ほら骰子だよ、ウィッチャー   作:i-pod男

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思った以上に筆が乗ったので後編投下です。

今後、ゴブリン以外にどんなモンスターをぶつけてやろうかぐへへへ


Session 11-2: 繋いだ命の使い方

乱雑にギルドの扉が開かれ、けたたましく上部に設置されたベルが鳴る。戸口に立っているのは、女武闘家と、女魔法使いの二人。目元は泣き腫らしたせいでい若干赤く、厚ぼったいが、その表情は決意の籠もった人間のそれだった。

 

彼女達の後ろに控えていた女神官は二人の手を握り、何かしらの励ましの言葉をかけると、一礼して薄汚れた安物の鎧に身を包んだゴブリンスレイヤーの遠ざかる背中を小走りで追いかけて行った。

 

大股で未だに飲み食いを続けるウィッチャーに向かって歩いて行き、二人は深く頭を下げた。

 

「・・・・・・何の真似だ?」

 

「お礼を言うのが遅くなって申し訳ありません」

 

帽子を脱ぎ、腰から折れて頭を下げたまま先に口火を切ったのは女魔法使いだ。

 

「改めて、助けてくれて本当にありがとうございます。仲間の遺体の処理まで手を貸してもらって・・・・・・」

 

「別の怪物を呼び寄せない用心の為の処置だ、遺骨ぐらいは故郷に持って帰れるようにしただけさ。だが、用件はそれだけってわけじゃなさそうだな」

 

「厚かましいお願いなのは分かっていますが、それを承知で、貴方の元で勉強させていただけないでしょうか?」

 

女武闘家も腰から体を折ったままそう乞うた。見ると、彼女の背中には亡くなった青年の剣が背負われている。自ら剣を折るか擦り上げるかして短くしたのか、刃渡りが拳一つ分短くなっていた。

 

「勉強?」

 

「はい。私達は、弱いです。それこそゴブリンに後れを取ってしまう程に。知恵も力も連携も、注意力も、想像力も、何もかもが足りない。だから一から学び直したいんです。勿論、自分の始末は自分でつけます。お願いします!」

 

「私からもお願いします!悔しいんです、自分なら大丈夫だ、なんて安易な考え方がどれだけ馬鹿なのか、死ぬ寸前になるまで気づかなくて。だから、ちゃんと冒険者として至らない所を学びたいんです!」

 

ウィッチャーは二人の言い分を聞きながら煙管に煙草を詰めて点火し、ぷかぷかと煙を燻らせる。自分は基本単独で依頼をこなしている。ウィッチャー達は本来偶然のバッティングか必要に駆られた時しか組む事は無い。時代が違えば別の流派とは殺し合っていた可能性もある。しかし、上の等級の冒険者を見ると大抵の物は二人組か三人組かもっとか、兎も角一党を組んで行動している。恐らく更なる昇格を望むには他者との連携の密度、親和性、協調性なども査定の対象とされるだろう。

 

踏み台、と言ってしまっては聞こえが悪いかもしれないが、実際彼女達の提案を受け入れれば単独行動を続けるよりは高確率で早い昇級が期待できる。そうすれば今後の依頼の旨味も増すし、彼女らもまた別の一党に加わるなり自分達で手頃な仲間を新たに見繕うなりして自分の手を離れれば、また一人で気楽に仕事ができる。

 

「・・・・・・少しここで待て」

 

席を立ったウィッチャーは受付カウンターまで向かい、監督官を呼び寄せた。しばらく話した後、彼女は頷き、二枚の書類を作成し、蝋を垂らしてギルドの印を押した。その二つを受け取って代わりに銀貨二枚をカウンターに置くと、駆け出し二人にカウンターまで来る様に手招きする。

 

「これは・・・・・?」

 

「ギルドの監督官を公証人とした正式な役身折酬の契約書だ。お前達は俺と臨時で一党を組む事となる。その間俺はお前らの装備の面倒を見る。ただし、装備だけだ。衣食住のうち食と住はお前達がなんとかしろ。当然装備の購入、修復などに使った金額は自腹を切らない限りは俺への借金となる。お前達は半月毎に報酬の一部を返済に充てる義務が発生するが最低金額は監督官が良心的に設定した。利子も無い。依頼遂行中に魔法の指輪などの金目の物を見つければ自分の物とするもよし、売り払って返済の足しにするもよしだ。それとだが俺抜きで依頼を達成して得た報酬はその限りではない。出来高として別途換算する。期限は返済が完了するまで」

 

「私も一度契約書の内容に目を通しました。厳しい条件であることは否めませんが、決して完済できない事はありません。それに返済方法はあくまで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()とウィッチャーさんが定めてらっしゃいますから」

 

「早い話、お前らが途中で変な気を起こして体で払おうとしてもそれは認められない、と言う事だ」

 

「か、からっ!?」

 

「しませんよ、そんなこと!!」

 

冒険者とは言え花も恥じらう十代の乙女には刺激が強い話題だったのか、あっという間に二人は赤面して己の体を掻き抱く。

 

「これは公平を期すために書き加えた、互いから互いを守る契約項目でもある。まあ俺もお前らみたいな子供を抱く趣味は無い」そう言いながら、二枚の契約書の上にそれぞれ金貨を五枚重ねて置いた。

 

金貨五枚の元手。二人合わせて十枚。女魔法使いは兎も角、女武闘家はこれだけの纏まった金を見るのは初めてだった。

 

「言っておくが俺が教える以上、俺の方針がルールだ。この一点と以上の契約内容を踏まえて、改めて聞く。それでもなお、俺から学びたいなどとほざくか?」

 

ウィッチャーは二人を見下ろす。元々長身のウィッチャーは二人より頭一つと半分程背丈に差があり、目は猛禽類を思わせる鋭さだった。

 

そんな目に睨みつけられた駆け出し二人は体が石化したようにその場に固まった。怖い。やはり上の等級だからか、自分とは心構えも精神的な純度もまるで違う。女武闘家は思わず後ずさったが、後ろはカウンターだ。一度深呼吸をして意を決すると振り向き、金貨を掴み取って契約書に名を書き込んだ。女魔法使いも杖を一旦手放して彼女に倣い、金を取る。

 

「よし。では最初の失敗を教訓に必要な物を買って来い。準備が出来次第、出立する」

 

「出立?」

 

「どこへ?」

 

ウィッチャーは一服吸って煙を吐き出し、大きく、深く、にやりと笑う。待っていましたと言わんばかりのしたり顔は、後に二人には『御伽噺に聞く十字路の悪魔よりも悪魔らしい笑み』と呼ばれる様になる。

 

「決まっている、弔い合戦だ。お前達は俺を伴って、ゴブリン相手に再戦(リベンジ)を仕掛ける」

 

 

 

街道の脇にある大きな切り株に腰かけた二人は、前方に立って腕を組むウィッチャーに傾注した。

 

「それではこれより、猿でも出来る小鬼殺し講座を始める。初級レベルだが傾聴せねば楽には死ねんと心得ろ」

 

ゴブリンが出た、家畜を盗まれた、作物を盗まれた、村娘を攫われた。良くある定型的な依頼だ。辺境の街から歩いて三日のとある村からの依頼が来ていた。そのゴブリン達が大きな犬にも似た獣に搭乗していたという目撃情報も、その犬に嚙みつかれて、農夫に怪我人を出したという証言も。

 

「まず、ゴブリンは犬並みの嗅覚を持っているから、女か森人(エルフ)なら必ず匂いを消して行け。前回奇襲をかけられたのはそれを怠ったのが原因の一つだ。そしてもう一つ。奴らは怖くないが、超絶怖い。何を言っているか分からんと思うが、ゴブリンは一匹、二匹程度なら力も弱いし鍬を持った村人でも殺せる。が、毒塗った武器持ちの大人数に囲まれた場合は超絶怖いからそうはいかない。だが洞窟の様な閉所、暗所は小回りの利く短躯でも一度に襲って来られる数には限りがあるから全く怖くない。調子こいて襲い掛かって来ても空間には限界があるから、動きにも多少の指向性が出て来る。故に、攻撃は読みやすい。だがだからと言って棒立ちは自殺だ、奴らは弓矢や投石紐、毒のような道具も使ってくる。呪文使いは速攻潰して数を確実に減らし、ホブは最後に回せ。俺も妖婆退治の時順序を間違えた所為でアウルベア二頭相手にえらい目に遭った。死んだふりしてる奴もいるから、しっかり止めは刺すように。慢心しなければ手傷を負っても生き残れる。以上、講義は終了だ」

 

「し、質問!」と女魔法使いが手を上げる。腰には新たに冒険者ツールや水薬を入れた雑嚢と服の下には目が粗い鎖帷子、とんがり帽子の内側には頭をある程度守る為の防具を兼任する堅い革を縫い付けてある。多少形が崩れているが、見た目より機能性が重要なのは嫌と言うほど分かったらしく、気にも留めない。そして腰には武器も兼任する小型の槌と野外活動には欠かせないナイフが下がっている。

 

「何だ?」

 

「野犬に乗ったゴブリンはどう対処すれば・・・・・?」

 

「俺に任せておけ、誘い出して絡手を使う。半端な数の騎馬で森に入るなど自殺だ。木々に囲まれたここは騎馬殺しにはうってつけだから、精々さくりと死んでもらう。歩兵を随伴させん騎馬兵などただの生きた的だ」

 

上手く立ち回る事が出来れば、と言う但し書きが付くが。

 

「じゃあ私も質問!」と、今度は女武闘家が挙手した。同じように服の下に鎖帷子を着込み、鋲を打った革鎧を身に付けている。左腕には楯の代わりなのか、鉄製の籠手と肩当がある。拳打を放つ際、盾が邪魔になると考えた末の折衷案らしい。右腰には道具兼緊急武器の短剣、左腰には雑嚢、そして頭にも鉄の頬当てが付いた帽子にも見える防具を被っていた。

 

「ん?」

 

「何故まだ踏み込まないんですか?」

 

「奴らが夜行性だからだ。今は正午過ぎ、つまりゴブリンにとっての真夜中過ぎとなり、見張りはもっと警戒している。早朝か夕方、つまり奴らにとっての夕方か早朝になるのを待つ。それ以外で踏み込むのはそれ以外の手段がないか、時間が無いか、確実に皆殺しにする時だけだ。俺らと違い、奴らにとって巣穴は勝手知ったる領域だからな。基本は火をかけて燻り出す」

 

「な、なるほど・・・・・・・」

 

「志は立派だが、焦るな。前回は油断した上で焦ったから死人が出た。では、今度は俺から質問しよう。ゴブリンが野犬やら狼やらに搭乗していたという目撃情報から三つ分かる事がある。それは何だ?」

 

二人の駆け出し冒険者はしばらく小首を傾げて考えていたが、やがて女魔法使いが、あ、と声を上げた。

 

「獣を飼育するだけの蓄えがある!」

 

「正解。二つ目」

 

続けて女魔法使いが答える。「知恵者の呪文使いやホブゴブリンがいる可能性が高い!」

 

「正解。三つ目」

 

「はい!」今度は女武闘家が手を上げた。「それだけ余裕があり、知恵者もいるとなると、規模はかなり大きいです!」

 

「正解だ。と言ってもこれらの知識はゴブリンスレイヤーの受け売りだ。ゴブリンに関してあいつ以上の見識を持つ奴は知らん。では、夕方になるのを待っている間に騎馬殺しの準備を始める。生木の太めの枝を探して持って来てくれ。後、村から丈夫な長い縄を貰って来い。金は出すと伝えろ」

 




次回からゴブリン討伐のやり直しが始まります。ゴブリンスレイヤーを参考にしつつ一味違う手法で倒していく所をどう表現した物か・・・・・・・
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