原作、推しの子において亡くなってしまった、伝説のアイドルである「星野アイ」その伝説のアイドルがもし生きていて、32歳の誕生日を迎えられたら? というあらすじのもと展開される妄想によって生まれた二次創作小説。

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第1話

「星野アイ(かあさん・ママ)誕生日おめでとう!」

 クラッカーの音がけたたましく、高層マンションのリビングに響き渡る。

 黒く艶がある、美しい髪、飴玉のように光によって輝く星のような瞳を持つ、どうしようも無いほどに美しい顔の女性である星野アイは母親だ。

 16歳で産んだ、それはそれは愛おしい2人の双子の子供がいる。その2人の双子に、星野アイは誕生日を祝われた。最愛の二人の子供に星野アイは祝われていた。

「アクア、ルビー、ありがと! もう32……もうそんな歳なんだね」

 2人ともついこの前16歳になり、星野アイは今年で32歳、夢にまでみた子供二人と盃を交わすまであと4年にまで迫っていた。この長い年月を過ごす中で星野アイの本心は子供二人にのみ見えていた。

 B小町は解散、星野アイはその後もメディア露出も多くついにはとある番組のレギュラーにまで登りつめていた、その間にも隠し子がいた事の発表だったりなんだったり、色々あった、そうして最高に今、幸せの絶頂にいた。

 笑顔で、星野アイを迎える2人は星野アイの手を取り前へと連れていく、テーブルに置いてあったのは誕生日ケーキ、そして沢山の星野アイの好物。

「はぁぁ〜っ! なにこれ〜っ!」

 嬉々とした表情で星野アイは手を合わせ、そのうっとりしたような声を発した。

 

――今日はアイの誕生日だ、俺の推しであり、母親である星野アイの誕生日だ、父親の事については未だに分かっていないが、なにより無事にアイが32歳を迎えられたという事実を祝おう。

 アクアはそう心の中で呟いた。

 星野アイはアクアとルビーをギュッと抱擁し、”愛している”と伝えた。

 子供に親は救われる、そんな言葉があったような気もする。

 星野アイの心の中で、アクアとルビーという存在によって嘘か本当かの境界線、ボーダーラインが引かれた。アイの放つルビーとアクアの愛しているは嘘ではなく本当ののこと、嘘から出た真が実っていた。

 

 過去、星野アイは1度死を覚悟した、その時に目の前にいたアクアとドア越しにいたルビーに対して『愛している』と言葉を放っていた、それは「やっと言えたこと」であり、「嘘でも無い」心の底から放った言葉、早く到着した救急車、刺されたところの良さによって何とか一命を取り留め、無事こうして32歳を迎えた、子供達の成長だって見ていられている。

 神は存在している、そう思いたい、こうして哀れに死を間近にしたアイドルに手を伸ばして生かしている、星野アイは神でさえも虜にしてしまう。恐ろしい女性だ。

「ほんと、大きくなったねぇ……本当にママは良い子供を持ったよ、2人ともほんとにありがとう」

 星野アイは2人それぞれの頬にキスをした、嘘でも無い愛だ。

 星野アイはアイドルから最高の女優にもなった、歳を重ねる毎にその容姿に磨きが掛かり世の人を虜にしてきた星野アイは今アイドルでも、女優でも何でもない、母親である星野アイになっていた。

――父親がいないということで不自由させたかもしれない

 そんな思考が星野アイにはあった、16歳で母親になるというのはそれだけ負担が多かった。年頃の少女なのだから、それだけの葛藤もあったのだろう。星野アイはアイドルだけれど、普通の少女であった。だけれど2人がいるからこそ星野アイはいつまでもアイドルであった。まさに最強のアイドル、一番星の生まれ変わりなのだ。

 

 食卓を囲み、食を楽しむ3人がいた。

「はぁ〜っ今日のママの単独ライブほんと可愛かった〜!」

「それと、私からのママへの誕生日プレゼントはライブだね〜」

 ルビーはそう呟いた、ルビーは再結成されたB小町のセンターを張るアイドル、その人気は星野アイの娘と言うこともあってかまさにトップアイドルだった。次のライブの曲は新曲と、サインはBであり、新曲以外はルビーの意向で星野アイがセンターだった時代の曲ばかりなのだ。

 完璧なアイドルの娘もまた完璧だった、世のB小町のオタク達はそう口を揃えて言った、まさに奇跡の時代、完璧のアイドルが2人も時代を生きる事に幸福すら覚える、覚えない方がおかしいと、オタク達は言った。

 皆可愛くてかっこいい、奇跡の時代を生きる若者はそう言った。

「私はママが見た武道館の光景が見たい、お兄ちゃんもそう思ってるでしょ?」

「あぁ、俺も武道館の景色を見てみたい」

 この兄妹の夢は母が見た武道館の景色を見ること、アクアに関しては2つ目の夢であるが。

 その2人の夢はもう目前、新生B小町も大台に乗り、常連のファンも見掛けていた。

 時々ライブ映像を見ていると星野アイ時代からのB小町のオタクが映っていたりと星野アイにもとても面白く、興味深いものだった、あの時のあの人達が老けても尚自身の娘を応援してくれているということ、自分も応援してくれていること、それが感謝しきれてもしきれなくて嬉しかった。

 食も終わり遂に締めに入った、ケーキを食べる準備に入る。

「ハッピーバースデイ」

 アクアが口を開いた、ルビーを置いて我先にとアクアがその言葉を星野アイに放った。

「お兄ちゃんずる〜い、いっつもお兄ちゃんが先じゃん」

 頬を膨らませ、不貞腐れたかのようにムッと顔を顰めて、気分をルビーは悪くしていた。

「まぁまぁ、まだ次があるじゃん」

「あぁ、かあさんが明日死ぬって訳じゃない、少なくとも俺はそう言える」

 いつものこと、いつもいつもアクアが先でルビーはその度次があると言われる、もはやお約束だ。

 そして、アクアはそのような事を口にした、人間いつ死ぬか分からないというものだが、アクアの言葉は妙に説得力があった――――

 ケーキを1口、豊満に口の中に広まるわがままで、刺激的な甘さが星野アイの味覚を刺激した。

「うまぁ〜ッ!」

 その目は見開き、星野アイの表情は笑みを浮かべていた、少女だった頃の面影を残した笑みを浮かべて、星野アイは幸せそうな声を零した。そのような声を零していたのは兄弟も同じ、まさに絶品の味に舌が溶けそうになるほどの美味であった。

 ケーキでを3人で見事に平らげ、3人共に、その表情は満足したような幸福の笑みを浮かべた。

「母さん」

「なぁに? アクア」

「誕生日プレゼント」

 そう言って、アクアは少し高級そうな箱を取り出した、両手に収まる位の箱を星野アイに渡し、星野アイはその箱を開けた――

 入っていたのはネックレス、最近流行っているらしいネックレスであった。

「これ、アクアが買ったの? こんな高そうなもの、お金だってアクアの好きに使えば……」

「俺の好きに使ったから母さんに今渡してるんだよ」

「うん、うん」

 アクアは遮るように言葉を放つ。

 星野アイの目には涙が浮かんでいた。悲しいとかそういう感情ではなく、感動と歓喜の涙、やはり自分の子供からの贈り物は嬉しいという感情があって、自分の為に子供が頑張ってくれたそれだけでも嬉しいというものもあった。

 演技力に乏しかった星野アイは涙を流そうと思って流すことなんて出来ない、何処ぞの重曹を舐める子役でも無い訳で、やはり子供の前での感情は全て本当のことなのだろう。

「じゃあ母さん、今から俺出かけてくるよ」

 アクアが続けて放った、出かけるという言葉、アクアには例にもれなく、恋人がいた。

「このリア充め」

 ルビーは目を細く睨みつけるようにアクアに視線を送る、アイドルは恋愛が出来ない、それを踏まえてのこの言葉である。まぁ本当は好きな人がルビーにはいるのだが。

 アクアは席を外し、玄関先に置いた荷物を持って家を出るのだった――

 

「ルビー、2人きりだね。ママと話そっか」

 アクアが去っての開口一番、星野アイはそう呟いた、あまり無い女だけの空間、それも親子である。

「アイドル楽しい?」

「うん! 楽しい、本当に楽しいよ、キラキラしてて、本当に楽しい、まぁ? やっぱり? ママ譲りの顔だからね、そりゃもう人気だよ」

 星野アイの時と同じようにB小町は有名だ、それはもうトップアイドルと言える程に有名で人気を博している、メンバーとの仲も良く、所謂理想のアイドル像を体現したものとなっている。蹴落としあいもなく、嫉妬も無い、そんなグループになっていた。

「それは良かった、ねぇねぇ、ルビーってさ好きな男の人いるの? ママ知りたいな〜」

「も〜やめてよママ〜」

 何気無い会話をただ続ける、それだけの幸せな空間だ。

――ずっと続いて欲しい。

 ルビーは心から願った、家族1人も欠けること無く、こんな幸せな毎日が続いて欲しいと。

「私もママみたいに、ファンの皆に嘘でも愛を振り撒きたい、嘘は嫌いだけどね。それだけアイドルの夢が大きい、あぁ〜! 早く武道館ライブしたいなぁ〜!」

 夢に思いを馳せルビーは胸を躍らせた、その夢がもう目前まで控えている、B小町の念願の夢であった。

「さて、私もダンスの練習しなくちゃ!」

 ルビーもまた去っていった。

 

「もう32歳かぁ……早いなぁ……ルビーもアイドル楽しそうで良かったし、本当に良くできた娘、息子だなぁ、なんだか寂しくなっちゃうよ、あと四年二年で2人とも去って行っちゃうなんて」

 席を立ち、コップに氷を入れ、ビールを注ぐ、3人でお酒を飲む日も近く別れも近い、会おうと思えば幾らでも会える業界だけれどやっぱり寂しいというのがあった。

「楽しかったなぁ……本当に、早くてあとたった2年」

「2人が幸せになるところまで見届けたいなぁ……それで、若いうちにおばあちゃんって呼ばれて……元気に育ってくれて、本当にありがとう」

 星野アイはそう呟き、ビールを飲み干した。


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