やはり俺の青春ラブコメはひねくれている。   作:ひきがやもとまち

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熱さ故か、書きたい時に体力がなく寝てしまうこと多い昨今です。
おかげで筆が、なかなか進みません。本当は他の作品を更新してから出す予定だったのですが、いつ出来るか微妙なため今作の続きを先に投稿しておきますね。
色々と内容的に問題あるかもですが……【作者理想の俺ガイル版】だとでも思って流して下さると助かります。


26話

 

「そこでだ。――俺に一つ考えあるんだが―――」

 

 そう前置きして淡々と、『鶴見留美を取り巻く人間関係をぶっ壊す計画』を奉仕部と葉山グループの混合メンバーに説明しようとしていた俺だったが、

 

「――これは俺の先輩の話なんだけど・・・・・・」

 

 今は照明が消されたビジターハウスの一室で車座に座り、頼りなげに揺れる数本の蝋燭だけを光源にした中で、戸部の語り出した『本当にあった怖い話』を聞いている。

 

 突然なんでここまで状況が激変しまくったかと言えば、肝試しの準備してたら平塚先生に呼び集められたからである。

 

「肝試しを盛り上げるために、君たちに怪談話をしてほしいというリクエストがあった」

 

 というのが、その理由だった。

 さすがに先生のいる前で説明するのは躊躇われる内容の計画だったし、先生がいない場所で話してる最中だったから結果的に説明を中断させただけの平塚先生を恨むのは筋違いだと分かってはいるのだが・・・・・・それでも敢えて断言しよう。

 

 もう少し空気読んで呼びに来る時間ズラしてください平塚先生、俺だったらそうしてました。

 自分が割り込むことで却って場の空気を壊してしまうんじゃないかと気を遣って、内輪の話をしている人たちを見かけた時には自主的に回れ右して距離を取るのがボッチの社交マナー。常識ですよ?

 まったくこれだから自分で望んだボッチになったエリートボッチではない、ボッチ力が低い下級ボッチは・・・・・・。

 

「俺の先輩、走り屋みたいなことやってたんだ。ある日いつも通り一人で峠を攻めてたんだけどよ。そしたらパトカーに止められちまって。

 そのときはスピード違反もしてなかったし不思議に思ったんだ。で、パトカーから降りてきた婦警さんが言うんだよ。

 『ノーヘルで二人乗りしちゃダメだよ。・・・・・・あれ? 後ろに乗ってた女の人はどうしたの?』――って。

 先輩はいつも走ってたし、二人乗りもしない。じゃあ・・・・・・警官が見たのはいったい・・・・・・。

 それから数日後・・・・・・」

 

 わずかに開いた窓から生ぬるい風が吹き込んで灯明が揺らぎ、薄暗い影がぐにゃりと歪む。

 なかなか雰囲気ある中で、意外に語り口調が上手かった戸部は、額に浮いた汗を拭うと、結末を目前に緊張する皆の前で喉を「ごくり」と鳴らすと、

 

「先輩は・・・・・・“ハードラック(不幸)”と“ダンス(踊)”っちまったんだよ・・・・・・」

 

 最後にオチをつけて、自ら話を台無しにして一気に白けたムードにさせてくれたのだった・・・。

 なんなんだよ、その変なルビは。ヤンキーマンガの読み過ぎか、厨二バトルラノベの読み過ぎのどっちかじゃねぇか。

 材木座と趣味が合いそうで逆に怖いだろうが、お近づきになりたくなさすぎる・・・・・・。

 

「そんな先輩も今や二児の父親。走り屋はやめて働き始め、そのとき呼び止めた婦警さんと結婚して幸せな家庭を築いている。最近は幽霊よりも奥さんが怖いってよ」

「誰が、ほのぼの談義をしろと言った・・・」

 

 平塚先生が呆れ混じりに言うのが聞こえて、ようやく戸部の二段構えのオチ物語が幕を閉じてくれる。

 最初のDQN系厨二ルビがオチだと思ったら、まだ続きのオチがある話だったのかよ・・・・・・周囲を囲むみんながガッカリした表情になってる中で、このオチ付けて更にガッカリさせたがるとか、心臓強すぎるにも程があるだろ・・・。

 

 しかも結局、「そのとき“は”スピード違反していなかった」ってだけで走り屋っていう交通法違反の犯罪行為を「青春」の二文字で思い出の1ページにしてるリア充先輩の話だったし。

 やはり青春は嘘で悪だ。そんな風に自己と周囲を欺く先輩と仲いい戸部とは友達になれそうにないな。絶対に二度と話しかけないと再び心に誓う俺であった。

 

「やれやれ、君たちは残念漫談しかできないのか」

「いやいや、素人にいきなり怖い話しろって言っても無理ですよ。ストーリーテラーなタモさんじゃあるまいし・・・・・・」

「ふむ・・・、だが社会人には求められるスキルなんだぞ? 飲み会で『面白い話しろ』と言われたりするからな。職場の関係を円滑にするためにも、話芸は磨いておくに超したことはない」

「なん・・・、だと・・・? 俺にはとても無理そうなので関係をぶっ壊さないためにも、やらないのが職場コミュニティで上手くやってく術だと身につけました」

「気遣いが斜め上過ぎる上に、私の言葉も曲解解釈しすぎている!! ちょっと手本を見せてやる!」

 

 そう言って、もっと深い深い溜息をつけ足した後で俺にもツッコミを入れ、今度は平塚先生が蝋燭に火を付ける。

 今度はまともなのを頼むぞと、みんなが期待っつーより最後の希望を託した視線を向けて先生は不敵に笑みで応じると、ゆっくりと語り始める。

 

「私には親友と呼ぶべき存在がいた。木下遙という。

 だが5年ほど前に木下遙はいなくなった・・・・・・。ただ一言、消える直前、私に『お先に』と告げて消えたんだ。それ以来、私も彼女に会うことはなかった・・・・・・。

 だが、数日前のことだ。見覚えのある一人の女が私の前に現れた。

 突かれた表情ながら薄く微笑んでいたのは、いなくなったはずの彼女だった。

 そして私が声をかけようとした時、その背後に見えてしまったんだよ。

 彼女の背中に――『ニコリ』と笑う、見覚えのない顔があることを・・・・・・」

 

 語っていた平塚先生の顔が蒼白になる。その時の恐怖が蘇ってきたかのように。

 あまりにも鬼気迫る表情に、俺たちまで背筋が寒くなってくる・・・・・・それほどまでの恐怖に満ちた、恐ろしげな表情・・・・・・。

 

 ――まぁ、言い方変えちまうと『顔が怖い』ってだけで、それ以外は特に恐ろしさ感じるポイント0ってことなんだけれども。

 内容的には何となく、この時点でオチが読めそうな気がしなくもない一般的事例が多い世の中だったが・・・・・・万が一と言うこともある。

 人の話になんか言いたい時は、最後まで聞いてからにしよう。後で言い訳されても面倒くさいから。

 

「・・・・・・背負っていた子供は、もう三歳・・・・・・あれは本当に怖かった・・・・・・」

「やっぱ結婚して、名字変わって子供できただけだったか、その話のオチ・・・・・・」

 

 予想通りのオチに、思わず声を漏らしちまう俺・・・。

 誰かほんと嫁にもらってやってくれ、じゃないと同情のあまり俺がもらってしまいそうだから・・・そんなことまで思ってしまうほど、ある意味では怖すぎる平塚先生の怪談話・・・(人生の墓場的な意味でだが)

 

 って言うか、この人その話を飲み会でもしてんの? 『面白い話しろ』って求めれて職場の関係円滑にするために? ・・・・・・一気に盛り下がって、楽しく呑んでた奴さえ騒ぐ訳にはいかない雰囲気が場を支配するだけだと思うんだが・・・。

 

 そして実際、今この部屋の空気と雰囲気がスッゲー重い。

 シーンと静まりかえった室内の気まずい空気に耐えきれず、俺はついガラにもなく冗談で笑わせて雰囲気を改善しようと諧謔を飛ばして、

 

「ま、まぁアレだ。確かに怖い話だったことは間違いない内容だったな。

 単に、対象年齢が30代ちょい前ぐらいで、未婚で子供もできたことない一部の人たち限定怪談話ってだけであって、別に悲しい話ってわけじゃな――」

「抹殺撃滅必殺のレイダーブリットォォォォォォォォッ!!!!」

「ぐはぁぁっ!?」

「ヒッキ――――ッ!?」

 

 ・・・・・・そして俺がスクライドごっこで吹っ飛ばされてオチがつく、と。

 肝試し前の息抜きにおこなわれた、いつも通りな奉仕部メンバーによる寸劇はこうして幕が下りる。

 そう言えば、中の人同じだったし監督も同じ人だった気がするな・・・・・・とか思いながら、ひとまず俺は肝試し前最後の小休止に入るのだった。――ガクリ。

 

 

 

 

 

 

 

 まぁ、そんなこんなで怪談話するのに俺たちが役立たないことが証明され、小学生たちには雰囲気を盛り上げさせてから肝試しに赴かせるため、ビジターハウスに置いてあった『学校の怪談DVD』を夢中になって視聴している頃。

 

 俺たちは再び元の部屋に戻って肝試しの準備に改めて取りかかり、事実上完全に他の手段を選べる余裕がなくなっちまった状況の中。

 俺は改めて、先ほど語り損ねてしまった提案内容を、葉山たち含むメンバー全員の前で発表する。

 

「それで、俺がさっき言おうとした提案の続きなんだが・・・・・・」

「却下。どうせ碌な案ではなさそうだから」

 

 ・・・・・・つもりだったのだが、即座に雪ノ下から却下されてしまった。

 ええい、相変わらず俺には悪口言ってから会話始めないと死んでしまう奇病にかかっている麦わら海賊団の奉仕部部長め。

 碌な案じゃないのは認めざるを得ない事実だが、今回は時間ないんだからしょーがないでしょう!? 碌な案じゃないのは否定できないけどな! 大事なことかもしれないので二度、心の中だけでは言っときました!

 

「まぁ、聞け。とにかく聞け。どうせお前も代案なんかないんだろ?」

「・・・・・・(プイッ)」

 

 とはいえ奉仕部内では恒例行事の流れでもあったので、俺としても予想はしやすく用意していた回答によって図星を突かれた雪ノ下を黙らせることに成功した上で、改めて皆に向かって俺の提案を説明するための前置きを語り始めることにする。

 

「せっかくの肝試しだ。これに乗じる形で利用した方が有効だと俺は思う。

 下手に特別なことやろうとするよりバレにくいし、他の奴らを巻き込まずに済むからな」

「そうだけど・・・どう利用するの?」

「肝試しあるあるって言えば分かるか? もしくは、肝試しでよくあることでもいい」

 

 そう言い足して説明してみたが、言われた彼らの反応は芳しくなく。

 

「あ! スパシーバ効果でみんなドキドキ! 仲良くなる、とか?」

「・・・・・・多分だけど、プラシーボ効果って言いたかったのかな? ちなみにだけど結衣、話してる内容的には吊り橋効果のことだよ、それ・・・」

「い、いいの! 大事なのは中身!」

 

 ポンと手を打った由比ヶ浜と、口は笑って目だけ可哀想なもの見る葉山の寸劇で返され。

 

「・・・驚かせてショック死、ね。確かに物的証拠は残らないでしょうし、事故と言い抜けることもできると思うけれど。そこまでするのは非道だと思うわ」

 

 雪ノ下に至っては、俺に非難がましい視線を向けながら三文サスペンスじみた殺人トリック引き合いに持ち出す始末。・・・いつも思うが、コイツの頭の中には『殺して解決』以外の選択肢はないのだろうか?

 本当はサスペンスドラマの犯人が好きな奴なんじゃないかと思うほど、三流推理小説じみた殺人方法的な解釈と提案が普段から多すぎる・・・。

 

「違います。つーか、お前の発想の方が非道っていうよりヒデェじゃねぇか。

 いったい、何歳の爺さん婆さん殺す気なんだよ。驚いただけでショック死する蚤の心臓の小学生なんて、重病人ぐらいしかいねぇだろうが。

 いい加減、よくあるサスペンス見過ぎの発想は卒業しろ」

「キッ!!!」

 

 幾つか的はずな回答が出尽くしたところで、もう面倒くさくなってきたからサッサと話進めるため俺は回答を口にする。

 あと雪ノ下は、自業自得の結果で睨むの辞めてください。目つきが怖いです。視線だけで殺されそうです。

 

「正解は、“みんなで心霊写真を撮りに行ったら巡回中の用務員さんとか先生とか警官に鉢合わせしかけて一人だけ置いて逃げて、取り残された一人だけが怒られる”、だろうが」

「成程。あるわね」

「ないだろ。・・・・・・って、え?」

 

 雪ノ下と葉山が揃って答えて、葉山だけに否定され、雪ノ下の方は肯定してくれたせいで裏切られたシーザーの表情で驚く葉山。

 こういう流れで古代ローマの合議制は崩壊してったのかもしれないな・・・・・・世界史あんま詳しくないから知らんけれども。

 

「本当に怖いのは身近な人間だと、留美以外の奴らにも気づかせてやれば良いんだよ。

 中途半端にでも信頼し合ってるつもりでいるから、自分が裏切ることはあっても、裏切られるなんて思っちゃいない。

 予想外のところから裏切られたから怖くなって、付き合い続けらなくなるのさ。

 あいつらで言うなら、友達だ“と思い込んでるだけの奴”が一番怖いってところだな」

 

 と端的に言ってみたのだが、やはり皆の反応は鈍いままだった。こうして反応を見せられると、自分の表現力がまだまだだということに気づかされる。

 小難しい概念的な言葉を並べれば頭が良さそうに見えるんじゃないかという、どこぞの売れない青春偶像劇作家とかが考えてそうなこすっからい思考が透けて見え――ってあれ? これも前に考えたことあるような気が・・・・・・まいっか。

 

「具体的に説明すると、人間関係に悩みを抱えるなら、それ自体を壊してしまえば、その問題で悩むことはなくなるって事だ。

 みんながボッチになった状況になれば、個人の悩みが原因の争いや、孤立した奴に寄って集ってのイジメ問題やらの揉め事は起きれない」

 

 淡々と計画の中身を話すが、リアクションがいまいちだった。渋い顔して黙り込んだまま沈黙している。

 まぁ具体的っつっても、コンセプトの説明から入ってるから当然なんだけどな。あるいは結論から先に入るやり方の方が良かったのだろうか?

 どうにもボッチは、こういうことの経験が少なすぎるから手順が正しいのか間違ってんのかサッパリ分からん。

 

「要するに人間、本当に怖い思いをしたら、人の事なんて考えていられない。周りの人間を犠牲にしてでも助かろうとしたがる――っていう、生身の人間が一番怖い系のありきたりな結論に持ってかせるんだよ。

 そんな醜い部分を晒し合ったら、もう仲良く一人だけを皆でイジメる関係なんて続けられなくなる。少なくとも、“自分たちの側だけ”仲良くイジメるなんてのは不可能だろう。

 ――そうやって連中をバラバラにして、鶴見留美を取り巻く人間関係をぶっ壊す」

 

『う、うわー・・・・・・』

 

 最後にダメ押しの一言も付け足し足してバッチリ決めてやったら、今度は反応あったんだけど、ドン引きという形での反応でした。由比ヶ浜なんて表情からしてドン引き丸出しで声まで出してくるし。

 雪ノ下に至っては、極限まで細められた薄目状態で睨めつけてくる。お前さっき、殺して解決のサスペンス犯人の提案してきて、今まで何度も同じような犯罪計画言ってきてたじゃん・・・。

 

「ヒキタニくん、性格悪いな・・・・・・」

 

 決して自分では人を悪く言わないタイプの葉山からの評価ですら、この始末だ。俺でもちょっと泣きそうになってくる仕打ちである。

 まったく以て、失礼極まりない連中だった。せめて、「性格ひねくれている」と呼べ。もしくは、「自分から捻くれる道を選んだエリートひねくれ性格だな」と。

 

 性格悪いは「悪い」と言ってるから罵り言葉だが、「ひねくれてる」は時代ごとのニュアンス次第のスラングだ。青春の二文字のため悪口にされる時がある欺瞞なのである。

 自分たちの失敗には特別性を見いだし、他者の失敗はただの失敗と断じる悪のリア充たちが使うスラングとしての「ひねくれ者」は逆説的に、悪に与せずボッチを守ってる俺にとっては正しく真の正義の褒め言葉になるという訳だ。

 ・・・・・・さすがに今回のはちょっとコジツケ過ぎたかな、と思わなくもなかったが・・・。 

 

「八幡は、よくいろんなこと思いつくね」

 

 戸塚だけは感心したように、うんうん頷いてくれたので、やはり俺は正義のボッチで、悪いのは青春を謳歌するリア充の方だと確信した。

 他の連中なら嫌味で言っていると取るかもしれないが、俺はそうは思わない。

 万引きや集団暴走とかの犯罪行為まで「若気の至り」と青春扱いするリア充と違って、俺は曖昧なニュアンスを持ってるだけの言葉を悪い意味で受け取りはしない。だから今さっき思ってたことは前言撤回。

 

「とはいえ、他に何か考えがある訳でもないし・・・・・・この際、しょうがないわね」

 

 睨めつけていた雪ノ下も、消去法の末に決断したらしく、俺の案に賛同する。

 もっとも正確を期するなら、消去法と言うより俺のアイデア一択しか提案されていない状況だったため、事実上の出来レースだったかもしれないけど、今は時間ないので余計ないちゃもん付けは言いっこなしだ。今回ばかりは俺も屁理屈言わずに手早く行こう。さすがに時間的にキツくなってきたからマジで。

 

 だが、そんな中でただ一人、浮かない顔をしている奴もいる。

 

「・・・・・・でも、それだと問題は解決しないんじゃないのか?」

 

 葉山である。

 彼は俯きながら考え込んでいた顔を上げ、俺の方を見ながら懸念を口にする。

 

 そして事実、その指摘は正しい。

 このやり方は問題解決策として正解じゃあない。間違ってることは重々承知の上だ。

 だからこそ俺は葉山の懸念に、こう答えを返す。 

 

「だが、問題の解消はできる」

 

 そう言うと、葉山は俺の瞳を無言のまま、真っ正面から覗き込んでくる。

 あまりに真っ直ぐな視線に見つめられ、俺は慌てて目を逸らす。

 

 ・・・あっぶねー・・・あんまりにも真っ直ぐな視線で見つめてくるから、目と目が合っちゃって一瞬だけでも見つめ合い、思わず友達なのかと誤解しちゃいそうになっちまった。

 やはり葉山は優しく、根も表面もいい奴なんだろう。そんないい奴を、こんな碌でもないと評されてしまう計画に巻き込んでしまって申し訳ないので、今後は迷惑をかけない二度とコッチからは関わり合わないようにしよう。ボッチは空気を読んで気を利かせる生き物なのだから。

 

 それにまぁ、方法論にしたところで、正しくはないし正解でもないが、間違っている訳でもない。

 

 人間関係に悩みを抱えるとき、それ自体を壊してしまえば少なくとも、今現在の人間関係に悩むことだけはなくなる。負の連鎖しか生まなくなるまで腐りきった関係は、元から断ち切らないと糸を引いて尾を引き続けるだけ。

 逃げちゃダメなんて、強者の理屈が通じる世界では正しい考え方でしかない。

 もしくは、赤の他人だけが信じ込める考え方のどちらかだ。

 

 そんなものを強いる世界の方が間違ってるし、それを許してしまう世界も二つ同時に間違っている。

 『俺は悪くない、世界が悪い』っなんて言い方すれば言い訳じみて聞こえるが、現実には間違ってない場面は無数にある。

 いつも自分が悪いなんて、そんなもの犯人と責任者にとっては、都合がいいだけの言い訳でしかない。

 社会が、世の中が、周囲が、自分以外の誰かが間違っていることが原因のことだって沢山ある。

 

 『自分は変えられる』なんてのは、そのゴミみたいで冷淡で残酷な世界に順応して、負けを認めて隷属する行為を正当化する言葉だ。

 自らを取り巻く環境を、綺麗な言葉で飾って肯定的に捉えることで、自己も周囲も欺くことに利用している欺瞞に過ぎない。

 仮に『自分は変えられる』という理屈が正しいのなら、『鶴見留美をイジメてる側の生徒』もまた、今の自分から変わろうとしなければおかしいではないか。

 しかし、その理屈を主張する者達はそれを認めないだろう。全ては彼らのご都合主義を正当化する詐術でしかない。

 

 誰もその事実を認めたくないなら、俺が事実を受け入れ対処する。

 結論を言うと、ルミルミ一人を虐めることで青春を謳歌しているリア充側の女子小学生グループ共よ。爆発してブッ壊れろ!!

 

「そういう考え方か・・・・・・。彼女が、君を気にかける理由が少し分かったよ」

 

 やがて俺をじっと見つめたままだった葉山が、ふっと破顔して妙なことを言い出す。

 あれ? 今の心の中だけで呟いてた後半まで聞こえちゃってたりした? 俺、知らずに声出しちゃってたかな?

 だとしたら、今の心の声聞こえてた前提で考えると、葉山の切り返しが怖くて仕方ない内容になっちまうため、俺は内心で少し慌てながら追加で補足説明もおこなっておく事にする。

 

「付け加えて言えば、どのみち俺たちに“解決”はできない。

 留美と周囲の奴らとの人間関係で生じてる問題は、アイツら自身でしか解決しようのない問題だからな。

 俺たち赤の他人がどれだけ何やったり言ったりしたところで、アイツら自身が『余計なお世話だ』としちまったら手の出しようがなくなるしかない。

 俺たちにできるのは、その問題解決にいたる道を邪魔しちまってる障害物があった場合に取り除いてやるぐらいなもんだろ。

 もともと今回の依頼内容は、『留美がイジメられてる状況から助け出すこと』でもある。人間関係の完全解決まで求められてる訳じゃない。

 依頼内容と目的で考えるなら、それで十分じゃないかと俺は思う。

 完全を求めるから出口がなくなって失敗する。・・・・・・違うか?」

「・・・・・・そうだね・・・・・・そう“だった”のかもしれない」

 

 重々しい声で返事をした途端、一瞬前までとは打って変わって、爽やかすぎる笑顔を俺に向け、

 

「OK。それで行こう。ヒキタニくんのアイデアに乗るよ。ディレクションを頼む」

「・・・・・・ああ」

 

 ギャップ差に驚かされて、思わず言葉を失わされて反射的に応じてしまい――“彼女”という言葉が誰のことを指しているのか聞きそびれてしまったことを、俺はこのとき思わず忘れさせられてしまうことになる。

 

「・・・・・・ただし、俺はみんなが一致団結して対処する可能性に賭けて、だけどね?

 本性というなら、俺はそっちの方を信じたい。根は良い子たちだと思うんだよ」

 

 更には、すぐに爽やかすぎる笑顔で切り返されてしまったため、俺は反問するタイミングを失わされてしまうことにもなった。

 同じ方法でも、俺とコイツでは意味合いがどこまでも食い違うらしいなと感じながら・・・・・・俺はこうも思っていたのだった。

 

 

 

 

 ・・・・・・ディレクションって、日本語でどういう意味だったっけ・・・と。

 なんか思わず引き受けちゃったけど、何すればいいのかしら俺って・・・『ディレクションする』って、どういう事すりゃいい行為なんだろう・・・・・・。

 

 

 『一端ディスケする』とか言えばいいんだろうか?

 『もっとバッファを取る』とか『ロジカルシンキングで論理的に考えるべきだと思うんだよ』とか言いながら、みんな仲良く会議を引っ張っていって成功に導けとか、そんな感じの・・・・・・おかしい。

 

 なぜだか今、頭の中に『頭良さげなこと言いながら、頭悪い会議をしている人たち』の姿が、見たことないのに幻視してしまった・・・・・・これがデジャブって奴なんだろうか?

 

 

 まぁ、とりあえず『概念的な言葉だけ言い出す会議』は失敗するので、たとえ強引でも具体的な案で行こう、具体的に。

 その方が多分早いっつーか、なんかソッチだとヒデェ状況になってグダグダして失敗する気が凄くするから。何故だか、ものすっごく。

 

 気持ちの問題だけ言って、具体的な提案ない会議ダメ。絶対に。

 なぜか心の底からそう思いながら、俺たちの計画は結構時間の夜へと続く。

 

 

 

つづく

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