バットマン Burns The Night   作:織姫ミグル

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第3章

 

 

ゴッサムと日本には共通点がある。

 

それは、人工的に創られた街だということだ。

 

という表現をしても誰もが首を傾げて今更何を言っているんだと思うかもしれない。世界中にあるどんな街だって人の手で発展して開発して成り立ったものではないか、と感じる人がほとんどだろう。

 

しかし、実際にその地に移り住めば誰もがその街の真実に気付くはずだ。

 

この街は、嘘だらけ。

 

二つの街は自然に出来た都市ではない。計画的な街設計を組んで建てられ、広大な敷地に必要だと思ったものだけを残し、それ以外のものは全て切り捨てて創られたご都合主義の大都市なのだ。

 

必要のあるもの、ないもの。

 

それは一体何を指すのか。

 

具体的に説明するなら、社会にとって都合の良いもの悪いものをどこかの誰かが勝手に判断して、理想的な世界にするためにそれらを区別して望んだ形へと変貌させた巨大なシステム。その中で生じた綻びは、街にとっては邪悪なウイルス。

 

故に、

 

街を平和な状態に維持するためには、それに気付く間もなく修正するというのが求められる。

 

つまりは、隠蔽。

 

それが目に見える形で表に出てくると、人は一体何が真実なのかと疑い始める。それに人々が気付いた時、街の崩壊が始まる。

 

だが、そうなることはおそらくない。

 

例えば、

 

確実にいじめが原因で一人の生徒が自殺してしまったというのに、それを公表せずに隠蔽した学校があったとしよう。無論、被害者はその学校を極限まで責めるだろうが、彼らは知らんぷりをして何事もなかったかのように振る舞う。いじめはゼロ、私達の学校はとても平和ですと主張するのが最善だと思い上がる。

 

たった一人がいなくなっても、システムは何の問題もなく稼働している。

 

それが、現在のゴッサムと日本の共通点。

 

報道されない真実を闇に隠して、裏の出来事関係なく社会は上手く回っていく。

 

嘘で塗り固められた平和に、果たして人々は本当にすがりたいのだろうか。

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

「ご主人様を見たことある?」

 

「いいえ、でも噂じゃ事故に遭ってひどい怪我を負って部屋から出てこられないんだとか」

 

「それどころか、本当は亡くなってるんじゃないかって噂も」

 

 

ある屋敷でそんな声が飛び交っていた。

 

アメリカ人特有の栗色の髪を後ろに纏めて揃えたメイド達が仕事を放棄して世間話に没頭している。彼女達は、この屋敷での家事全般を任されているというのに、濡れたモップを床にべちゃっと立て掛けて呑気に話に夢中になっている。

 

のんびりした調子で、彼女達は意味のない会話を続ける。

 

 

「だとしたら、誰がウェイン産業を支えているというの? 支援していた孤児院も最近また一つ閉められたらしいけど」

 

「フォックス様がビジネスの全てをご主人様から託されているって聞いたわ。だから、実質的にご主人様はほとんど働かれてないそうよ」

 

「じゃあ、やっぱり死んでるとか?」

 

「単に引き籠ってるだけじゃなくて? ご両親が亡くなられてから、ご主人様は元気がないみたいだし。どれだけ偉い人がここにやってきても、面会すらしてくれないみたい」

 

「でももう何年も経っていてそれでは────」

 

 

彼女達は道端に落ちてるゴミ拾いから多国間の国際会議まで、あらゆる局面でご主人様となる者達を補佐するべく育成されたスペシャリスト。

 

そんな彼女達は念願の大富豪様の元で働かせてもらっているというのに、その主人となる者の姿を一切見ていないことから本当は幽霊にでも仕えているのではないかとすら思い始めていた。

 

肝心のご主人様は今も自室に籠って業務は執事とかに任せっきり。むしろ、すでに死んだことを隠蔽しようとして彼の側近だった者達が裏で動いているのではないかとすら思える。

 

そんな人にこのまま仕えていていいのか、とちょっと転職という言葉が脳裏に過った時、

 

 

「おや皆さん、こんなところで何をしておいでで?」

 

 

不意に、白いメイド服を着込んだ彼女達の背後から声が聞こえた。

 

ギクッ! とメイド達の背筋が伸びる。三角形に立っていたために二人ほどは残りの一人の背後に立つその人物の姿が見えるのだろう。驚くというより、怯えるような色が顔に浮かぶ。

 

 

(こ、この声は······ッ!!)

 

 

完全に背を向けている状態のメイドはなんとなく察しがついているのか冷や汗が止まらなくなっている。

 

すぐに謝ろうと振り返ろうとする前に、

 

 

「我々はブルース様にお仕えするためにここにいさせてもらっている立場。それなのに何故あなた達はこのような所で油を売っておいでで?」

 

 

若干刺がある敬語に悪寒が走る。

高級な燕尾服に身を包んだ男性、アルフレッドは蝶ネクタイを締めながら彼女達に言う。

 

 

「あなた達は由緒正しいウェイン家のメイドとしてここへ仕えているはず。それが重圧となっていることは理解致しますが······どうか、口をお慎み下さいますよう」

 

「「「も、申し訳ありませんッ!!」」」

 

 

メイド達の声が固まり、青ざめたような顔で非礼を詫びるとすぐさま仕事に戻る。

 

アルフレッド・ペニーワースは一度だけメイド達の顔を見てから、

 

 

「よろしい」

 

 

その言葉はメイド達を安心させるために呟いたものだったが、彼女達は余計に恐怖に染まったような表情を浮かべた。ジリジリと胸を刺すような緊張感は、本当に主人に仕えてから初めて経験するものだから無理もない。

 

アルフレッドは少し緩みきったメイド達の性根を叩き直すと、それに反比例して妙な噂が屋敷全体に流れている現状に呆れ返る。

 

本当、ご主人様は一体いつになったらちゃんと姿を現すのだろうか。

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

屋敷にはいくつかのルールが決められている。

 

内何個かは本人同士が決めたことのため、その権限がない者達はそもそもそのことすら知らない。最低限のルールさえ守らせていれば、ご主人様の秘密に気付くことはないからだ。例えば食事を運ぶ際は部屋の前まで行って三回ノックしたあと執事から渡された鍵を使って中へと入り、ピアノの前にある机にトレイを置いたら即退出して鍵をかけて戻る。それだけの簡単なルールをしっかりとやってくれれば困ることはない。

 

部屋の中に入らない、これが一番守ってほしいルールだ。執事が許可した者しか通すことができないその部屋には、黒いピアノと高級ベッド一つしかない。あとは壁に埋まった本棚に分厚い本が並べられているだけ。何も珍しい物はないし、金になりそうなものさえない。そして、人影一つさえないその部屋に食事を運ぶことに、なんでそこまで厳格なルールを定めているのか疑問に思うことも許されない。ここに雇われる時の規定で真っ先に教えられるのがそのルールなのだから、疑問に思わない方がおかしいだろう。

 

誰もいない部屋に食事を運ぶなんて、何か猛獣でも潜んでいるのではないかとすら思える。

 

ただ、その部屋に無断で入ることが許されている者が一人いる。

 

執事のアルフレッドだ。

 

 

「······またですかね」

 

 

真夜中。

冷たい声が誰もいない寝室に響いても応えてくれない。これではせっかくの食事も冷めてしまう。

 

と言っても、そもそもそういう料理だから冷めるも何もないのだが。

 

トレイを一度机に置き、アルフレッドは楽譜も置かれていないピアノへと近付くと、三つの鍵盤を叩いて三種類の音色を響かせる。

 

『シ』と『ラ』と『レ』。

 

通常音階はドイツ語に置き換えられるが、これをイギリス式の音階に置き換えると、ある単語が出来上がる。

 

『BAD』と。

 

単なる言葉遊びでその単語を選んだだけなので、深い意味は特にない。その単語になるように三つの音を順番に鳴らすと、壁に埋まった本棚が大仰な扉となって開かれていく。

 

しかしその先には何も待っていなかった。その先にあるのは行き止まりで、灰色の壁しか立っていなかった。

 

それはカモフラージュだと、アルフレッドは知っていた。

 

わざわざ二重扉にしてあるのはセキュリティの都合上の他に、第三者がうっかりその秘密に気付かないようにするのを防ぐためだろう。わざとらしいギミックにたまたま気付いた奴らが入ってこないように、もう一つ壁を用意したのだ。

 

トレイを持ち直したアルフレッドが狭いスペースに踏み込むと背後の本棚が閉じられ、それを確認してから二枚目の壁に手を置く。壁は回転扉のように奥へと回り、その先を抜けると、電子レンジみたいな音を鳴らして床が下へと下がっていく。

 

やがて、左右に開く自動ドアから地下のフロアに出たアルフレッドは、そこで予想通りの光景を目にする。

 

 

「またメイド達があなたのことを噂していましたよ。本当は死んでいるのではないかって」

 

「面白い冗談だ」

 

 

あっさりと言ったのはこの屋敷の当主、『ウェイン財団』の社長、ブルース・ウェイン。

 

ブルースは背筋を伸ばして背骨をコキキと鳴らしながら、

 

 

「まぁ、ずっとみんなの前に姿を現してないからね。だとしても死んでるっていうのは少し酷すぎる気もするが」

 

「あなたは面会不可能で有名ですからね、使用人達全員にそう思われてしまうのも無理ないかと」

 

 

へぇー、とブルースは完璧に興味のない声で返事した。

 

ブルースはそれよりもモニターに映し出された日本の写真を眺めていた。生中継というテロップもないので、おそらくそこにあるのは衛星写真で撮られた中古品だ。

 

彼は日本の社会情勢を把握したいのか、過去と現在の新聞の一面まで調べている。

 

調べたいことをすぐさま検索できるように『バットケイブ』のコンピューターにマイクロリーダーを直結させている。

 

コンソールのボタンを押す。マイクロリーダーが次のページをめくる。

 

 

「電波塔爆破事故、十年ほど前に起きた爆発事故の謎は未だに解明されていない。奇跡的に死傷者はなく、今もなお残されている旧電波塔は『平和の象徴』とされ────」

 

 

彼はモニターの記事を読みながら現在の日本の写真を見比べる。

 

愉快なオブジェクトに変えられた電波塔は、治安の良い日本を象徴する存在として今も残されている。過去に起きた大きな事件の中でこれが一番古いもののようで、それ以降はそれを越える事件が起きていないため、平和の象徴として飾られた。

 

現代美術にしてもさすがに芸術的だとは思えなかった。爆発によって折れ曲がった塔を見て、ブルースは呆れるようにため息をつく。

 

 

「これを平和の象徴にして日本の治安は保たれているのか·····ハハッ、面白いな」

 

「昔起きた大事件で死傷者はゼロ。それに加えてそれ以降その大事件を越えた大災害が起きていないとなれば、どうしようもなく平和の象徴と言うよりほかありません」

 

 

独り言を呟くブルースの隣に食事が載せられた盆を置いたアルフレッドがそう言う。

 

それにブルースは小声で礼を言う。

 

 

「ありがとう、アルフレッド」

 

「どういたしまして」

 

 

アルフレッドはにっこりと微笑んでモニターに目を向ける。

 

ブルースはスプーンを取り上げてスープをすするが、何度も瞬きをしてアルフレッドに冷たい目線を送ると、

 

 

「······冷たい」

 

「ヴィシソワーズですので」

 

 

執事は別に驚くことなく当然のことのようにそう頷いた。ヴィシソワーズは冷たいポロネギ風味のジャガイモのポタージュ。 つまりは元からそういう料理ということである。

 

 

「······なるほど、それなら仕方ないね」

 

 

彼は満足げにアルフレッドを見る。

 

ブルースはスープを掬い上げるスプーンの手を止めると、ある映像に目がいった。そこに映ってるのはなんでもない日常、人々が街を歩く様子しか収められていない。

 

しかしブルースは何故かこれこそ探し求めていたものだというかのように笑っている。

 

その様子に、アルフレッドはさほど感心したような目付きをしていない。

 

 

「どうして日本がペテンを働いていると証明したいのですか? 闇に紛れる者としての意地ですか?」

 

 

彼の返事は独り言を呟くことだった。

 

 

「日本の治安は良すぎる上に、あまりにも証拠がなさすぎる。それだけじゃなく、これまで起きてきた事件のほとんどが大したことではないものばかりだ。コンビニ強盗、若い女性の鞄のひったくり、人気アイドルのチケットの転売。日本の犯罪にしてはスケールが小さすぎる」

 

「つまり、それだけ平和ということでは? そのうち忘れるような程度の事件しか起きていない日本に、何故こだわるのです?」

 

「疑問に思わないか?」

 

 

ブルースはスプーンを皿に叩いて音を鳴らしながら呟いた。

 

 

「あまりにも日本は平和すぎる。日本の社会情勢を見る限り、物価高が続いていて人々の不満もどんどん膨れ上がっていく一方なのに、彼らは何の行動も起こさない。下手したら総理大臣の暗殺だって起きてもおかしくないはずなのに」

 

「彼らは大人しい人種ですから、ゴッサムの住民達とは違って耐え抜く方法が無意識に身に付いているのだと思われます」

 

「だが現に、コンビニで強盗が起きている。原因は金に困っていたからと容疑者は言っている。少なくとも、彼がこの行動に出たのは金が欲しいという欲望を抑えきれなかったからだ。似たような事件がいくつも起きている以上、他にもいるはずだと思うけどね。彼と同じように不満を抑えきれない人が」

 

「······何が言いたいのでしょうかブルース様?」

 

「おそらく、彼らは社会からの圧力で強引に抑え込まれているんだよ。圧倒的な権力か、それとも『見えない何か』によって強制的に抑制されているんじゃないかと僕は考えている」

 

「······」

 

「謂わば、脅迫に近いものを日本人達は受けているんじゃないかな? その『見えない何か』に、それも無意識にね」

 

「······見えない何かというのは? 一体何のことを指すのです?」

 

「これだよ」

 

 

ブルースはキーを叩いて複数の写真を表示させる。

 

なんてことはない日常風景が映っているようにしか見えないが、ブルースはその写真に指を指して説明する。

 

 

「この街、東京のあちこちに『花のマークが入った制服を着込んだ女子高生達』が多く映っている。ベージュに紺に赤の三種類の制服を着込んだ女子高生なんて日本じゃ珍しくもないだろうが、だとしても広い範囲で映り込みすぎじゃないか? 一ヶ所だけじゃない、二十三区全てにその姿が確認できる。顔を照合して一人ずつ数えただけでも、ざっと五千人。日本の学校基本調査によると、一つの学校に通う全校生徒数の平均は約三百名。五千人も通える学校が日本にあるとは思えない」

 

 

それに、とブルースは一拍置くと、

 

 

「この『花』のようなマークが入った制服。どこの学校だろうと思って調べてみたんだが、どの学校も取り扱っていないようだった。何より時間を見てくれ。ここの時計に映っている時間は十時六分、普通の高校生なら授業を受けている時間じゃないか? こんな時間から女子高生が街を彷徨くのは不自然すぎる」

 

「······ブルース様の調査に間違いがないのであれば、つまりは────」

 

「彼女達がその『見えない何か』である可能性は高い。彼女達は普通の高校生ではなく、日本を影から監視するエージェントか何かなんじゃないかと、僕は考えている」

 

 

少し納得ができないが、ブルースの言うことも一理ある。

 

エージェントかどうかはさておき、こんな時間から女子高生達が広い範囲で同時に彷徨くのは確かに不自然すぎる。

 

 

「しかし、仮に彼女達が都市伝説くらいにしか存在しない秘密組織のエージェントだとしても、そんなことを知ったところで何か役に立つのですか?」

 

 

そんなアルフレッドの質問に彼は鼻で笑って、

 

 

「いずれわかるよ。日本に法も秩序も関係ない闇の騎士が犯罪現場に現れれば、彼女達と接触する確率は高いだろうし。それにもし“そう”だった場合、日本は大きな嘘をついていると証明される。そうなったら僕の方に絶対に利がある」

 

「······では、やるのですか?」

 

 

もちろん、とブルースは頷いた。

 

彼はコンピューターに接続されていたUSBを取り出してアルフレッドに渡すと、

 

 

「このペンギンから聞き出した、銃の密輸ルートが収められた情報を匿名で日本に垂れ込むようにフォックスに頼んでくれ。彼なら、僕らの繋がりを日本に特定されずに上手く情報を流せるはずだ」

 

「フォックス様には渡しますが、その後日本に渡ってどうするおつもりですか?」

 

「まずは、ガス爆発が起きたビルの向かい側にいた二人のカップルを尋ねるつもりだ。二人に詳しい情報を聞いた後、千丁の銃の行方を追う。その前に────」

 

 

ブルースは微笑みながらこう言った。

 

 

「ちょっとしたパフォーマンスを、『彼女達』に見せてやろうと思う。僕の存在を知ってもらうために、彼女達には観客となってもらう」

 

 

アルフレッドは主人に向かって顔を顰める。何か企んでるご主人様に呆れているようだ。

 

 

「どうかヴィシソワーズを召し上がってください。派手な演出はその後でもよろしいかと」

 

 

彼は諭すようにそう言うと、預けられたUSBを持って地下施設から立ち去っていく。

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

「たっだいま~!! 千束が戻ってきましたよ~ッ!!」

 

「?」

 

「およ? リコリスじゃん、なんでここに?」

 

 

とある喫茶店に明るい少女の声が飛んできた。今日始めてやってきた新人のエージェント、“井ノ上たきな”は誰だろうという感じで振り返る。

 

そこには赤い和服を着込んだ少女が輝かんばかりの笑顔で立っていた。対してその黄色が混じった白い髪の少女も、たきなのことを見つめている。

 

互いにじっと見つめあってしばしの間黙り込んでいると、

 

 

「今日からここで働く、たきなだ。お前さんの相棒だ、仲良くしろ千束」

 

「!?」

 

「え!?」

 

 

二人は目を見開く。

カウンターの向こう側にいたこの店の店長ミカが二人の名を言うと、二人は互いに驚愕した表情で見つめ合う。

 

 

「この人が!?」

 

「この子が~ッ!!」

 

 

一人はガチで驚いているようだが、千束だけは瞳をキラキラとさせている。

 

それはまさに羨望の眼差しそのものだ。が、彼女は別にリコリスに会えたことが嬉しかったわけではなく、単に『憧れの後輩が出来たッ!!』という、憧れであった先輩ポジションに立てたことに喜びを感じている。

 

千束は遠慮もなくたきなの手を掴んで尋ねてくる。

 

 

「よろしくたきな!! ねねね、年齢は!?」

 

「えっと······十六です。去年京都から転属に」

 

「おほ~ッ!! 一個下かぁ!! でもさんづけはいらないからね!! あ、ち・さ・とでオケー!! せんたばって書いて千束ッ!! スマホとかで変換するときに困ったらそう入力してねッ!!」

 

「は、はぁ·······」

 

 

落ち着きのない千束にたきなはガチで引き始める。

 

リコリスのエース。

 

史上最強とまで言われたエージェント、錦木千束。

 

機密事項な事なのでその実態を知っている人は少ないだろうが、裏の業界ではかなり広い範囲で都市伝説として知れ渡っている。

 

 

「転属組か~ッ!! 優秀なんだねぇ~!! ここの仕事は私が手取り足取り教えてあげるからね!! 心配ないよぉ~ッ!! これからよろしくぅ相棒ッ!!!!」

 

「よ、よろしく······お願いします」

 

 

これは、そんな彼女達の物語。

 

より正確には、闇の中で蠢く悪を駆逐するために立ち向かっていく、『闇の守護者達』の物語だ。

 

 

 

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