一応の最後の最後のクッション回です。
次回より話が進みます。
───アビドスの夏は暑い。
照る日は地面の砂を熱している。陽炎がゆらゆらとどこまでも揺れる。この世はまるでトルコ・コーヒーのような様相である。
無論、夜は遮蔽物の側でないと死ぬほど風と砂が襲いかかる。寒い上に明かりもほぼ無いので危険が伴うのだ。
しかしそんな場所で一人。もの好きが居た。
理論上1週間は生き延びれる水と食料を用意して望んだキャンプだが、早々に帰りたかった。
木漏れ日で休息?ここでそんなに茂った木は恐らく幻覚の類の可能性が高い。でもそんな過酷な場所こそキャンプをしたくなるものだ。
…………暑い。
「……来るんじゃなかった。でも家は冷房が壊れたんだよなぁ。」
こよみの家には冷房が設置されていた。通常の室外機ではアビドスだと砂をまき散らす可能性が高い為、古い型をサルベージして使う訳にはいかなかった。なので所謂業務用のエアコン───筒のようなものが生えているアレを拾ってきて使っていた。
しかし、やはり経年劣化が酷い。去年の夏くらいから冷房の効きが弱く感じていたが、冬の大砂嵐で倉庫が一つ砂だらけになった時に逝ってしまわれたのだろう。南無。
そもそも何故一人で過酷なキャンプをしているのだろう。
私は当然の疑問を浮かべながら目を閉じたのだった───
──────────────────
<夏休み七日目>
「はぁ……あっつい……」
汗がでろでろに出てくる。それを対処する為にタオルを常に巻いて湧き出る汗を拭き取っている。一応室内なので可能な限りラフな格好だ。これも全部冷房が壊れてしまったせいなのである。
「風も無いし気温は高いし雨も降らないし……なんでだよ〜!」
自然の厳しさに苛立った私は大声を出して発散する。汗だくな上、水の確保が大変ということで水浴びも1日一回に制限しており、それはもうべっしゃべしゃな状態で1日を過ごしているのだ。あらゆる面で年頃の乙女とはいえない格好で倒れている。ただ一つ、この暑さが功を奏しているのは汗を吸ったタオルがすぐに乾くくらいか。
連日の日照りに家庭菜園も全部ダメになったし……
いっそのこと、夏の間は避暑地にでも行こうかと考えたものの費用を捻出することはできなかった。そもそも、この家も手入れしなければすぐボロボロになってしまう。そんなに遠いところには行けないし、夏の間何も管理しなければ即座にここを離れて別の住居で過ごさなければならなくなるだろう。
人間的な生活をする為に、まずはエアコンを修理するのが先決だ。幸いにも簡単な修理は調べれば誰だってできる。一応使わないだろうが電子工作キットは一通り揃っているのだ。
僅かな望みに賭けて分解し、中身を確認したがいいものの……
まあ、なんというか、所謂スポットクーラーというものは急激に冷やされることで空気中の水分が結露してしまいタンクに貯められるのだが、小さな砂粒によってその辺りの部品がボロボロになっていたり、そもそも冷却装置が壊れていたりしていた。そもそも砂の中から引っ張り出して使っているものなので劣化しているのは当たり前なのだが……こればかりは直せないと、どうにか部品のみの注文でなんとかできないか考えた。だって、これは数年前に新品で買うと数十万もするハイモデルなのだ。
私にはそこまで払える金はないので同じものを買えないが……あまりにもこれは"効き"が良かったのだ。可能ならば同じものを使いたい。
なので調べ回って部品のみを安く買うことに成功したが……その間まではどうしようもない。駅の方面に行けばコンビニなどもある為涼めはするものの、アビドスでは日が昇らない時間帯はかなり冷えることもあるので注意が必要だった。というか、そう何日も暇を潰せない。
じゃあ何をして暇を潰せばいいのかと言えば、アレしかない。キャンプだ。
え?砂漠でキャンプを!?
───できらぁっ!
……まぁ、無謀かもしれないが面白そうだと思う。ちょうど砂漠でサバイバルする人の動画を見たのだ。
(そもそもほぼ自給自足してる時点で私の生活もキャンプみたいなもんでは……)
なんて疑問が浮かんだが、汗とともに流れていった。
─────────────────────
(結局、やることが無くてキャンプしてるけど……そろそろキツイ……)
キャンプ生活は3日目、予想以上の暑さで日中はほぼほぼダウンしてるので夜間に行動するようになっている。これじゃまるで猛獣の類だ。そして夜間は暗すぎてライトがないと何も調達できないし……
砂漠と化したこの辺りでは鳥も住まず、植物も無く、昆虫もほぼほぼ死んでいる。
他所からの持ち込みか何かで元々いない昆虫や生き物が住んでいることもあるが、劣悪な環境下ではまともに見ることは不可能だ。まばらに発見したとしてもそれは腹の足しにすらならない。
やはり、一度生態系が死に絶えた後では反映するまで時間がかかるのだろう。厳密には死に絶えてはいないのだろうが、やはりゴーストタウンと化した住宅街の方があらゆる生き物が探しやすいのだ。
(そこらの虫は美味しくない。そもそもビジュアルからして気持ち悪いのに食べる部分も少なく、焼くより揚げた方が安全だが貴重な油を数匹に対して使えないので全てにおいて悪い部分が目立っている。)
イモムシや大型の昆虫であれば多少は味が良くなるが、やはり家畜には勝てない。そもそも私みたいな健康な少女の食事量を賄いきれない。
でも軒下に蜂の巣などがあればたまにハチミツを取ったりする。今では、その昔にハチミツがなぜ高級品だったのか十分に理解できる。そりゃあ自給自足すればあの甘味が究極の嗜好品となるのも頷ける。
他にも鳥やうずらなどを飼うことも考えたが、飼料として使えるものがあまりにも少ない。私では管理しきれないほどに大きくしなければ安定した供給は難しいだろう。
なので砂よけを設置するだけかつ少しの手入れで済む痩せた土地に強い植物を育てているのだ。正直に言えば腹の足しにはなってないが……まあ、趣味を持つのは良いことだ。
折角持ってきた食料も日陰に置かなければ暑さで腐りかねない。夏のアビドスにおいて、室外で保存という概念はありえない。というか暑さ関係なく砂まみれになってしまうのだが。
(……持って来るのを4日にしとけばよかった。)
何より、現在最も危惧すべき物は水だ。蒸発しないようにはしているが……どうしても荷物の大部分のウェイトを占めてしまう。
そもそも移動に徒歩6時間も掛けて歩いたので、もう何がなんだか……いや、これホントになんでこんな砂漠のど真ん中にいるんだろう……?
(…………とりあえず、30分おきに水を飲まないとダメだ。)
幸運なことに砂嵐には襲われていない。もしも襲われてしまうとどこかへ吹っ飛ばされて餓死するだろうが、数年くらい砂漠で過していれば前兆に気付いて逃げるくらいは問題なくできる。
食料も無理やり詰め込んで栄養不足にならないようにしている。最低限は食べないと生きていけないからね。
水だって常に汗が出てるので飲まないとダメだ。しかし一度に吸収できるのは僅かなので定期的に一定量だけ飲まないといけない。
……ふふ、過酷な状況だけど、1ヶ月廃墟街サバイバルした時よりかは致命的な要素がない。あの時は食料も水も無かったからなぁ……
─────────────────────────
なんて思っていた束の間。
「───この暑さは堪えるな……」
キツい。日差しがあまりにもキツイのだ。
家では私は結構裸族なのだが、ここではそんなこともできる筈がなく、今は薄い布を重ねて直射日光と日焼けの対策にしている。
それでも暑すぎるが。
いや、それよりも蒸れるのだ。
流石に3日風呂に入っていないと絶望してしまうくらいニオイ始めた。すごく臭い……
「きょ、極限……」
……移動しづらいし、靴に砂が貯まるし、その他諸々を考えてもあまりにも砂漠というものが人───いや、生物の過ごす環境じゃない。
燦々と太陽がこちらを向いている。よくお天道様がなんていうが、ぶっちゃけこっちに向いてほしくない。春先でさえ暑いというのに夏場なんてもう終わりだよこの国。
(そら人も居なくなるわな……)
アビドス自体、元々暑い気候だった。学園都市キヴォトスはかなり広大な範囲の領土を持っているが、年中雪ばかりのレッドウィンターなんて場所の真反対に位置するのがこのアビドスである。
砂漠化が進んでからは、もう石焼き芋の如く砂があっつあっつになり、上を歩く人間に襲いかかる。通常の乗り物は砂まみれでメンテナンスをしなければいけないし、バスや電車はもう既にアビドス専用の装備をしているせいで料金も運行数も少ないのだ。
交通機関が廃れるということは、既に人がいなくなったということを意味する。後はこれの繰り返しでアビドスは今の状態になったという。
(……私は、どうなるんだろう。)
夢はこの砂漠のように何も無い。
何か出来る訳でもない。
その日暮らしの生活を続けるのか、それとも今のように半自給自足を続けてるのだろうか。
いつもキャンプをしていると、ふとそうした考えが浮かんでくるのだ。
誰とも話さず文字としか会話をしない日々が暫く無かったから、ここ半年ほどはこの問題とは向き合うことは無かった。
でもまあ……アビドスに通ってからは何だろうか、心が充実したっていうか。とてもキラキラしたものの中に包まれたんだよね。言語化は難しいんだけど……うーん。
(……"心の拠り所"って言うべきかな。やっぱり孤独は駄目だよね。)
私は人一倍孤独に対して強いと自負している。例え2年、3年も一人だったとしても問題なく生活できるだろう。
でも、そんなのはもう嫌だ。先生はいないけど、友達がいて、先輩がいて、後半年すれば後輩だってできるかもしれないんだ。人間って社会性を大事にする生き物だから尚更だ。
…………ホシノちゃんと遊びたかったなあ……
「───……あれ?」
何か、チラリと動いたのが目の端に映る。
それは奇跡か、
───彼女だ。
偶然か、
───ホシノちゃんだ。
必然なのか、
───ユメ先輩だっている。
だが、それはどうしようもなく、"ある"事に違和感を覚えた。
「───え?」
私は目を疑った。
いや、バカな。真夏のアビドスで、陽射しの元で、そんな───
(……幻覚、だ。)
私は暑さでまともじゃなくなったらしい。
水着を着た彼女達がここで何かをしている筈がないのだから。
私は死んでしまう前に荷物の殆どを放棄して病院へと向かう準備をしたのだった。
あはは……それなりに楽しかったですよ……
ブルアカSS書きごっこ。
くそう、中学校をちゃんと書くのかよ、しかもネフティス系列でハイランダーにコネがあるって……?
確かに推測が出来た。ノノミが入学した理由は大凡予想通りだったけど、想像の2,3倍くらい事態が複雑なのね……
ホシノは入学した時は本館が残ってたらしいし、そもそも本館の埋まる速度尋常じゃ無くない?と思ったけど、アニメ見て納得。ありゃ埋まるわ\(^o^)/<砂嵐ハンパナイッテ!
ユメ先輩の死因も結局分からないままだし、時系列も完全に読み違えたし……ここはもういっその事原作だいたい無視のIFストーリー路線に舵を切らせて頂きます。
この感じはシロコとホシノの初エンカウントが高校1年生になる前なんでしょ?ホシノが2年生の時の話だと思ってたからマジでヤバイ(;_;)
(原作レイプ)だらしねぇし……