悪球打ちで成り上がり   作:しゅんがしゅん

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トライアウト開始

 

 

 

「厚木選手、球団は厚木選手とは来シーズンの契約は結ばない。」

 

 

「今までご苦労だった。」

 

 

 

 事務所に呼び出された俺は、会議室にいた球団職員から告げられる。チーム構想から外れてしまった、戦力外だ。

かなり強面の人だが、俺が入団したときに、あれやこれやといろいろ世話を焼いてくれた人だった。

 

 

 

 

「そうですか・・・今までありがとうございました。」

 そう言って俺は頭を下げる。はっきり言って悔しい。やっと自分の中できっかけになるものを掴むことができたと思ったところだったのに・・・

 

 

「厚木君、これからどうするんだ?まだ続けるのかね?」

 

 

 

「もちろん、トライアウトを受けようと思っています。」

[18球団合同トライアウト]

日本プロ野球機構に属する18球団が合同で行う自由契約選手を対象に行うトライアウト。

 

 

 

「そうか、最後まで頑張ってくれ」

 

 

 

「ありがとうございます」

 こうして、俺は、4年間お世話になったヤンキーズを去ることになった。

 

 

 

 

 

トライアウト当日

 

 

 

 

 18球団合同トライアウト。俺と同じように戦力外通告を受けてもなお抗おうとする自由契約選手49名(内投手23名、野手26名)が集まった。トライアウトは、シート打撃形式で打者は3〜4打席、投手は3人の打者と対戦する。バックネット裏には、各球団の編成担当の他に社会人チーム、独立リーグのスカウトの姿もあった。一説には、もう獲得する選手は、決まっていてその選手の状態をチェックする場とも言われたりしているが、ここで強烈なインパクトを残すことができれば食い込むこともできはず!

 

 

 

 

 

トライアウト開始

 

 

 

1打席目 ノーアウトランナーなし

 対戦相手は、パ・リーグ福岡ハードバンクの左投手。試合で何度か見かけたことはあるが対戦経験がない。なので投げられる球種は不明だ。

 

 

 

初球、様子見で投げられた外角低めカットボール。見逃せばボールだが、今の俺には絶好球。しっかりと踏み込み技能のアシストを使い真芯で捉える。弾かれたボールは、弾丸ライナーでバックスクリーンへ

 

 

 

 

ドン!!!

電光掲示板直撃の豪快な一撃となり観客席が響めく。

俺は、ゆっくりとダイアモンドを1周するのだった。

 

 

 

 

 

2打席目 1アウトランナー2塁

 今度の対戦相手は、一軍でも登板経験があるパワフルズの右のサイドハンド。確か、得意球はシンカーだったはず。

 

 

 

 

初球、外に大きく外れてボール。1打席目のホームランでかなり警戒されているようだ。2球目、インローに沈み込むシンカー。これを見逃しストライクを取られる。1-1からの3球目、外の、ストライクからボールになるスライダー。打ちに行くも流石に届かず空振り。1-2と追い込まれた。「扇風機」の技能のせいか身体が重く感じる。4球目、の内角のスライダーを捉えるも右に大きく切れてファール。

 続く5球目・・・放たれたボールは、インコースへ。開き気味にステップし、引っ張りにかかる。

 

 

 

 カッキーーーーン!!!!

 

 

 

しっかりと捉えた打球は、高々と舞い上がりレフトポール際へ、ポールの遙か上を超えていく。俺は、確信しゆっくり歩いて一塁へ向かう。

 

 

 

 

が、

 

 

 

三塁塁審が腕を大きく広げる

 

 

なっ!?

 「ファール!!!」

 

 

 

 どうやら、ポールを巻いていないという判定のようだ。一軍のシーズン中ならビデオ判定ものだが・・・仕方ない

 

 

 

 気持ちを落ち着かせるために、一度ネクストに戻り、滑り止めスプレーをかけ一回、二回と素振りをする。気を取り直して、6球目。外に大きく外れてボール。続く7球目は、かなり手前でワンバウンドしてボール。これで3-2。

 8球目、モーションに入ると同時に右足を上げタイミングをとる。リリースの数瞬後、球の軌道からくるコースに合わせて右足を下ろそうとする

(真ん中!?南無三・・・)

 なんと8球目は、シンカーが抜けてど真ん中にボールが来る。投げた相手はかなりしまったという顔をしているが、俺はもっと顔色が悪かっただろう。

 

 

 

ブン!!!!

ミットに収まる音をかき消すような鋭いスイングの音がする。

 

「ストライク!!!アウト!!!」

 

真ん中は、打てないんだよ・・・

 

2打席目 空振り三振

 

 

 

 

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