感想欄にあった、作者は早坂が嫌いなのか!?という質問について。
大好きだよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
この二人、ミヤコさんも一緒にいるの忘れてるんじゃないかな?
なんて思いながら、ママの腕に抱かれている私。どうも四宮瑠美衣です。
今、私はママとお兄ちゃんと、世話役としてついてきたミヤコさん。そして、途中から合流したお父さんと一緒に、お父さんが通う学校の文化祭に来ている。
…うん、分かるよ。私も今、物凄い事を言ってる自覚はあるよ。
だから、もう一度言うね。
今、私達はお父さんが通う学校の文化祭に来てます。
そう、私のお父さんは学生です。それも高校生です。何なら、ママも高校には通っていないけど、お父さんと同年代です。
かなり世間からずれてる私の両親だけど、二人とも優しいし、私の事もお兄ちゃんの事も
ただ、あれなんだよね。お父さんがまだ十六歳だから、二人は結婚できてないんだよね。…あれ?それはつまり、二人がもし結婚式を挙げる事になったら、ママのウエディングドレス姿を見られるって事?
─────何それ最高じゃん。前世の体が弱かった頃の私だったら、幸せのあまりポックリ逝ってたんじゃないかな?健康最高、転生最高。
さて、話がだいぶずれたけど、現在私達はママが行きたいと言ったクラスの教室の前に居る。
そのクラスではコスプレ喫茶なるものを出し物としてるんだけど、さっきここで私達はお父さんの妹─────つまり、私達の叔母さんに会った。
叔母さんはお父さんと双子で、この学校、秀知院学園に通っている。勿論、この文化祭にも生徒側として参加をしている。
「楽しみだねー。かぐやちゃん、接客してくれるかなー?」
「さぁな。そこは運とタイミング次第だろ」
私達と会うまでは教室の前で客寄せをしてた叔母さんだったけど、今はその姿が見られない。
さっきと比べて教室の前の行列が長くなってるし、お客さんの数も増えてるし…叔母さんも中で接客をしてるんだろう。
ここに来る前に行ったバルーンアートの出し物をしてたクラスを出てから二十分くらい、ようやく私達の番が次の所まで来ていた。
「お待たせ致しました。中へどう…そ、総司様!?」
私達の前の組が入ってからそう時間が経たない内に、教室の中から出て来た魔女のコスプレをした女子生徒が私達を──────正確にはお父さんを見てから、頬を赤くして慌て始めた。
別に一生徒が出し物を見に来たくらいで何を─────とも思うけど、さっきの教室でもお父さんは他の生徒からかなり注目を浴びていた。
超絶可愛くて美人なママと一緒にいるからとも思ったけど、この反応を見ると、きっとそれだけじゃない。
「来て下さったんですね!かぐや様─────は、他の方の接客中ですね…。私、代わってきます!」
「いや、気にしなくていいから。席が空いたのなら早く案内してくれ」
「そ、そうですか…。こちらです!」
かぐや様…叔母さんも様付けで呼ばれている所を見ると、お父さんも叔母さんも、この学校ではかなり有名人なのかもしれない。
…それと、頬を染めた女子生徒に熱い目線を送られているお父さんを見たママが、また暗黒面に堕ち掛けてるから誰か私を助けて欲しい。
「(お兄ちゃん。たまにはママに抱っこされたいんじゃない?私もお父さんに抱っこさせてあげなきゃだし、代わってあげようか?)」
「(断る)」
一瞬のアイコンタクト、私とお兄ちゃんの間で行われた声を通さない会話によって、私は絶望の淵に立たされた。
いや、ここで喜んで受け入れられても私的には複雑ではあるのだけれど。初恋の人が十代アイドルにバブバブ甘えてたら、それはそれで受け入れ難い。それがどういう事情であれ─────たとえ、転生して年齢が戻っていたとしても、その精神がゴローせんせである以上、どうしてもそういう目線で見てしまう。
でも…怖い。ママ、さっきは怒りを吞み込んだ分、もっと怒ってる気がする。
「…?」
お父さんはママが怒っている事に気付いている。なのに、自分が原因だとは分からずに呑気に首を傾げてる。
それが更にママの怒りに拍車を掛け─────る事はなく、二人が席に座ってからすぐ、
それどころか、さっきまでの目だけが笑っていなかった笑顔じゃなく、心の底から、何か
「ようこそいらっしゃいました。ご注文をお伺い致します」
それに対して、何故かメイド姿の女子生徒はどこか目が死んでいる気がする。
抑揚のない声は、如何にもクール系メイドっぽさを感じさせるのに、こちらを見る瞳の奥で何やら黒いモノが渦巻いている。
えっと…、普通に怖いです。
「店員さん、何かお薦めってあるかな?」
お父さんが怖い目を向けてくる店員さんを、不思議そうに目を白黒させながら首を傾げている。
一方のママは、全く物怖じせず、ついさっきまで怒ってたとは思えないくらい上機嫌で店員さんに話し掛けていた。
分からない…。何でママはこんなに機嫌が良くなったのか、さっぱり分からない。
怒ってるよりはマシって言われるかもしれないけど、これはこれで怖い!感情の起伏が激しすぎて普通に恐怖だよ!
「そうですね…。珈琲なんて如何でしょう?これでも結構自信がありまして、私の主人には好評なんですよ?」
「へぇ~、そうなんだぁ~。私も、
何だろう。二人共、声は穏やかな筈なのに、物凄く
ていうか、ママ、どうしてお父さんの名前を強調したの?そして、どうして二人の頭の上に龍と虎が見えるの…?
「(お、お兄ちゃん…)」
「(すまない、ルビー。後で埋め合わせはするから、耐えてくれ)」
もう一度お兄ちゃんにSOSを送るも、返答はNO。
埋め合わせって、期待するからね?思いっきり吹っ掛けるからね?こんなの、キスくらいしてくれないと割に合わないからね!?覚悟してよお兄ちゃん!
そんな兄妹間で密かなやり取りが行われている事なんて露知らず、店員さんに珈琲を注文したママとお父さんは、メニュー表を見ながら会話を始める。
「いやぁ、それにしても結構お金取るねここ」
「お高い材料揃えてるだろうしな。値段も高くなる」
チラッとママが持ってるメニュー表を覗いたけど、二人が頼んだコーヒーが一杯七百五十円。その下にあった紅茶が一杯八百円と、普通の喫茶店なら考えられない値段をしてる。
お兄ちゃん曰くここって物凄い金持ち学校らしいし、ここに通ってる人達にとっては大した金額じゃないのかもしれない。
私は普通に目玉が飛び出そうになったけどね。お兄ちゃんもさっき目を丸くしてたし、多分私と同じ気持ちだと思う。
「お待たせ致しました」
ママとお父さんの会話を聞いていると、さっきの店員さんが、二つのコーヒーカップとコーヒーミル、ポットとコーヒーを淹れる道具一式を持ってやって来た。
ここはお客さんの前でコーヒーや紅茶を淹れている形式をとっている。注文を取った人が、そのまま注文をしたお客さんに飲み物を出すっていう決まりなんだと思う。
…それはつまり、この人がコーヒーを淹れている間、ママとこの人のやり取りをまた聞かなくちゃいけない事になる。
─────あ、叔母さんが居た。他のお客さんに紅茶を淹れながら、心配そうにこっちを見てる。ついでに、お父さんもその事に気付いて、叔母さんの方を見てる。
お父さんが叔母さんに向けている目を見て、私はシンパシーを感じた。だってその目は、さっき私がお兄ちゃんへ送った視線─────SOSの視線だったから。
─────あぁ、叔母さんがソッポを向いちゃった。
お父さんが発したSOSはあっさりと断られた。多分、自分で何とかしろとか思われたんじゃないのかな?
「店員さん、凄い手際が良いよねー。普段からよく珈琲を淹れてるの?」
「えぇ。先程も申しましたが、主人が
「そうなんだ。あっ、私も
店員さんの体が一瞬、痙攣を起こしたみたいに一瞬震えて、作業の手が止まった。
「料理の雑誌とか買ったけど、時間なくて読めてないし…」
「あぁ。最近、料理本が増えてるのはそれでか」
「そうだよ?健気な妻の努力を誉めてくれてもいいよ?」
「お前今、時間なくて読めてないって言ったよな。それに妻じゃねぇし」
お父さんに素っ気なく返されて、ムッ、とママが頬を膨らませる。
一瞬の硬直の後、作業を再開した店員さんだったけど、ママとお父さんのやり取りを聞いている内にその目が死んでいっている様に見えるのは気のせいじゃない気がする。
それにしても、この人は一体どうしたんだろう?
ママと店員さんが会った時の二人の反応からして、知り合いなのは間違いないだろうけど、一体どんな関係性なの?
目に見えて分かる敵意のぶつかり合いに、謎のマウントの取り合い。こんなの、まるで恋敵みたいで─────恋敵?
「(え…。え?も、もしかして…っ!?)」
ポットを手に持ち、優雅にコーヒーをカップに注ぐ店員さんを見る。
ママと敵意をぶつけ合って、謎にマウントを取り合って、ママとお父さんがいちゃついてる所を見て目が死んでいく。
こんなの、出てくる答えは一つしかない。
この店員さんは、お父さんの事が好きなんだ。
「─────」
何というか…何だろう、何と言えばいいんだろう。
ママとお父さんの娘という立場である私としては、複雑というか、脳が破壊されるというか。
だって、目の前に、何も知らずにお父さんの事を好きな女の子が居るんだよ?
二人のやり取りを見て、何となく好き合ってる事は気付いてるかもしれないけど、少なくとも二人が
これから、この人はその事実を目の当たりにして、これ以上ないくらい最悪の失恋が待ってるって事を考えたら─────普通に脳が壊れるよ。だって、私はこの人の好きな人の子供なんだよ?
─────あぁ…。お兄ちゃんも、同じ結論に至ったんだね…?
ふと目を向ければ、お兄ちゃんの目が死んでいた。きっと、私も同じ顔をしてるんだろうな…。
ごめんなさい、名前も知らない女の人…。貴女の好きな男の子は結婚できない年齢でありながら子供を…それも双子を作っています。
貴女の知らない所で私達に会いに来て、一生懸命私達の世話をしてくれています。
私達の世話をしながら、ママとたくさんイチャイチャしています。
いつか、貴女はその事実を知る事になるだろうけど、強く生きてください。
「このコーヒー美味しいね!今度コーヒー淹れる練習しようかな?」
「料理はどうした料理は」
イチャついてる自覚なんてないんだろう。二人は無自覚な惚気を見せつけながら、笑い合う。
その様子を見て、店員さんは顔が死ぬ。
そして、その顔が死んだ店員さんを見て、私とお兄ちゃんは脳を壊される。
もう、
だけど、本当の修羅場はこの後に待っている事なんて、この時の私には知る由もなかったんだ。
そして、文化祭初日は終わりを迎え、辺りは夕日に照らされ、空が茜色に染まる頃。
総司達は、生徒会室へと足を踏み入れた。
本番は次回。