やはり俺の青春ラブコメはひねくれている。   作:ひきがやもとまち

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少し前から書き進めていたのが先頃ようやく完成できたので投稿です。
今話はあまり綺麗に終われなかったのが心残り。あとオリジナル展開が全くできなったのが悔い。
次年時のいろはネタとかも絡めて、自分なりにオリジナル展開ができたらいいなと考えてはいるんですが……どうなる事やら、どう出来ることやら…。


35話

 ぼちぼち時間が差し迫ってきており、文化祭実行委員会の初ミーティングが行われる会議室の席も埋まり始めていた。

 雪ノ下が入ってきた途端に静まり返っていたが、その直前までは俺より先に教室出て仲良くなってたらしい他クラスの女子たちと楽しく会話していた相模なんかは、

 

「っていうか、ゆっこも委員で良かったー。うち、なんか委員にされちゃってどうしようとか思ってたんだよね」

「あたしもジャンケンで負けちゃってさー」

「あたしもだよー。あ、相模さん、みなみちゃんって呼んでいい? その代わり、あたしも遙でいいよー」

「んじゃ遠慮なく。遙あれでしょ? ゆっこと同じ女バスなんだよね? いいなー、うちもクラブやればよかったかもー。うち、クラス運なくてさー」

「あー。F組って三浦さんとかいるクラスだもんねー。みなみちゃん、かわいそー」

 

 とか楽しそうに陰口言い合ってたが、今となっては静かなもんである。

 女子たちの会話っていうのは、こういうところが恐ろしい部分でもあるんだよな。

 げんなりした表情で「クラス運ない」と言いながら、その文脈の途中で三浦の名前を出すことで、言質を取られづらい形での「クラス運ない理由」として語ってくる相模も、それに平然とニコやかな賛同を返しちまえる他クラスの同級生女子にしてもそう。

 

 言葉の一つ一つには大した毒はないものの、数が集まって集合体になることで猛毒にまで進化させちまう。つくづく恐ろしい悪性変異と言える現象だった。

 それでいて、猛毒にはなっても「毒針」には決してなれないところが、彼女たちの会話の真の恐ろしさだと断言できるだろう。

 

 ・・・・・・だって、毒針として本人に言えねぇからこそ、陰口で言い合って猛毒にまで進化させてる訳なんだし。針として相手にさせるヤツなら進化させる必要ねぇし。

 それでいて、本人はいないけど他人はいる場所でしか言いたがらないから、この手の女子会話は恐ろしく、周囲の他人たちにとって居心地の悪い毒の発生源にしかなれんもんなわけで。

 

 関係ない他人たちにとってだけ被害があって、関係ある当事者の前では愛想笑いで誤魔化すだけとか、ホンットこういう毒って恐ろしくって面倒くさい。

 標的を狙うつもりで蒔かれたのに、風に乗って逆方向に散布しちまった猛毒のサリンと、少しだけ似ていなくもない。

 前段階の事件のときには、被害者の人が容疑者扱いされたって話だし、この手の毒は関係ない周囲の他人にとってだけ毒なところがホント恐ろしい。

 

「でも、葉山くん一緒ならいいじゃん」

「まぁね。委員も葉山君に勧められちゃってさー。ほんと困るんだけどー」

 

 挙げ句の果てに、結局そこに落ち着く毒会話。

 『HA・YA・TO・フゥ!』をこんなとこ来てまで聞かされるウザったさよ。

 ・・・・・・正直さっきまでの毒会話以上に、今のが一番うっとうしく感じたのは俺だけなんだろうか? それでいて文句言ったりすると『僻んでるだけだろ』呼ばわりされて社会生命危うくなるし・・・・・・ホント毒だわコイツらの会話って。毒発散してる奴自身にとっては害ないところなんかマジで毒。

 

 ――だから黙ってくれたのは正直ありがたかったので、そのまま放置。

 しばらくして、雪ノ下裁判長の威光も薄れてきたのか、静かな声音で潮騒のように会話を再開しようとされちまいそうになったので、「チッ」と心の中でだけ舌打ちしてやってたところ。

 

 どやどやガヤガヤとした会話が扉の外側から聞こえてきて、時計の針が開始時刻ピッタシになろうとする寸前だったことを、俺たち全員に伝えてくれていた。

 

 

 

「それでは、文化祭実行委員会をはじめまーす。えっと、生徒会長の城廻めぐりです。

 皆さんのご協力で今年もつつがなく文化祭が開催できるよう、みんなで頑張ろう! おー!」

 

 という、やっつけとも思える簡単な挨拶とともに、文化祭実行委員会はスタートすることとなる。

 城廻先輩は、肩まであるミディアムヘアーと、つるりとした綺麗なおでこが眩しい、なんだかホンワカした雰囲気を纏った三年生の女子生徒だった。

 

 彼女と共に入室してきた中には、プリントを抱えた数人の生徒会役員と思しき生徒たちの他に二人だけ生徒以外も混じっており、体育教師の厚木と平塚先生が城廻先輩の後見人みたいに、比較的近くの席に座って会議室を見回している。

 

 おそらく、年齢的にも男性教師の厚木は実行委員会の顧問みたいなポジションについて、女性教師で歳も若い平塚先生はその補佐を・・・・・・とかの理屈で割り振られた配置なんだろうと、俺は彼女たちの座った席順などから推測していた。

 

 年功序列と古くさい因習や伝統に縛られてそうな、そこそこの歴史と権威がある総武校の職員室的には、それなりに理屈として間違ってはいない役割分担のように思えなくもない配置ではあったんだけど・・・・・・正直言って、どうなんだろうか? この人事・・・。

 普段からデスクワークなんて縁の薄い体育教師なんか、文化祭の時期だけ顧問に当てて役に立つものなのかね・・・? 経験不足すぎて大声出すぐらいしか使い道ないと思うけど、まぁ俺の妄想人事でしかねぇんだし今はいっか別に。

 

 とりあえず、生徒会長の城廻先輩が、この会議をリードしてくれる存在らしい。・・・・・・と思っていたのだが。

 

「ありがとうございます~。それじゃあ、さっそく実行委員長の選出に移りましょう」

『・・・・・・??』

 

 ほんわかボイスのほんわか口調で告げられた最初の一言によって、場がざわつく事になる。

 それらの声なき声を要約して翻訳すると、『え? アンタがやるんじゃないの?』である。

 

 正直言って俺自身もその一員だったけど、てっきり生徒会長の彼女自身が委員長も兼任するもんだとばかり思っちまってたし、だからこそ文実の会議室に来て仕切ってるのだろうと推測してしまっていたのだが。

 考えてみれば、そうおかしな話というわけでもない。

 

「えーと、知ってる人も多いと思うけど、うちの学校では例年、文化祭実行委員長は2年生がやることになってるんだよね。私はほら、もう3年生だから今年は出来なくなってて。

 来年度からのことも考えると、3年生が仕切りすぎるのは色々と禍根ばっかし残しちゃうから、あんまり良くないんだよね」

 

 そういう事情によるものだった。

 確かに、3年生の秋口なんて受験シーズンまっただ中に突入する寸前の時期だし、2年次と3年次に文化祭実行委員長やった人が卒業しちまった後には、やった経験者0の状態になるしかない。

 経験も知識もノウハウも全部、思い出と一緒に教室の机にしまい込んだまま、永遠に高校の文化祭から卒業して、しまい込まれたままのタイムカプセルが掘り起こされることは2度とない・・・・・・最悪すぎるなオイ。

 せめて経験者ぐらいは残していってやらねば、というシステム考えた人の切実さが痛いほど伝わってくる割と良い決まりと言えなくもないルールだったろう。――ただし。

 

 

「それじゃあ、誰か立候補する人いますか~?」

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

 ――こういう事態を招かなくて済んでいる限りは、という前提条件付きでの話にはなるが。

 俺のクラスのルーム長が、学年と教室変えて再現された瞬間だった。

 同じような連中だけが集まって、同じような質問を繰り返しただけなら、展開もまた同じのを繰り返すだけになるのは当然の結果だっただろう。

 

 無理もない話だけどな。

 生徒たちに文化祭をやる気がないとまでは思わないし、結構ノリノリでやりたがる奴も多いとも思う。戸部とか、戸部みたいな奴らとか。

 

 ただ彼らのやる気は、あくまで『楽しむ気』があるだけなのだ。

 『皆が楽しめるよう影で頑張る縁の下の力持ち』として、『自己犠牲をやる気』がある訳じゃあ全くない。そういう奴が大半のはずだ。

 

 むしろ、寄せ集めなら少しはマシになるかもしれんが、『押しつけ合った結果』でしかない奴が大半の俺たちに、一体どう頑張れと言うのだろう?

 どう考えたって、求める相手と場所を間違えてるとしか思えない。

 

「なんじゃオイ、お前らもっとやる気出せ。覇気が足らん覇気が。いいか、文化祭はお前たち自身のイベントなんだぞ」

 

 なんか最後に文化祭の顧問っぽい立場にあるらしい体育教師の厚木が、言ってる事だけなら厚っ苦しい熱弁振るって、尤もらしい言葉を並べ立ててはくる。

 

 まぁ、とは言え。

 厚木の言う事も言葉だけなら、まったくもって間違ってはいない。確かに文化祭は俺たち生徒自身のイベントだろう。

 

 ――だって失敗しても出来悪くても、非難されるの俺たちだけで、教師陣は上から目線でグダグダ言ってくるだけのイベントだし。

 邪魔じゃね? 一緒に作業手伝ってくれる教師以外はいらねぇーんだけどハッキリ言って。言わないけどさ。

 

 それでもまぁ、言ってる意見だけなら正しい。まったくもって間違ってはいない。

 最高だ、感動だ。麗しい仲間意識を喚起させる名演説だ。

 

 ・・・・・・ただ俺って、『生徒自身のイベント』の実行委員に、先生の一存で入れられてる立場なんだよなぁ・・・・・・。

 

 平の実行委員は先生からの介入で決めても良くて、実行委員長は自分たちの立候補で決めなかったら覇気がないと怒られるだけって状況は、文化祭が『生徒自身のイベント』じゃなく。

 『俺たち教師が巻き込まれたくないから押しつけたいイベント』とか思われてる気がしなくもない対応なんスけど、どーなんですかね先生方的にはの話として。

 

 心の中でそう思い、自分でも腐った精神がゲンナリ気味に腐った瞳となって、厚木の横で腕組んで瞑想している平塚先生に向けられてみたところ。

 

「・・・・・・(にこっ☆)」

 

 と邪気もなく実年齢よりも若く見える笑顔で、可愛らしく微笑まれてしまった。

 それで分かったのだ。・・・・・・まったくコッチの意思、伝わってねぇな・・・という悲しい現実に。 

 

「え、えーっと・・・。誰もいない、のかな? 委員長になると結構お得だよ? 内申とか、推薦狙ってる人とかには有利だと思うし―――あっ。そーだ、推薦と言えばっ」

 

 いきなり沈黙に満たされた実行委員の空気に慌てたらしく、ほんわかした見た目の女子生徒で上級生でもある城廻先輩が利で釣ろうとして、途中でなにかに気付いて言葉を止めると、沈黙したまま座っている実行委員たちの中の一人に視線を向けた。

 

 その視線の先に座っていたのは―――雪ノ下だった。

 

「今年の二年生だったら・・・・・・あの、雪ノ下さん、だよね?」

「・・・・・・はい。そうですが、私がなにか?」

「ああ、やっぱり! ハルさんの妹さんなんだ! ハルさんも実行委員長でね~、あの時は総武高の歴史に残るスゴい文化祭だったんだよねー」

「・・・・・・」

 

 無邪気な態度で懐かしさも込めて悪意は全くなく、城廻先輩は雪ノ下にとってナイーブな家庭の複雑な問題らしい部分を、先っぽが丸まった鋭くないトゲで突いて刺激してくる言葉を並べ立てて、雪ノ下の方は無表情に沈黙する。

 

 ・・・・・・それだけで、ハルさんこと雪ノ下のお姉さんである雪ノ下陽乃さんと城廻先輩との関係性がわかろうというレベルの分かりやすすぎる反応の格差だった。

 

 おそらく城廻先輩にとって、陽乃さんは『恩恵だけを与えてくれる存在』であって、表面的な部分だけでも有り難すぎる存在だったから、『相手の内側を知ろう』なんて気持ちは少しも感じた事がないまま終わってしまった先輩後輩の関係だったんだと思う。

 

 表面的な部分から与えてもらえるものだけで満足し、それ以上は踏み込まず、踏み込む必要性を感じることもなく、与える側からも『表面だけで満足するなら表面的だけでいい』と割り切って付き合っていた。

 悪意もなければ善意もない、ただ『可愛くて、いい子の後輩』それだけの立場として、『いい先輩として“だけ”』付き合って“あげていた”のだろう。

 

 かつて、裏切りの五番隊隊長が言いました。

 『憧れは、理解から最も遠い感情だ』――と。

 

 その通りになってたのが陽乃さんと城廻副隊長、もとい現生徒会長の当時の姿での関係だったんだろうなーって。

 今見ただけで、そう思わされるほどの温度差が、雪ノ下と城廻先輩との『ハルさん評』には存在している。そう思わされた瞬間だった。

 

「おお! お前、雪ノ下の妹か! あの時みたいな文化祭に期待しとるけぇn――」

「実行委員として善処いたします」

「――の、う、うぅむ・・・・・・」

 

 そして便乗したかったっぽい厚木が、遠回しに「お前やれ妹だろ」と言って来ようとしたのを先回りして、ごく簡単な儀礼的とされてる言葉で冷たく封じ込め、言い終える前の半端なところでセリフ切られた厚木が誤魔化しのためか、なんかモゴモゴ言ってる無様を晒す。

 

 ・・・やっぱ、コイツ要らねぇんじゃねぇかな?

 経験値不足にも程があるっぽいし、先程の反応から見て『前回の文化祭では雪ノ下お姉さんの独壇場で、良いように使われてるだけで楽でした』ぐらいの役にしか立ててねぇぞ、コイツ絶対に。

 

「えーっと・・・・・・雪ノ下さんがダメみたいだし、他の人の中で誰か・・・・・・どう?」

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

 

 そして相変わらず、先程までと同じ展開を無限ループで、閉ざされた時間の中で生き続けている僕たち私たち総武高校の生徒たちによる文化祭実行委員メンバーたちでしたとさ。

 

 

 ・・・・・・どーにも、長丁場になりそうな気配が漂い始めてしまい、一度は拒絶した雪ノ下も居心地が悪いものを感じざるを得なくなってきたのか、ちょっと視線をさまよわせて身動ぎし始め。

 

「雪ノ下さん・・・やっぱり、ダメ・・・かな?」

「・・・・・・」

 

 他の候補が候補になってくれない状況で業を煮やしたらしき城廻先輩が、善意の無垢なる期待というプレッシャーと押しつけを加速させ始め、悪意には強いが善意の頼まれには弱すぎる部分を持った翻訳コンニャク雪ノ下が諦めたように溜息を吐き。

 

 あと少し。あと少しで、『しょうがないなぁ、城廻太くんは』となってくれそうな、そんな空気が会議室の中で彼女たちの周りだけ包み込んでくれた、その瞬間!!

 

 

「はぁ・・・・・・しょうがn――」

「あの――みんなやりたがらないなら、うち、やってもいいですけど」

 

 

 雪ノ下の声にかぶせるように(偶然だとは思うけれども)自信なさげな声で放った相模の言葉によって、状況は一変させられることになる。なっちまった。

 

「本当!? 嬉しいな! じゃあ、自己紹介してもらえる?」

「は、はい。――2年F組の相模南です」

 

 相模からの自主的な立候補の意思を聞かされた城廻先輩は、嬉しそうに手を打つと食い気味に彼女を壇上へ上がるみたいに挨拶するよう促す。

 あるいは雪ノ下に対して押しつけるみたいになってたことに罪悪感を抱く部分もあったのかもしれない(みたいっつーより完全に押しつけてた訳だが)

 自分から進んでやってくれる人がなるなら、上級生からの押しつけ一存で選ばれるよりはずっと良い。その点では俺も不満はなければ異論もない。

 

「こういうの、少し興味あったし・・・・・・、うちもこの文化祭を通して成長したいっていうか・・・・・・、あんまり前に出るの得意じゃないんですけど、あれうち何言ってるんだろ、じゃあやるなって話ですよね!

 あ、でも、そういうの変えたいと思うし、なんていうかスキルアップのチャンスだと思うんで頑張りたいです」

 

 そういう言葉で、相模文化祭実行委員長からの就任挨拶は終わりを迎える。

 うん、まぁ、なんて言うんだ? こういう時って。―――なんでコッチがお前の成長を手伝わなあかんのじゃ、とか。

 「自分がスキルアップするチャンスだと思った」とか就職面接で落とされる志望動機の定番だろうが、とか。そーいう感想でも思いついて語ってやればいい場面かもしれないとは思ったのだけれども。

 

 

 ・・・・・・ただ、俺としては別の問題が気になってたので、いまいちソッチ系のひねくれ思考には向かうことが出来づらい心境にあったらしい。

 

 別に相模が、自身のスキルアップのために文化祭実行委員長をやるというのは別に良いんだ。『実行委員長として委員会を率いて文化祭を成功に導くスキルの上昇』を目的として努力するのであれば、俺たちとしても異論はない。

 それに協力するのだって、その為に文化祭実行委員会はあるわけだから、問題視すべき部分はなにもないと言っていい。

 就職面接で落とされるウンヌンの方はと言えば、俺たちは文化祭実行委員であって人事担当の面接官ってわけでもない。

 会社で使うヤツの有用無価値を判断して、自分自身は特に関係がない相手のスキルがどうだろうと知ったことではない立場では残念ながら慣れない位置に今の俺たちは座らされちまっている。

 

 だとすれば、相模が委員長に立候補した志望動機、それ自体は別に何だって良いし問題ないことになる。

 

 ――本当に、『言っている通りの内容を行うつもりで立候補した』というのなら、特に大した問題が起きることもないとは思っているのだが・・・・・・。

 

 正直、夏祭りのときに俺主観では始めて出会っちまったときの印象が強いコイツには、そういう理由で行っていた立候補だったとは、どーしても思えない自分がいるのだが・・・。

 

 しかし、疑念うずまく俺と違って、他の連中は特に異論はないらしい。

 あるいは、自分がやらなくて済むなら誰でも良いから早く確定させちまおう、とか思ってるだけなのか。

 

「うんうん、いいと思うよ、そういうのも。大事だよね、スキルアップ。

 じゃあ、他に候補がいないようでしたら、相模さんが委員長でいいかな?」

 

 会長からの確認の言葉に、まばらな拍手が起こって「賛成少数、反対皆無」で相模の立候補は可決されることが民主的に決定させられる形となる。

 続いて、委員長以外のメンバーの役割決めも行われ、こっちの方は割とすんなり話が進んで、それぞれに自分の特性や能力に合っていると感じさせられた役職へ志願して、余り者たちは余った場所へと割り振られていく。

 

 やがて会議室での初ミーティングはつつがなく終了し、なんの問題も起きることなく文化祭実行委員として始めての顔突き合わせする日は終わりを迎える。

 

 

 帰りしな、まーた仲良しグループで集まってダベっている相模たちの後ろを通り過ぎる時。

 

「ノリで実行委員になっちゃったよ~、どうしよ~」

「大丈夫だよー、さがみんならできるってー」

「そうかなー、できるかなー。っていうか、うち、さっき超恥ずかしいこと言ってた気がするんだけど・・・」

「そんなことないって、よかったよー。それに、うちらも手伝うし」

「だよだよー」

「ほんとにー? ありがとー!」

 

 とかいう頭悪そうな会話を、聞きたくもなかったものの位置的な理由で聞こえてしまった俺としては、こう思わざるを得なかった。

 

 ・・・・・・コイツらが手伝っても余計ダメになりそうなだけな気がするな・・・と。

 

 0になに掛けても0にしかならないのは無害ってことでもあるが、他の生物の毒を蓄積して猛毒に変化させる、膨らむフグが持つテトロドキシンに似ている場合は、果たしてどうなるものなんだろうか・・・・・・と。

 

 

 

 ただ―――この文化祭実行委員会にきて、確実に正解だと分かったことが一つだけある。

 雪ノ下。お前は・・・・・・

 

 

 『将来の夢:父の地盤を継いで立候補』

 

 

 って、無理じゃね? ってゆーか本気でやる気あって書いてなかっただろ絶対に。

 高校の文化祭実行委員長にさえ立候補するのも推薦されるのも嫌がるヤツが、政治家として選挙に立候補とか・・・・・・ワロスWWW

 

 

雪ノ下「・・・・・・嫌な男、嫌な男、嫌な男、嫌な男、嫌な男、嫌な男・・・!!」

由比ヶ「ゆ、ゆきのん! ドウドウっ」

 

 

つづく

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