絶望への反抗!!残された二人の天才少年 孫悟天とトランクス 作:スーパーナメック星人
「警報! 警報! セル接近情報が到着しました! 該当地区にお住まいの方は避難をーー」
ラジオから発せられる切羽詰まったアナウンサーの言葉に、周辺住民は恐怖を抱き、いっせいに逃げ出す。オンボロ車で逃げ出すもの、子供を連れて逃げ出す母、そのオンボロ車に醜くしがみつく男たち、諦めて呆然と立つ尽くす老人と様々だった。
けれど、結末は平等だった。空から小さな青色の生物が飛来し、ミサイルと変わらない威力の気功弾が放たれ、閑静な農村を焦土に変えてしまった。
青色の生物はキキキと嗤いながら、焼けてしまった土の上に降り立ち、農民が丹精込めて育てていた作物を口に加える。
「……くっ、くそ……こ、これ以上お前らに、めちゃくちゃにされてたまるか!」
瓦礫の中から、奇跡的に生き残った男が這い出てきて、ライフル銃を構える。無謀な攻撃ではあることは承知しているが、一矢報いたい気持ちでいっぱいだった。男は残された力を振り絞って、引き金に力を込めた。
だが、その抵抗も虚しく終わる。男の胸に突如高熱の光線が突き刺さり、あっという間に絶命する。青色の生物は驚いた目で哀れな男を見やる。いつの間にか、男の背後にひときわ大きい緑色の生物が現れていた。
「いったはずだぞ、セルジュニアよ。一人残らず地球人を殺せとな」
緑の生物・セルの言葉に恐怖しながらも、セルジュニアはキキと嗤いながら首肯する。
「さて、ここにはもう生存者はいないだろう。次の村へ行くぞ」
そう言いながら、セルは宙へと駆ける。まだ見ぬ生存者の、絶望に染まりきった顔を拝むために。
***
エイジ767の5月26日。
世界は、セルに敗北した。
地球の唯一の希望であった孫悟飯は、最後のかめはめ波の打ち合いに敗れてしまった。残されたZ戦士たちも、余力を振り絞って立ち向かうも、一人残らずあの世へ送られた。その場にいたミスター・サタンやアナウンサーももれなく塵と化してしまった。
その後、セルは自身を追い詰めたパワーを誇った孫悟飯の復活を恐れて、真っ先に神殿へ瞬間移動して、神龍を召喚させようとしたデンデを殺害した。
これにより、地球に希望が潰えたとセルは確信し、高笑いの後、セルジュニアを7体生成した。そしてーー世界を地獄へと変えてしまった。
彼はセルゲームの開幕前のテレビ放送にて、セルゲームに敗北したのであれば、地球に住む人類を皆殺しにすると宣言した。
ミスター・サタンが敗北し、その後続報が流れなくても、地球人はそのセルの宣言に半信半疑だった。しかし、突如飛来したセル及びセルジュニアのセリフを見て、ようやく人々は悟ったのだ。
もはや、地球はこれまでなのだと。
しかし希望は、僅かながら存在した。
「父さん。宇宙船を作るわよ」
西の都の大企業、カプセルコーポレーションの令嬢ブルマが、父親であり社長のブリーフ博士に突然打診する。
「家族で逃げるためか?」
「違うわ。トランクスを殺させないためよ。アイツはトランクスのパワーに気づいたら絶対殺しに来る。だからナメック星にいくの」
「なるほどな。じゃあやろうかね」
そういって開発室に駆け込む父を見て、改めて自分の父親で良かったなと思い、ブルマも後を追う。
彼女の細い腕には、青色の帽子を被った幼児がいた。名前はトランクス。戦闘民族サイヤ人の王子ベジータの血を引いている。
希望は、一つだけじゃない。
「チチ! チチ! 頑張れ、頑張るんだ!」
パオズ山にて、もがき苦しむチチに対してその父である牛魔王が励ます。母親は耐え難い苦痛に耐えながら叫び続ける。それはかつて10年前に味わった、苦しくも温かい瞬間を思い出させる。
チチは内心思った。おそらくこれから生まれる子供には、とんでもない地獄が待っていることだろうと。こんな世の中に生まれ落ちてしまったこともそうだが、やがて己が抱く使命を理解し、人としての幸せを勝ち取れずに生涯を終える可能性も見えてきている。
しかし、自分はこの子を産まなければいけない。なぜなら、亡き夫が普段はなかなか見せない愛情を注いで、希望を残してくれたのだから。自分は孫悟空の嫁なのだから、やり遂げなくてはいけないのだ。
必ず育て上げて見せる。そう決意した瞬間、一人の希望が、産声を上げた。
「オメェの名前はもう決めてあるだ。……悟天」
誰よりも自由だった男を思い起こさせる髪型に、窓から覗かせる珍しく晴れやかな空。これ以上にぴったりな名前はあるまい。
これは、僅かな希望を抱きながら、絶望に反抗する人々の物語である。