職業ヒーロー   作:規律式足

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 ノリで書きました。
 気分転換作品なので続くか未定です。



第1話

 

「お腹減った」

 

 食事する暇もないくらい忙しいお仕事がようやく終わって気づけば空が白んでいた。お疲れ様と労いの言葉をかけてくれる今回の現場の皆様方も机に突っ伏してアーウーと呻く様がまるでゾンビのようだった。

 とりあえず一週間ぶりに布団で寝たいとも思うがグーグーとエネルギーが足りてねえよボケカスと叫び、もはや痛みすら与えてくるお腹様がそれを許してくれない。

 個性で移動する気になれずゆっくりとグールのように帰宅して、お腹様に献上する食料を探そうと冷蔵庫を開けたらそこには怪盗の被害にあった大銀行の地下金庫の如く空っぽ、非常食のマヨネーズすら見事に消費されていた。

 そういえばお隣さんに処理をお願いしたんだっけ?と空っぽの理由を思い出す。

 名門ヒーロー育成機関である雄英高校に合格し地元から一人暮らししている少女で名前は確かうらなんとかさんだったような気がするが、その彼女に冷蔵庫の中身を消費してもらっていたのだ。

 仕事の関係で長期留守にしがちで買った食品を無駄に腐らせてしまうことが多く、勿体ないからとお隣さんに使ってくださいと言ったのだった。安売りやら特売でしょっちゅう顔を合わせてお金に困っている様子なのもあったからだが。

 しかし納得はしてもお腹様は許してくれない。寝たいのに空腹で寝られないという拷問を受けながら再び献上品を求めてアパートからノロノロと旅立った。

 さて何を食うかと、空腹時に食べるものを考えるという人生で8番目くらい楽しいことをしようとして判断基準で一番大事な軍資金を確認したら、サイフの中身はからっけつの所持金4円。そういえば仕事現場で食事(コンビニ弁当かゼリー食)がでるからと後で良いやと下ろして無かったことを思い出す。カードの類いは一応作ったが普段使わないからと自宅でトレーディングカードと一緒に思い出とともに眠っている。

 結論として飯を食うためにはお金を下ろすしかなく、お金を下ろすためにはATMに行くしかない。しかしさらに不幸なことに近所のコンビニATMは強盗被害にあい使用不可、もう何度目になるか分からないため息をついて市内の銀行に足を伸ばした。

 だがまあ不幸な日ってやつは追撃を欠かさないようだ。

 

「テメエら動くんじゃねえ!!」

 

「オラ、ここにありったけの金を詰め込むんだ!!」

 

 なんであと三人で自分の番というタイミングで銀行強盗が起きるんですかねえ?こんな事件が起こるならやっぱ一部官僚が主張するように貨幣より電子決済の方が良いのかなと思うが、ハッキングのプロやらデータ改竄に特化した個性があるから現実的には不可能なんだとか。

 仕事の関係上見慣れている銀行強盗景色ではあるが、被害者側なのは初めての経験だ。隅に寄せられ銃やら個性やらを向けられ床に座りこまされているのもなんか初体験ゆえに新鮮な気分になる。巻き込まれたお客達をチラリと見たら、そこは向けられる凶器に怯えるおじさんやら子供だけはなんとか守るとギュッ抱え込むお母さん、そして非現実的な状況に興奮する子とどうせヒーローが来るからと無駄に挑発する若者がいた。こっち視点からだとまた違うんだなと一つ学んだ気分になった。

 さてどうするか。

 鎮圧するのは容易いがぶっちゃけ色々と面倒くさい。その色々の一つが依頼のない仕事はしないという自分の主義と、外でアレコレ準備しているであろうヒーローの面子を潰すことになることだ。ただでさえ煙たがられて嫌われているのに余計な反感は買いたくない、幸いなことにお腹様は力尽きたかのようにピクリとも反応もしなくなったで急ぐ必要もないのだ。

 

「オギャアッ!、オギャアッ!」

 

「駄目よっ!!静かにしてっ!!」

 

 と現実はこちらの事情に合わせてはくれない。周囲の空気を敏感に察知してしまうという赤ん坊がこの張り詰めた空気に耐えきれる筈もなく泣きだしてしまった。

 

「ああんっ?!うるせえんだよっ!!」

 

 と強盗犯が発砲しようと引き金に指をかけたので、仕方なく僕は動くことにした。

 

「ああ、面倒くさい」

 

 一言こぼして個性を発動。

 その意志一つで買い物客に銃を向けていたヴィランは崩れ落ちるように地に伏した。

 

「テメエ、何者だ!!」

 

 残りのヴィラン全ての意識と個性と武器がこちらに向くがそれは脅威でもなんでもない。

 

「ここはオールマイトに習ってこう言おう」

 

 スーツの上着の内側、内ポケットの部分改良して収納してあったモノを装着する。

 両親と最後に行った夏祭りで買ってもらった形見の品、オールマイトのお面を。まあとりあえずお面が欲しかっただけで彼のファンでもなんでもないけどね。

 

「私が居た」

 

 確かこんなセリフだった筈。

 そんなリスペクトセリフに特に反応もしないヴィラン達だが、スーツにオールマイトのお面で僕が誰か理解したようだ。

 

「おい、なんでだ?!」

 

「なんでこんな場所に」

 

「現ナンバー2ヒーローがいるんだよおっ!!」

 

 文句はコンビニATM強盗犯に言って欲しいもんだね。

 あーあ、またでしゃばり野郎とか陰口叩かれたり、仕事奪われたとかで同業者から嫌われるよ。

 個性を発動して強盗犯共を叩きのめし、白昼堂々の銀行強盗事件は解決した。

 雪崩込みヴィランを拘束する警察と不快そうに舌打ちするヒーロー共。成り行きのままヒーローとなったあの日からヒーローの僕の印象と評価は一人残らずだだ下がりだ。 

 あとは事情聴取かな?ご飯と睡眠にはいつありつけるのやら。

 

 超能ヒーロー サイキッカー。

 ヒーロービルボードチャート、No2。

 本名、才木 瑞一。

 年齢、17歳。

 個性、念動力。

 

「転職したいよ全く」

 

 過去も由来も因縁も、夢も野望も大願も、善意も憧れも信念も、償いも諦念も罪悪感も、ヒーローには何一つ関係がない。

 力があればヒーローに成れる。

 その体現者たる少年は、周囲から寄せられる多大な期待と、それを遥かに上回る妬みを浴びて、今日も嫌々ヒーロー(仕事)をやる。

 

 ちなみに彼が食事にありつけ、布団に潜り込めたのはこれから半日ほど時間が立ってからだったそうだ。

 

 

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