俺田マコトのファイアーエムブレム短編集   作:俺田マコト

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リュールがシトリニカに『約束の指輪』を渡してからしばらく経った、シトリニカの誕生日のお話。
#シトリニカ生誕祭2023


特別な気持ち

「シトリニカの姿が……見当たりませんね。」

今日はシトリニカの誕生日。神竜リュールは、大切なパートナーの誕生日を祝うため、ささやかなパーティーを催した。大公家で催されていたような豪華絢爛なものではなかったが、シトリニカは何よりその心遣いに大いに喜んだのだった。

夕刻から始まったパーティーの盛り上がりは、空が暗くなる頃には最高潮に達した。そんな中、主役であるシトリニカが姿を消したのだ。

「あの、よければ僕が探しに行きましょうか? 僕ならいてもいなくても同じだと思いますから……。」

「待ってください、スタルーク様。ここはパートナーである神竜様にお任せしたほうがいい気がします。」

「えっ、でも……」

「こういう時は、主君や友人よりもパートナーが適任なんですから。あたしたちを待たせていることは気にしなくてもいいですから、ゆっくり探してきてくださいね!」

やけに積極的なラピスに押されるようにして、リュールはシトリニカを捜しに出かけるのだった。

 

見晴らしの丘。宝石のような星々が散りばめられた夜空を見上げ、シトリニカはほうっと息を吐いた。遥か下に見えるエレオスの大地では、ちらちらと町の灯りが煌めいている。

「綺麗ですね。」

「きゃあっ!? ……まあ、神竜様。驚いたわ。」

「すみません。シトリニカは、どうしてここに?」

「……少し、外の空気を吸おうと思って。」

「そうですか。なら、私も一緒に景色を見てもいいですか?」

「ええ。」

リュールは、シトリニカの隣に座った。穏やかな風が、二人の髪を揺らした。

「ここから見える景色は、私のお気に入りなんです。」

「それは、わたしもそうね。ここは、エレオスで一番高いところだもの。見えるものはどこよりも多いわ。」

「時間帯によっても、景色がまるで違って見えますしね。いつ来ても、飽きるということがないです。」

「素敵な場所ね。」

シトリニカは、景色を見ながら言った。リュールからは、その表情を窺い知ることはできない。

「シトリニカは、覚えていますか。『約束の指輪』を渡したのは……」

「この場所だった。忘れられるはずがないわ。わたしの人生で、一番の輝いた日だったもの。」

風がまた、二人の顔を撫でた。少し冷たい秋風のせいだろうか、頬が熱く感じられた。

「ねえ、神竜様。」

まだ前を向いたまま、シトリニカは呼びかけた。その声は、不安げに少し風に揺れた。

「この場所で、あなたに指輪を貰ったとき、わたしはとても嬉しかった。そのことは、もう何度も伝えたし……改めて言うまでもないかもしれないけれど。」

リュールは黙ったまま頷いた。

「でも……同時に、すごく不安だった。……スタルークみたいなことを言うようだけど、本当にわたしがあなたの隣にふさわしい人間なのか。どうしてあなたは、わたしにここまでのことをしてくれるのか。今日、あなたにパートナーとして、こんなパーティーまで開いてお祝いしてもらって……また少し、自信がなくなってしまったの。だから、こんなところまで逃げ出してきて。……あなたの優しくて眩しい心に触れるたび、わたしは影のように暗く、迷ってしまうの。」

「それは、気にしないでほしいです。私にとっては、シトリニカこそが眩しい光なんですから。ふさわしいかどうかなんて、関係ありません。シトリニカのことが好きだから、あれこれ優しくしてしまう。それではいけませんか?」

リュールは、シトリニカのほうを真っすぐに見つめて言った。その視線に引き付けられるように、シトリニカは振り返り……ふわりと笑った。

「ええ。あなたならきっと、いつだってそう言ってくれるはずなのに……わたしったら、いつもそれを忘れてしまうんだもの。不思議ね。この特別な気持ちこそが、わたしたちを繋いでくれた絆だものね。」

幸せそうに目を細めて、シトリニカは立ち上がった。

「そろそろ戻りましょうか。きっとみんなを待たせてしまっているわ。この、優しくて、温かい気持ちを、みんなにもおすそ分けしてあげましょう?」

「おすそ分け、ですか。いい考えですね。」

二人は、並んで小道を戻るのだった。

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