俺田マコトのファイアーエムブレム短編集   作:俺田マコト

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#シルヴァンジョゼゴーティエ生誕祭2023

第二部蒼月ルート想定。


シルヴァン=ジョゼ=ゴーティエ生誕祭

誕生日。俺がこの世界に生まれた日。

……正直、誕生日というのはあまり好きじゃなかった。俺が生まれたということは、俺の持つ紋章も同時に生まれたってことだ。兄上を非業の死に追いやり、今なお俺を苦しめ続ける紋章が。そんな日を祝おうだなんて、とてもそんな気にはなれなかった。もちろん皆に祝われれば愛想よく笑って、口先だけの礼を言うくらいのことはしていたが。

「ちょっと、シルヴァン。せっかくの誕生日なのに、なんて顔してるのよ。」

「まったくだ。折角祝いに来てやったというのに、そう辛気臭い顔をされては敵わん。」

「ん? ああ、悪い悪い。ちょっと考え事をしてたからさ。」

「普段、女性を追いかけているときはあんなに楽しそうだというのにな。」

「いや殿下、なんですその言い草は。」

いつの間にか、幼馴染たちが来ていた。こいつらといる時は、素の自分で過ごせるから、幾分か気が楽だ。

「冗談はさておき……誕生日おめでとう、シルヴァン。俺はここ五年ほど誕生日祝いなどしていなかったから……贈り物も五年分贈ってやりたいところだが。今はどうかこれだけで許してくれ。」

「いやいや、その気持ちだけで十分ありがたいですよ。今の軍備じゃ、金を使い込むわけにもいかないってのはわかってますし。」

「はは、昔からお前は賢い奴だ。俺の懐事情もお見通しか。」

ディミトリから差し出された包みを受け取る。次いでフェリクスとイングリットにも、それぞれ小さな箱を手渡される。中身の確認は必要ない。長年付き合ってきた幼馴染たちなのだから、俺の好みは完全にわかっているはずだ。

「ありがとな。おかげで今日は、最高の誕生日になりそうだ。」

「シルヴァン、あなた毎年そう言っていないかしら?」

「おおかた、女を口説くときとでも勘違いしているのだろう。」

「いいや、これは間違いなく俺の本心だよ。毎年毎年、お前らのおかげで、俺は最高に幸せなんだからさ。」

フェリクスはフンと鼻を鳴らしたが、こればかりは本当のことだ。すり寄ってくる女の子たちにかける「きみが一番さ」などという薄っぺらな言葉とは違う、心の底からの感謝の言葉だった。

「今夜は、それほど大規模なものでもないけれど、士官学校の同級生たちがあなたのために誕生日会を催してくれるわ。皆がごちそうを用意してくれているわよ。」

「おうさ。俺の誕生日会だから、イングリットは食いすぎるんじゃねえぞー。」

「……あなたが今日誕生日じゃなかったら殴ってたわよ。」

「いやすまん、つい出来心で。」

そんな軽口を叩きつつ、改めて幼馴染たちの顔を見回す。昔と比べれば随分変わったものだが、やはりどこか変わらないところもある。昔からいつも、こいつらはこんな目で俺を見ていた。そう思うと、自分の誕生日が嫌いだなんだと考えていた先ほどまでの自分が馬鹿らしく思えてきた。こいつらは、俺の血に宿る呪われた紋章なんて見ていない。俺というひとりの人間を、真っすぐに見つめてくれている。こいつらだけじゃない、食堂で俺の誕生日会を準備してくれている皆も、俺自身を見てくれているのだろう。むしろ、どこか捻くれてしまっていたのは、俺のほうだ。俺のことを見ていないのは、俺だけだ。

ふう、と大きく息をついて、皆のところへ行くために、腰を上げる。

他の誰でも、何でもない、『シルヴァン=ジョゼ=ゴーティエ』の誕生日を祝うために。




シルヴァンの誕生日に花渡した時の「ありがとうございます」ってボイスに若干の闇を感じて書きました。
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