やはり奉仕部にシェイクスピア(偽)がいるのはまちがっている。 作:ひきがやもとまち
遊戯部の部室を文学的に表現するならば、ビブマリオの書斎と昔ながらの玩具屋とを混ぜたような情景を連想させる内装をした室内だった。
奉仕部が使っているものと同じほどのスペース内に、うずたかく箱や本、パッケージなどが積まれており、それらがまるで壁のように、あるいは衝立のように聳え立ち、訪れた者を迷宮に迷い込んだかのような錯覚を抱かせる。
手近な位置に置かれたパッケージ表紙を見ると、薔薇と髑髏の意匠を摸した渋めのデザインが使われ、表記は全て英語。素人目に見ても、海外のものだと思って間違いはない。
所謂テレビゲームやビデオゲームを差して、ゲームと呼ぶのが一般的な認識だ。
一方で、この部室にゲームとして置かれているのは、ボードゲームやカードゲームと言った古式ゆかしい娯楽で満たされ、明らかに一般に流通しているものと毛色が異なる本格的なものばかり。
まさに、「ゲーム」ではなく「遊戯」と呼んだ方が正しくなる、そんな雰囲気を訪れた者すべてに感じさせるような雰囲気に満たされている空間。それが遊戯部の部室であった。
もしこの情景を差し、詩的表現を用いることなく俗っぽい表現のみを使って一般的な概念に当てはめるとしたら、恐らくこう評することになるのだろう。
「・・・何と言いますか、如何にも『俺たちゲームを遊びと思ってやってる奴らと違うから。最近のモドキと違って本気でやってる本格派だから』とかアピールしたがってる感が凄まじく伝わってくる内装の室内ですな。ハッキリ言って自己主張強すぎててウザいです」
『『『ぶっふぅぅぅッ!? げふんげふん! うおっほん!!』』』
シェイクスピア(偽)から白け顔のジト目で容赦なく評されてしまった室内の奥の見えない位置から、そして一緒に入ってきてた八幡のすぐ近くから同じような聞き慣れた盛大な咳払いが響いてくるのを耳にして、入室してきたばかりの奉仕部一同は入ってきた瞬間から思い切りゲンナリさせられる事になる。
いきなり遊戯部の本質、ぶっちゃけられちゃいました。幻想崩壊させられまくりです。
やはり遊戯部にシェイクスピア(偽)が入ってくるのはまちがっている。
「はぁ? ここユーギ部じゃないの? ユーギってゲームする部活のことなんでしょ?
ゲームする部活なのにゲームしないって、なんかゲーム部っぽくない・・・・・・」
「そうかしら? 私はこちらの方がゲームとしてはしっくりくるけれど。
由比ヶ浜さんがイメージしてるのはピコピコの方なんでしょうけど・・・・・・でも考えてみたら、ピコピコもゲームと言えばゲームなのよね。あくまで普通の人の基準ではの話だけれど」
「ピコピコって、お前おばあちゃんかよ・・・・・・あと、俺と材木座と安田は普通の人じゃないアピールする視線いらないから。違うから。俺はコイツらの同類じゃねぇから。
この部の奴らと類友なのは、材木座と安田だけだ」
「は、ははハチマーン!? ハチマン・ブルータスー! またしてもお前もかーっ!?」
由比ヶ浜が普通の人のゲーム基準で論評し、雪ノ下が古くさい親にゲームやらせてもらえず育った箱入り基準での認識を語って、二対一になった空気を見抜いて場に合わせた勢力チェンジする保身に定評のある八幡とが、それぞれの認識に基づく遊戯部への感想を口にしながら入室し。
部屋の奥の方では屈辱にプルプル震えてる遊戯部員たちの姿は衝立によって見えないまま、ニワカ達のニワカ評に対して急にキレだすゲーオタ反応したくてもしづらい立場を強制されてしまった材木座が、必死にフォローの反論をする。
遊戯部の部室の内装に対する酷評への反論を。
遊戯部にゲーム勝負で負けても謝らないで済ませにきた材木座が。・・・入ってきたばかりで早くも状況は混沌としてきていた。
「そ、それは違うのだ安田氏!
この積まれた本やパッケージの配置は、積みゲーや積読をもっとも多く時間を過ごす場所ほど高く積まれる故の結果であって、決して見せるための本格的なのを選んで見えやすいところに置いているわけではな――」
「あ、3段目の箱からは普通に日本語で書かれてるヤツなんだ。なんか安っぽーい」
「・・・・・・・・・」
材木座、もはや他人のために、もしくは敵のために滅多打ちである。反論すらできやしない。
普段通りの状況だったなら、大人気RPGの新作だけやるとか、周りの人がやってるからちょっとやるとか、マスコットキャラが超可愛いとか、映画みたいで泣けるとか。
如何にもニワカっぽい、一般人がコミュニケーションツールとしてやってるだけのゲーム語りを聞かされた時には、急にキレだして唾吐く仕草とかして、「分かってねーなお前らはなんも分かってない」と優越感に浸りながら見下したセリフを言って然るべき場面ではあったのだが。
・・・・・・シェイクスピア(偽)が、いきなりネタバレしちゃった状況でそれやっても、「自分がまさにそれです」と自供したのと同じになるだけであって、壮絶な自爆にしかならない。
全然しゃべらない男が、自分の好きな分野の話になった時だけ急にキレだしたりすると、不思議がられたり不審者扱いされたりするけど、最低でも相手からは怖がられたりムカつかせたり出来ることが比較的多くはなれる。
だが、『そういう事やるのが半端者らしい自己アピールなんだ』と言われた後だと、やりづらい。友達にニワカだと噂されて見下されたくない。噂してくれる友達いないけれども。
「まぁ、これは別にいい問題として。これと同類の部員はどこにいるのかしら?」
「あ。そーだね。さっき声はしたからいるはずなんだけどねー」
『『・・・・・・・・・』』
雪ノ下の発言によって、由比ヶ浜も人を探す方へと思考をシフトし、八幡もやる気はないけど一応は分析の面で手伝うことにして、部屋の広さは標準サイズでも積み上げられた箱とか本棚のせいで見通しが悪い室内のどこに目当ての探し人がいるかを考え始め。
「ぬふぅ。我の出番だな。先程も言ったが、積みゲー積読はもっとも多く時間を過ごす場所ほど高く積まれる故、一番高――」
「部屋の奥の方でしょうな。遊戯に限らずインドア派の部員という生き物は、動くの面倒くさがりますので、出入り口の方より奥の方に一度座って下校時間まで出来るだけ動かず過ごしたがるものです」
「・・・・・・」
材木座、自分の解説の解説されて出るところなし。
流石の八幡でさえ気の毒になってくるほど相性悪すぎる、行動派のインドア趣味人間を頼ってしまった結果であったが・・・・・・頼ったのは材木座本人だから仕方がない。
(悪いが、今回のは明らかに材木座に原因がある。厳しいようだが、言うべき事はちゃんと言わねばならない。
――だから、もっと言ってやれ安田。後ろから刺される覚悟がないなら、俺を巻き込むな~)
そんなことを内心で思いながらシェイクスピア(偽)の後を付いていく、今回は少しだけ大人しめの比企谷八幡。
勝手知ったるなんとやらで、シェイクスピア(偽)の私室も散らかりっぷりは似たようなものだったため、配置とか使用者の現在地とかは大凡分かるらしく後から付いてくだけで良かった八幡たち奉仕部メンバーは、程なくして一番高く本と箱が積まれたタワーの後ろでなんかやってた二人の男子生徒たちを発見することになる。
「む、貴様ら一年坊主か!!」
そして八幡が、一応は初対面の相手だからと普通の態度で話しかけて確認取ったら、遊戯部の部員だと分かった途端に材木座が居丈高な態度で声を上げる。
上履きの色が1年生であることを示す黄色なのを目視したからだろう。
自分が年上に同じことされた時にはイラつくけど、相手が年下だと分かったときには年功序列を笠に着て上から目線で押しつけたい。
大量生産の凡人によくある陳腐極まりない平凡な小物的思考だが、材木座のようなヤラレ役の友情出演には適切かもしれない。
・・・・・・などと言うほど酷いことまでは思わなかったけど、この時点での最初の接触でシェイクスピア(偽)が相手の二人と材木座に対して言うべき事は何も思いつかなかった。なので傍観。あるいは黙って見物。
「あー。君ら、この男に用がある――って事でいいんだよな? なんか話聞く限りだとよく分かんなかったんだが・・・」
「ふはははは! 久しいな。昨日はずいぶんと大きな口を叩いてくれたが、今さら後悔しても遅いぞ! 人生の先輩として、そして高校の先輩として我が灸を据えてやろう!」
先輩として、の部分を大事なことなので二度言う材木座。本人にとっては大事な部分だったのだろう、おそらくはであるが。
だが人生というものは非情でもある。自分にとって大切なものが、他者にとっては何の値打ちもない石塊同然として買い叩かれる悲劇はごまんと有り触れている。
この時にも、遊戯部員二人の反応はやや冷たかった。
「おい、さっき話してたのってこの人のことだよな? うはー痛ぇ」
「だろ? マジないよな」
と、年上の権威に恐れ入るどころか嘲笑してくる反応に、材木座は激しく動揺した挙げ句――混乱のあまりか安心得ようとして八幡に声かけるつもりが、隣にいたシェイクスピア(偽)に話しかけちゃう失態を犯すことになる。
「え、は、いや安田氏。我、今何か変だったかな?」
「いえいえ滅相もない。剣豪将軍・材木座義輝殿は、いつものようにいつもの如く、何ら変わることなく普段通りの剣豪将軍らしい答弁を返されていただけのこと。何ら普段と異なる異常な点など見受けられませんでした。どうかご思慮のまま事をお勧めいただきたい、剣豪将軍・材木座義輝殿」
「そ、そうか? そうであるな、うむ! そうであるよな! ふ、ふはははは!
我は常に自分の生き方を貫き、周囲の有象無象の戯れ言になど流されぬからこそ不動の精神こそ、真のクリエイター足る資格なのだから!」
恭しく報答されて気をよくしたらしい材木座が、調子に乗りまくって色々語り出すのを聞きながら。
ウザったそうな目付きで「うわー・・・」と言いながら退いてる由比ヶ浜の横で、雪ノ下が八幡にだけ聞こえるように小声で語ってきた論評で考えた場合には、
「・・・要するに、『普段から変なことしか言ってないから、普段通り変だっただけで、特に今の発言だけが変だったわけではない』と言っていただけなのだけど・・・・・・彼は気付けてないのでしょうね」
「そりゃまぁ、気付いてたら恥の上塗り発言を追加したりしないだろうからな・・・・・・ラノベ作家目指してた割に文系弱すぎるだろアイツ・・・ゲームのシナリオライターに変わっても同じ欠点抱えたままなら意味ないと分かりそうなものだが・・・・・・無理なんだろうなぁ」
溜息を吐きながらも、流石に今のままだと話が進展しないどころか脱線確実な状態になってきたので、仕方なく八幡が仲裁役として二人の部員に話しかけ、材木座の代わりのネゴシエーションを引き受けざるを得ない立場に晒される事になる。
「えーと、俺ら奉仕部っつー、要はお悩み相談室なんだけど、材木座が君らと揉めたって言うから、その解決に来たんだが・・・・・・えっと、揉めたのはどっち?」
「あ、俺です。1年の秦野です。こっちは・・・・・・」
「1年の相模です」
「そっか。で、こいつとゲームで対決するって話らしいんだけどさ、君ら格ゲー強いんだろ? それだと、やる前から勝負見えてるし、他のことにしないか? せめて他のゲームにするとかさ。こんだけあるんだし」
「それなら・・・・・・まぁ」
「いいですけど・・・・・・」
そう話を持ちかけられた当初は難色を示していた二人だったが、八幡が周辺に積まれたゲームの山を指差しながら言った言葉で、控えめながらも自信を滲ませた声で了承を返す遊戯部の部員たち二人組。
その二人が示した変化を、シェイクスピア(偽)は目を細めながら無言で見守り、見逃すこともなかった。
「けど、変える以上は何か見返りがないと・・・」
「じゃあ、材木座の土下座でいいか? 負けたら俺が責任もって【調子に乗ってましたすいません】って謝らせるからさ」
「え? 俺が? え? ちょっと待――」
『『まあ、いいですけど・・・・・・』』
「ええっ!?」
面倒くさくなってきたらしい八幡から、テキトーな条件を提案して控えめながらも受け入れられ、
「じゃあ、やるゲームは任せる。あんま難しいのはやめてくれ。一見ハードル高いゲームは新規が入れないから格ゲーと変わんなくなる」
「なら・・・・・・皆が知ってるゲームをちょっとだけアレンジします」
「む、むう仕方がないな。して、そのゲームの名は?」
「ダブル大富豪ってゲームをやろうと思います」
八幡からの提案を容れて、相手の部員二人が妥協したという形でゲーム内容が選ばれ、ルールも決まって勝負が開始される。
その様子を見続けながら、内心で溜息を吐いていたのはシェイクスピア(偽)だけだったことに気付いた者は、残念ながら一人も現れることはなかったのだ・・・・・・。
「あの、大富豪のルールは大丈夫ですよね?」
「やったことないわね・・・・・・ポーカーなら嗜みがあるのだけれど」
しゃっ、しゃっ、とカードをシャッフルする音を響かせながら、遊技部の部室内でトランプを囲み、雪ノ下たち女子生徒陣も加わって車座となり大富豪開始の時を迎えようとしていた。
「あ、一応ルールの説明しますね。と言っても、ルール自体は普通の大富豪と同じで、違うのはペアでやるって点だけですけど」
「ペア? つまり、二人で相談しながらやるってことか?」
「いいえ。1ターンごとに交代で手札を出してもらいます」
「相談するのも禁止です」
そういうルールとなったため、雪ノ下たち女子生徒も参加する必要性が出てきた訳である。
まず大本が材木座が持ち込んできた材木座の問題なのだから、材木座がプレイヤーの一人なのは前提として、由比ヶ浜はともかく雪ノ下の方が由比ヶ浜以外の三人の誰かと組みたがるはずないため雪ノ下と由比ヶ浜の女子コンビも前提。
あとは材木座が残る男子生徒ボッチ二人の内、どちらをパートナーに選ぶかで参加メンバーが決まる訳だったが・・・・・・これもまた最初から答えが決まっている出来レースの一つでしかなかったと言うしかない。
「八幡。我に、ついてこれるか?」
「・・・・・・お前が、安田のテンションとノリについて行けないから俺なだけだけどな・・・」
というメンツでの勝負になった。
ちなみにシェイクスピア(偽)こと安田は、補欠兼審判兼得点係。
――だが彼には、勝負の裏側にある筋書きが、この時点で見えていた。
八幡からの提案は一見すると無茶苦茶なもののように思える内容で、サッカー選手に向かって「そんな事より野球しようぜ!」というようなもの。
実際、八幡自身もそう思いながら提案していたように見受けられた。相手だってわざわざ自分のアドバンテージを失いたくはないだろうと。
しかし、それは錯覚に過ぎない事をシェイクスピア(偽)は見抜いていた。
何故なら、この勝負はもともと材木座からの煽りに対する報復として、相手の方から『格闘ゲームでの勝負』を挑んできたことで発生した出来事だったからである。
自分から、自分の方が強くて勝てると分かりきっているゲームを選んで、勝負を挑んできたのが相手チームの手口だったのだ。
ならば自分たちで勝負するジャンルを選べる権利を有する限り、自分たちの方が有利で相手だけが不利になるゲームを選択してくるのは火を見るより明らか過ぎる帰結だった。
それでも安田がそれらを声に出して指摘しないのは――『主人公には数多の苦難が必要だから』という理由によるものである。
それが悲劇であれ、喜劇であれ、あるいはそれ以外の何かであれ、特異な者にはそれに相応しい波瀾万丈な人生が与えられるものであり、順風満帆な人生などテキトーな凡人たちにでも任せておけば良い駄文に過ぎない話にしかなれないのだ。
その意味で、比企谷八幡と雪ノ下雪乃と由比ヶ浜結衣、奉仕部メンバーを中心に置いた人々の人間模様は彼の理想像に近い。
是非ともこのまま困難が追加され続けて、高すぎる壁を前に絶望して、それを乗り越える苦しみと痛みにのたうちながらも諦める事なく前へと進み続ける―――そんな劇的ストーリーを歩んでくれる事を、シェイクスピア(偽)は本心から望み求めていたのだ。
・・・・・・あと出来れば、壮大なバッドエンドで破滅して終わってくれると尚いいんだけど・・・・・・流石に友人相手にそこまで求めちゃうのは人としてちょっとなぁー、と思う程度の良識ぐらいは残っているため思ってまではいない。
ただ、そうなってくれたら嬉しいなと期待してるだけである。所詮はクズな安田君。
とは言え、今回のコレは困難と呼ぶには些か見栄えが悪すぎる。難易度も低く、乗り越えたところで大したものも得られそうにない。
そろそろ終わらせるための下準備だけでも済ませておくか―――そう考えていたシェイクスピア(偽)が審判役として勝負の開始を告げたのは、切られたカードが各々の手元に配られ終わった直後の事となる。
「では、これより遊戯部と奉仕部によるダブル大貧民対決を始めさせていただきます。
勝負は五試合。双方とも、準備は宜しいですかな?」
「いつでもいいですよ。もっとも、実質2対1のチーム戦なので、こちらが先手をもらいますけどね」
そうして遊技部VS奉仕部の勝負は幕を開けた。
勝負の内訳としては―――まぁ、お約束通りというところだろう。
「ふっはっは! まるで大したことないわ! どうだ! 我の力を思い知ったかぁ!」
「いやー秦野くん負けちゃったねー。しまったー。困ったー」
「そうだなー。相模くん油断してしまったー。困ったー」
『『だって、負けたら服を脱がなきゃいけないんだから』』
「なっ!? 何よそのルール!?」
と言うノリと展開である。テンプレにも程がある上に、お約束にも限度というものがある。流石にてこ入れが必要と言わざるを得ない平凡すぎるストーリー展開となってしまっていく。
その後の展開も、似たり寄ったりな流れに変わってしまい・・・・・・。
「え? ゲームで負けたら脱ぐのが普通じゃないですか?」
「そうそう。麻雀もじゃんけんも負けたら脱ぐものです」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! ゆきのん、もう帰ろうよ。付き合うのアホらしいし・・・」
「そう? 私は構わないけれど。勝てばいいのだし。それに勝負する以上、リスクは当然だわ」
「ええ!? あ、あたしやだよ!」
「問題ないわ。このゲーム、ローカルルールの多さに惑わされがちだけど、数字の力関係が一定である以上、戦略の基本路線は変わらない。場に出たカードを記録して、相手の残り手札が予想できればそうそう負けないと思うけれど。それに終盤の勝ちパターンもいくつかあるようだし、枚数からの推測もそう難しいものではない」
―――とかの理屈を並べ立てながら、負けず嫌い&挑まれたら勝負は正面から叩きのめして完勝しないと気が済まない&小物なクズは相応しい罰与えないと気が済まないの、三拍子揃った熱血正義のクール系美少女部長雪ノ下雪乃がアッサリ敵の挑発に乗って勝負を受けてしまって、欲望に駆られた味方(主に材木座)に足引っ張られて数字とかパターンとか関係ない理由で連敗したり。
「まぁ、落ち着け八幡。ゲームとは楽しむものだ。もっと余裕を持て」
「なるほど。そういう感じのスタンスなんですね。ユーザー視点っていうんですか? まぁ悪い事じゃないですけど、それに終始してるっていうのはちょっとねー」
「ぬ・・・・・・」
「剣豪さん、なんでゲーム作りたいんですか?」
「ふむ。好きだからな。好きな事を仕事にしようと思うのは当たり前の考えだと思うが」
「はっ、好きだから、か。最近多いんすよね、それだけでできる気になっちゃう奴。剣豪さんもそういう人間の一人でしょ? あんたは夢を言い訳にして現実逃避してるだけなんだよ」
「な、何を根拠に・・・・・・」
「ゲームの何たるかも知らないでゲームを作ろうだなんて笑わせるよな。最近の若手ゲームクリエイターにも多いんですよね。TVゲームしかやったことないのにゲーム作ろうとする奴。考え方がワンパターンでなにも革新的なことができない。斬新な発想を生む土壌が養われていないんだ。好きだからって作れるわけじゃない」
「ぐぬぬぬ・・・・・・」
「結局さ、あんた偽物なんだよ。エンターティンメントの本質もわかってないし。俺たちはちゃんとゲームの源流、エンターテインメントのスタート地点から勉強してるんだ。あんたみたいな半端者がゲーム作るとか言い出すの、見てて恥ずかしいんだよね」
――とかの理屈を並べ立てて、『思いだけで何が守れるって言うんだ!』系の正論によって材木座を論破してくる、エンターテイメントのスタート地点から学んだゲームの源流を、負けたら女子が服脱ぐ野球拳のジャンケンの代わりに使っている『“自称”ちゃんと勉強してる偽物じゃない者たち』との主張と主張がぶつかり合う、何が正しくて何がアホらしいのかよく分からない展開へとなっていき――――
「やれやれ。大して盛り上がりもしない場面を無理やり引っ張ろうとするのは、愚作の特徴ですからな。仕方ありますまい。
――それでは、彼らが愛しく憎悪しているであろう、彼女に会わせてあげましょう」
流石に疲れたので、シェイクスピア(偽)は、今回の主役は八幡ではなく自分が務めさせてもらおうと、トリを飾る。
「“人間の一生は、さまよい歩く影法師。哀れな役者に過ぎぬ。
己の出番の時は、舞台の上でふんぞり返って喚くだけ”!!
出でよ! 我が劇団!! 【ファースト・フォリア】!!!!」
そして、世界で最も名高き世界史に残すべき偉大なる大作家の死後に、彼の友人が作品を纏めて出版された『最初の一冊』の別名を、まるで本人が現代に蘇ったかのように朗々としたバリトンボイスで遊戯部の部室中に轟くよう木霊した、その瞬間!!
「・・・貴様ら。よりにもよって私の高校の男子生徒が、校舎内の部室に女子生徒を連れ込んで脱衣貧民とは、随分と古くさいゲームを復活させて楽しんでくれたものだな、ええ?
相応の処罰ぐらい受ける覚悟があってやってたんだろう? そうだよな? そうだろう?(バキボキ)」
『あわ、あわわわ・・・・・・(ガクガクブルブル・・・)』
愛しく憎悪していそうな、スタイル抜群の美人“教師”平塚先生が召喚に応じて参上してしまいましたとさ・・・・・・。
彼女の後ろでは、
「ふ~む、この手のキーを一回叩いただけで一文字打てる機械というのは、買ってからすぐに放り出してしまっていましたが、思ったより便利なものですな。次からは執筆に使ってみるのも良いかもしれません。
『校内で男子生徒二人が女生徒と脱衣大貧民中なう』と―――」
とか言いながらスマホ弄っているシェイクスピア(偽)の姿があり、平塚先生に引っ立てられていく、初犯だから説教と罰掃除と肉体労働だけで許してもらえる事になったっぽいけど、次はなさそうな遊戯部員二人が悄然としながら敗残の惨めな姿を晒している。
所詮、遊戯部の言っているやり方が正しくとも、間違っていようとも、始め方が正しくなくとも、中途半端でも、それを好きな思いが嘘でも偽物でも間違いでなかったとしても。
・・・・・・女子生徒相手に、男子生徒が脱衣ゲーム挑んじまった時点で、見つかっちまったら負けになります。学生人生ゲームに。バレないように、せめて校舎の外でやりましょう。
と言うわけで、
『『あのー・・・・・・平塚先生? 俺たちの処分とかは――』』
「お前らは、とっとと服を着ろ。男の半裸など見せられても気持ちが悪い」
『・・・・・・はい』
取りあえず、恥かくだけで謝らなくて良くなったみたいだから良かったな。材ナンタラ君。
つづく