やはり俺の青春ラブコメはひねくれている。 作:ひきがやもとまち
内容的に納得いかず、直せたら直すつもりだったのですが……どうにも上手く出来ません。最近オリジナリティーが低下し過ぎている……。
何とかするよう努力してる最中ですので、とりあえず話を続けます。
雪ノ下が実行委員会の副委員長に就任するという伝達があったのは、相模が奉仕部の部室にやってきてから数日経った後のことだった。
俺と同じ記録雑務でしかなかった一人が、委員長からの発表によって副委員長になる旨が分実メンバー全員に伝達されたわけである。
もともと顧問の厚木をはじめとして、めぐり生徒会長からも「“あの”はるさんの妹」として一目置かれていただけあって、期待されてた大型ルーキー満を持しての登場といったところだ。
一方で分実メンバーの半分ぐらいは、この人事が相模委員長の意向によるものだということを推測できてたかもしれない。
だって本人がやりたかったらミーティング中に立候補するだろうし、めぐり先輩から打診されて受けてもいい、委員長から指名されて受諾するってのも形式としてはよくあるパターンの一つだろう。
それらがないまま、ミーティング前に委員長からの発表という形になったのは、相模の希望に添うには都合が良かったからだと思われる。
ただ、この選択が相模にとって都合がいい結果をもたらす選択になってくれるか否かは現段階では分かりようがない。
まぁ何はともあれ、人事面での小さな微調整が行われ、我らが総武高校文化祭実行委員会は正式に活動をスタートすることになった訳であるが・・・・・・ここに来て、誰にとっても予想外な大きすぎる問題が発生することになる。
それは雪ノ下雪乃が、副委員長としての能力を、全く持ち合わせていなかったという致命的欠陥によるものだった――。
「それでは、定例ミーティングを始めます」
その日も定刻通りに午後四時頃の会議室へ集まっていた俺たち分実メンバーは、何度目かになる定例ミーティングに参加していた。
相模委員長から掛けられた号令に、よろしくお願いしますと唱和と一礼が形式的に、それぞれから返されてミーティングはスタートする今まで通りと同じ流れ。
「じゃあ宣伝広報、お願いします」
「提示予定の七割を消化し、ポスター制作についても、だいたい半分終わっています」
「そうですかー♪ いい感じですね~」
まず担当部長から現在の進捗状況について報告し、報告を受けた相模は満足そうに頷きを返している。
期待されて満を持して副委員長に就任した雪ノ下は、さっそくスケジュールを切り直して委員会への周知を徹底させ、各部署の進捗状況を日報で提出してチェックしていく仕組みを導入して、今日まで業務は滞りなく進んできていた。
彼女がおこなった施策はそれだけではなく、東にポスターの掲示場所で悩んでいる広報あらば指示を出し、西に有志団体が集まらずに困っている有志統制あらば地域賞を創設して物で釣る。なにごともタダでは人は集まりづらいのが現実である。
いずれも形ばかりは実行委員長である相模南の名で実施されてはいたものの、そのほぼ全てを雪ノ下がやっているのだろうと周囲からは思われてたことは想像に難くない。
俺のような下っ端には執行部全体のことは分からないが、雪ノ下がもの凄い勢いで働いて事態は万事順調に回っているように見えていたのだが・・・・・・実際はそうでもなかったらしい。
「いいえ、少し遅いわ」
「・・・え?」
――なにしろ相模委員長が満足そうに頷いた直後に、雪ノ下自身が待ったを掛ける言葉を発してきたからな。本人が言ってんだから順調じゃなかったってことなんだろ、多分だが。
「掲示箇所の交渉、HPへのアップは既に済んでいますか?」
「いえあの・・・まだです・・・・・・」
「急いでください。社会人はともかく、受験志望の中学生やその保護者はHPを結構こまめにチェックしていますから」
「は、はい・・・」
雪ノ下のノリに慣れがなく、オマケに存外ダメな部分が多い内面も知らないらしい宣伝担当はブリザードの気配だけ見て気圧されたように座り込む。
会議室内に沈黙が降りる中、ボッチの割には空気読まないっつーか、読みたくても読めなさそうな雪ノ下が気にした様子もなく「相模さん、続けて」と横にいる相模に先を促し会議を再開させてしまっていく。
「あ、う、うん。じゃあ、有志統制、お願いします」
「はい、有志参加団体は現在10団体まで増加してくれました」
「それは確かに増えたねっ、地域賞のおかげかな? じゃあ次は・・・・・・」
「――それは校内のみですか? 地域の方への打診は? 例年、地域との繋がりという姿勢を掲げている以上、参加団体減少は避けないと。
それから、ステージの割り振り、スタッフ内訳などのタイムテーブルを一覧にして提出してください」
「わ、分かりました・・・」
一事が万事、この調子で“委員長が”先へ移ろうとするや否や手厳しい追求がやってきて、なぁなぁで進めていくことを決して許さない。
保健衛生や会計監査の担当部署にも同様で、報告を聞かされるたびに詳細な確認と指示が雪ノ下から飛んでくる。
ちなみに俺たち記録雑務には、特にこれと言って確認やダメ出しが飛んでくることはなかった。そして仕事そのものも無いに近い。だって記録係だし、当日の記録が一番の仕事な役職だったから加わったのが俺だしな。
現段階では記録するための準備が関の山で、それらのデスクワークや他部署との交渉は上級生の方が適任で、自らの意思でボッチになる道を選んだエリートぼっち戦士である俺向きの仕事では全くない。向いてないから声もかからない。
孤高とは、ボッチとは、そういうもの・・・・・・意外と楽でいいな。この立ち位置。
「それから、来賓対応は生徒会でいいでしょうか?」
「うん、生徒会で大丈夫だよ」
「では、そちらはお願いします。去年からの来賓リスト、アップデートをかけておいて頂けると助かります」
「はい、了解」
――閑話休題。
そんな雪ノ下のハイペースに平然とついて行けてた唯一の存在だったのは、生徒会長のめぐり先輩で、彼女だけは気を抜くことなく聞かれた質問に対して即座に答えることができていた。
さすがは生徒会長であり、総武校の歴史に残ってるらしい文化祭の関係者だった人でもある。手際がいいし、見た目よりずっとタフで対処能力も高い人のようでもあったのだが――そのめぐり先輩もまた、思わぬ欠点を持つ人物だったことが直後に露呈されることになる。
「いやぁ、雪ノ下さんスゴいね。さすがはるさんの妹さんだ」
「・・・・・・いえ、大したことは」
めぐり先輩から、感心しているのか、姉の方を褒めてるだけなのか、俺的には判別しがたいが一般的には高く評価されてると解釈されそうな言葉を笑顔で言われる雪ノ下。
そんな彼女に、下心なき賞賛に慣れがない雪ノ下が、少しだけ戸惑ったような声音での謙遜なのか、「委員長が気づかなかったミスの指摘ぐらい私にとっては大したことではありません。途上国にはODAを、ホームレスには炊き出しを、相模さんには私の補佐を」とか遠回しに言いたかっただけなのか判断の難しい返事を返している。雪ノ下ボイスは判定が難しい。
それでも尚、確かに雪ノ下の手腕がスゴかったことは事実だった。大したもんだと、ボッチのエリートたる俺でさえナンバー1近くだと認めざるをえないほどに。
周囲の分実メンバーからも、「雪ノ下さんスゴいねー」とか「って言うか委員長も雪ノ下さんがやればいいのにね」とかまで聞こえよがしに囁いている奴がいる。
生徒会メンバーたちの雑談では、もう時期会長候補にとかいう話が漏れ聞こえてくる程に。
それ程までに雪ノ下雪乃の辣腕ぶりは凄まじく―――だからこそ『委員長を補佐する副委員長としての能力』を全く持ち合わせていないのが彼女だったという事実が如実になってしまうことになる・・・・・・。
なにしろ、この状況で一番キツイ立場に立たされてたのは、委員長の相模だったのは確実なのだから。
同じ二年生同士で、横に並んで委員長と副委員長がコレでは、差を見せつけられて周囲から見下されるばかりだ。
雪ノ下が単独で豪腕ぶりを発揮するだけだったなら、『優秀だけど堅苦しくて息が詰まる実行委員』とかいう程度で終わったかもしれないし、あるいは雪ノ下が委員長で相模が副委員長だったら違う評価になっていたかもしれない。
副委員長が委員長より優秀じゃないのは本来、当たり前の序列ではあるのだから。・・・・・・それが逆だった場合だからこそ相模はキツイ状態に立たされている。
しかも、自分が選んだ行動の結果によって。
同級生の女子生徒に、自分の補佐を頼みに行ってしまったせいで・・・・・・。
――まぁ、要するにアレだ。
日曜に家事やってる妻の前で、ゲームやってる父ちゃんみたいなものである。
普段は働いて稼いでるから、たまの休みぐらいゲームしてダラケ寝してるだけなんだけど、何となく居心地悪そうなとき多いよねアレって・・・。
しかも、夫だったら働いて家計を支えてるから休日ぐらい許されるかもしれんけど、同級生の場合はどうなるか・・・?
周囲からの目は親父以上にキツそうな気がしてならず、俺は初めて相模に同情的な気分になっていなくもなかった程に。
確かにアレはきつい、休日の親父はキツそうだったから・・・。
さらにはトドメ役として、めぐり先輩までいると来ている。
本来なら、相模を委員長に任命したのは彼女だし、この場で最上位の地位にいるのは期間限定の分実委員長ではなく生徒会長であり、学生にとって学年は絶対的に近い壁であり階級でもあるのは昔も今もあまり変わっていないもの。
その生徒会長が、副委員長だけを褒めて、委員長にはノーコメントでは、下の連中は上位者の方針に合わせやすくなるし、遠慮も容赦も掛けることが少なくなる。
免罪符と言うより、お墨付きを与えられたようなものだからだ。めぐり先輩には生徒会という『一部署』を動かすのに十分な力があるみたいだが、『複数の部署を動かすため全体のバランス取り』みたいな能力はあんまり期待できないようだった。
そして当然のように、雪ノ下自身も。
本来のトップでありながら後れを取った相模と、役職的には2番手だがトップより優秀な雪ノ下という比較対象がいるのを、皆の見ている前で明確に示しちまったことで両者の差が浮き彫りになりすぎた。
雪ノ下を褒める言葉は、相対的に相模への蔑みになることを、多くの者に理解させてしまった。
人のいなくなったところで相模に伝え、終わった後で個別に指示させるとかの手も使えなくはなかったろうが、効率優先の雪ノ下には思いついても用いた可能性は低く。
カンペやら事前の台本作りなんかも、雪ノ下の性格的に向いてない。
どこまで行っても雪ノ下は、トップとしての能力しか持っていなかった。
だから今現在も、トップとしての仕事をやっている。
委員長の仕事を、副委員長という役職でやっているだけ―――それが雪ノ下雪乃副委員長が、この文化祭実行委員で今のところ、誰一人何一つ救うことができていない理由になっている部分だった。
そんなこんな事があって一夜明け、今は昨日から見た翌日。
雪ノ下委員長が相模委員長代理をあやつっての大陰謀もとい、相模をマイクにした雪ノ下フォーク委員長による大活躍作戦が開始された次の日の放課後。
今日もまた、文化祭準備の事柄について手厳しい追求と、なぁなぁで進めていくことを決して許さない声の主による、詳細な確認と指示が微妙な雰囲気と沈黙とを降りさせていた。
ミュージカル『☆の王子様』キャスティング
ぼく:比企谷
王子:葉山
「いや・・・なん、だと・・・とか言う以前に無理だろコレ」
「えぇー!? なんで!? どうして!? だってハヤ×ハチは薄い本ならマストバイだよ!? っていうかマストゲイなんだよ!
やさぐれた感じの飛行士を、王子様が純真無垢な温かい言葉で――責める! ソレがこの作品の魅力じゃない!? ならこの配役しかありえない!!」
昨日とは、教室の場所と配役違ってだけだったけどな。
監督兼演出兼脚本という、演劇が出し物のクラスにとっては実質的な実行委員長になっちまっていた海老名姫菜さんによる、イヤな汗がしたたり落ちるほど暑っ苦しい文化祭準備のためのキャスティングが行われている最中に、今の俺たちのクラスはなってた訳で。
役に選ばれたくない、というより劇そのものに参加したくない男子たちの間には、選ばれないよう目立たないため微妙な沈黙が降りかかり。
小声でざわつくクラスメートたちを無視して、制作トップの権力をフル行使しながら次々と配役を指示しては、選ばれた者たちの断末魔と選ばれなかった者たちから安堵の溜息が漏れる。
まさに昨日とは違う意味で同じような展開が繰り広げられている真っ最中だった。
まぁ、こんな光景を『同じようなもの』とか口に出していったら雪ノ下が怒るかもしれんが。だから言わないんだけどね?
「いや俺、実行委員に選ばれちまった後だし。演劇の練習と両立できる分身の術とか使えねぇし」
「そ、そうだな。演劇だと稽古とかも必要になるから、文実やってもらってるヒキタニくんを起用するのは、あんまり現実的じゃないな。それこそ分身の術が必要になるくらいには」
「そっか・・・・・・残念」
「うん、だからさ。もう一度、全体的に考え直した方がいいんじゃないかと思うんだ。現実的に可能な役の割り振りとしてその、・・・・・・主役の王子様とかも含めて」
だが、教室変わればメンバーも変わって、皆が皆同じままを繰り返すだけではないと言うことなのか、文実のときと違ってハッキリと反対意見を述べて根拠も付け足すことで、自分がやりたくない本心を誤魔化す詭弁を用いて反論してくる葉山みたいな奴もいるわけで。
雪ノ下のマイク状態な相模委員長と、自主的に雪ノ下委員長の子分になりたそうな目で見てきそうなメンバーばかりじゃない辺りが、文実よりも扱いにくそうな癖のある俺たち私たちの2年F組。
・・・・・・おかしいなぁ。
愛着ってほどのものは全く感じてない所属クラスでしかないとはいえ、自分のクラスの方が寄せ集めの文実メンバーより曲者集団だった可能性が出てきた途端に、身内だと思われるのイヤになってきた自分がいる気がするわ・・・。
やはり所属するクラスが文化祭実行委員よりカオスな青春学園物はまちがっている。
「そ、それにホラ。もともと役を誰がやるかは、本人からの希望を募って決めることになってたわけだし。改めて皆の意思を確認するのも悪くないと思うんだ。
えーっと、みんな。こないだのキャラの説明文は気にしなくていいからな? そういう描写をあからさまにはしないから」
『・・・・・・・・・・・・』
と、あからさまに狙いは別にある人道上の配慮という名の取り繕いを、葉山がクラス男子みなに向かって訴えかけてはみるもの、当然やりたがる奴は0のまま。
・・・っていうか、何気にアホなんじゃないのかコイツは?
あのプロットを見せられた後で立候補する奴おらんだろ、普通に考えて・・・・・・。
その劇やりたいと言った奴の趣味と目的知った上で、「自分やりたいです」とか言っちまったら、そういう気があることバシバシ出しちゃってる人扱いされかねないじゃねーか。
イヤだよ、同じクラスの奴らに明日から、そういう奴を見てくる視線で見られる立場になるなんて・・・・・・まだ無理矢理選ばれてイヤイヤやる方がマシなぐらいだし。
もし、そういう目で見てくる奴がいた時にはイヤ過ぎるし。
「あー!もう! こうなったら最後の手段! 本命サークルは諦めて、確実に入手できそうな大手を確保する方針に変更!
やさぐれ感はちょっと減るけど―――こんなところでどーよ!?」
カカカッ!!と。少しの間だけ落ち込んでいた海老名さんが復活し、嵐のような勢いでチョークと黒板消しをふるってキャステキング計画案を修正。
ぼく:戸塚
王子:葉山
という風に海老名さんによって、委細かまわず取り合ってもらえることなく変更された。
「・・・結局、俺は出なきゃいけないのか・・・」
「お、そのやさぐれてる感じ、イイネ~♪ うふ★ ウ腐腐腐・・・・・・♥」
とまぁ終始こんな調子でキャスティングが進められていき、そのたびに「別の奴はいないか?間違いじゃないか?」とかの確認と、人によっては女生徒からの支持が海老名さんに寄せられていく(例:葉山と戸塚がBLの主演助演等)
「そして――貴女! 川崎さん!」
「へ? えっ!? あ、あたし!?」
「知ってるぞ~? 制服とかブレザーとか、ちょいちょい改造してるよね~? そのシュシュもハンドメイドと見たっ。というわけで川崎さん、製作担当は君に決めたので衣装よろ~」
「ちょ、え、そんな適当に・・・」
「これ、すごく難しそうだけど・・・・・・、僕でいいのかな?(キラキラ☆背景)」
「いやだぁ!」
「地理学者だけはやめてくれぇ!」
「俺のマッターホルンがぁー!?」
あまりにパワフルかつ鮮烈だった挙げ句、その上カオスですらある海老名さん指揮のもとでの2年F組による文化祭出し物準備。
・・・・・・にも関わらず、雪ノ下の方と違って誰の口からも来年度の文化祭実行委員長に彼女を推す声や、口さがない者からの悪意ある蔑みや冷笑は聞こえてくることはなく。
方向性が明確にされて業務の効率化も進んだことによって、更にクラス内の雰囲気は微妙さを増し、もうヤケクソ感が生徒たちの一部(主に男子)から吹き上がってきているように見えなくもない今日この日の放課後のこと。
・・・・・・比較対象にして比べてみると、スゲー差だなぁ・・・。
両方とも遅れを取り戻したのに、なんか全く別物にしか見えやしねぇ。差が浮き彫りになろうとなるまいと、重要部分が変わらないんだったら他はどーでもいいから無視しろってレベルで、誰も気にしてるようには見えねぇわ。
川ナントカさんが褒められてるのに、裁縫できない女子の代表っぽい三浦に蔑みの目を向けてくる奴は誰もおらず、女子たちの視線は葉山と戸塚だけを、獲物を見張る獣の瞳でロックオンしたまま一瞬たりとも離そうとしねぇし。
やはり俺のクラスが文化祭実行委員会より青春してる文化祭の出し物は内容的にまちがってないか?――と俺は問いたい。
つづく