エウリュディケ救出作戦〜先生を、取り戻せ〜   作:立日月

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タイナロスへの航海〜対策委員会、調査開始〜

 

 

「うへー、もぬけの殻だね〜。前に来た時はちゃんとしたオフィスビルだったのに」

 

 半ば廃墟と化したビルへと潜入した直後、ホシノが気の抜けたような声でそう溢した。

 

「カイザーPMCは元々後ろ暗い企業ですからね。拠点も長期間は使わずにすぐに変えてしまうんです」

 

 一人校舎から支援しているアヤネの言う通りそのビルはかつてカイザーPMCが拠点としていたものであり、ホシノが黒服を追うために知っている数少ない手がかりの一つだった。

 

「でもここまで跡形もないとは……移転先を探しましょうか?」

 

 アヤネがそう提案するが、ホシノは被りを振って答える。

 

「いや〜、とりあえず大丈夫。どうせ黒服はもうカイザーとつるんでないだろうし無駄足になっちゃうと思うから。ま、ここに来たのも九分九厘無駄足になると思うけど」

 

 そう言いながら後方を振り向いたホシノの視界には、アヤネ以外の対策委員会のメンバーが揃っていた。

 

「だからおじさん一人でいいって言ったのになあ」

 

 ホシノはチラッとノノミの方を見る。視線に気づいたノノミの方は頭の上に二本指を立てて鬼のポーズを取った。

 

「ホシノ先輩は独断専行の前科持ちですから。単独行動はこの私が許しませんよー」

 

「あはは……そこを突かれるとおじさんも痛いなあ」

 

 ホシノは苦笑いを浮かべながらエスカレーターのボタンをポチポチと押す。

 

「黒服と会うときは、いつも最上階の社長室だったんだよね。……エレベーターは動かないみたいだねえ」

 

「おそらく電源が供給されていないんだと思います。たぶんどうにかできると思うのでちょっと待っててください」

 

「アヤネちゃんよろしくー」

 

「しっかし、ほんと人っ子一人いないわね。これじゃ手がかりも望み薄か」

 

「……誰もいないのは悪いことばかりじゃない」

 

 セリカの言葉に神妙な面持ちでビル内を見渡していたシロコが口を開いた。

 

「どういうこと、シロコ先輩?」

 

 セリカが不思議そうに尋ねる。シロコはいつにもましてキラキラした目でこう言った。

 

「ん、備品を略奪しても、誰にも文句言われない」

 

「……」

「……」

「……」

「……こんな状況でも変わんないねえ、シロコちゃんは」

 

 四人は呆れ顔半分、感心半分と言った様子でシロコを見つめる。けれどシロコはただいつもの調子、というわけでもなかった。

 

「先生は、きっと自分のせいで私たちが立ち止まるのは良く思わないだろうから。先生を救うのと借金を返すの、同時に進めないと」

 

 シロコの言葉に対策委員会の面々は数秒沈黙する。それは、先生がそう言うだろうということをみんなよく理解していたからだった。

 

「そう、ですね」

 

 アヤネの返事に、シロコは満足げな顔をする。

 

「ん、一通り調べ終わったら目ぼしいものまとめて持って帰ろう」

「そうね、まるっと根こそぎ持っていくわよ」

「やったりましょ~」

 

 セリカやノノミもそれに同調して声を上げた。だが……

 

「いや~、でも備品の略奪はダメだよ?」

 

 冷静なホシノがいつものようにたしなめた。アヤネも我に返って通信で叫ぶ。

 

「……そうでした! シロコ先輩の言葉に危うくだまされるところでした!」

 

「……ちぇっ」

 

 ちょっと不貞腐れ気味なシロコだった。

 

 

 ────────────────────

 

 アヤネの活躍で無事エレベーターの電源の復旧に成功し、他の四人は高速エレベーターで最上階に向かっていた。

 エレベーターの中を沈黙が支配する中、ノノミが口火を切った。

 

「先生の失踪、思ったことがあるんですけど。もしかして……色彩の仕業だったりしませんか」

 

 それはかつて対策委員会のみならずキヴォトス中が巻き込まれたあの事件、その延長線上じゃないかという推測だった。

 

「たぶん、違うと思う」

 

 けれどあの一件に最も深く関わったシロコがそう否定した。

 

「何かあの時とは違う気がする。あの時は唐突で、理不尽で、滅茶苦茶だったけど……今回の事件は、どこか納得感があるんだ」

 

「え? 突然消えちゃったのに? むしろ今回の方が唐突感あると思うんだけど」

 

 セリカがごく自然な感想を返した。シロコはそれに頷きながらも主張を続ける。

 

「……うん、普通だったらそう思う。正直、これは私の直感でしかない。でも他にも色彩の仕業じゃないと思う理由はある」

 

「理由?」

 

「うん。……きっと色彩が絡む件だったら、『シロコ』が黙ってない」

 

「……それは、確かに」

 

 今どこにいるかはわからないがもし今回の事件に色彩が絡んでいるとしたら、敵になるにせよ味方になるにせよあの「シロコ」は現れるような気がする。対策委員会の全員は確かにそう感じた。

 

「あ、そろそろ最上階です」

 

 アヤネの言葉で四人は我に返る。セリカが大きな声で自分を鼓舞する。

 

「気を引き締めるわよ!」

 

「まっ、何もないとは思うけどね~」

 

『ピローン。最上階です』

 

 エレベーターのアナウンスが鳴り響き、ドアが開いた。

 最上階はエントランスのない構造で、エレベーターを降りるとそこは全面社長室だった。

 が、ほとんどの備品は撤去されていて、対策委員会の視界に映るのは残っている一対のデスクとオフィスチェアだけ。

 ……いや、これは正しくない表現だ。

 

「お待ちしていましたよ。アビドス、対策委員会のみなさん」

 

 それに加えて、見覚えのある異形がオフィスチェアに腰を下ろしていた。

 

「……わーお」

 

「ノノミ先輩、それ他の人のセリフです。使ったら怒られます」

 

 動揺のあまり某トリニティのお姫様のセリフを引用してしまったノノミをたしなめるアヤネ。しかしアヤネ自身も困惑しているようで、それは他のメンバーも似たり寄ったりだった。

 年長者ゆえか、一番落ち着いていたホシノが最初に口を開く。

 

「まさか、一発目で当たりを引くとは思わなかったよ……黒服」

 

 

 

 

 

 




ブルアカ作中でまだ描かれていない要素に踏み込むから続けるか少し迷ってたりする
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