厚木の今後をかけた運命のトライアウト
現状は、
第1打席 ホームラン
第2打席 空振り三振
と2打数1安打1本塁打となっていた。
そして、いよいよ最終打席。
対戦相手は、今年カイザーズを自由契約になったベテラン多村
全盛期は、MAX155km/h後半の直球に落差のあるキレ味のよいフォークで三振を量産していたパワーピッチャーだ。しかし、近年年齢からくる衰えのせいか得意球のストレートを痛打される場面が目立ち、球速も140km/h台まで落ちてきていた。球団からは、引退を勧められたが本人はそれを拒否。現役続行をかけてこのトライアウトに臨んでいた。
第1球目は、アウトコースのフォーク。ベルトの高さから膝くらいまでボールがすとんっと落ちる。俺は、反応するもこれを見逃しストライク。続く2球目は、フォークボールがワンバンしボール。俺は、一度打席を外し、緩んだグローブを止め直し、気持ちを落ち着かせる。1.2回素振りをし、再度打席に入る。そして、3球目・・・
◇
多くの編成担当やスカウトがいるバックネット裏で、厚木に熱い視線を送っている男がいる。キャットハンズの編成担当の影山である。スカウト時代、彼は、厚木のことを目にかけており、編成会議で彼のドラフト指名に向けたプレゼンをしたこともあった。そんな彼が今年ヤンキーズを自由契約となりこのトライアウトに出場すると分かると急ぎ駆けつけたのだ。バックネット裏から厚木の様子をくまなく観察していた。
身体付きもいい。パンチ力は、十分一軍でやっていけるだけの物はある。
変化球の見極めもできているようだ。あとは、結果がついてくればなんとかいけるか・・・
カッキーーーーン!!!!
なっ!?
厚木が3球目の高目の釣り球を強引打ちにいき打球がレフト方向に大きく伸びて行き、場外に消えて行くの確認すると私は、スマホを取出し電話をかける。
「私だ、明日編成会議を行うとみんなに伝えてくれ・・・」
さぁ、君はどれだけ私を楽しませてくれるか、期待しているよ。
ゆっくりとダイアモンドを1周している厚木に背を向けると球場を後にした。
◇
影山の他に厚木に対して熱い視線を送るものがいた。
(高目の釣り球を強引にホームランしたか・・・ふっ、相変わらず無茶苦茶なやつだ)
(この調子なら、十分戦力になるかもしれないな。強くなった君と対戦できないのは少し悲しいが)
懐からスマホを取り出し、電話をかける
「父さん、お願いがあるんだ・・・」
◇
さぁ、厚木を獲得する球団は、現れるのか・・・
トライアウトから3日後
「マジで、どうしょう・・・」
俺は、今の状況に頭を抱えていた。