突然の出来事から一夜明け
ファーム最終戦の試合前練習
カーーン!ビューーーーン!!!
打撃投手から投じられたやや真ん中高目のボールを強振。
気持ち良い打球音と共に白球は、バックスクリーンの電光掲示板に直撃する。
カーーン!ビューーーーン!!!
カーーン!ビューーーーン!!!
カーーン!ビューーーーン!!!
内角、外角、低めと投じられるボールを全て気持ち良く弾き返す。
これは、昨日得た超特殊技能『超悪球打ち』の能力のおかげだ。日課の1日千スイングを10年続けて得ることができた物だ。ど真ん中は、豪快に空振りしてしまうけど、普通の打者からしたら絶好球なのでそうそう投げ込んでくることはないだろう。キレのいい変化球やコースで勝負してくることが多いプロの世界において、俺はなんていい技能を手に入れることができたんだろうか。
昨日は、突然のことで混乱したが、あの後冷静になって考えてみると自分の能力を客観的に見ることができ、尚且つ、基礎ポイントで強化することができることがとりあえず、分かった。
もらった基礎ポイントをどう使うかで昨日は、なかなか寝ることができなかった。なんだか、育成ゲームをしているような感覚だった。
しかし、ミートGってなんだよ!
しかも限界値って!それはないだろう!
確かに俺は、コンタクト率は低い。むしろ最悪って言ってもいいだろう。
だとしても、プロ野球選手でGって・・・まぁ嘆いても仕方ないのでポイントをどう振ったのかというと、とりあえずパワーに全振りだ!
基礎ポイントを全部使ってパワーをAからSまであげておいた。これで技能の効果と相まって当たればほぼ確実にホームランを狙えるようになった。超悪球打ちの効果でど真ん中以外はほぼ真芯で捉えることができるし、ミートってなんなんだろうか。Gでも関係なさそうだ
ブン!!!
ど真ん中を豪快に空振りしてしまい、バランスを崩してしまう。
厚木!ど真ん中やろうが!っと軽くヤジが飛ぶ
「ラスト!スライダー」
真ん中から外に逃げるように曲がっていく。それに対してしっかりと踏み込んで打ちにいく。
カーーーン!!ビューーーーン!
技能のアシストもあり、真芯で捉えた打球は、引っ張り方向レフトスタンドに飛び込んでいく。
◇
ファーム最終戦
極亜久ヤンキーズ対頑張パワフルズ
「今日は、最終戦だ。思い残すことがないように、勝って終われるように!」
「スタメンは・・・
以上だ。」
俺は、ベンチスタートだった。
123 456 789
極亜 000 00 02
頑張 000 00 01
試合は序盤から緊迫した投手戦が続き5回を終了した時点で両チーム合わせてヒットは3本だけだった。しかし、6回裏に、パワフルズは、ヒットと四球でノーアウト1、2塁のチャンスを作ると送りバントで1アウト2、3塁にチャンスを拡大すると、続く2番佐藤がライトへの犠牲フライで一点を先制。続く3番宮本にタイムリーが飛び出し、2-0とした。
123 456 789
極亜 000 000 02
頑張 000 002 23
7回は、両チームともに3者凡退に終わり、試合も残すところ残り2回。
8回、ヤンキーズは、クリーンナップの3番から始まる好打順。ここでなんとか追いつきたいところだ。先頭の3番加藤は、初級を打ちサードゴロに倒れてしまうも4番、5番と連続四球でワンアウト1、2塁の絶好のチャンスを迎える。
「さぁ、ヤンキーズ同点のチャンスで6番の佐伯がバッターボックスに入ります。ネクストには、厚木が準備してますね」
「ヤンキーズとしては、なんとか追いつきたいところ」
初球は、アウトローにカーブが決まりストライク。続く2球目は、同じくアウトローにストレートが僅かに外れてカウント1-1
「佐伯、3球目を打ったぁ!大きいあたり!しかし、ノビがありません。センターの足が止まる。2アウト」
◇
前を打つ佐伯さんがセンターフライに倒れて2アウト。
俺は、バットからリングを外し、一回、二回と素振りをしてバッターボックスへと向かう。
「厚木 背番号55」
バッターボックスを右足で鳴らし、視線をホームベースから相手投手へと向ける。相手投手は、7回から出てきたセットアッパー。大きなカーブと速いまっすぐが武器だ。ここで打つ!
初球、インロー、膝下にまっすぐ
「インローに素晴らしいボール!」
「これは打てませんねぇ」
2球目、外から入ってくるカーブ
俺はそれをしっかりと踏み込んで強振する。技能のアシストもあってかボールに吸い寄せられるやような感覚だ。
「打ったぁぁ!これは大きい!いったか?入るか?ライトポール際に打球はグングンと伸びていくぅぅ!!」
ファール!
あともう少しのところで打球が切れていく。
3球目は、外に直球が大きく外れてボール
これでカウントは1ボール2ストライク
さっきの当たりを見て打ちに来ないと思い、俺は外にヤマをはる!
4球目、踏み込んでいったところにインハイに直球。思わずのけぞってしまう。高めに外れてボール。これで2-2
(どうする、内か外か。まっすぐか、カーブか)
考えが纏まらないうちに、投手が投球動作に入る。
5球目、インコースに速い直球。なんとかくらいついてファールにする。
(3-2にはしたくないはず・・・)
緩んだ手袋をしっかりと止め直す
(ごちゃごちゃ考えてもわからん!もう、きた球を打つ!頼むぜ、超悪球打ち!)
6球目、セットポジションから放たれたボールは、インローに
俺は、少し開き気味に踏み出し、思いっきり振りにいく。
真芯で捉えた打球は、高々と舞い上がりレフトスタンド目指して飛んでいく。俺は、ホームランを確信し、右手を高々と上げ、ゆっくり一塁方向に進みながら打球の行方を見守る。
「いったぁぉぁあ!これは大きい!入ったぁぁ!ホームラン!!!」
「代打厚木、逆転3ランホームラン!!!!ヤンキーズ、逆転!!!」
ゆっくり、ダイアモンドを一周し、ベンチへと戻った俺をチームメイトが出迎えてくれる。ハイタッチを交わしながらこの時俺は、自分の中で何かが変わった気がした。
◇
ファーム最終戦の翌日
球団事務所
「厚木君、君とは来シーズンの契約は結ばない」
それは、戦力外を告げるものだった。