やはり俺の青春ラブコメはひねくれている。 作:ひきがやもとまち
区切りのため『続』で別けてみました。字は変えましたが。
内容も少しは変われるよう意識してみましたが、マイナーチェンジ程度だった気もしなくはなし……今後も課題にし続けねば。
45話
『修学旅行事前学習レポート 2年F組 比企谷八幡
調査テーマ:八坂神社と御霊信仰について』
八坂神社の祭神は牛頭天王である。牛頭天王とは疫病や災いをもたらす存在であり、本来は忌み嫌われる疫神だが、それを八坂神社では神として祀っている。
それは御霊信仰のためであり、御霊信仰とは害をなす疫神を「御霊」として祀り鎮めることで祟りを免れようという信仰のことだ。
彼の天神、菅原道真も怨霊と恐れられた後、崇められるようになって今に至ることになった。
嫌うが故、恐れるが故に迫害して忌む。それが一周回って崇め奉られる存在となる。
この国では怨霊だと忌み嫌っていたものを、災いを避けるため神様にしてしまうこともあるのだ。
つまりは昔の人々にとって、疫病や祟りや悪霊でさえも、平和な生活という青春を謳歌し続けるためのスパイスでしかなかったと言うことなのだろう。
彼らが何故そのような行為を取ったかと言えば、『受け入れるため』の常套手段だからに他ならない。
受け入れがたい何かを受け入れるための欺瞞でしかなかったのが、歴史的真実だったのである。
例を挙げよう。
一学期こそ傷ついた級友のシンパたちが、傷つけた側へのロビィ活動に勤しむなどの仲間意識を見せていたクラスメイトも、「可哀想ブーム」が去って飽きがきた頃には、事の発端となった事件は忘れ去り、ただ出来事の残滓として悪く言っている相手への否定的感情だけを「なんとなく習慣だから」で続けてるだけの扱いになってしまう。
宗教的な儀式と同じく、由緒なり謂われなり元々の意味は忘れ去られ、集団の結束や再確認するための手段として認識されるようになっていく。
今も昔も、人はイヤだが避けられない現実を受け入れるため自分を誤魔化し、自分を騙しながら生きていく手段として伝統化してきたのだ。
しかし彼らは、それらを認めないだろう。
だからこそ、昔の人々は『御霊信仰』という手段で妥協案とし、今を生きる人々は『青春』に置き換えることで現実から目をそらす。
だが、悪神を神として崇めるなら、それは欺瞞だろう。嘘も欺瞞も秘密も詐術と同様に、疫神も糾弾されるべきものだ。
故に私は――現代に蘇った青春という名の『御霊信仰』よ。砕け散れ。
――文化祭が終わり、体育祭も大過なく過ぎさると一気に気温は下がり、涼しいと言うより寒い風が吹き抜ける季節になっていた。
さらに言えば、俺の周囲は一層寒々しい。
「っべ、修学旅行どーする?」
「京都じゃん? USJで決まりだろ? U・S・J! U・S・J!」
「それ大阪やないかい」
「出った! 本場のツッコミやで!」
・・・・・・戸部の寒いギャグが、寒いのだ。
ただでさえ寒い季節になってるから、余計に寒い。
おかげで一言いうたび、1度気温が下がっていくような錯覚すら覚えさせられそうになる昨今だが・・・・・・まぁ、いつもの事ではある。
気にしたところでコイツのギャグが面白くなる日は、卒業する年の春になっても訪れそうにないので妥協案を見つけるしか他に手段がない。厳しい現実を受け入れざるを得ないクラスメイトという環境は過酷だった。
「つか、大阪まで出るのめんどいでしょー」
「戸部だけ行けばいいんじゃね?」
「っかー! 俺だけハブとか、それどこのヒキタニくん? ナニタニくんだよ~」
あと、ついでとして『さがみん可哀想ブーム』の名残として、『ヒキタニくんをネタにしようブーム』が残滓としてクラス内に滞留したままなので、そっちも寒いといえば一応は寒々しい。
女子からの『振り返ったら笑ってやる陰口たたいてやる視線』も相変わらず継続中なので、暗い情熱の炎って点では熱量あるかもしれなかったが、物理的な温度を伴う発火現象は起こしてくれないから役には立たず、こっちも寒い雰囲気に包まれたままと言えば、その通りだ。
――要するに、新たなブームになれそうなイベントが何一つ起きないまま季節だけ深まったのが、我らがF組の実情な訳である。
孤高を愛するボッチと違って、リア充は学校にきたら群れなければならないが、群れたからには無言のまま過ごす訳にも行かず何か話題をだす必要があるけど、それが無い。
だから延々とダラダラと、旬が過ぎたネタを出し続けて場を保たせることしかできないのが、半端リア充らしい俗物たちが集う2年F組生徒たちの大半が置かれ続けている状態なのだ。
こういう不愉快な光景を見ていると、改めて思う。
やはり・・・・・・人はボッチによって、よりよく導かれねばならず、主導する絶対的エリートぼっちが必要なのだ・・・・・・と。
そんな感想を、「いじめてませ~ん、からかっちゃっただけで~す」とか生の悪感情を丸出しで学校生活を送っている俗物たちに抱かされながら。
――とりあえず季節だけは、もうすぐ修学旅行が、我が総武高校に訪れてくる。そんな季節に今の俺たちはなっていた。
そういう時期になっていたからこその、イベントだったのかも知れない。
「そういや、もうすぐ修学旅行だねー」
その単語に雪ノ下の眉根が「ピクリ」と動いて反応したところから、俺たち奉仕部にとっての『修学旅行“からみのイベント”』はスタートする事になる。
「はぁ~。っていうか、うちの学校も沖縄とかがよかったなー。京都いっても結構どうしようもなくない?
あの辺にあるのって寺とか神社だよ? それなら近所にもあるし・・・・・稲毛の浅間神社とか、いつでも行けるし」
椅子に浅く腰掛けて天井を仰ぎながら、由比ヶ浜が素敵なくらい由比ヶ浜らしい修学旅行先にいく前の感想を言うのが聞こえてくる。
窓の外では、タイミングを合わせるようにして、冷たい風が寒々しい音を立てて吹き抜けていく。
さらに言えば、俺の心の中はいっそう寒々しい。
・・・・・・シーズンオフで客足の途切れた南国の海・・・砂浜に流れ着いた流木・・・・・・それを拾ってチャンバラゴッコを始める高校生男子の戸部たち葉山グループと、同じ制服着た数少ない観光客の俺たち同学年男子生徒一同・・・・・・。
現地の人たちから向けられそうな、冷たい視線を想像しただけでも寒い寒い。やってる行動的にも寒い寒い。
挙げ句の果てに、タラレバ想像話でしかないはずなのに本気でやりそーな奴らが県下一の進学校に通ってる同級生ってところに、県の未来像が現れてそうで千葉県民として心が寒くなって仕方がない。
イヤすぎる想像だった。その点では雪ノ下ですら同意見だったらしい。
こめかみに手をやり、頭痛を抑えるようなポーズで返答があった。
「今の時期に行くのはどうかしらね・・・・・・。あまりお勧めはしないけれど」
「だって、お寺行って何すればいいか分かんないし・・・・・・」
「することなんて幾らでもあるでしょう? そもそも遊びに行くためのものではないのだし、歴史はもちろんのこと、この国の歴史を直に見て触れることこそが――」
「いや、お題目としてはその通りだとは思うんだが・・・・・・多分それが本命の理由じゃなくなってると思うぞ、アレは」
溜息交じりの返答に由比ヶ浜が即時反論する構えを見せ、それにも応えるためご高説を唱えはじめる雪ノ下だったが・・・・・・まぁ、これには由比ヶ浜の言ってることも分からんではなかったので、俺は控えめな口調で口を挟むことにする。
「あら。では比企谷くんは、なんのために修学旅行は行くものと考えているのかしら?」
すると雪ノ下は、話を遮ってきた俺に対して微妙に好戦的な目つき特徴で問いを返す。
反面なんとなく曖昧にも見える雰囲気での問いかけだったのは、俺の意見そのものが曖昧なものだったのが原因だったのかも知れない。
言ってたこと自体は正しくとも、現実では違うものになってきている。
そういう表現を意図的に使った理由は、だが実のところ単純極まりないシンプルなもの。期待させちゃってゴメンね?
「俺が思うにだな。――アレは、社会生活の模倣なんだよ。
形骸化した宗教的な儀式に置き換えるとわかりやすい」
当たり前の常識論として、そう告げて。
俺は先ほど、雪ノ下が珍しく淹れてくれた紅茶の入ったカップを片手に持ちながら、一般論と承知のうえで俺は話の続きを語りかける。
「かつては由緒なり謂われなりのあるはずだった行いが、もともとの意味が忘れ去られて、そういう事をするっていう事例が、その出来事の残滓として生き残って習慣化する。
やがて集団のアイデンティティや一つの文化となって、その集団の結束の再確認や、再認識のためだけに行われるようになる。
盆踊りとかクリスマスとかの由来をよく知らなくても、皆が楽しんで受け入れてるものあったりするだろ? アレと同じだよ。
単に、伝統化した行事だから習慣としてやり続けてるだけだろ? 普通に考えて。始まりはともかく、今の高校運営陣がいちいちそんなもん考えて続けてるとは到底思えんし」
「うわぁ・・・・・・ヒッキーの考えてる修学旅行のイメージって、超楽しくなくなさそう・・・・・・」
「あとまぁ、宿泊先のホテルと県庁との財布事情が理由ってだけの可能性もあるんだけどな。集団客での宿泊予約なんて今時多いとは思えんご時世だし。向こうもイロイロと便宜図ってくれてるかもしれんし。
県下一の進学校とは言え、県立高校だからな。金がないからってだけで選ばれてるのが京都という可能性も」
「もっと楽しくなくなった!? むしろ超つまらないしわびしいよそれ! ヒッキーさいてー! 超キモ~イ!!」
生徒数=学校側の総収入になる私立と違って、県内の公立・県立とかの学校は割り振られた分でやり繰りするしかない学校制度で考えてみた俺の予想は、由比ヶ浜が涙声交じりの大声で完全否定されてしまって「うわ~んユキノーン!」と飛びついていく、どっかで見覚えのある行動リターンズ。
「・・・・・・暑い」
飛びつかれて抱きつかれてる側の雪ノ下が、迷惑そうな口調で呟くところも全く同じ――ではあったものの、よく見たら前見たときより、迷惑そうな表情と苦情がちょっと柔らかいものに見えなくもない。
寒いからなぁ・・・・・・前に見たときは、春の終わり頃ぐらいだっけ? 秋が深まった時期に冬服着てる姿で抱きつかれて暑いのは、暖かいという表現でも可。
こんなところにも季節の変化を見出して、秋だな~とか思う理由の一つにしていたところ。
トントン。
と、扉が叩かれる音が奉仕部の部室内に響き渡る。
「どうぞ」
その音を聞いた雪ノ下が答えると、扉が開き――意外な人物が現れる。
「・・・やあ、ちょっと相談事があって連れてきたんだけど・・・」
そう言って入ってきた意外な人物たち2人の姿は、葉山と・・・・・・戸部だった。
さすがの俺も、この組合せには意外性を禁じ得ない。
意外すぎるチョイスを前にして不躾な視線になってしまうと分かっていながら、思わず不思議そうな顔になってしまう。
いや、この2人がコンビ組んで動いてること自体に驚きはないんだ。むしろ一緒に行動してる回数の方が葉山グループ男子陣の中では一番多かったようにすら思えるほど。戸部が自主的に引っ付いてきて離れたがらないだけの印象あるコンビだけれども。
だが、だからこそ葉山が“戸部”と一緒に奉仕部へきたことは意外だった。
しかも俯きがちな視線と表情を浮かべながら、珍しくテンション低い雰囲気の態度で、超珍しく自分からは何も口火を切らず沈黙したまま部屋に中に入ってくるという大珍事。
いつもなら、
「その言い方とか~、俺からの相談って言っちゃってるようなもんじゃんかよー。
ヤバいわー、葉山君マジヤバいわーそれ。どれくらいヤバいかって言うと、超マジヤバいって感じでー」
とか。
そんな『銀魂』の序盤で言ってたネタみたいに、頭の病院連れてった方がよさげな中身0セリフを騒がしく言い立てながら入ってくるのが、戸部にとっては普通の日常的コミュニケーションだと思っていたのだが・・・・・・。
戸部らしく素敵なくらいのバカっぷりを発揮しない姿と言動で入室してきた、いつもの戸部らしくない戸部が発した第一声。
その一言は、こーいうものから口火を切られることになる↓
「――いや、やっぱないわー。ヒキタニくんに相談とかないわー」
「・・・ああ?」
思わず小さく呟きを発してしまうほどに心外すぎる、戸部の言葉。
本人はコッチの反応に気付いた様子すらないままに沈思黙考したかと思ったら、ブルブル首を振って、なんか考え込むように唸ったりもしている。
深めの呼吸で息を吐き、幾分か冷静になってからチラリと周囲の様子を窺って見るが、葉山は短い溜息を吐いていて、由比ヶ浜はポカーンと口を開かされた姿で固まり、雪ノ下は逆に口を一文字に引き結んでいる。
・・・・・・それらの様子から見ても、やはり先ほどの言葉で俺が感じさせられた想いは正しかったのは確かなようだった。
字面だけで見れば、喧嘩のバーゲンセールでも売りまくりにきたようにしか解釈しようがなく聞こえた戸部の言葉。
それを聞かされた瞬間、俺が怒りよりも不快感よりも先に、条件反射で感じさせられてしまった想い・・・・・・その認識が正しかったことが証明されてしまった、その感情は――
(―――えッ!? 俺!? 俺に相談する前提で来てんのコイツラって!?)
という、至極まっとうなもの・・・。
いやだって俺、別に部長でも何でもないんだが!? あくまで『平塚先生から舐めすぎたレポート提出した罰則』として強制入部させられてるだけの平部員に過ぎない身なんだが!?
トップはあっち! 部長はアッチ!! 部のトップ部長がいる場所で平部員に対応してもらう前提で話進めるのはやめて欲しくて仕方がない!
そんな想いで胸が一杯になりすぎて他のことが一瞬考えられなくなってた俺がいた瞬間だった!(怒!)
しかもどうやら今回だけは、俺の内なる怒りは俺一人だけのものではなかったらしい・・・・・・共に理不尽な人事に義憤を感じてくれたっぽい相方が他にも一人!
「戸部、頼みにきたのはコッチだろ」
「や、でもほら、ヒキタニくんにこういうこと話せないでしょ~、信頼度ゼロだわー」
「・・・・・・かっちーん・・・・・・」
俺の心情をわざわざ声に出して、マンガの怒り表現みたいな擬音で口に出してくれた、ちょっとアホっぽい怒りの声。
そう、これもまた珍しく由比ヶ浜が俺の怒りに共感し、不条理な人事待遇に疑義を抱いてくれたようなのだ。
正直でも由比ヶ浜お前が言うと、なんか不安なんだかとか思わなくなかったけどどうしたのさわさわさ。
「とべっち、その言い方なくない? もうちょっと言い方ってあるでしょ」
「いや、でもさー」
「そうね。まぁ、比企谷くんが悪いのだし仕方ないわね。さすがだわ・・・では、悪いけれど出て行ってもらえるかしら?」
由比ヶ浜に言われて、それでもマゴつくように同じような言葉を繰り返す戸部のハッキリしない対応を前にして、部長である雪ノ下の決定が下され、俺は話し合いの間めでたく外に出て行るという形で決着したっぽい。
「・・・・・・だな。んじゃ、いろいろ終わったら適当に呼んでくれ」
それだけ言って席を立ち、話が終わるまで遠ざかっておくのが礼儀かと、扉へと向かおうとする俺。
部長をすっ飛ばして下っ端の俺に直接依頼をぶち込んでこようとした序列ガン無視な手段は別として、戸部の俺に対する評価と対応そのものには――不思議と心穏やかに受け止められている俺がいて、それが冷静な判断を可能にする力となってくれているようだった。
――何しろ、なんの相談相手として、あるとか無いとか思われてんのか、今までの会話じゃ全く意味不明だったからなぁー・・・。
信頼度ゼロって評価も、『なんの相談をする相手としての信頼度か?』によって百八十度意味合いと方向性が変わっちまう類いの言い方でもあった訳だし。
信頼されても困るだけの分野なんて幾らでもあるし、アレだけの断片的な話からだけだと判断ができん。
せめてもう少し依頼内容を確認した上で、“責任者からの要約した解説”を聞いてからじゃないと不用意な対応は間違いの元だからできにくい。
だから今は出てく。同じ葉山グループの由比ヶ浜や、別クラスで女子ばっかのエリート学科という別世界の人間扱いされてる雪ノ下と違って、俺は戸部たちと偶然同じクラスになっただけのクラスメートだからな。
聞く気がなくても、耳に入る位置にいたら話しづらい話とかもあるだろう。そう思ったからこそ、俺は自分から進んで部屋を出て行くのがベターな判断だと雪ノ下の決定を支持したのだった。
それこそ仮にの話として、
『俺のギャグ最近、ウケなくなってるんで、絶対みんなにウケるの一発オナシャス! ヒキタニさん!』
とかいう相談だったら、「信頼度ゼロ」は褒め言葉にしかなれないよ? むしろ信頼されてる方が侮辱されてるとしか俺には思えねぇ。
そういう確認も含めて、雪ノ下たちに任せて、俺は結果だけ後から省略して分かりやすく纏めたのを聞くだけでいいやー。
とか思いながら、内心で意気揚々と部室を出て行く。・・・・・・そのはずだったのだが。
「待ちなさい。どこへ行くの?」
「あん? だから出て・・・・・・」
「出て行くのは彼らの方よ」
・・・・・・という雪ノ下から戸部たちに向けられ直された、冷たい視線と冷たい声で叱責を受ける相手という決定を聞かされ直し。
俺は改めて雪ノ下たちのいる方へと振り向くと、俺から戸部たちへと視線をゆっくり映していく姿を見て俺は・・・・・・自分が間違っていたことに、ようやく気付くことになる。
あ、あれ~~・・・? おかしいなぁ・・・常識で考えた基準で対応したはずなんだけど・・・。
何故だか奉仕部に入れられてから、ひねくれボッチのエリートとして本道から外れた常識的対応で考えるたびに間違えてることが多くなってく気がする不思議な空間。
それが奉仕部七不思議の一つとして加わって、八つ目に増えないかなとかしょーもないことを考えて現実逃避していた俺を置いてきぼりにしたまま雪ノ下たちと戸部との会話は進んでいく。
「なんかやな感じ・・・」
「礼儀も知らない、礼節も弁えない。そんな輩のお願いをこちらが聞く必要なんてないでしょう。早々にお引き取りいただいて結構よ」
「・・・ま、まぁ俺たちが悪かったな。戸部、出直そう。俺たちだけで解決すべき――」
「いや、もう後には引けないでしょ、これ―――あの! 実は俺―――!!」
というノリと展開によって、『海老名さんに惚れた戸部の告白を上手くいかせるサポート』を依頼されて、部活動として引き受けることになったようだった。
・・・青春らしい展開と悩みだなぁー・・・・・・そう思って天井を仰いでいたところ。
トントン。
と、本日2人目の依頼者という初めてを体験する放課後が訪れて。
「や、結衣。はろはろ~」
「って、姫菜じゃん。やっはろー! どうしたのー?」
「うん、あのねー。とべっちのことで、ちょっと相談があって・・・・・・とべっちさ・・・最近、葉山くんやヒキタニくんと仲良くしすぎてるっぽくて、大岡くんと大和くんがフラストレーション!
私はもっと爛れた関係が見たいのに! これじゃトライアングルハートが台無しだよー! だよー! だよーっ!!」
「えっと・・・・・・、つまり、どういう事なのかしら・・・?」
「最近とべっち、ヒキタニくんとよく話してるじゃない? それにグループ分けも不自然だったし、意味ありげな視線とか送っちゃって、ぐ腐腐腐腐・・・・・・でね。誘うならみんな誘ってあげてほしい、そして受け止めて欲しいの。端的に言うと誘い受けてほしいの」
「つまり・・・どういう事かしら? 説明してもらえるとありがたいのだけれど・・・」
「うーん、なんかね、今までいたグループがちょっと変わっちゃった感じがして、今まででと違うことは確かでさ。違っちゃった今のままでいるのは、ちょっと嫌かな。今までどおり、仲良くやりたいもん。
あ! でもヒキタニくんが男子グループに加わって仲良くしてくれるのはいいと思うんだよッ。私も目の保養になるし、ぐ腐腐腐腐腐・・・・・・ジュルリ」
「じゃ、そーいうことだから。修学旅行でも、おいしいの期待してるから。
ヒキタニくん、よろしくね~♪」
という、告白のサポートを依頼されて引き受けたばっかの告白相手から、依頼になっているのかいないのか、よく分からん内容の話を一方的に聞かされて、一方的に帰って行ったのを見届けさせられて。
「・・・結局、なんだったのかしら・・・」
さすがの雪ノ下も疲れたのか、至極真っ当な疑問だけを口にするのが精一杯らしい感想のみを呟いて。
「さあな。ま、ただ一つ確実だと言えそうなことは・・・・・・」
俺としても似たような心境とテンションで考えつけることは多くなく、イロイロと聞きたくない話題の部分だけすっ飛ばして、残ってた話分だけ繋ぎ合わせて解釈した場合に、ハッキリと断言できることは一つのみ。
そんな一日の放課後から、俺たち奉仕部の秋イベントはスタートさせられることになる。
「完全に、牽制しに来られてんじゃねーか。先手取られて対応されちまってるし。実行する前から情報漏洩しまくるにも程があるだろ・・・・・・。
この戦力差で、どーやって成功できると思ってたんだアイツは本当に・・・・・・」
フラれるのがキツくて嫌だと言いながら、告白する前から本心バレバレで、更には告白するサポートに外部の人間を頼った時期と相手まで把握されているらしき、情報力と諜報能力の圧倒的格差。
なんとなく、大日本軍を率いて米軍相手に戦いを挑まされた山本五十六の気持ちが少しだけ分かったような・・・・・・そんな錯覚がしなくもなかった修学旅行前の、ある一日はこうして終わる。
つづく