食堂にはいるはずの無い彼女らが・・・。
「さっきも言ったけど,今いる艦娘たちは基本的に我々の支配が及ぶ地域で沈んだ船に限られてるんだ.」
基本的に?その言葉に若干の疑問を抱いた榛名であったがその疑問はすぐ晴れることになった.
「ここが食堂だ.まぁ彼女たちに一番最初に会うのがいいだろうね.」
時代の割には年季の入った扉を開けるとそこには赤と青の弓道着姿の二人の女性がいた.
「やっぱり,ここにいたか.まだ今日もいい食いっぷりだな.」
ちょっと困り顔の提督.
「紹介しよう,本日から我が艦隊に配属された戦艦 榛名だ.君たちも知っているだろ.」
まずは赤の弓道着を着たほうが丼片手に
「私は正規空母,赤城です.榛名さん,ミッドウェー以来ね」
赤城はニッコリそういうと丼を再びかきこみはじめた.
次に青の弓道着の女性が少しペコリと頭を下げ,
「私は正規空母加賀です.赤城さんと同じく一航戦所属だったわ.それなりに期待しているわ.」
赤城と比べると素っ気ない印象を感じた.
「戦艦榛名です.よろしくお願いします!」
ふと違和感を覚えた榛名.
彼女らが沈んだのはミッドウェー沖のはず,なぜ彼女らがここにいるのかそう言いたげに提督を見る榛名.
「まぁそういう顔をするな.彼女らは我々が初めて出会った艦娘なんだ.」
半年前,米軍と自衛隊による深海棲艦への反抗作戦に失敗し横須賀へ帰投中の最中,追撃部隊の攻撃を受け,最早これまでと思われたとき,突如響き渡る,聞きなれないレシプロ音.
ある米軍の老兵は言った.
「ジーク!!」
ジークとは米軍のコードネームで零戦のことである.なぜ零戦と思いつつ空を見上げるとそれは日本人にはよく見覚えのある姿だ.
それと同じく編隊を組んでいる機体は99艦爆と97艦攻である.太平洋戦争初期に空母攻撃隊の主力として活躍した機体である.
編隊は艦隊の上空を飛び去ると追撃してくる小型の深海棲艦へ向けて攻撃を開始,またたくまに壊滅させた.
艦隊は歓喜に包まれた.
しばらくすると海面に立つ,二人の女性の姿が見えた.そう彼女らこそが赤城と加賀である.彼女らがなぜここに現れたのかは未だにわかっていないが彼女らは,彼女らを呼び出した存在に,艦娘について,艦娘を呼び出す方法を教えてもらい彼女らに,それを日本へ伝えよ,連合艦隊を再編せよとだけ伝え消えてしまったという.
榛名は聞き入るように頷いていた.
「まぁ話はこれくらいにして,二人とも,これから榛名をよろしく頼むよ.榛名とは一緒に組んで戦いにでることも多くなることだろうし.それでは榛名次行くぞ.」
そういうと提督は榛名を連れて食堂をでていった.
加賀はこくりと頷き,赤城は未だに丼片手に頷いていた.
2
海軍工廠.艦娘の整備・修理を行う場所である.大型クレーンや多数の工作機械がずらりと並んでいる.
榛名は目をキラキラ輝かせながら
「この光景,ちょっとロマンを感じます!」
「だよなぁ,クレーンは男のロマンだ.」
すっかり意気投合した榛名と提督であった.
「ちょっと提督,構内はヘルメットと脚絆つけてくださいよ.」
そう言ってきたのは工作艦明石.工廠を取り仕切っている修理の要だ.
「明石さん,すいません.次から気をつけますね.」
そう言いながら自分のヘルメットと榛名にヘルメットを取り付ける提督.
「そうそう,彼女が今日から我が艦隊に配属された戦艦榛名だ.よろしく頼むよ.」
「お,そやつが新入りかの?」
やたらと古めかしいしゃべり方をしながら歩いてくるのは重巡洋艦利根.榛名と同じく呉軍港で最後を迎えた艦娘だ.
「新艦娘さんですか?一言お願いします!」
利根と一緒に歩いてきたのは重巡洋艦青葉.彼女も呉にて最後を迎えた艦娘だ.
「あ,あの,戦艦榛名です!よろしくお願いします!」
青葉の取材めいた聞き方に戸惑いつつも答える榛名.
「おお,榛名か.久方ぶりじゃのう.最後まで一緒に戦ったことは覚えておるぞ.なぁ青葉」
「ええ,私なんて何もできませんでしたけど,榛名さんが勇ましく戦っていたことは今でも覚えていますよ.」
「そう言ってもらえると・・・榛名、感激です!」
榛名もまんざらでは無いようにうれしそうだ.
最後まで一緒にいた艦娘だけあって非常に中の良さそうな三人だ.
提督はその三人の姿を見ながら,
「ふむ,三人とも仲良さそうだし,榛名の教育係は利根と青葉にやってもらうか.」
「うむ,我輩に任されよう.榛名を一人前の艦娘として育ててやるぞ.」
「はい,青葉にお任せ!」
こうして,榛名の艦娘としての生活が始まっていくのだった.