自警団の詰め所は小振りな要塞の様に物々しく、鉱山都市の中にある石と煉瓦で出来ていた。正門にいる
一番大きな待機部屋には家具以外に壁際に剣や斧、槍などの武器が立てかけてあり、いくつかある小さな円卓を囲んで自警団員がそれぞれ武具の手入れや都市の地図とにらめっこ、非番と思しき連中は札遊びに興じていた。中には腕を吊ったり体のどこかしらに血がにじんだ包帯を巻いたりしている連中もおり、その光景は実に痛々しい。
依頼人の屋敷で発言した見習い団員が敬礼で三人を出迎えた。既に出発の準備を整えており、甲冑に身を包み、肩にはクロスボウを背負い、右手には刃に銀を混ぜた短いハルバードを握っている。
「さっきは身内のみっともない所を見せてしまって申し訳ない」
「ああ、いやいや、最終的には協力してくれる形で落ち着いたんなら何も言う事はない。一党の者が必要な装備を武具屋から取りに行っている途中だから、戻ったら早速案内を頼む」
かぶった兜の緒を調整しつつ見習い団員は深く頷き、笑って見せたが、やはり怖いのだろう。笑みがどこか引き攣っていてぎこちない。
「冒険者さん、こいつぁ、自分から言った事は伏せて貰いたいんですが・・・・・・今回の騒動であの坑道を担当してる親方が吸血鬼出没の三日目に峠を越せずに亡くなったんです」
「もしや依頼人の血縁者か?」
「いえ、血の繋がりはないんですが、子供の頃から同じ所で育って連れ添った兄弟分で、家族も同然ってやつです。勿論親戚も怪我人の中には含まれますが」
ああ、そうか。ようやくウィッチャーは全ての点が繋がり、得心がいった。確かに身内の者が殺されたのならば同じ身内が仇討ちを成し遂げたいという考えは別段不思議ではない。外部の手を借りたがらないのも頷ける。
「じゃあ俺を名指しで依頼したのは?」
「その親方の最期の言葉です。ウィッチャーを呼べば始末をつけてくれると。だからそれで親方の顔を立てる為に——」
「渋々俺を呼んだというわけか。まあ確かに身内を殺されて尚且つその相手が分かっていれば黙ってはいられないな。だが、大丈夫なのか?」
「はい、説得に時間はかかりましたが案内役は俺で決まりました」
「いや、そっちじゃない。お前は自警団員の見習いなんだろう?ウチの一党が必要とあらば援護はするが、武器を持って来ている以上、多少はあてにさせてもらうぞ?」
「そりゃ勿論。俺だって伊達や酔狂で自警団に志願したわけじゃ無いんで。吸血鬼相手に大立ち回りってわけにゃ行きませんが、そいつらの足引っ張る位の働きはさせて貰います」
「頼もしい限りだ。だがこちらの頼みで同伴している以上、無茶はするな。逃げろと言ったらすぐに退け。何があろうとだ」
「それについちゃ心配は無用だ。これでも
そうこうしているうちに女魔術師と女武闘家がそれぞれ袋を抱えてウィッチャーと合流した。鎖は注文通り長い鞭のように長く、銀が使われている。銀の鏃をつけた矢と油の瓶も数本ある。
坑道は
「ウィッチャーさん、ここからどうするんですか?」
「そうだな、正確な相手の人数が分からない以上、全員で相手の懐に飛び込むのは危険すぎる。何より、有効な攻撃手段を持っている人数が限られている。採掘に関しては素人だから何とも言えないが、基本は狭苦しいという想定で合ってるか?」
見習い団員は地図を引っ張り出して広げた。
「一応はその認識で間違っちゃいないが、
「なら、餌を使って引きずり出すしか無いな」
「餌?」
見習い団員の疑問にウィッチャーは大きめの硝子瓶を引っ張り出した。中には何やら粘度の高い赤黒い液体が入っている。
「それは、血か?」
「そう、山羊のな。エキムマーラは血だけじゃなく肉も食う。生き物であれば何でも、だ。これを行く道の先々に振り撒いて進む。奴らは食った後の消化が速いから必ず食いつく。そしてそれをより確実な物にする為に撒き餌以外に生餌を使う」
そう言いながらウィッチャーはナイフを取り出して鎧の隙間から覗く肌に切っ先を突き刺し、そのまま切り開いた。
「他の動物を襲う事があるとはいえ、主食は人型の生物だからな。俺の血にも反応するように仕向ける。俺と見習いで入る間、お前達二人は出て来た所を迎撃出来るように準備をしてもらいたい」
背中のクロスボウを外し、女魔法使いに手渡す。簡単な操作方法を教えてから適当な板切れを的にして三度試射させる。武器らしい武器など最近になってやっと持ち始めた彼女には初めての経験だったが、相手が来る方向が分かっていれば当てるのはそう難しくはない。加えてエキムマーラの体躯は人間を遥かに超える物だ。一撃で仕留めることは出来ないにせよ、痛痒には変わりない。
女武闘家には銀の鎖を渡し、ゴブリンライダーを全滅させた時の応用を頼んだ。幸い、坑道の入り口には両脇に手摺が十歩手前まで伸びており、そこに鎖を通して罠にする事自体は難しくなかった。
「いいか、俺はエキムマーラ達を釣る為に可能な限り先頭を走って戻る。場合によっちゃ見習いを脇に抱えて出てくるかもしれないから、誤射だけはしてくれるな。クロスボウ一発ごときで死ぬ事は無いが当たれば痛い物は痛い。だがもし俺が先頭に来ていない場合は各自の判断で仕掛けの発動と発射を許可する。それと、保険でこれを渡しておく」
駆け出し二人にそれぞれ緑色の球状の包みを渡す。
「悪魔のホコリタケと言う手製の爆薬だ。奴らに毒を食らわせて動きを鈍らせる。これで少しは時間を稼げる。投げて何かに当たれば爆発する。可能な限り近くに投げるか、ぶち当てろ」
取り決めと手順を再三確認した後、ウィッチャーは雑嚢に手を伸ばし、『猫の目』と『黒い血』の霊薬を呷って見習い団員と共に坑道の中へと足を踏み入れた。日の光が差し込まない坑道の中は正しく『闇』の真っただ中だった。可能な限り言葉を発さぬように目配せや身振り手振りで意思疎通を図り、血痕や足跡などをウィッチャーが見つけては見習い団員が道筋を定め、奥へ奥へと進んでいく。
嗅ぎ慣れた腐敗臭が鼻につく。逃げ惑った鉱夫や最後まで戦い抜いた自警団員の死体が残っている所為だろう。見習い団員は悔しそうに奥歯を噛み締め、目を細めた。今まで外部から冒険者を呼び込まずにいたから犠牲になった同胞の弔いもままならない。口惜しい。
だが今、ようやくウィッチャーと言う冒険者が来てくれた。ならば彼の為に道を示そう。吸血鬼を相手取ることは出来ないが、せめて可能な限り速やかに退治できるように立ち回って役に立つ。決意を新たにした見習い団員は右折するよう合図を出す。
しかし、突如ウィッチャーが足を止め、彼の方を掴んで引き留めた。指を口に当て、耳を澄ます。
ギチ、ギチ、ギチ、と歯ぎしりのような音が聞こえる。
それに続き、骨を噛み砕く生々しい音。
硝子同士を擦り合わせたような、耳につく鳴き声と猛獣を思わせる唸り声。
下級吸血鬼、エキムマーラだ。
ウィッチャーは血の入った瓶を開け、一歩ずつ踏み出す。あちらに少々、こちらに少々と血を振り撒き、音がした方向へと更に踏み込む。狭かった坑道が多少開けた所から中継地点の一つに到達した事を悟った。その証拠に、即席のテーブルや椅子に使われていた戸板や樽が無残な木片となって数名の死体と一緒に辺りに散らばっている。
中継地点から五方向に延びる出入り口があった。四つん這いになり、手掛かりを見落とさぬよう、また下手に音を立てて気取られぬよう細心の注意を払いながらそれぞれ検分していく。やはりここで激しい戦闘があったのは間違いなく、足跡は殆ど踏み荒らされているし、坑道内で響き過ぎる所為で近づいている事はなんとなく分かるが音源が特定できない。匂いに至っては籠もった死体の腐敗臭で辿るどころではない。アウルベアの血の匂いも自分の血の匂いも混ざり過ぎてエキムマーラの鼻腔へと十分に届いていないかもしれない。
見習い団員はハルバードを構えたまま辺りを警戒する。今更ながら恐怖と後悔で胸が一杯だった。
市中の見回りや装備の点検ぐらいしかしてこなかったのにどう言うわけか大見得を切ってしまった。我慢してきたが、淀んだ腐敗臭と緊張の相乗効果で若干吐きそうにもなっている。ウィッチャーの足跡を辿りながら彼の傍に行き、エキムマーラが出て来た穴の三つを指さす。地図によるとそのどれもが他の二つに比べると浅いらしい。
相手が来るのを待って焦れるよりはマシだ。早速ウィッチャーは中継地点に散乱している武具や金物などを見習い団員に集めさせ、山を張ったその三つの穴に一つずつ物を投げ入れるように指示した。エキムマーラの嗅覚はウィッチャー並みかそれ以上の物だが、こうまで匂いがこもると鼻が利かないのかもしれない。ならば勝るとも劣らぬ聴力で燻り出す。
ガチャガチャと撥ねて騒音を上げながら落ちていく兜に楯、戦槌に斧。ここでようやく唸り声が更に近づき始める。ウィッチャーは見習い団員に撤退するように追い払い、ひしゃげた丸楯二つを拾い上げて打ち合わせる。
地面を蹴立てる音がする。
硝子同士を擦り合わせたような、耳につく鳴き声と猛獣を思わせる唸り声が二つ、いや三つ近づく。
銀剣を抜刀して低く構え、ゆっくり後ずさりながらオイルを刀身に塗り、
一気に後ろに跳び、走れ走れと見習い団員に先を急がせる。
相手は透明化し、尚且つ自分も背を向けている為姿は視認できないが、間違いなく追ってきている。これはウィッチャーとして培った長年の勘がそう告げているのだ。今更になって振り撒いて来た血と自分が流している血の匂いに当てられたのか、新鮮な肉を味わわんと我先にと追い縋る。
「のわっ!?」
見習い団員の手が何かに捕まろうとバタつくが、捕まる物が何もなく、そのまま前のめりにこけてしまう。多少は夜目が利くとは言え明暗の順応はウィッチャーほど早くはないのだろう。目に入った土と泥を拭うと、ボロボロになった脚絆の裾が申し訳程度に残っている膝から下の脚だった。
「起きろ!食われるぞ!」
通路が狭い事が幸いして互いが互いの足を引っ張り合い、エキムマーラ達は目当ての獲物に辿り着けない。入り口から数歩手前で壁面に手を叩きつけて
再び走り始めた見習い団員の走る勢いを利用し、ウィッチャーは彼の襟の後ろを掴んだ。出入り口から三歩と言う所で彼を投げ上げた。
「鎖を!」
「はい!」
女武闘家が鎖を握り締め、体重をかけて後ろに引いて張り詰めさせた高さは一般的な
それを飛び越えて体を捻り、抜刀。
丁度逃げ遅れた獲物を捕らえんとエキムマーラの一匹がほぼ真上にいる。頭蓋を砕こうと左手の鉤爪を振るうが首を逸らして開いた一寸の隙間が顔面ではなく顎先に薄皮を切る軽傷を残すだけに被害を留める。だが鎖の仕掛けを飛び越えられた。
すかさず
獲物しか眼中にないまま互いを踏み越える後続のエキムマーラ二体は腰や膝を鎖に絡め取られた。雨晒しの腐った肉が焦げるような、何とも言えない酸っぱっぽい悪臭が鼻につく。鎖が触れた所から煙を上げ、痛みと怒りに狂った咆哮を上げる。
「撃て!」
動きが止まったエキムマーラ目掛けてバシュンと矢が放たれ、銀の鏃が左肩を捉える。がくりと体を折った所で見習い団員も後れを取ってなるものかとクロスボウの一矢を放って捨て、ハルバードを構えて突撃し、腹を貫く。ウィッチャーもオイルを塗った銀剣の剣戟を食らわせ、先程跳ね上げたエキムマーラを落ちて来た所で二発目の
「相変わらず、死ににくい体質だなあ、貴様らは。爆薬を俺の合図で投げろ」
十分に距離が離れたのを確認したところでウィッチャーは指笛を吹き鳴らした。それを合図に一党の二人が爆薬を残り二体のエキムマーラに投げつけた。巻き添えを食らわぬことを徹底したかったのか、見習い団員は真っ二つに叩き割られたテーブルの裏側で丸くなり、震える手で二の矢を番えようと躍起になる。
「やれ!」
放物線を描く二つの内一つはエキムマーラの体に、もう一つは足元でほぼ同時に炸裂した。毒々しい濃い緑色の煙がエキムマーラを包み込む。見習い団員ははっきり視認出来ずとも構うものかと矢を装填したクロスボウを再び構え、撃った。女魔法使いも負けじと弦を引こうと歯を食いしばったが、彼女の細腕では小振りとは言え強弓を引き切ることは出来ない。
寄こせとウィッチャーがそのクロスボウと残った矢を奪い取り、彼と間を合わせて矢を放っていく。動けない相手となれば案山子同然、ただの的だ。
だがウィッチャーの銀の矢も見習い団員の鉄の矢もすぐに尽きた。三匹が未だ存命である。そしてそのうちの一体が鎖を握っていた女武闘家の方へと飛び掛かった。地面を蹴る瞬間は視認できたが、瞬きする間に姿が掻き消える。
片膝をついたウィッチャーはそのまま銀剣を突き上げ、エキムマーラを貫いた。が、踏ん張りが甘かったのが重心が定まっていない。後ろに倒れてしまい、肩口に牙を突き立てられた。
「ウィッチャーさん!!」
「騒ぐな!もっと下がれ」
しかし、そのエキムマーラの命脈はその瞬間尽き果てた。ミシミシと肩に噛り付きながら肉と血の味を堪能するが、喉に、腹に異変を感じる。まるで内側から焼けた火箸で貫かれるような痛みにエキムマーラはウィッチャーから離れ、苦しみ始める。
「『黒い血』で変異した俺の味はきつかろう?たっぷり腹を下せ」
水平一閃に剣を振るい、一体目のエキムマーラの首が落ちた。鞠の様にその首を自分に背を向けたほかのエキムマーラ達目掛けて蹴りつける。
見習い団員が欠けた楯とハルバードを構えて二人の駆け出しを背に庇っていたが、次の瞬間、エキムマーラ達の首が胴体と泣き別れ、一体目と同様、宙を舞った。
「は・・・・・?」
膝の震えを最早隠そうともせず、見習い団員は緊張の糸が途切れ、腰を抜かして崩れ落ちた。駆け出し冒険者の二人も手近に落ちていた武器を構えて応戦態勢を取っていた。
今にも動くのではないかとばかりに牙を剥き出した形相を保ったエキムマーラの首に目をやりながらハルバードを構えた見習い団員は心配そうに何度もウィッチャーに目配せしたが、彼の頷きと剣を鞘に納めるところを見て肩にかけていた角笛の吹き口を口に当てると、最後の気力を振り絞って肺を空にした。
戦いの終わりと、勝利を告げる角笛の音色が鉱山都市に響き渡り、見習い団員は空を見上げて倒れた。
息を整える間に自警団員およそ三十名が依頼人の
しかし群衆の警戒など知った事かと依頼人の
討伐の証拠を目にし、ウィッチャーが言ったとおりにモンスターに火を点けたのを見た所で自警団員が足を踏み鳴らし、武具をぶつけ合い、誰ともなしに歌い始めた。
「そびえし霧深き山並み穿ち、仄暗き洞穴の底
掘り進む、うずもれしまだ見ぬ宝探し
ツルハシの示すまま、果てしなく
築き上げたこれこそ、我がふるさとよ
宝剣の柄に王冠、指輪に首飾り
いざ見よ、陽光の如く燦々と輝けり
大地の御霊達を台座に据え、
今は亡き父祖に捧げん
穴倉の国よ、永久にあれと
岩の屋根に粛々と玉を散りばめん
これぞ星にも劣らぬ絶世の煌めき
迷える旅路での我らの頼れる道標
大広間で誓いの盃を交わす
穴倉の国よ、永久にあれと
そびえし霧深き山並み穿ち、仄暗き洞穴の底
掘り進む、うずもれしまだ見ぬ宝探し
ツルハシの示すまま、果てしなく
築き上げたこれこそ、我がふるさとよ
剣を鍛え、槍を砥ぎ、帷子編む
深々と光るこれぞ真なる銀に迫る技前
燃ゆる鍜治場にて槌に誓う
穴倉の国よ、永久にあれと
子々孫々よ、皆すべからく忘れまじ
これなるは我らが住処なり
これなるは我らが宝なり
子々孫々よ、皆すべからく許すまじ
国を侵す不届き者を
宝奪わんとする蛮族を
そびえし霧深き山並み穿ち、仄暗き洞穴の底
掘り進む、うずもれしまだ見ぬ宝探し
ツルハシの示すまま、果てしなく
築き上げたこれこそ、我がふるさとよ
築き上げたこれこそ、我がふるさとよ」
歌い終わり、皆は片膝をついてウィッチャーに頭を垂れた。依頼人は深々とお辞儀をし、右手を差し出す。長らくウィッチャーはその手を無言で見つめていたが、小さく頷いてその手を握り返した。
「兄弟の事を聞いた。お悔やみを申し上げる」
依頼人は何も言わず、ただ頷き返すと踵を返し、足を引きずって去っていった。その沈黙を自警団の副長が破り、同胞の亡骸を運び出して手厚く埋葬するように指示が飛ぶ。鉱山都市の住人らは未だ燻るエキムマーラの死体に唾を吐いては踏み入っていく。その住人の中には、武具屋の店主と彼が抱えている数人の丁稚達の姿もあった。
「おお、へしきり丸!無事か?」
「肩をちょっとやられたが、その程度だ。良い品物を売ってくれて感謝する」
「なあに、あの程度の細工など朝飯前よ。うちを頼ってくれた事、感謝するぞい。若い衆にもいい勉強になったわ。あのジャム、かかあに好評だったぞ、パンを食う手が止まらなんだ!」
「そりゃよかった。俺も選んだ甲斐があったってものだ」
「これからどうする?」
「まあ、まずは――」
「お風呂!」
一党の二人が声を揃えて叫んだ。
「あ、その・・・・・・ごめんなさい、割り込んで」
「でも、ここお風呂が凄いって聞いてて、仕事も終わったから是非入りたいなあと・・・・・」
他二体のエキムマーラをやり過ごしていた時に土屋ら泥やらを被ってしまった二人はおずおずと伝える。
「だな。腐臭も体に染みついてしまった。普段は一人で探索して見つけては殺しを繰り返すんだが、今回は燻り出して纏めてなます切りに出来たからその手柄を労ってやりたい」
それを聞き、二人は大いに喜んだ。
「そうだ!さっきのあの、凄く動きが速くなった奴!あれ一体何だったんですか?」
「魔法の指輪だ。鑑定によると確か、
「
「掘り出し物じゃな。ところでのう、へしきり丸」と、武具屋の店主が声を潜める。「風呂もええが、手傷を負ったならやはり痒い所に容易に手を届かせられる
言わんとする事が分かったのか、ウィッチャーはほくそ笑む。
「・・・・・それはまあ、確かに」
「ええ所、知っとるぞい。来るかや?」
「そういう風に聞かれちゃあ行かないわけにはいかんな。叔父上も中々好き者だな」
「まあ、の。わしゃ生涯現役、大往生を目指しとるでな」
石でできた浴槽に浸かる女武闘家と女魔術師は、大きく息をついた。
「あ“-・・・・・」
二人して凡そ淑女らしからぬため息が漏れる。毛穴と言う毛穴から疲労と垢が抜け落ちて行くのを感じる。
「私、お風呂なんて初めて。さいこーすぎるわ」
「私は蒸し風呂なら入った事はあるけど、これはまた別格ね~」
浴槽の端には果汁水のピッチャーとコップが二つ置かれており、それをゆっくり飲みながら湯舟を堪能した。
「今回、ちょっとは役に立てたかな?」
女魔術師が呟く。
「うん、立てたと思う。ゴブリンライダーの時みたいに鎖で足引っかけられたし、爆薬もしっかり当てられたし。クロスボウ使ったことないのに当てたの、凄かったよ!」
「あんなのまぐれよ、まぐれ。体が大きかったから当たっただけ。結局次弾は弦が重くて撃てなかったし、ウィッチャーさんが吸血鬼全部倒しちゃったし。私も貴方みたいに体の鍛錬しようかしら?」
「まあ冒険者は体が資本だから、悪くはないんじゃない?あ、果汁水おかわり頂戴」
「いざ仰げ凡夫共よ、磨かれし血族の御業を!
槌を持て、鋸を持て、火箸持て、鑢も持て!
剣も、槍も、斧も、鎧も、いやさ鉄砲だってお手の物よさ!
火を放て!炉に薪を!炉に炭を!ハイ、サー、ホー!
打ち下ろせ!鉄を打て!拍子に合わせ!ハイ、サー、ホー!
歌えや踊れや、精霊達よ、今こそ我らに万人力を
一番、鞴の風の精、低く、高く、どら声、小声
さあ踊りゃんせと扇いで煽ぐ
よし来た見てろと二番は火の精
白や青や、赤に橙、百面相の舞踏会
三番、土の精はおしゃまな絵描き、
粘土で混ぜ混ぜ風景画
四番淑やか水の精、皆を一同湧き立たせ
浴びせる湯気立つ拍手喝采」
仲間の死体やその装備、そして破損した採掘用の道具などを運び出す荷車が出すガタゴトと言う音に合わせ、遠くから歌が紹介された湯屋に響く。余程の大声か大人数歌っているのか、かなりはっきりと。
「心せよ、業物以外を作るは恥
匠の手練に偽りなし
鐘をも凌駕せし槌の勝鬨
それと共に我らは目覚めん
火を放て!炉に薪を!炉に炭を!ハイ、サー、ホー!
打ち下ろせ!鉄を打て!拍子に合わせ!ハイ、サー、ホー!
火を放て!炉に薪を!炉に炭を!ハイ、サー、ホー!
打ち下ろせ!鉄を打て!拍子に合わせ!ハイ、サー、ホー!」
中には音程が外れて調子っぱずれになっている音痴もいるが、そんなものは誰も気にしない。鉱山都市を苛む化け物は退治されたのだから。仲間の仇は無事に討ち果たされたのだから。
だからこそ歌える間は何曲でも、何度でも歌う。
神代の時代、若くして落命したとある
感想欄で過去に端折ったストーリーをもうちょっと展開した所を見てみたいというリクエストがあったので、番外編のサイドミッションと言う形で投稿して行こうかと思います。
次に出す本編の依頼はもうちょっと苦戦させるべきですかね?今回は手傷程度は負いましたが・・・・・
ウィッチャーと言う集団自体死ににくく魔法と霊薬を使える剣豪と言う輩なのでどうもさじ加減が難しい。アニメの最後に出るゴブリンとの野戦か、はたまたGoblin's Crownでパラディン戦で何かしらのハンデを負わせるか・・・・・