高校通算60本の実績を引っ提げドラフト3位でプロ入りした厚木球刃。
誰もが将来の長距離砲として期待を寄せていた。
しかし、現実は甘くなく厚木はすぐにプロの壁にぶち当たる。
当たれば打球は、遥か彼方に飛んでいくが
当たらない、当たらない、圧倒的に当たらない。
ボールに嫌われているのか、バットがボールを避けているのか
一軍出場もなく、戦力外の足音が聞こえてきたプロ4年目。
ファーム最終戦、前日
ブン、ブン、ブン
風を切るような鋭い音が、夜空に響く。球刃の日課である夜の素振り。
小さい頃から続けている日々のルーティンの1つだ。スイングスピードだけでみると平均150km/hはある。
高校生で平均110〜120km/h
大学、社会人で平均130km/h
プロ選手で1軍主力になると平均140km/h以上だとすると充分過ぎる数字だ。球刃は、高校生で平均130km/h後半を記録しており、高校野球界では、ホームランバッターとして活躍することができた。
しかし、プロの世界は甘くない。高校生に比べて、プロは、投手のレベルが段違いであり、球速、キレ、制球力、一打席ごとの駆け引きなど。全てにおいて球刃の想像をはるかに超えていて、全く手も足も出なかった。
1年目は、56打席で打てたヒットはわずかに4本。打率0.071、1本塁打1打点で三振40だった。もちろん、コーチ陣もなんとかしようとした。
タイミングの取り方。配球の読みなど、あの手この手を使って未来の長距離砲を育てようとした。しかし、どれも上手くいくことはなく。真面目な性格もあって練習に取り組む姿勢はよく、スイングスピードだけはみるみる成長し、一軍主力級の物を体得することができた。
打撃練習では、豪快な柵越えを何発も打つ姿から「練習だけは超一流」
豪快なスイングで三振することから「特大扇風機」と揶揄されていた。
(明日、なんとか結果を残さないともうあとがない)
「厚木、明日が最後のチャンスだ。結果が残せなかったら来年はないと思えよ」
今日の試合も3三振で終わり、試合後二軍監督から呼び出され告げられていた。プロは、入れ替わりの激しい世界だ。実力のない者からどんどん辞めていく。高校時代の恩師から
「厚木、お前は自分でユニフォームを脱ぐことができる選手になれよ。決して、脱がされる選手にはなるな。そのために努力を惜しむな!」
とドラフト後に声をかけてもらった。その言葉を胸に今まで努力を重ねてきた。
俺にはプロでやっていく才能がなかったのかなぁ
マイナスな思考が気を緩ませ、スイングが乱れる。
一度手を止め、額の汗を拭う。
弱気になるな、まだチャンスはある!
明日、結果を残せれば・・・
嫌なイメージを頭から追い出し、一心不乱に振る。
998、999、1000!
ふぅー
日課の千スイングに達したその時だ、どこからともなく電子音が聞こえた。
ピロン!
おめでとうございます!
1日千スイングを10年間続けてました。
ステータスをアンロックします。
野球能力値をステータスとして表示します。
アンロックボーナス、ランダムで超特殊能力1つ、基礎ポイントを200ポイントプレゼントします。
ピロン!
超特殊能力『超悪球打ち』を習得しました。
超悪球打ち
ど真ん中のストライク以外は、真心で高確率で捉えることができる。ど真ん中のストライクには手も足も出ない。
厚木 球刃
弾道 4
ミート G(限界値)
パワー A
走力 E
肩力 D
守備 D
捕球 E
超悪球打ち、扇風機、パワーヒッター、ムード×
な、なんだよこれ?
はぁステータス?
訳が分からず混乱する俺を他所に謎の電子音は続ける。
今後、厚木球刃氏の野球能力は、全てステータスによって管理されます。
基礎ポイントを貯め、能力向上や特殊技能を習得してください。
基礎ポイントや能力向上や特殊技能の習得の説明は、必要ですか?
「あ、はい」
かしこまりました。
まず、基礎ポイントについてです。
基礎ポイントは、能力向上、特殊技能の習得に必要なポイントのことです。規定ポイントを消費することで能力の向上、特殊技能を習得することができます。よく考え、効率よくご利用ください。
次に基礎ポイントの獲得条件ですが、練習や試合の成績に、よって獲得することができます。一定の条件をクリアすることでボーナスポイントが得られることがあります。
次に、能力や特殊技能についてです。
能力は、SからGの5段階で最高はS、最低はGとなっております。
次に、特殊技能ですが、各技能に応じて効果を常に得ることができます。
厚木球刃氏の今後の野球人生に幸多からんことをお祈りしております。
この出来事が、俺の野球人生の大きな転機になることになった。