俺田マコトのファイアーエムブレム短編集   作:俺田マコト

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シルイン未満の二人と、アスク王国に召喚されたばかりのクロエのお話。


絵になる二人

「あの、そこの水着の方……すこし、お時間をいただいてもいいかしら?」

シルヴァンに声をかけてきたのは、空色の髪をした女性だった。

「おっ、こんな綺麗な人に声をかけられるなんて、今日の俺は運がいいぜ。君はたしか、最近召喚された英雄だな。えっと、名前は……クロエ、だったかな。」

「あら、よく知っているのね。その通り、わたしはクロエよ。」

「かわいい女の子のことは忘れないものさ。俺はシルヴァン=ジョゼ=ゴーティエ。気軽にシルヴァンって呼んでくれよな。それで、俺に何か用かい?」

「ええ、ちょっと気になることがあるのだけれど……」

そう言ったクロエの表情に、シルヴァンはなんとなく既視感を覚えた。どこで見たんだったかな……。そんなシルヴァンの思慮をよそに、クロエは話を続けた。

「あなたが持っている、その不思議な色の飲み物なのだけど、それはいったいどういうものなのかしら?」

「ん、これかい? これはメロンフロートだ。甜瓜味の飲み物に、氷菓子とさくらんぼが乗っかってるのさ。飲むとシュワっとして、爽快な気分になるんだ。」

「へえ、なんだか面白そうな飲み物ね。」

珍味好きのクロエは、シルヴァンが持つメロンフロートに興味津々だった。そんなクロエの様子を見ていると、シルヴァンの頭には食べることが好きな幼馴染の顔が浮かんでくる。そうだ、今のクロエの表情は、イングリットが腹を空かせてるときの顔にそっくりだ。既視感の正体に思い当たったシルヴァンは、そのままクロエにメロンフロートを差し出した。この顔をしている人に何をすれば喜ぶかは、はっきりわかっていた。

「よかったら飲んでみるかい?」

「いいのかしら? あなたのぶんは……」

「まだたくさんあるし、気にしないでくれよな。それに、君の喜ぶ顔が見られるならそれでいいさ。」

「そう? それじゃあ、いただくわね。」

そう言うとクロエは、メロンフロートを受け取り、早速ストローに口をつけた。冷たいメロンソーダが流れ込んでくると同時に、炭酸の泡が弾ける感触が舌の上で踊る。そこに溶け出たミルクアイスのクリーミーな甘みが加わり、一口ごとに違う奥の深い味わいを魅せる。

「おいしいわ! 今まで出会ったことのない感触だけれど、なんだか楽しい気分になるわね。それに、味の組み合わせも新しい感じで素敵だわ。」

「気に入ってくれたみたいでよかった。」

ここまでのやり取りで、シルヴァンはクロエが食事好きであることを確信していた。これは食事に誘うまたとない機会だ! と思った矢先、クロエが先に口を開く。

「ねえ、よければわたしにこの辺りのお店を教えてくれないかしら? わたしはまだアスク王国に来てから日が浅いから、どこでどんなものが食べられるか教えてくれると嬉しいわ。」

「ああ、もちろんさ!」

シルヴァンにとって願ったり叶ったりの提案だった。

「どんなお店がいいとか、希望はあるかい?」

「ええと、珍しい料理があるといいわね。珍味をいろいろ試してみるのが好きなの。」

「珍味か……。あまりパッと出てくるところはないが……そうだな、ここはむしろ、店よりもあそこがいいかもしれないな。」

「あそこ?」

「ああ。ついて来てくれればわかるぜ。」

 

そうして、シルヴァンが向かった先は――

「ここって……飛空城、よね?」

「そうそう。でも、今回行くのは対戦設備のほうじゃなくて、こっちだ。」

石造りの通路を抜けると突然視界がひらけ、そこには広い庭のような空間が広がっていた。何人かの英雄たちが穏やかに散策したり、談笑したりしている。

「ようこそ、『飛空城の休日』へ。日々の戦いの疲れを癒す憩いの場、って感じかな。で、食堂みたいな施設も色々あるのさ。」

「とても素敵な場所ね。なんだかソラネルを思い出すわ。」

「ソラネル?」

「元の世界で、わたしたちの軍が拠点にしていたところよ。空の上に浮かんでいて、穏やかで、色々な施設が揃っているの。」

「へえ、そいつはすごいな。」

そんな話をしながら、二人は食堂のほうへ向かって歩き始める。と、ちょうど食堂に到着しようかというとき、背後から声がかかった。

「シルヴァン! また女の人に声をかけて遊んでいるの?」

「うお、イングリット!?」

振り返ると、そこにいたのはやはりイングリット。

「あら、こんにちは。もしかして、シルヴァンの恋人さん?」

「えっ?! ち、違います!」

「いやいやいや!!」

ほぼ同時に否定する二人を見て、クロエはくすっと笑う。

「ふふっ、そうなの? あなたたち、とっても仲がよさそうだったから、てっきり。」

「イングリットとは幼馴染ですよ。まあ、腐れ縁ってやつですかね……。」

「そうなのね。わたしはクロエ。よろしくね、イングリット。」

「え、ええ、こちらこそ……。」

いきなりシルヴァンの恋人だと勘違いされて、イングリットはかなり動揺している様子だった。

「あー、それで……何の話だったっけ?」

「えっと……そうよ、あなたがまた女の人と一緒にいるものだから、注意しようと思っていたの。でも、私を恋人と勘違いしたということは、私の早とちりだったみたいね。」

「わたしのほうから頼んで、おいしいものが食べられる場所を案内してもらっていたのよ。ここには来たばかりだから、どんなお店があるのかもわからなくて。」

「そういうことだったのですか。……でもシルヴァンのことだから、油断はできないわね……。」

「俺、そんなに信用ないかい?」

そんな会話を交わしている二人を見ながら、クロエは穏やかに微笑んだ。

「そうだ、お前も一緒に食べるか? そこの食堂に行くつもりなんだが。」

「いいわね、ちょうどお腹が減っていたところなのよ。クロエさんも、ご一緒して構いませんか?」

「むしろ、わたしがお邪魔虫じゃないかしら? 二人で食事を楽しんできても……」

「いやいや、そもそも君を案内してたのに、それじゃ本末転倒じゃないか。」

「そういえば、そうだったわね。それじゃあ、いっしょに行かせてもらうわね。」

「ええ、食事を共にする相手が増えるのは大歓迎ですよ。」

こうして、三人はともに食堂へ入っていくのだった。

 

「珍味がお好きということで、僕も初めて作る料理に挑戦してみたんです。」

ちょうどよく居合わせた料理上手のアッシュが、料理を振舞ってくれることになった。運ばれてきたのは、ジャガイモでできた団子のような料理だ。肉も使われていてがっつり系のメニューにも思えるが、ベリーのジャムが添えられていて、爽やかに仕上げられている。

「『クロップカーカ』という、ニフル王国の郷土料理だそうです。作り方を見様見真似で作ったので、ちょっと味付けが我流ですけど……。」

「お肉の力強さとお芋の優しい味わいの調和を、ベリーの甘酸っぱさが引き立てていて、不思議だけれど素敵な味ね。まさにわたしが求めていた料理だわ!」

「すごくおいしいです! 初めて作った料理でこんなに美味しく作れるだなんて……やっぱりアッシュは料理が上手ですね。」

食事好きな二人はすっかり気に入ったようで、絶賛している。

「そう言ってもらえると嬉しいです。またいつでも作りますから、気軽に食べに来てくださいね。」

「ありがとう。そうさせてもらうわね。」

クロエは嬉しそうに頷いてみせていた。シルヴァンも横から口を挟む。

「俺からも礼を言わせてくれよ、アッシュ。おかげで女の子のいい笑顔が見られたからな。」

「シルヴァン、まさかそれが目的だったの? たまには人助けもするのかと思ってたら……」

「待て待て、そいつは誤解だ! ほら、お前もそんな怖い顔しないでくれよ、笑顔笑顔!」

「ふふっ、やっぱりあなたたち、仲がいいのね。」

「「どうしてそうなるんですか?!」」

またも同時に反論した二人を見て、クロエはくすっと微笑んだ。

(この二人がこれからどうなるか、楽しみだわ。今はただの幼馴染だけれど、もしお互いに想い合うようになったなら――素敵ね!)

そんな空想と美味しい料理を味わいながら、クロエは楽しいひとときを過ごすのだった。

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