アビドス高校一年 雨之こよみです!   作:よわよわよわ

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先生、見えますかー?


えっ!?私の高校、(砂が)多過ぎ……?

…………

 

「…………」

 

ざくり、ざくり。

 

あはは、あたしゃ農家だよ。だって初登校の当日にシャベル持って砂掻き出してるもん。

 

え?なんでこんなことをしてるのか……って?

 

そりゃあ、生徒会長様直々に頼まれたんだもん……断るのは無理だよね。あ、ホシノちゃんも含めてクラス全員がシャベル持って砂を掻き出してるよ。凄いね!団結力もバッチリ!体育祭は私のクラスが勝ったな!

 

「……そんな訳あるかぁ……」

 

(体育祭ってどうやるんだろ?クラス内でチーム分けでもするのかなぁ?)

 

なんて思いながら、どうしてこうなったかを思い浮かべた。

 

───あれは2時間前。

 

入学式を終えた私達は再び砂っぽい教室へと戻った。入学式も終わったことだし、レクリエーションでもあるのかな?なんて思っているとちゃちゃまるみたいな顔をした生徒会長が教室へと入ってきた。

 

なにごとなんだと皆が思ったと思う。皆の視線が向けられた生徒会長が開口一番に放った言葉は「ごめんなさい」だった。

 

どうやらうちの高校は毎日毎日砂埃が大量に入って来るため、現状維持すらいっぱいいっぱいらしい。昨日のうちに校内の細かい砂埃は頑張って処理したみたいらしいが、昨日の今日で砂が大量に積もってしまい大変なことになっているという。

 

ここで私はあの一輪車を思い出した。ああ、なるほど。と名探偵のようなヒラメキと共にもしやとこれから言われる言葉を予想してしまう───と、いうよりかは最早クラス全員がなんとなく気付いていた。

 

「砂を掻き出すのを手伝ってほしい!」

 

パンと小気味よい音を鳴らして生徒会長の掌と掌が合わさる。今度は……─── (><) こんな感じの顔をしてお願いっ!ってやってきた。

 

私達は三者三様の表情で迎えるも、なんとなく断りにくい雰囲気が出来てしまったことで今度は誰が発言するのかという押し付け合いが始まった。どうしようかと迷っている間にホシノちゃんが声を上げた。

 

「分かりました。手伝います。」

 

「あっ!ホント!?ありがとう!」

 

迷わず言葉をかけたホシノちゃんに続けて、私も。と声が続々と上がっていく。最終的に全員が手伝うことになって……こうして砂をシャベルで集めることになったんだ。

 

 

 

 

 

「雨野さん、そっちは終わりました?」

 

「あ、もう殆ど集めたから後は運ぶだけです。」

 

砂嵐によって舞い上げられた非常に細かな砂は風に乗ってここまで飛んできてしまう。ここも住宅街の筈だけど、四方が砂に囲まれてきたということらしい。

 

……まあ、つまるところ人の手入れが無くなったことで住宅地ですら砂が飛んできているということなんだけど。

 

まあ過疎だよね。人がいなくなった廃村に家が植物で生い茂るように、ここは砂によって埋もれ、打ち付ける砂嵐によって風化してボロボロになっていくだけ。

 

こんな環境じゃ植物もあまり育てることは難しいし、アビドスで自給自足なんてやっていけない。そんなんだからヘルメット団とかが稀に暴れまわってるし。

 

「これはどこに運んだら良いんですか?」

 

「学校の外に砂捨て場があるから、そこに捨てに行かないと駄目なんだ。」

 

上級生の一人がそう答えた。住宅街の中にコンクリート造りの小さな工場があったらしく、そこを活用してアビドス高校に溜まる砂を捨てているんだとか。壁が高く多少の風では砂が舞わないらしい。

 

「じゃあ台車が帰ってくるまで待とうか。」

 

「はい!」

 

と、いった感じで先に出た一輪車を待つことになった。当然、この膨大な量だと人力よりも車などの運ぶものが欲しいけど……まあ、期待できないよね……

 

「……ねぇ、ホシノちゃん。この後ヒマ?」

 

「…………何か?」

 

「ええと、放課後町探検でも……なんちゃって。」

 

私がそう提案するとホシノちゃんは一息───はあ。と息を吐いた。

 

「まともなお店、あると思う?」

 

至極まともな返答だった。もはやこの辺りにまともな娯楽施設はない。アビドス高校がある方向とは逆のもっとゲヘナトリニティに近い場所ならば。いや、両校の地区内にいけばもっとあるだろう。

 

去年までここに所属していたアビドス生たちも皆他の地区へ行ってしまったみたいだし、ますますアビドスでの生活が困難になっていく。

 

逆に言えばここにまだいるお店はフットワークが軽くない店ばかりだ。あちらの方へ近ければ栄えているが、帰りに何かを食べるなんてことはそうそうできない。

 

 

 

でもそれじゃ楽しくないでしょ?

 

「分かってる。でも新たに発見しようよ。地元愛をさ。」

 

「(¬д¬) 」

 

やっぱりホシノちゃんはすごい顔をするなぁ……!

 

「………………嫌なの?」

 

「───そりゃあ、まあ。」

 

「あらまあ、ホシノちゃんは地元への愛がないねぇ。」

 

無いわけではない。というホシノちゃんに対してそう煽ってみると非常に大きくため息をついた直後に呆れたような顔を向けた。うーん、これはバッドなコミュニケーションだ。修正しないと……

 

打開する為、私と彼女の間を埋めるために原点に戻ることにした。まずは会話デッキの構築からだ。

 

「じゃあこうするのはどう?」

 

確かに初対面で食べ歩きは難しいかもしれない。そしてあまり会話デッキに富まれない私では、初回からこれに漕ぎ着けると思ったのが間違いだろう。

 

(ここはテンプレの使い時……ってね!)

 

「一緒に帰るとかじゃ駄目?」

 

一緒に帰ってもう友達でしょ大作戦───

 

こういうシチュエーションはあるあるだろう。下校を共にし、より互いを知るのは常套手段といえる。そして私は更に会話デッキすらもテンプレを用意しているのだ!

 

テンプレがテンプレたる理由は簡単だ。手軽に強く、効果が見込めるからである。ここでは「キヴォトスにたちかけし」を活用してホシノちゃんとの仲を……ふふふ。

 

さて、そんな策を巡らせていると十数秒ほど経った辺りでホシノちゃんが「それくらいなら……」と答えた。ふふふ、実はこれも作戦の内の一つなんだよね。

 

何かを断った後って断りにくい感じになるらしくて、頼み事をすると高確率で受け入れられるという研究結果もあるらしい。これもHow to make friendsという本に記載されていた手法だ。

 

 

 

非常に面倒そうにしていながらも、最終的にホシノちゃんは帰るくらいなら……とOKを出していた。ふふふ、驚いたかな?これが私の交渉術だ。

 

そう話している内に一輪車が来たので、それに砂を積み込むと先輩達があとは任せて!ありがとう!と礼を言った。

 

僅かながらも150mlのジュースを全員に渡してくれたので、そのお礼を言った所で今日一日がやっと終わった。

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