三千世界の烏を殺し、××と朝寝がしてみたい。   作:花餅ふわり

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夜は早く寝るに限る理由。


001:愛が欲しかっただけ。

『私には前世の記憶がある。』ーーー生まれてこの方、この事を誰かに言った事も、それとなく匂わせた事もない。この事実は私の中だけの大きな秘密にしている。

 

前世に気付いたのはまだ物心付く前。

いつも学校が終わった後に構ってくれる近所のお兄さん二人組に遊んで貰っている時。名前を呼ばれ振り返ったその瞬間、"私"の知らない様々な記憶がまるで洪水の様に溢れ出し、私はそのまま気を失い倒れた。

恐らく前世の記憶と今の現状を整理する為だったのだろう、中々下がらない高熱が三日間続き、一週間も寝込んでしまった。

いつも構ってくれるお兄さん二人組ーーー"降谷零(通称・れーちゃん)"と"諸伏景光(通称・ひろちゃん)"。所謂『公安組』に再び会えたのは更に一週間後、約二週間後の事だった。

『一回り年下』と言う設定に『病弱』と言う属性も付属された私は、それはもう目一杯甘やかされた。ちょっと小さな声で「つかれた…」と呟き立ち止まっていれば、必ずどちらか(主に諸伏さんが多かった気がする)に抱っこされ、リビングで座っていれば必ずどちらか(これは降谷さんが多かった気がする)の膝に乗せられた。本当に"溺愛"や"過保護"と言っても差し支えない程に可愛がられていた。ーーーだから調子に乗った。そりゃあ、ねえ?だってイケメン二人に溺愛されているんだもん。それはもう全力で調子に乗る。まあ、其れに関しては本当に申し訳ないと思っている。ただ、ちょっと『二人の学生時代の思い出の一つになれるかなー』と欲を出したのだ。大人になってふと子供を見た時とかに『そう言えばあんな子供がいたなー』程度に思い出し、あのサムズアップされる柔らかな笑みで微笑んで欲しかっただけなのだ。そしてトリプルフェイスとして忙しい推しの癒しになりたかった。そんな人生を送りたかった。そう、私は癒しになりたかったのであってトラウマになりたかった訳ではない。もう一度言おう。私 は 決 し て ト ラ ウ マ に な り た か っ た 訳 じ ゃ な い !!ーーー何故こんな事を言うのかって?そりゃ貴方、今テレビで《私が死んだ時のニュースが放送されてる》からですよ。

 

『ーーー"阿瀬尾博士の一家が何者かに殺されてから今年で早くも十年が経過しました。この事件は一際残忍性が高く、博士の一人娘の《阿瀬尾由宇》ちゃんは当時まだ七歳でした。犯人は博士夫妻を撲殺した後、家に火を放ち、証拠隠滅を図ったと思われています。家が火の海に包まれている中、由宇ちゃんはまだ意識があったと言われており、その恐怖はいかほどだったでしょう…。そんな残忍な犯人は未だ捕まっておらず、警察はーーー…。"』

 

そう、私ーーーもとい"阿瀬尾由宇"は生きながら焼かれたらしい。

両親が作っためっちゃ高性能(どんくらい高性能かは知らん)のAIがとある組織に狙われていると知った両親は、私をAIと一緒にADに連れて行き、そのトップと色々と話し合い取引をして身代わりの子供を一人連れ帰った。私を守る為とは言え流石にこれはやり過ぎだ。倫理観どうなってんねん、マジで引くわ。私の代わりに引き取られた子供も可哀想過ぎるし、そもそも何で狙われそうな物を作ったんや。そんな危ないもん破壊せい!

それよりもだ、もうこんなの公安組からしたらトラウマじゃん!近所の仲が良かった子供が生きながら焼かれたんやぞ?私だったら鬱になるわ。そして何でキャスターもそんな詳しく話すんだよ。こんな凄惨な内容、普通だったらお茶の間凍り付くんですが。

 

盛大な溜め息を吐きながら、テレビのチャンネルを変える。よし、最近始まった動物をテーマにしたクイズ番組を見て癒されよう…。

 

『マスター、如何致しました?』

「リュカ…ううん、何でもないよ。」

 

何となくニュースの内容に落ち込んでいると、天井に嵌め込まれたスピーカーから声がする。この声こそが、両親が私に持たせた高性能AI《リュコーリアス》だ。

私がADで暮らす為に出された条件は三つ。

 

一つ、『リュコーリアスを使ってラジアータを守る事』。

二つ、『DAの求める時に即座に情報提供する事』。

三つ、『DAが求めた時のみに限るが現場への出動』。

 

この三つ。リコリスとして生きていくには破格過ぎる条件。

本当は『リュコーリアス自体をDAに譲れ』と言われたけれど、マスターが私から変わると自動で自滅システムが作動し、破壊される様になっている。因みに私が自らの意思でマスターを譲っても駄目そうだった。私は死ぬまでリュコーリアスと共にあるのだ。

 

『しかしマスターの表情に"悲哀"と"苛立ち"を読み取りました。』

「……そっか、そんな表情してたんだね。でも大丈夫だよ。リュカ、テレビを消してくれる?」

『はい、マスター。』

 

返事と同時にプツンっと電源の落ちたテレビを見つめる。

ーーー駄目だ。起きていると余計な事ばかり考えてしまう。さあ、今日はもう寝ようーーー。重い腰を上げ寝室へと移動し、逃げる様にベッドへと潜り込んだ。




《リュコーリアス》海の女神・海の妖精の名前。『リコリス』の語源との一説もある。
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