無意識少女と殺人鬼   作:ナチュラル7l72

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アリバイ

「やめろ!くるな!ごみの分際でカースト上位の俺に近づくんじゃねええ!」

 

 

「うるっせえ…こいつ。はよくたばってくれ。近所迷惑だから」

 

 

漫画みてて最近思ったんだが心臓刺した程度で登場人物達、なんで死んだように黙り込むんだ?人間の脳潰さなきゃ一生喋り続けるってことは文系の俺でもわかるくらい明白だろうに。現に俺の目の前で叫びまくるこいつらは心臓ナイフで刺そうが肺に向かって背中まで貫通する一撃喰らわせようが血反吐をこぼしながら叫びまくるっつーのに。

 

ぐしゃっと脳にナイフを一突き。それだけでこいつのおしゃべりな口は止まった。

 

ぐちゃぐちゃに汚れたレインコートを脱ぎ捨て少女とともに去る。ここら一帯はこいつの能力でどっか行かせたおかげで殺害現場は見られてないだろうし今回も前回同様多分大丈夫だろう。証拠とか一切残してないし。なんならアリバイ作ってきたし。勝ったな。がはは。

 

 

「最近疲れなくてたすかるなあ。さすが男の子は違うね!重労働をこうも簡単に終わらせられるなんて!」

 

 

「殺人を労働扱いすんな。金とんぞ」

 

 

今回の殺人相手は海堂樹君。陽キャウェイ者カースト1位クラスのキング。ゲームだったらそんな称号が肩書としてついていそうだ。

 

社会というのは実力があれば上に上がれるものだと俺は思っている。だからそれ相応の努力が必要だし努力している奴は軒並みいい奴だとも思っている。

 

…だから海堂はもうちょいまともな理由があると思ってたんだがな。そもそも人を殺したいってやつの時点でまとももクソもない気がするが。

 

『てめえがこの俺を差し置いて女子どもからキャーキャー言われてんのがむかつくんだよ!死ねやクソが!』

 

俺そんなにモテてるか?嘘つけモテるどころか人から話しかけられてもいないんだぞ。教室でも参考書開いて勉強しかしてないから話しかけずらいだろうなというのは自覚しているんだが。別にいいかって思ってる俺がいるのもまた事実。

男の嫉妬は醜いな。嫉妬というか海堂の妄想だけど。

 

 

「燿って結構モテるんだね!嫉妬しちゃうよ」

 

 

「お前もその性格なら嫌われることは無いだろ」

 

 

「私のお姉ちゃんが嫌われちゃってるから。私の地元でお姉ちゃんの名前だしたらみんなそそくさ逃げ出すからね」

 

 

お前の姉ちゃん番長か何かか?

 

それにしても予定が狂ってしまったな。本当だったら陰キャ仲間こと斎藤光希君を殺しに行く予定だったんだがそっち方面はなにやら間の悪いことに人が多いようで歩行者天国になっていた。明日殺しにいくとしよう。

それより気になるのはあの警察だ。

 

正直あそこで諦めたとは思えない。あれは俺を疑っている目だった。若い方はともかく中年の警察官はかなり俺を疑っている。

 

 

「あとさ、私の名前は古明地こいしだよ!さっきからお前とかこいつとか!こいしって呼んでよ」

 

 

「あーはいはいそれは考えとく。それよか本当にバレてないのか?まあまあ近い距離にいるけど」

 

 

「ダイジョブだって!ほら気づいてるような様子もないでしょ?」

 

 

そして案の定あの警察が俺の家の前で張っていた。黒い車に乗りカフェオレを咥えながら玄関を食い入るように見張っている。

 

何故そんなにも気合いれて見張ってるのやら…そりゃ明白か。

隣の少女はどうにも殺人鬼には見えないがかなりの数をヤっているようで俺がまあまあ凄惨に殺しているにもかかわらず目を背けたり嫌悪感をにじませたりはせずむしろ手早く殺してる俺を力強いねーと賞賛するしまつだ。

 

おそらくまあまあの難事件になってるんだろうな。こいつが関わってる事件ってのは。

 

しかしそうなるとどうしてそれらのこいつが犯している殺人事件は何故こいつの犯行だとバレているのだろうか。

それがわからない。証拠もない。目撃もされていない。なら何故一連の事件がこいつの犯行だとバレているんだ..?

そういえばそもそもどうやって依頼したとか依頼されたとかを警察が把握しているんだ?親族から聞いたとか?

 

まあいいや。どうせワイがやったとバレる事はないやろ。勝ったな。がはは。

 

俺は少女の手を借り空に浮かび上がり窓から部屋に入った。俺より小さい少女の背中にのせられる気分はなんとも得難い気分というか、なんというか。かなり恥ずかしいものがあった。

そのまま就寝し俺は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、さっさと吐け!お前が海堂をやったんだろ!」

 

 

路上で尋問されていた。まじかよ一瞬でバレたわ。

 

 

 

 

 

 

「いや、なんの話ですか?つーか学校行きたいんで離してください。これ任意ですよね?学生の邪魔をしないでください」

 

とりあえず否定の言葉を並べ立てる。何が何だかわからんがこの警察の俺に対する評価が絶望的だという事がわかった。

 

しかし俺は勾留されていない。つまりは証拠がないということだ。

だというのにほぼ確信があるのかすごい剣幕で俺が犯人だと嘯く中年の警察。どういうことか全くわからない。警察はいったいどういう情報を手に入れているんだ?

 

 

「ちょっと小山さん!むりやりな尋問は違法ですよ!少年も困惑してるでしょう!」

 

 

「黙れ!こいつが殺人犯ってのはもう確定だろ!こいつを一度捕まえて犯行が止まればそれで解決だ!!」

 

 

こいつ、めちゃくちゃな事いってんな。裁判起こしたら確実にかてるレベル。あと逮捕にしろ勾留しろ長い期間捕まるのは勘弁してほしい。斎藤光希をさっさと殺さないと契約とかの関係で俺メリーさんに殺されるから。

 

 

「どこが確定的なんだよ。メールでメリーさんに殺害依頼されたこの少年がなぜか生きてるってだけでしょう。むしろ喜ぶべき事でしょ」

 

 

中年の警察はッチと舌打ちをし、一度俺の顔面を強く睨む。その顔は正義感に満ちた警察官としての表情と絶対に逃さないハンターとしての表情が混在していた。

 

 

「あ、ちょっと小山さん!」

 

 

ぱたぱたと若い警察官が中年の警察官の後を追い俺の前から消えていく。

 

意外と俺もあの剣幕には緊張していたようで上がった肩を下ろす。ここ最近、高校生に上がったこともありなかなか怒鳴られる機会がなかったが久しぶりというのもあり敏感になっていたのか、それともあの警察官の尋常じゃない感情の強さ故か。

「怒り」の感情をまざまざと見せつけられた気分だ。

 

だがこれでわかった。なんで俺がこんなにも疑われているのか。

普通に見逃してたな。メリーさんという固定概念にとらわれて依頼のされ方が全部電話だと勘違いしていた。

電話の記録というのは録音でもしていない限り会社などでは保存されない。だから俺どうせ疑われへんやろと高をくくっていたわけだがメールは別だ。たしかどっかの法律で会社はメール内容は一年保持しなきゃいけないとかあったはずだ。

おそらくメリーさんの噂では電話番号だけでなくメールアドレスも同時に流布されているのだろう。いやそれともあいつ、噂広めるために電話口でメールアドレス教えてわざと警察にバレるようにしているのか?メールアドレスとか長すぎて覚えられる気しないし。

 

しかしだとしたらどうする。電話の通話記録とかからバレてるなら電話破壊すればいいかと考えていたのにメールの内容ならとっくに携帯会社の中へ行ってしまっているだろう。だとしたらこれから斎藤光希を殺しに行くのも一苦労になる可能性が高い。おそらくもう斎藤光希がメリーさんに依頼したっていうメール内容は検閲されてるだろうからな。

 

あー…どうしよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわすげーな警察の量。keep outされてるわけじゃないけど近づいただけで疑われそうだな」

 

 

学校をさくっと終わらせ今日も今日とて殺人の時間です。青いレインコートを着てナイフを手に持ち斎藤光希君を殺しに来たわけだが。

 

 

「うーん…これはなかなかに厳しそうだね。あそこにいる人たちみんな意識的にここを監視するって思ってるみたいだから」

 

 

案の定大阪冬の陣のようにがちがちに囲まれた斎藤家がそこにあった。青い制服を身にまとった警棒を持った警察官訳十人が番人として俺たちを阻む。そしてその中にはあの強い信念をもったあの中年警察官もいた。

 

ナイフを持った右腕が少し震える。わかってはいたが俺はなかなかに大変な事をしでかしたんだ。この量の国家権力を動かすほど。

だが後悔はしていない。理不尽だと思うだろうがそれはお互い様だし元はと言えばそっちが俺を殺すよう依頼したのが悪いのだ。

 

だからなんとしても斎藤光希は殺す。あいつの自己満で俺が死ぬことは許されない。俺が許さない。

 

 

「そうか…あの中かいくぐって家に侵入するのは不可能か」

 

 

「いやそれはできるけど。でもあの量の警察をやっちゃうのは難しいなー」

 

 

いや何てこと考えてんだ。やっちゃわないから。殺すのは斎藤だけでいいから。なんで無駄にリスクを取ろうとするんだ。

 

それに俺は屑を殺したいのであって、警察を殺したわけじゃないんだ。そこんとこわかってくれよ?

 

 

「じゃ、手握っててね。放したらバレちゃうから」

 

 

「…いや、前たからを殺しに行ったとき別に手つながなくても俺認識されてなかったくね?」

 

 

「そ、そっちの方が効果上がるの!ほら早くいこうよ!」

 

 

ぎゅっと手を握られる。長い袖口から出されたその手は意外な事に暖かった。…いや意外でもないか。こいつが人殺しするのはあくまでゴミ掃除。自分の糧として人を殺してるだけだ。

 

だからこいつに無慈悲とか、非情という言葉は不適切だ。熱が通った手を通して俺はそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつも通り壁を貫通し屋内へ侵入する。壁の断面って結構キモイんだな。ぶつぶつところどころ穴開いてて気持ち悪かった。

 

流石に家の中には警察はいないようで既に床についた斎藤家がそこにあった。俺は無言で一部屋ずつ見分し、ついに斎藤光希を発見した。

 

 

「ちなみに、こいつはなんて言ってお前に依頼したんだ?」

 

 

「うーん。たしか嫉妬がましく『なんで僕と同じようなあの陰キャがあんなにモテるんだ…うざいから殺してくれ』みたいなかんじだったかな」

 

 

そうかい。やっぱ人殺しを依頼してくるようなクズは屑な事を理由にするんだな。マジ勘弁。それで苦労してるのが依頼された被害者こと俺ってとこが本当にクソ。まあ、こいつらはそのかわり死ぬことになるんだけど。

 

 

「んじゃいつも通り下にいる両親コンビニにでも誘導しといてくれ」

 

 

「もうやってるよー。ここは三人兄弟らしいから、他二人も誘導しとかなきゃね」

 

 

扉の向こうから複数の靴を履き替える音が聞こえ始め、玄関が開き、そして閉じる。

これでもう殺人を阻む者はいない。

 

 

「じゃあな」

 

 

これが終わったらこいつ…こいしともお別れか。

案外刺激的で楽しかった日々を思い返しながら俺はナイフを脳天めがけて振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい…」

 

 

斎藤家から人が出てくる。父。母。姉。弟…

 

光希少年が出てくることはなかった。

 

そしてこの光景は資料を通してなんども見た行動。

確実に、操られている。

 

 

「…総員。聞こえているな?」

 

 

小山はトランシーバを通して指令を伝える。

総員12名。うち4人をおくがいを警備させ残りを集める。

 

 

「なかには殺人犯が立てこもっている可能性が高い」

 

 

突入する。

その言葉を合図に玄関が開き、正義の徒が入っていった。

 

 

 

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