲーム開発部はどのキャラも背格好が低いな。
一際小さい幼馴染みを普段から見てはいるが、こうまで揃って小柄だと逆に驚く。
キヴォトスでは大人びた少女が多いというのもあってのことだろうがな。
「…ええと、あの…シエル、さん」
「ん?」
「ひっ!?」
…普通に返事を返したつもりだったが、驚かせてしまったようだ。
先生の後ろに隠れてプルプル震えてしまっている。
「ああ…機嫌を損ねてしまったのなら済まない。そのままでもいいから続きを聞かせてくれるか?」
「は、はいぃ…えっと。
とりあえず基本が5ルート…攻略キャラはそれぞれ、ユウカ…にそっくりな子、シロコさん…ヒナさん…イズナさん…で、最後にヒフミさん、ですか」
「ああ。出来ることならそれぞれのキャラルートごとに凝った名前でも付けてやりたいのだが…協力してもらえるだろうか?」
「…はい!勿論です」
「あ、私も質問!
ここの、ヒフミのとこだけ『最後』ってのが強調されてるのはなんで?」
「ヒフミルートは言わば隠しルートだ。
ユウカ、シロコ、ヒナ、イズナの各ルートで様々な謎を解明しつつ、最後に最も濃密なヒフミルートが解放され物語をより楽しめるシステムとなっている。
どうだ、面白いだろう?」
「ふーん…でも、同じ様なルートを先に4回も…ってなると、ちょっと飽きられませんか?」
「何を勘違いしているんだ?
各キャラ毎に内容も変化をつけるに決まっているだろう。それも大幅にな」
「「「!?」」」
「各ヒロインとの出会いから道中、先生とヒロインが恋に落ちるまでの流れ、
ゆえにこそヒフミルートは答え合わせ的な意味で最も濃密なストーリーにするんだ」
「そ、そんなことしたら容量が恐ろしいことにならない!?」
「そうですよ!並のPCじゃ悲鳴をあげます!」
「そうだな。
だからこそ基本的にキャラの動きなどは少なめ、最初のうちはボイスなども無しのもので出そう。
背景も基本的に動かないものにして少なめにするなど、考えうる対策は出来るだけ実行する」
「そ、それで何とかなるんですか…?」
「何とかしてみせるさ。
…あとこれが一番の問題となるのだが。
今回のゲームはドット絵ではなく、イラスト中心の方針で行きたい」
「「「………!」」」
やはりこうなったか。
私の知っている元ネタのゲームに合わせてドット絵ではなくイラスト中心の物にしたかったのだが、ドット絵中心で創り上げるこだわりを持っているゲーム開発部からすれば納得がいかないだろう。
だが、そうなると私の理想としているものとはかけ離れてしまう可能性が…ううむ。
「うーん。
イラスト中心…ミドリ、そういうのできる?」
ん?
「うぅ…イラスト…キャラデザインか…豊富な背景も用意するとなると、かなりの時間が…」
おや、思ったより反応がいいな。
「…何やらいい感じに話が進んでいるところ悪いが、本当にドット絵ではなくても良いのか?」
「え?うん。
別に全然いいよ!私達も全部ドット絵って訳でもないし…」
「まあ、ドットにこだわりを持っていることは事実ですけど…せっかく私達を頼ってくれたんですから、良いものを作りたいですし!」
「そうです!それに以前先生も『お気に入りのジョブを使うのもいいけど、たまには違うジョブで遊ぶと新しい発見がある』と言っていました!」
ふむ、なるほど。
今回の話はクラスチェンジというよりもギルド変更などに近そうな感覚だが…まあいいか。
「そういうことならばよろしく頼む。私もシナリオ面では存分に協力させてもらおう。
…それと先生。勿論あなたにも協力してもらうぞ。こっちに来てくれ」
「ええ…?何なの怖い…」
それから実に数週間。
ほぼ寝る間も惜しんで制作した『青春運命協奏曲(ユウカルートのみの体験版)』は無事完成し、世に放たれた。
ノベルゲームという新たなる試みから最初のうちは大して反応が起こっていなかったものの、次第にそのシナリオの完成度やキャラ一人一人の練り込まれた設定に注目が集まり、ネット上でも高い評価を獲得することができた。
更に『これに他ルートシナリオを追加した完成版を制作予定である』と公表すると、『是非遊びたい』『他のキャラシナリオはどうなるのか気になる』など楽しみにしていただけている意見も多く見受けられ、その後続編の制作も想定して協力を続けることとなった…のだが。
「ちょっと!どういうことなのよこれは!!」バァンッ!!
「うわぁ!?ゆ、ユウカ!?き、急に何なのそんな怒って…」
「『何なの』ですって…?
自分の胸に聞いてみたら!?逆に心当たりがないような反応される方がおかしいわよ!」
「いや、でも本当に今回は何も…ミドリ、なにかした?」
「いや、私も何も…ユズ、アリスちゃん、知ってる?」
「ふぇ!?わ、私も何も知らないけど…」
「アリスにも心当たりがありません…ステータス『混乱』が付与されました…」
「……………そこの後ろの中等部のお嬢さん?あなたなら何か知ってるんじゃないかしら?」
「フッ、さぁ?なんのことだかさっぱりだ。
…だがそうだな。例えば
「それ、心当たりがあるって言ってるようなものでしょ!?
やっぱりあなたが唆したのね!!?」
「えっ…む、無断!?シエル、許可取ったりしてなかったってこと!?」
「勿論無許可だ」
「ちょっと!?」
「しかも…しかも…」
「え、まだ何かあるの…?」
「エンディングが『先生が完全にキヴォトスと関係を切って外の世界に帰って最後に息絶える』別離エンドって何よ!!!
こんなエンディング納得できるわけ無いでしょ!!!?!?!?」
「…………え?そこ?」
「何を言う。大人である先生が己のすべてを注ぎ、生徒たちが立派に巣立つさまを見届ける。
そして文字通りすべてを捧げた先生はキヴォトスの外へと帰り眠りにつく。幸せな夢の続きを望んでな。
こんなに美しい結末はないだろう?」
「やだあーーーーーー!!!
最後は先生もキヴォトスに残るの!!
最後に結婚して私と幸せに暮らすの!!!
子供は十人ぐらいじゃないとやだーーーーー!!!!」
「ゆ、ユウカが…」
「壊れちゃった…」
「………………(絶句)」
「あ、アリス分かりません…どうしてユウカはあんなに泣いてるんですか?」
「………はぁ。仕方がないな。本来は完成版まで誰にも秘密にしておきたかったのだが…箭疾歩」
「きゃあ!?ちょ、いきなり何を…イヤホン?これで何を」
「えい」ピッ
『大好きだよ、ユウカ(激甘先生ボイス)』
「!?!!?!?!!!?!?!?!?!?!!!?!?」
『ユウカだって女の子なんだから、もっと甘えてくれていいんだよ?』
『好き…ユウカすき』
『愛してる』
「ふああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」バターン
「「「!?」」」
「先生にこんな甘い声で囁かれて無事でいられる生徒は…まあ私を除いてキヴォトスには存在しない。
フッ…アリス、勝鬨を上げろ。この戦い、我々の勝利だ」
「…?はい!私達の勝利です!!」
その後、どうにかユウカを先生のイケボコレクションで洗の…ゲフンゲフン説得し、完成版を発売するに至った、が…
「ん、私ルートのラストが実質ユウカと未来の私との三股なのは納得いかない。
ちゃんと私だけを見るべき」
「…その、私、こんなに怖くないと思う」
「イズナこんな学校で一人ぼっちなわけじゃありません!
忍術研究部以外にも友達くらいいます!」
「あ、あはは…あの、私ルートの私、ちょっと色々怖すぎじゃありませんか…?」
と、この様に様々な意見をご本人から戴く結果となり、結果完成版と銘打ちながら即刻リメイク版を発売するに至った。
現実との乖離が狙いだったというのに…無念だ。
『青春運命協奏曲』
元ネタはFa○e及び○姫。
ヒロイン以外にも多くの生徒や敵が登場する群像活劇的なゲームでもあり、その辺で多大な苦労があったとかなんとか。
ルートはそれぞれ、ユウカをヒロインとした王道青春活劇と別れを描いた『運命』、シロコをヒロインとした未来の自分の可能性と向き合い進む『Unlimited Lost Works』、ヒナをヒロインとした強さの裏にある弱さや脆さと成長を描いた『雛鳥の飛翔』、イズナをヒロインとした彼女の明るさと暗さの表裏とそれに向き合う先生を描く『今宵、月が見えずとも』、ほか4ルートで明かされ、もしくは残された謎を解き明かし未来へと歩みだすヒフミがヒロインの『Heaven's feel』の5つ。
ちなみにどのルートを選んでもシエルが敵役として登場しなんやかんやあってどのルートでも死ぬ。
後本来はR18な要素を入れてやろうと(シエルは)考えていたようだが、先生と他メンバーによって止められたため匂わせ程度に収められた。