TS転生したけど、引きこもりニートしてネトゲやってます。ギルメンに兄がいるんだけども……… 作:布団から出られない
昨日、ギルメンの中に
いや、まあ、まだ
ただ、図らずして
どうやら
ギルド内じゃおれは結構いじられキャラだし。特に『さばきんぐ』はおれに親でも殺されたのかってくらいボロクソに言ってくる。本当に何なんだあいつは。確か高校生だった気がする。ガキが、舐めてると潰すぞ。ちなみにこのセリフを実際に『さばきんぐ』に言ったら、信じられないほどの口撃をくらい無事撃沈しました。最近の高校生、恐ろしい。
…………そろそろおれも、変わらないといけないのだろうか。
いや、おれだってちょっとずつ進歩はしてるんだ。一昨日だって、おれは
最初の頃のおれじゃ考えられなかった。あの頃は、襲われたってショックでマジで何もできなかった。単純な男への恐怖心もあったが、何よりも前世で男であったはずのおれが、今世では
おれだって好きで男を避けてるわけじゃない。本当は学校だって通いたいし、男友達だって欲しい。いや、恋人はいらないが。それに、おれが男性恐怖症を克服できず、引きこもりを継続していると、家族はきっと悲しむだろうし、迷惑だってかけることになる。この問題は、おれ一人だけのものではないのだ。
「
………どうやら
「あ、扉越しでいいから、ちょっと話したいなって思って。これから家族になっていくわけだし。迷惑だったら、ごめん」
「あ、はい………ど、どうぞ?」
あっやっぱ無理だ。男と話すってなると、急に言葉が出なくなる。前世では男の方が話しやすかった。当然だ、前世ではおれは男で、同性である男性の方が気が合いやすかったのだから。だが、今のおれは逆に男と話す度に、ビクビクしてしまう。また、あの時みたいに、襲われてしまうんじゃないかって、そんなことあるはずがないのに、無意識のうちに恐怖してるんだろう。ネット上でなら、おれは前世の“おれ”の仮面を被り、男として振る舞うからか、男性恐怖症が発症しないのだが(というかそもそもネット上なので襲われるだとかそんな心配をする必要がない)、現実でのおれは“深沙季”として他者と接することになる。
「まあ、実は俺も女性と話すのが苦手でさ、この前女子が髪切った時も、気付けなくてぶん殴られたし」
ていうか今、殴られたって言わなかった? 殴られるって何???? え、髪切ったこと気付かないだけで殴られることとかあるの????
「あの、殴られたって、流石にキレてもいいんじゃ……」
「あーやっぱおかしいよね。俺鈍感だから、俺が悪いのかななんて思ってたんだ。クラスの皆も、お前が気付かないのが悪い、としか言わないからさ」
「クラスメイト洗脳されてるんじゃないかな……」
「その可能性もあながちあり得なくはないかもしれない」
あ、それか彼女さんとかか? なら殴られるのもわかるかもしれない。というか、クラスメイトに言われるくらいなんだから、ただの女友達とかの関係じゃそんな状況になることはないだろう。
おれはほぼ確信しながら、殴ってきた女子が恋人か問うが………。
「いや、彼女じゃないよ。そもそも俺彼女できたことないし。モテてもないしね」
じゃあ尚更何なんだ?
殴られても仕方がないってクラスメイトに言われるくらいだろ…?
それこそクラスメイトが洗脳されてるとしか思えないんだけど。あ、それとも……。
「もしかして、彼女いなくてもセフレは作ってるとか?」
「み、深沙季ちゃん!? せ、ふれって、女の子がそんな言葉使っちゃ……」
「えっ、あっ、違っ……!」
ちがう、まじで違う。
ちょっと待って、こんなつもりじゃなかった。いや、あのね、完全に抜けてたんだよ、気が。
いや、なんか、いつの間にか普通に………。って、もしかしておれ、
「あの、
「え、そうなの?」
多分、そういうことだろう。おれがついさっき失言してしまったのも、おれの震えが止まっているのも、おそらくはおれが
考えられる要因の一つとしては、おれが
だからこそ、だろうか。
「あと、無月さんには、お願いが一つあって」
「何? 何でも言って」
「その、私のことは、深沙季“ちゃん”じゃなくて、深沙季って、呼び捨てにして欲しいです。その、妹なので……」
おれの前世は、男だ。やっぱりまだ、ちゃん付けで名前を呼ばれることに抵抗がある。母親だって、おれのことを深沙季“ちゃん”ではなく、深沙季と呼び捨てで呼んできていた。小学校の頃も名字で呼ばれてたし。そのせいもあってか、本当に“ちゃん”付けに慣れていないのだ。
「そっか、それなら俺からも一ついいかな」
「はい」
「俺のこと、兄さんとか、お兄ちゃんとか、まあ何でもいいから、そんな感じで呼んで欲しい。無月さんだと、何か堅苦しいし。それと、さっきみたいに砕けた口調で話して欲しい。兄妹になるんだから、堅苦しいのはやめにしよう」
「はい」
「敬語は?」
「あ、ごめん。間違った」
やっぱり、この人なら、おれも男性恐怖症を克服できるかもしれない。
おれは、ドアノブに手をかけ、自室の扉を開ける。
「これから、よろしく。お、お、おにい………ちゃん……」
拙いながらも、おれと
にいさんと関わることで、ちょっとずつ、おれの男性恐怖症が克服されていく。そんな気がした。