天才と星の子   作:もう何も辛くない

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短いですが、爆弾出来上がったので投下しますね。ノ●~*


天才と生徒会と発覚

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 十月。気温が少しずつ低くなり始め、残暑という言葉が使われなくなり、木の葉が次第に色を変えていく。

 

 だからといって、俺の生活が変わる事もない─────事もなかった。

 星野と気持ちを通わせてから、定期的ではないがたまに二人で食事目的以外で出掛けるようになった。

 所謂、デートというやつだ。

 

 星野と出会ってすぐの頃の俺に、お前はこいつとデートをする仲になるぞ、なんて言っても絶対に信じないんだろうな。

 

 変わったのはそれだけじゃない。

 何とこの度、俺こと四宮総司は、現在通っている秀知院学園生徒会の庶務に任命された。

 

 秀知院生徒会長選挙は先月、九月に行われ、見事に()()()()という男子生徒が当選した。

 この白銀という生徒は、高等部から外部入学してきた()()で、小等部からの内部入学組である()()の生徒達からはやや疎まれ気味という難しい立場だったのだが、品行方正な立ち振る舞いと、前回の期末試験にて()()をとった事が大きく味方し、見事生徒会長へ当選した。

 

 …帝以外に負けたのは初めてだったな。前日の仕事が尾を引いて寝不足となり、それが影響したという言い訳は立つが─────正直、目から血が噴き出しそうなくらい悔しかった。

 まあ、そのリベンジは模試でさせてもらったが。帝にも勝って美味いうなぎを馳走してもらったし、溜飲を下げる事が出来た。

 

 少し話が逸れたから戻すが、会長に当選した白銀は副会長にかぐやを、書記に同学年の藤原千花を、そして庶務に俺を任命した。

 といっても、俺は四宮の仕事があるし、毎日生徒会に顔を出せない幽霊部員みたいな立場になっているが。

 白銀に庶務を頼まれた際、その事を説明し、それでもと頼まれたから庶務を引き受けた。

 

 …少し前の俺なら断っていただろうな。それでも、かぐやが心配でたまに仕事を手伝う口実で顔を出して行っていたかもしれないが。

 

「総司。今日は時間は大丈夫なのか?」

 

「あぁ。今日の仕事は代理の奴に任せた。俺が出張る必要もなさそうだったんでな」

 

 そして現在。俺は生徒会室のソファにてキーボードを叩いている。

 会長席に座る白銀と、コーヒーを飲みながら言葉を交わす。

 

 白銀は俺を下の名前で呼んでいる。

 生徒会発足初日、白銀は俺の事もかぐやの事も四宮と呼んでしまい、どちらも返事をするという事態が何度も起きた。

 その経緯があって以降、白銀は俺を下の名前で呼んでいる。

 

 初め、生徒会発足以前から知り合っていたらしいかぐやを下の名前で呼べばいいと勧めたんだがな。

 『そんな事、出来る筈がないだろう!?』と凄まじい勢いで断られてしまった。

 

 …あの態度からして、白銀は多分、そうなんだろうな。

 プライドが邪魔しているのか、それとも恥ずかしいだけなのか、何故だか知らないがアプローチは殆どしていないが。

 

「総司。貴方最近、御付きに仕事を任せる日が多くなっていますが、本当に大丈夫なのですか?」

 

「大丈夫だって。むしろ、今まで不必要に自分の仕事を増やしていた事に最近ようやく気が付いたんだよ」

 

 俺が飲み干し、中が空になったコーヒーカップを持ち上げながら、心配そうにかぐやが尋ねてくる。

 画面から目を離さず、タイピングを続けながらその問い掛けに俺は答える。

 

 あれから、俺は時には信じられる他者に任せて仕事を振るという事を覚えた。

 何というか、自分の中で心の余裕が出来たというか。

 考えてみれば、これは自分でやる必要はないだろうという仕事を見極められるようになり、それをどんどん赤木含めた部下のそれぞれの適性に応じて適材適所という形で仕事に振っていく。

 

 その結果、こうしてたまにだが生徒会に顔を出せるくらいの時間の余裕が生まれた。

 

 星野と出掛ける回数も最近増えて来てるし、それで業績が下がるなんて事も起きていないし、この変化を俺は良いものと捉えている。

 俺も疲れないで済むしな。

 

「でも総司君、前と比べたら明るくなりましたよね~。時間に余裕が出来たからなんでしょうか?」

 

 かぐやに続いて、ふわふわした柔らかい声で尋ねてくるのは書記の藤原千花。

 

 藤原は小等部から秀知院にいる純院の生徒で、こいつと知り合ったのは…いつだったっけ?

 昔やってたピアノ繋がりで知り合ったのは覚えているが、いつの間にか積極的に話し掛けられるようになっていた。

 それと同時期に藤原はかぐやとも親交を深めていたようで─────本当に、いつだったっけか。こいつと会話をするようになったのは?

 

「…まあ、それもあるかもな。藤原の言う通り、前より余裕はある」

 

 明るくなった、か。生徒会発足時に白銀からも同じ事を言われたのを思い出す。

 

『もっと冷たい印象だったが、変わったな』

 

 なんて。

 あの後、何かあったのかとも聞かれたが、今の藤原との会話と同じ感じで誤魔化した。

 

 本当の理由なんて言える筈がないだろう。

 好きな相手と心を通わせたからです、なんて、大騒ぎになる。

 俺だって恥ずかしいし。

 

 因みに、言うまでもないが星野にもこの事については口止めしている。

 星野自身も口外すればどうなるかは分かっていたし、本人も当然として受け入れてくれた。

 

 ただ、この先このまま星野と関係を続けていくのならば、いずれ外部に漏れるのは避けられなくなる。

 目下最大の問題はそこだ。関係を続け、その先を目指すのならば─────外に漏れるのは勿論だが、この関係を知らせなくてはならない()()がいる。

 

 その人がどういった反応を示すのか─────想像が出来るから頭が痛い。

 今から思い悩んでいたってどうしようもないのだが、どうしたものか。

 

「?」

 

 そうやって悩みつつも仕事の手は止めないでいると、不意に俺の携帯電話が音を鳴らす。

 俺が持っている三台の携帯電話の中でも、()()()()()()()()()()の連絡先を登録している機体の音だ。

 

 携帯を取り出した頃には音は止み、代わりにちかちかとライトを発する。

 メールが届きました、という文字が背面画面にて流れる。

 

 一旦手を止め、誰からのメールかを確かめるために画面を開き、メールを呼び出す。

 

 ─────星野?

 

 メールの送り主は星野だった。

 

「総司、コーヒーのお替りよ」

 

「あぁ、ありがとう」

 

 そこに丁度、かぐやが新しく淹れたコーヒーを俺の目の前に置きに来た。

 

 それにお礼を言いながらも、俺は操作を続ける。

 

 かぐやは俺の隣に腰を下ろし、画面を覗き込んで来た。

 誰からのメールなのか気になったのだろう。

 それでも本来、かぐやはこんな事はしないのだが、自分が近くに来ても俺が画面を閉じようとしない所を見て、覗いても大丈夫だと判断したらしい。

 

 その判断は、結果的には間違いであった。

 いや、かぐやにはもう星野との関係は知られているし、星野とのメールのやり取りなんて見られても特に問題はないのだが─────メールの内容を見る前の今の俺には知る由もなかったのだ。

 

 ─────妊娠したかも♡

 

「っっっっっっ───────!!!!!!!!???????──────ゴホッ、ゴホッ!!?」

 

「─────────────」

 

 メールの中身を開き、そこに書かれた内容を見た瞬間、コーヒーを口の中に含んでいた俺は寸での所で噴き出す事だけは耐え、代償として盛大に噎せた。

 そして、メールを見たもう一人の人物はというと、目をまん丸くしながら固まり、両手に抱えていたお盆を床に落としていた。

 

「ど、どうした四宮?総司?」

 

「何かあったんですか?」

 

「─────い、いや。何もない、大丈夫だ」

 

 二人揃って驚き固まる様子を見ていた白銀と藤原が、どうかしたのかと尋ねてくる。

 その質問に何とか気を取り直し、問題ないと、言葉を詰まらせながら返答する。

 

 違和感を持たれても仕方ないやり取りだったが、二人はそれ以上追及しては来なかった。

 その事に安堵しながらも、未だ心の大半を占めているのは困惑だった。

 

 ─────妊娠したかも♡

 

 もう一度見直しても、見間違いではなかった。

 

 妊娠…って、あの妊娠?女性のお腹の中に命が宿るあの妊娠か?

 星野が?誰の?…誰のって、俺のに決まってるか。セックスもしてるしな、あぁそうか俺の子供が─────

 

 じゃねぇ!

 とにかく、本当の事なのか確認を取らねば。

 

 ─────確かなのか?

 

 とりあえず、新規メールにそう入力し、星野に返信する。

 

 この時、俺はかなり混乱していた。

 かぐやに見られながら、更に同じ室内に白銀と藤原が居て、この二人にも見られる危険性がある中でしていいやり取りではない。

 

 それでも、今すぐ確認しなければどうにかなりそうな程に混乱していた俺は、星野からの返信を待つ。

 

「「っ」」

 

 再び着信音が鳴り、かぐやと一緒に息を呑む。

 

 すぐにメールを開き、中の内容を確認する。

 

 ─────病院でちゃんと調べた訳じゃないけど、検査薬を使ったら陽性だったよ。

 

「「…」」

 

 検査薬、か。なら本当に妊娠しているかはまだ分からない、星野からのメールにも()()と付いているから、星野自身も本当にそうなのか確信はないという事だ。

 

 ただ、検査薬を使ったからには、使うに至る経緯があったという事。

 星野の体に、妊娠時の症状が何かしら出たという事だ。

 

「すまん、白銀。急用が出来た、今日はここで帰らせてもらう」

 

「む…。そうか…?気を付けて帰れよ」

 

「あぁ。仕事の途中で悪いな、後は頼む」

 

 何にしても、まずは星野と直接話をしなければ。

 

 白銀に声を掛け、データを保存してからパソコンの電源を落とし、生徒会室を去り際に全員と挨拶を交わしてから廊下へと身を投げ出す。

 

 疾走。

 廊下を走ってはいけないとか、そんな事はどうでも良かった。

 この瞬間、俺の中での最優先事項はそんなものではなく、星野と話をする事に定められていた。

 

 ─────今、スタジオか?

 

 ─────うん、そうだよ。(^^)/

 

 確か今日はライブの予定はないから、レッスンをしている筈、という予想は当たり、メールでYESの返答が返って来た。

 

 ─────先週行った懐石料理店を覚えてるか?そこで席をとって待ってる。

 

 ─────覚えてるよ~。了解!(`・ω・´)ゞ

 

 場所を指定して星野と待ち合わせる。

 

 レッスンが終わってから来るなら、まだもう少し時間があるが─────指定した店に行ってしまおう。

 

 あんな形で出てきたのに生徒会室には戻れないし、かといって家に帰って仕事をするにしてもこの精神状況じゃとても集中出来やしない。

 それならまだ大分早いが、とっとと席を予約して行ってしまうとしよう。

 

 かなり長時間席を占有してしまう事になるが、構うものか。

 店側が文句を言って来たなら四宮の名を出して黙らせる。

 こちとら、お前らの事情を考えてやれる余裕などないんだ。

 

 日が落ち、辺りが暗くなり始める時刻。

 俺は学園の敷地から出て、駅へと足を急がせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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