無意識少女と殺人鬼   作:ナチュラル7l72

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罪人

グシャ!!

 

 

突き刺した脳天から大量の出血が。そしてびくんと痙攣する斎藤。目が驚いたように開き、そして動くことは無かった。

 

 

適当にライトを目の前に動かしてみたが瞳孔が動くこともなく素人目では確実に死んでいた。

 

 

「終わったな…」

 

 

「…そうだね。終わっちゃったね」

 

 

感慨深く俺は呟く。ようやく、ようやく俺は殺人鬼から元殺人鬼になりこれから誰も殺さず生きていけるのだ。

手に持っていた血濡れたナイフを落とす。俺がクズだということは百も承知だがそれでもなんのかんのと人を殺したくはない。知らない他人と自身の命を天秤にかけ、俺の命を尊重した結果ってだけで、俺は決して殺したかったわけではなかった。

 

殺した罪を俺は一生背負っていく。そしてそれを受け入れて俺はこれから普通に生きる。普通に勉強して、普通に就職して、殺人鬼から足を洗い真っ当に社会に貢献する。それが償いにならないとしても俺の責任だ。

 

 

俺はそう思いこの言葉をつぶやいた、のだがこいつは俺のそれとは違うようで悲しむような、惜しむような、俺のように爽快な気分ではまったくないようだ。悲哀に満ちたつぶやきだった。

 

こいつにしてみれば俺は相当厄介な奴だったはずだ。自分の刃で殺せない。そしてさらに依頼してきたカスを他人の手を借りて殺しに行かなくてはいけない。

 

だからこいつにしてみれば邪魔な贅肉を削ぎ落としたかのそうな気分。そう思っていたのだが。

 

 

「え、と。これでもう会ってお話できるような理由もなくなっちゃったけどさ」

 

 

遠慮がちに少女は俺に話しかける。その最高に近い顔面が神秘さを助長し悲哀に満ちた空間が広がる。レインコートを脱ぎ捨て血の付いたナイフを壁にたたきつける。もう俺にこれは必要ない。はずだ。

なのに何故この少女はまだ俺の隣で話をつづけているのだろうか。既に俺とこの少女の関係は切れているというのに。

 

そしてこの俺の中にある寂しさはいったいなんなんだ。もう憂う必要はないのに。俺を地獄のどん底にはたき落としたこいつとも会う事がなくなるというのに。

 

 

「また、会いにいっても…」

 

 

ガチャッ!

 

 

突然、この部屋の扉が開かれる。

扉の先には先ほどまで屋外で警備していた警官が警杖を手に持ち部屋にこちらを睨みつけていた。

 

 

「容疑者を二人発見!被害者は既に刺殺されている模様です!」

 

 

「直ちに手をあげ武器を捨てろ!」

 

 

俺は落としていた武器を拾い上げ警官達に向ける。が俺はナイフで人を刺すことはできるが戦うすべなんぞ身につけた覚えはない。このままでは普通にボコスカ殴られ死刑台送りにされてしまう。

 

ふざけんな。たまったもんじゃない。俺を生贄に安寧を取ろうとしたクズ共を殺して何が悪いんだ。確かに俺はクズだがあいつらの憂さ晴らしで散るようなゴミではないのだ。

 

 

「早く来て!」

 

 

窓の鍵を開け外に浮遊しながら出ようとする少女。俺はナイフを警官に投げつけ狼狽えているすきに足をかけ外に出る。

 

 

「…クソッ」

 

 

だが既に斎藤家は囲まれているのか出た先にも大量の警官が待ち構えていた。

 

完全にミスった。そもそも斎藤の家周辺に警察が大量に監視していたという時点でリスクが今までの殺人と段違いだったんだ。

俺等が今までのお縄になっていなかったのは証拠がなかったから。殺したあと現場になにも残っていなかったからだ。

斎藤の家から数百メートルのご近所を無意識に遠くのコンビニに行かせ俺自身はいつも窓から少女の手を借りて飛び出ているから両親からのアリバイも実証できる。現代の技術じゃ確実に俺は白位置に上がるだろう。

 

だから絶対に俺達は現行犯として見つかってはいけなかった。周辺に俺達を囲み睨みつけている警察の中には昨日の中年の警察もいる。既に俺の顔と名前は割れているだろう。

 

 

ダメだ。これは。

 

もう無理…だな。

 

償う日が来たってことだ。俺が犯した罪程度に心をヤラれる俺じゃないがその責任は自覚している。

カスどもにこの言葉を使うのは気に食わないが未来ある四人の命を無惨にもナイフで殺したのは俺だ。

 

もう少し先だと思ってたんだがな。京大の法学部入ってはまあまあ金稼ぎながら社会の役に立って、そんでいつかバレて、つーかバレにいって裁かれるもんだと勘違いしていた。

 

別に心構えできていない訳では無い。いつ死刑を宣告されてもそうですかと返すだけの覚悟は決まっていた。ただ俺はあのカスどもの代わりに死んでやる事が嫌だっただけだ。たからを殺す前は罪悪感で潰されそうだったが居直り強盗みたいな感じになってたんだろうな。

 

 

「俺が時間稼ぐからさっさと空飛んで逃げてくれ。現行犯だから求刑は免れないだろうけど。

お前が証拠抱えて逃げてくれたら俺の罪これだけになるかもしれんからな」

 

 

俺は嘘をついた。

俺はとっくに覚悟を決めていた。曰く「捕まったら俺の罪を全て自白し全ての罪を償う」と。

 

 

「やだ!ぜっ…たい、ダメだよ!一緒に、逃げるの!」

 

 

俺の手を掴み必死こいて俺ごと空を飛ぼうとする少女。けどそりゃ悪手だろアリンコ。

 

 

「無理だろ。俺もうすぐ180だぞ?お前みたいなチミっちゃい奴が持ち上げられるわけないだろ」

 

 

「でっかく…なりすぎだよ!」

 

 

それでも馬鹿みたいに俺を持ち上げようとする少女。きっと俺のためを思っての行動なのだろう。何故そんな事をするのか全くわからない。

冗談抜きに俺とこいつはどちらかというと敵同士だ。厄介な関係に苦しめられいらん苦労を強いられたどちらもが被害者であり加害者。なのに、なんでそんなに苦しそうで、泣きそうな顔をしているんだ。

 

 

「おい!容疑者共が逃げようとしてるぞ!さっさと捕まえろ!クソッ」

 

 

恐らく俺らの謎能力を警戒しているのだろう。なかなか他の警察が詰めきれていない所に痺れを切らしたのか中年の警察が拳銃をポッケから取り出し俺らに向け、撃った。

 

 

「っ!」

 

 

「おい。マジで早く放せ。お前まで負傷したら血液かなんかから顔バレするぞ。証拠の抱え落ちができなくなるだろうが」

 

 

肩に穴を開けられた少女は苦悶の表情を浮かべながらもやはり俺の手を放さない。

強めの口調で放せと言うがやはり放さない。

 

本当に、なんでお前そこまで俺を助けようとしているんだ?

 

 

「そんなの、決まってる、じゃん。燿と、話してたのが、楽しかったから、だよ!」

 

 

少し、少しだけ俺の体が浮く。そしてそれと共にまた一つ銃弾が彼女の体を撃ち抜く。

 

 

「なんで、なんで燿は私を想ってくれないの?あんなに話したのに、あんなに仲良くなったと思ったのに、私だけなの?友達だと思っていたのは」

 

 

血で濡れた体を震わせながら俺を上から見下ろす少女。

 

俺はその姿と態度と言葉に知るかと返すのは簡単だった。

物理的に、という意味ではない。

精神的に俺にとってその言葉は全くの的外れだった。

 

仲良くなっているわけがない。俺のこいつへの好感度はミリも上がっていないだろう。

当たり前だが俺を地獄へ急行させたのはこいつだ。それ事故だとしても俺を許せる性根を俺は持っていない。

 

むしろ俺が疑問に思うレベルだ。何故こいつは俺に友好の目を向けるんだ?こいつの言葉から察するに俺はイレギュラー。つまるとこ不安因子だ。それを潰さない程不安定な事はないだろう。現に俺を潰せなかった結果がこれだ。こいつが銃弾で死ぬかなんて俺は知らないが少なくともこいつの顔を見る限り汗と涙と血を流すほどのリスクではあったはずだ。

 

友達になんて、想っているわけがない。

 

 

「いや、んーん、違ったのかな。また期待しちゃった私が悪いのかな。貴方も、彼も、彼女も、誰も、言葉に出さず私に辛い事を心のそこで想っているんだ。きっと嘘をついて、私を蔑んで、こいしを蹴っ飛ばすかのように傷ついた私を知らずに笑うんだ」

 

 

知るか、そんな事。俺はただ自分の罪は自分一人で償いたいだけだ。これは俺だけの責任で、こいつは巻き込むべきじゃないし、俺は死ぬべきだっただけだ。

 

だからこいつが何を曲解して一人で苦しもうが俺には関係ない。

 

関係ない…が、

 

 

「おい、何勘違いしてんだ。俺はお前を好きでもないが嫌いでもない」

 

 

俺は殺されかけたしたからを殺すことを強制されたしそのせいで性格も改悪されたとも思う。

だが俺はそれはただ時が来ただと思っている。

 

俺がたからを殺したのは俺が死にたくないからだ。あそこで逃げて一生をこいつに追いかけられ殺される恐怖に耐えきれなかった。

 

だから俺は殺したんだ。

 

ここまで言えばわかるだろ?俺はこいつに何をされようがどう精神を改悪されようが元からクズだったってことなんだ。

 

だから、

 

 

「お前を嫌いなわけじゃねーよ。むしろボッチの俺にはお前のその距離感無視した会話は楽しかったから、まあなんつーか、むしろ好きな部類だね。うん」

 

 

面と向かって顔を合わせてしまったので少し恥ずかしくなってしまい詰まり気味になってしまったが俺の考えは伝わってくれたらしくパチパチと目を瞬かせたのち、安心したような照れているような感じの反応を見せそう…と呟き目を伏せた。警察に囲まれている中何やってんだ俺…

 

と警察に意識を向けた所で俺に天啓が下る。いややることを考えれば悪魔の所業なのには間違いないがこの絶望的な状況下ではまさに仏からの一筋の糸だった。

 

 

「だから、お前を嫌いでもなんでもないから、とりあえずこいつらの視界から逃げてくれ」

 

 

「無理に決まってるじゃん!燿を置いて一人で逃げるなんて…」

 

 

「誰もお前を逃がすためだって言ってねえよ」

 

 

正直これは唯の賭けだ。

当たれば俺等は逃げ切れ、はずれればこいつは逃げ切れるが俺は確実に務所行きだ。

 

これは言い換えれば罪から逃げるか、それとも償うかに等しい。

 

俺はここで果ててもよかった。とっくに終ってる人生だから。

 

だが、殺人鬼の俺が死ぬことで悲しみがひとつ生まれると言うなら。

 

罪から逃げ償いもしないゴミクズに俺はなろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、どうした警察官さんよ。さっさと俺を捕まえにこねえと埒があかねえぞ!」

 

 

策はあった。今まで起こった数々の不可解な事象により警戒した警察達。

何故か発動せず姿が見られていた少女の能力の謎。

あと諸々の運。

 

それらがあればどうにかなるかもしれない。

 

 

「俺ってさあ、人操作出来るんだよねぇ〜!だから俺に銃口でも向けてみろよ。ここらの住人は突然自殺しだすかもしれないよ〜ん!」

 

 

これは全てはったりだ。あの少女は無意識を操るらしい。だから人を殺せ、自殺しろ、等の意識的にやらないとできないことは操作できないしあの時少女と俺が家に入ってきた警察の眼に映ったのはあの警察共が意識的に俺等を探したからだ。

 

だが、それはそれでこれはこれ。この警察共はそれを知らない。だから住民の安全第一なこいつら正義の犬は安易になにをしてくるかわからない俺に住民の安全が確保されるまで手出しができない。

 

 

「だまれ!てめえを殺しゃこの全ての事件は幕を閉じるんだ!そんな摩訶不思議な手品で俺が手を緩めると思うなよ!!」

 

 

「小山さん!これ以上は本当にヤバイですよ!最悪貴方を殺人の容疑で現行犯逮捕することになりますよ!」

 

 

中年の警察が叫ぶ。そして俺に銃口を向け今にも撃ちそうだ。

 

まだ俺がこのおっさんに撃ち殺されていないのは少女に撃ったときのようにあまり効果がないのを憂いているのか。それとも周りの警察に止められているからか。

 

だがどちらにせよ俺のこのハッタリは時間の問題だろう。

いつ呼んだのか遠くから赤い光が段々と近づいてくるのが見える。このままでは応援に駆けつけられ数の暴力でこのおっさんに殺される前に捕まってしまう。

 

 

だが俺はこの瞬間一つの賭けに勝った事を知覚した。

ここにいる全員がまるで俺が単独犯であるかのように俺だけを警戒し注視している。

つまり、あいつは完全に無意識に溶け込んだ。

 

 

「ザクー!」

 

 

「ッ!?」

 

 

中年の警察の背中から腹にかけナイフが押し出されるように突きつけられる。

ナイフの刃渡りが足りなかったのか少女は手首まで背中の傷口から中に入れ、ナイフを腹の中に入れたまま中年を蹴飛ばした。

 

血でべちゃべちゃになったその腕で中年から拳銃を奪い取り未だ啞然としている若手の警察とその隣りにいた体格の良い警察の脳天に鉛玉を撃ち込んだ。

 

 

「う、撃てーッ!」

 

 

誰かがそう叫ぶ。その声を皮切りに何人かが慌ててホルスターから拳銃を取り出し、拳銃を構える。

 

だがこの瞬間彼らの意識は全て少女に向いた。少女の能力に包まれた俺は覚られるずに彼らに近づき、セーフティが解かれた拳銃を奪い取る。

 

 

「な、なんだ!?」

 

 

残念ながら俺は拳銃の構造や機構、機能なんてものは知らない。セーフティの存在もコナンから知ったし外し方は今初めて知ったくらいだ。

だからこいつらにわざわざ解いてもらう必要があった。

 

拳銃を奪い取られた警察の足をかけ転ばせその隙に少女に向けられている拳銃の射手に向け発砲する。5発込められている弾のうち3発は外してしまったが内2つはそれぞれが拳銃をもった警察に当たり転んでいる警察は少女が最後の弾をその脳みそに撃ち込んだ。

 

 

「あ、ああ…」

 

 

人を殺すという残虐な行為をしたにも関わらず動き一つしなかった小心者の残った警察共には虚空の詰まった拳銃を向けるだけで十分だった。

 

 

「ッ!クソォ!」

 

 

残ったのは荒々しく殺人鬼の前から逃げていく足音と、血に濡れた俺達だけだった。

 

 

「す、すごいよ!まさかあの状況からどうにかなっちゃうなんて!」

 

 

「異常に運がよかったな。まさか想定してた運ゲー全部成功するとは…」

 

 

やっは神様なんかいないんだな。こつこつ真面目に勉強して警察になったこの人たちが死にゴミクズ殺人鬼の俺が生き残っちまうなんて。

 

だが、これからどうすればいいんだ。

俺が考えていたのはここまでだ。既に信長包囲網のようにここら一帯はガチガチに固められているだろう。

俺の名前と顔も出回っているかもしれない。あの中年が俺をめちゃくちゃ怪しんでいたからな。既に警察本部で共有されていても不思議ではない。壁の向こうから聞こえてくる甲高い音と赤い警戒色からもうすぐそこに応援が迫っていると悟る。

 

 

「とりあえずさっさとこっから逃げようぜ。正直ここからどうすりゃいいかわからないぞ…」

 

 

「んー…たぶん大丈夫だよ!もうすぐお姉ちゃんが…」

 

 

地を地で濡らしたこの凄惨な場から離れようと地を蹴ようと一歩踏み出す。

 

が俺はもう片方の足が何かに突っかかり、否、突っかかされ、手からビタンと転び倒れてしまう。

 

 

「で、でめえだけはあ゛あ゛、絶っ対に、逃がさねえ゛」

 

 

万力の様な握力で掴まれた足を見ると先ほど致命傷を与えた中年が未だにだらだらと止めどなく流れる血を止めず俺を目の敵のように、世界一憎い敵のように睨みつけてくる。

 

 

「お前っ、生命力高すぎだろ!まだナイフ背中から腹に刺さってるだろてめえ!」

 

 

片方の足で蹴りつけるがビクともしない。文字通り死んでも俺を放すつもりがないのだろう。

 

クソ、うまくいきすぎてるとは思っていたんだ。想定通りなんていうのは漫画以外ありえない。それはカオス理論とかバタフライエフェクトとかでも論じられているほぼ当たり前の前提だ。だから想定通りだからこそ警戒していたつもりだったというのに。

 

もう目視できる距離に警察車両が見える。見えてしまう。こいつがあと数秒で死ぬ様にも見えないしこれはマジに詰んだか…?

 

 

「おい、俺は逃げきれそうにないからせめてお前は…」

 

 

「あ、お姉ちゃん!」

 

 

逃げろ。と追おうとしたその瞬間。

ガバっと空間が押し千切れるようにビラリと開く。

紫色の空間と見る者に不安を与える趣味の悪い大量の眼。そして

 

 

「こいし。戻ってくるならもっと早く事前に言ってちょうだい。おかげで明日が残業地獄で確定してしまったわ」

 

 

そこから這い出てくる半眼の薄い桃色の髪をした少女…そう、緑色の髪を持った無意識を操るあの少女とうり二つだ。

殺人鬼の少女は自身が口にした姉であろう少女ににこにこと嬉しそうに近づき反省の色が見えない声音で話しかける。

 

 

「いやーごめんねお姉ちゃん。ちょっと外でおいたしちゃって。きんきゅーを要する事態になっちゃった!」

 

 

「はあ…こいし、もう少し考えて行動しなさい。私が過労で死んでしまうわ」

 

 

疲れたように返す少女。顔は似ているこそすれ性格は全くの逆のようだ。生粋の苦労人気質が隠しきれていない。

 

 

「それで、そこの貴方は?」

 

 

何かを無透かすようなその目を向けられ俺は言いしれない奇妙な感覚に襲われる。車酔い一歩手前のような気持ちの悪い感覚。あまり心地よいものではない。が同時に受け入れてもいいと思わせる優しいなにかがあった。

 

 

「…ああ、なるほど。この男も助ければいいのね?こいし」

 

 

「うん!おじさんの魔の手に捕まっちゃったから助けてあげてお姉ちゃん!」

 

 

俺の足を掴んでいる中年を見ればこの世のモノとは思えない事象を目撃し驚愕したような、唖然としたような顔を浮かべている。その馬鹿面に一撃蹴りを入れたがそれでも恐るべき執念で少しの力も緩めてくれない。

 

 

「で、でめえだけは…!」

 

 

「悪いのだけど、付き合っている暇はないわ。

想起「テリブルスーヴニール」」

 

 

ドクンと鳴動した少女の出の中にある第三の瞳は俺達に向け怪しげな光を発する。

そしてみるみるうちに足にかかっていた圧力が小さくなっていき、白目を出しながら地に頭を打ち付けた中年を確認した俺は立ち上がり誰の血かもはやわからないものをこそぎ落としながら空間の裂け目に近づいた。

 

 

「えー…お姉さんありがとう。なんか知らんがあのおっさん気絶してくれたわ」

 

 

「私の事はさとりでいいわ。それより早くここに入ってください。あまり現に影響を及ぼさないよう隙間に言われているので」

 

 

パトカーから何人かの警察が降りこちらに走ってくる。あの距離なら血の海と化しているこの凄惨な現場も見えているだろう。だが今更気づいた所で無駄だぜ。あばよとっつぁん。

 

隙間に手を伸ばし気持ちの悪い感触を確かめ、そして体を思い切り中に入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「 報告書

 

 

 

作成日:6月3日 作成者:小林

 

 

 

 

 

 

 

事件発生日:5月30日

 

 

 

詳細:

 

 

 

 5月30日 斎藤光希が自宅で刺殺されているのが発見された。今回で111件目となる通称『メリーさん殺人事件』が発生した。

 

 

今回メールによる依頼方法だったため事前にその情報をキャッチしていた対策本部は近辺に12名の警察官を配備。しかしその結果犯人に手傷を負わせるも現在逃走、さらに12名の内6名が殉職という最悪の結末になってしまった。

 

 

しかし犯人の個人情報は既に特定され

名前:西辻燿

職業:学生

住所:品野1-11-11 ポータマンション1-201

年齢:17

といったほぼ全ての情報が裏付けと共に取れている。

犯人の所有物から指紋も取れており犯人の確保はもはや時間の問題と思われる。

 

 

しかし事件発生から3日たった現在。未だにその姿を発見できず、さらに公共機関等に設置されている監視カメラや指名手配によるポスター、報道による逮捕協力の効果もでず居場所や逃走手段についてはなにも情報がないのが現状である。

 

 

12名の内6名に犯行現場の様子や犯人の逃走手段について聴取したが

「少女が浮いていた」「いつの間にか同僚が殺されていた」「時空の狭間のような場所に消えていった」

など要領を得ない回答が多く集団的錯乱状態に陥っている可能性があり現在治療中である。

 

 

さらにそのバックにいる『メリーさん』については幼女の様な容姿であると錯乱していると思われる者からの情報のみで未だ全容は不明である。

 

 

さらに報道による民衆への『メリーさん殺人事件』の顕在化により現在まで愉快犯が増加している。

 

 

それにあたり、事件の拡大に備え対策本部の増員の許可を願います。

 

 

以上。

 

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