やはり俺の青春ラブコメはひねくれている。   作:ひきがやもとまち

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本来なら、もう少し長く書けてたつもりが、時間かけて少しずつ書いてたせいで見誤ってたっぽくショートストーリーになっちゃってました。
ただまぁ、最初の頃はこのぐらいから始まってた作品でしたので、とりあえず投稿してみようかと愚考した次第。
一度できた更新するつもりでいたら、予定と違ってたと後から気づくと、やり直しづらいッスよね…。


31話

 

 由比ヶ浜と花火大会開始までの時間を潰すためブラついている間に、東京湾にもようやく日が落ち、中天を藍色の闇が満たす時刻になっていた。

 月も高々と昇って上から目線で、打ち上がってくる花火を愉しみにしているような夜景だった。

 どれほど高く打ち上がっても決して自分がいる高見に届くことはない下界の俗人たちによる足掻きを見下ろして嗤うのは、さぞや愉快な気分になれるものなんだろう。

 

 それはそれとして、下界に広がるメイン会場として指定された広場は、人がゴミのように溢れかえっており、隙間なくシートが敷かれていて、始まる前から杯を交わす人々やら、遠くから木霊す子供の泣き声やら、近くから聞こえる怒号やらが飛び交っていて、物理的に座る場所も精神的に身を置く場所もない、混沌とした様相を呈しつつある状況。

 

 もはや夏の花火大会と言うより、春の花見大会そのものじゃねぇかと思えるレベルだったが、花見大会だからこそ座って見物できる席がなかなか見つからなくて困る羽目になってはいた。

 俺一人なら、どこぞに腰掛けるなり遠くから人混み離れた場所で見物するなり、混んでるから帰るなり色々な選択肢が取り得るのだが、連れがいるとなると流石に話が別になる。

 

「とりあえず、人が少ない方までは来たけど、いやー、それでもやっぱ混んでるねぇ」

「そだな。こんなに混むって知ってたら、小さなビニールシートぐらい準備してきたんだけどな。失敗だったわ」

「え・・・・・・?」

 

 自分のいたらなさに少々ゲンナリさせられながら俺が言った当たり前の謝罪に対して、由比ヶ浜はなぜだか驚いたように小声で呟き、振り返ってみるとアホ面になって(°□°;)としている。

 

 え? なに? 俺いま何か変なこと言った? あ、絵文字か。

 頭の中だけど小町みたいな絵文字表現使ってたとえちゃったのを読まれたのか。お兄ちゃん失敗失敗テヘっ☆・・・ってのは流石にないだろうしな・・・とするとホントに何でこんな反応を・・・

 

 まぁ実際問題、ビニールシート1枚持ってきてるだけで、こんなに歩き回る必要なしに、最初の場所で見物して帰れてたわけだからな。

 それで終われる可能性を自ら潰しちまってたのは、間違いなく俺の失敗だったと断言できる。

 

「なんだよ? 何かおかしな事でもあったから帰るか? それとも帰るか?」

「だから帰らないし! やっと花火はじまったばっかだし! そうじゃなくて!

 ・・・・・・ヒッキーって、気、使えるんだなって・・・」

「はぁ? ばっかお前めちゃくちゃ使えるよ。

 気ぃ使ってるからこそ、誰にも迷惑かからないよう静かに隅っこにいたところを、平塚先生に無理矢理つれてかれて奉仕部に強制入部させられたり、家で休みを過ごしてたらストーカーみたいなメール送られて妹を利用され、赤の他人の小学生共の林間学校にボランティアしにいくのに巻き込まれてただけなのが俺なんだからな。

 つまり大体全部、平塚先生が悪い。俺に気を仕えない平塚先生が全部悪いという結論になる」

「そこまで言う!? もう少し平塚先生にも気を使ってあげようよ! あと、ヒッキーが奉仕部の部員になってて林間学校にきたのって、そんな理由だったんだ!?」

 

 俺の過不足なく、少しぐらいは気を使って暴露する事実を減らしてあげた説明を聞かされた由比ヶ浜が驚愕の叫びを上げて驚きを露わにする。

 

 とはいえ、彼女の気持ちも分からんではない。

 多分、いわゆるモテ男とか呼ばれる連中は、こういう時に用意周到な準備をおこたらずにビニールシート持ってきてたり、気配りもできて今みたいな内情暴露をしない、顔も良い奴が呼ばれるようになるもんだろうと俺は予測している。

 そういう細やかな采配を面倒くさがらずにやってくれる、顔の良くて他人に優しく、ぶっちゃけ都合がいいこと言ってくれる男の方がモテる奴なのだろうきっと。

 顔が良くないとダメそうではあるが。中身も大事だが、顔も大事。それが人から見た他人評価の現実ってもんだ。

 

 

 ただまぁ、そうやって無理してでも取り繕って、普段と違う自分や、一人でいるときの自分と違う面を見せてまでして周囲から勝ち得た愛情は、本当に自分へ向けられた愛情なんだろうか? 本当の自分に向けられている愛情と呼べるものなんだろうか? そう思わない訳でも無い。

 

 好かれるために、愛されるために変わってしまった自分を、自分と呼んでいいのか俺には分からない。

 偽って装って作られたものでしかないなら、どこかで破綻する。逆に本質まで変化している場合は、既に元来の自分ではなくなった後だろう。

 

 そして、ちょっとでも気に入らない本音を出した時とかには、「そんなこと言う人だとは思わなかった」とか言われてアッサリ嫌われるだけだろうしな。

 自分たち好みの気遣いしてくれるから愛してるだけの愛情なら、逆らった途端に掌返しされるのは当たり前の結果でしかない。

 

 結局、気を使っても使えなくてもダメなときはダメになる。

 ・・・やっぱ顔かなぁー、とかどうでもいい思考がよぎる中。

 

 どうやら由比ヶ浜の言葉には、まだ続きがあったらしく。

 

「そうじゃなく! そういう話でもなく! ・・・・・・その、なんていうか、優しい? というか・・・」

「ほう、よく気付いたな。そうそう俺は、日本一と言っていいくらい模範的で心優しい男子高校生が俺なんだ。

 今までいろいろ悪のリア充たちの嘘と欺瞞を見てきたが、誰一人何一つ裁きを与えず見逃してきてやってる。

 俺が並の人間だったら今頃、リア充たちの罪科や詐術を糾弾して、この世界を壊し、新世界の神になってたまである。

 ある意味、他人に気を使って、救世主になる道を自ら選ばなかった男だぞ俺は。世界は俺にもっと感謝するべき存在なのが真実なんだ」

「ものすっごい上から目線で肯定された!? 並の人間そんなこと言わないし、そんなになるまで色々あったりしないし! って言うか、なんかヤバそうな救世主なんだけど!? ホントにそれ救世主なの!? そんなのにならなくて感謝する必要ないと思うんだけど!」

 

 すげぇまともなことを言われてしまった、デスノート使った正義の裁きで悪を殺す救世主キラー伝説の主人公さん。

 まぁ、パクリ名(迷?)セリフ言っただけだからいいんだけど。とりあえず、優しさとか倫理の判定基準なんて人それぞれって事で。

 

「まぁ、なんでもいいから今は座れるとこ探そうぜ。連れてる女の子歩かせっぱなしにする男は、優しくもなけりゃ気を使ってもいねぇだろ。普通に考えて」

「う、ぐ・・・・・・この流れで最後だけスゴくまともなこと言われると、スゴくムカついて素直に賛成したくなくなるんだけど・・・・・・どうして、もっと素直に言えないかな、ブツブツ・・・」

 

 由比ヶ浜はまだ何か言い足りなかったのか、なんか後ろからブツブツ言ってるのが聞こえながら、それでも付いて来れてるのが声の大きさから分かって便利だったので放置して、そのまま進み。

 

 ようやく人通りが少なくなって、空いてるスペースが各所に見いだせるエリアまで来ることが出来たには出来た俺たちだったんだけれども。

 

 

「わぁー! 人が少ないから花火がよく見えるっ。・・・・・・って、ここ有料エリアだね」

「・・・・・・だな」

 

 言われて改めて見回せば、トラロープが張られて区切られているなど、明らかに他に立地がいい貴賓席っぽい場所まで来ちまってたらしい。

 会場になってる広場全体は防音とかの対策用に木々がグルリと囲むように植えられちまって、花火を見物には普通に座ってると見えにくいのが欠点になってる場所なんだが。

 今いる有料エリアの部分だけは、小高い丘になってるお陰で見晴らしが大変良く見物しやすい。

 

 警備体制も万全なようで、バイトのあんちゃんたちがウロウロ回遊している。

 まぁ、バイトの警備で安全かどうかは疑問じゃあるが、言い換えれば用心棒の先生とかチンピラ私兵集団みたいなものだからな。

 金で雇われて護衛なんてもんは、怪しい奴は力ずくで追い払えが定番だし、この付近で立ち止まってると権力後ろ盾にして気がデカくなった頭数兄ちゃんたちにからまれかねん。早々においとました方が賢明か――――そう思っていたところ。

 

 

「あれー? 比企谷くんじゃん」

 

 

 俺の名を呼ぶ声がして振り返って、そこに女帝のように腰掛けている一人の女性の姿を認めて、俺は思わず息を飲む。

 夜闇になお際立つ濃紺の地は風雅さを漂わせ、大百合と浅草模様が涼しげな浴衣姿をまとい、髪型をアップにした大人っぽい色気を放つ妙齢の美女。

 

 ロープによって一線を引かれた区画内にある椅子は、周囲に人を侍らせた玉座の如く彼女自身が腰掛けている。

 

 その姿を見せつけられて俺は、思わず戦慄を覚えずにはいられないほどの緊張を強いられていた。

 

 

 

 ――“有料”エリアで、ものすっごい色っぽい浴衣美人のお姉さんに声をかけられ、「おいでおいで」と手招きされてしまっている状況・・・・・・!!

 親父から何度も警告されていた、美人局の恐ろしさを俺も遂に味あわされるときが来てしまったのかと戦慄させられながら・・・・・・思わず財布の中身を確認したい衝動に駆られずにはいられない男の性!

 

 やはり、親父からの教えは正しかったんだという事実を心の底から実感させられながら――――ふと疑問に思うことがないでもなく。

 

 

 この人・・・・・・どっかで会ったことなかったっけ? 俺って・・・・・・

 

 

 

注:ひねくれ世界の八幡の中で、陽乃さんの印象は『当ててんのよ♡』の巨乳お姉さんです。

 

 

つづく

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