創魔の口調が?
それではどうぞ
「イヤャャャャャ!!離して! 南雲さんのところに行かないと! 約束したのに! 私がぁ、私が守りますって! だからっ!離して!」
このままでは香織の体を放せば、そのまま崩壊した橋の端から飛び降りるだろう。それくらい普段の穏やかさが見る影もないほど必死の形相だった。いや、トータスに来てから何故か「歓喜」が爆発的になった。雫は気づいたが、光輝は少しもわからなかった。
「香織っ、ダメよ! 香織!」
雫は香織の気持ちが分かっているからこそ、かけるべき言葉が見つからなかった。ただ必死に名前を呼ぶことしかできない。
「香織! 君まで死ぬ気か! 南雲は無理だ! 落ち着くんだ! このままじゃ体が壊れてしまう!」
それは、光輝なりに精一杯、“香織„を気遣った言葉。しかし、今この場で錯乱する香織には言うべきではない言葉だった。
「無理って何⁉︎ 南雲さんは死んでない! 行かないと、きっと助けを求めてる!」
誰がどう考えてもハジメ助からない。奈落の底と思しき崖に落ちていったのだから。
しかし、その現実を受け止められる心の余裕は、今の香織にはない。言ってしまえば反発して、更に無理を重ねるだけだ。幼馴染達は、親友達に押さえれら呼吸が荒くなり青褪めながら、ハジメが落下した目の前の光景に理解できなかった。龍太郎や周りの生徒達もどうすればいいのか分からず、オロオロとするばかり。
その時、デンジの腕を首に回し腰に手を当てて支えている創魔がツカツカと歩み寄り、腕を回している手を少しだけ離し、問答無用で香織の手首に手刀を放った。ビクッと一瞬痙攣し、そのまま意識を落とした香織。ぐったりする香織を抱きかかえ、光輝がキッと睨み文句を言おうとした矢先、雫が遮るように機先を制し、創魔に頭を下げた。
「すみません。ありがとうございます」
「礼など不要です。もう一人被害者を出すわけにはいきません」
創魔は頭の中が真っ白になり、今でも感情が火山のように大噴火してしまうようなことを必死に抑えながら返事をした。
そこへ幼馴染達が駆けつけてきた。創魔が香織に手刀を当てた音に意識が戻った。表情は暗いままだが、少しだけ落ち着いている。
「創魔、その……俺達がデンジを代わり支えていこうか?」
「ああ、その調子じゃ流石にデンジを迷宮の入り口まで、支えきれないだろ」
「そうですか。………すみません」
「気にすんな」
創魔がデンジを浩介と幸利の二人に渡し、デンジの両サイドに腕を回しデンジを支えた。
今度は、優花と恵里が心配して話しかけてきた。
「創魔、大丈夫? 顔色が悪いよ」
「私の魔法で心を安定しようか?」
「お気遣い感謝致します。でも私は大丈夫なのでご心配なく」
「……創魔が言うなら仕方ないわね」
「……うん、わかったよ」
創魔は胸元に手を当て断った。優花と恵里から目線をメルド団長に移した。
「メルド団長、私一人で魔物達を倒していきます。全力で迷宮を離脱しましょう」
「………わかった」
「感謝致します」
メルド団長は、創魔の代わりに魔物達を倒そうと言おうとしたが、メルド団長が創魔の様子を見て「その気なら仕方ない。好きにやらせておこう」と察して承諾し部下達を手で制した。
メルド団長に頭を下げ踵を返して背を向け先頭に歩いていく創魔に、全く空気を読めない糞勇者が声を張り上げて言ってきた。
「南雲創魔! 香織を気絶させたこともあるが、さっきのチェンソーは一体なんだったのか!説明してもらう!」
『⁉︎』
突然の出来事に雫、龍太郎や生徒達、幼馴染達、メルド団長騎士団員達も目に見開き驚愕した。光輝は周囲から注意されるが全く聞く耳持たない。
創魔は全員に背を向けて一言だけ喋った
「一切関係ない。以上だ」
それはまるで『
創魔は喋り終わったあとは先頭に向かって歩いていった。背後から光輝が何度も呼びかけてくるが無視した。誰も言動不可能だった。
背を向けて離れていく創魔を見つめながら、呼びかけも応じなかった創魔に光輝は苛立ちを隠せなかった。光輝から香織を受け取った雫は、真剣な眼差しで強めに光輝に告げた。
「『公安は、二人一組で仕事する。どちらかが死んだらまた別の人が付いて私か相棒が死ぬ』って前に道場に通っていた公安の方から聞いたことがあるのよ。創魔さんは相棒のハジメさんが消えてしまった今、早川さんが付くかもしれない。相棒で仲がよかったハジメさんを目の前で失ったのよ。そんな今、あんたは創魔さんを怒らせた。火に油よ。香織のことは、私達が止めらないから創魔さんが止めてくれたのよ。わかるでしょ? 今は時間がないの。香織の叫びが皆の心にもダメージを与えてしまう前に、何より香織が壊れる前に止める必要があった。……ほら、あんたが道を切り開くのよ。全員が脱出するまで。……ハジメさんも言っていたでしょう?」
雫の言葉に、光輝は頷いた。
「……そうだな、早く出よう」
目の前で一人死んだのだ。生徒達の精神にも多大なダメージが刻まれた。誰もが茫然自失といった表情で石橋の方をボーと眺めていた。中には「もう嫌!」と言って座り込んでいる子もいた。
ハジメが光輝に叫んだように今の彼等にはリーダーが必要なので、今度は光輝がクラスメイト達に向けて声を張り上げた。
「皆! 今は、生き残ることを考えるんだ! 撤退するぞ!」
その言葉に、生徒達はノロノロと動き出した。トラウムソルジャーの魔法陣は未だ健在だ。続々とその数を増やしているが、今の精神状態で戦うことは無謀で戦う必要もない。光輝は必死に声を張り上げ、クラスメイト達に脱出を促した。メルド団長や騎士団員達も生徒達を鼓舞する。しばらくすると、全員が階段への脱出を果たした。
上階への階段は長かった。先が見えないくらいずっと上方へ続いて、すでに感覚では三十階以上上っているはずだ。魔法による身体強化をしても、疲労を感じる頃だった。先の戦闘のダメージもある。薄暗く長い階段はそれだけで気が滅入るくらいだ。
上階へ向かう途中に襲来してくる魔物達は、創魔が怪しまれないように敢えて詠唱を早口で言い重力魔法で魔石もろとも潰した。今の創魔には冒険者らしく魔石を回収する余裕なんて頭の中には入ってない。
創魔の魔法を見た生徒達やメルド団長騎士団員達は、驚愕した。生徒達は自分達とは比べ物には到底ならない圧倒的で不可能な「差」を刻まれた。特に光輝は、創魔の強さに嫉妬しキリッと創魔を歯噛みし睨んでいる。
メルド団長騎士団員達は、見たことない魔法に驚愕していた。
創魔が魔物達を倒していきそろそろ小休止を挟むべきかとメルド団長が考え始めたとき、ついに上方に魔法陣が描かれた大きな壁が現れた。
生徒達の顔に生気が戻り始めた。メルド団長は扉に駆け寄りフェアスコープを使い詳しく調べ始めた。
結果は、どうやらトラップの可能性は無さそうであることがわかった。魔法陣に刻まれた式は、目の前の壁を動かすためのようだ。メルド団長は魔法陣の刻まれた式通りに一言の詠唱をして魔力を流し込んだ途端、まるで忍者屋敷の隠し扉のように扉がクルッと回転し奥の部屋へと道を開いた。扉を通ると、元の二十階層の部屋だった。
「帰ってきたの?」
「戻ったのか!」
「帰れた……帰れたよぉ……」
生徒達が次々と安堵の吐息を漏らしたり、泣き出したりへたり込む生徒もいた。光輝達ですら壁にもたれかかって今にも座り込んでしまいそうだ。だが浩介と幸利は、デンジを両サイドから腕を回して支えているため座り込むのはできなかったが、迷宮の入り口までと決めたので座らずに支えていた。
しかし、ここはまだ迷宮の中だ。底レベルとは言え何時どこから魔物が現れるかわからない。まぁそれは、創魔がいない場合だ。創魔には“気配感知„があるので隠れていても創魔には簡単に気づく。完全に緊張の糸が切れてしまう前に、迷宮からの脱出を果たさないと駄目だ。
メルド団長は休ませたいと気持ちを抑え、心を鬼として生徒達を立ち上がらせた。
「お前達! 座り込むな! ここで気が抜けたら帰れなくなるぞ! 魔物との戦闘はなるべく避けて最短距離で脱出する! ほら、もう少しだ、踏ん張れ!」
少しくらい休ませてくれよ、という生徒達の無言の訴えをギンッと目を吊り上げ封殺したメルド団長。創魔は心の底で「体育の授業を受けているはずだ。呆れたぞ」と悪魔らしい辛辣の言葉を吐き、(浩介と幸利を除く)地面に座り込む生徒達を見てうんざりして深い溜息をついた。
生徒達は渋々、フラフラしながらも立ち上がる。光輝が疲れを隠して率先して先をゆく。道中の魔物は、創魔が最小限だけ倒しながら一気に地上へ向けて突き進んだ。
遂に、一階の正面門となんだか懐かしい気さえする受付が見えた。迷宮に入って一日も経ってないはずなのに、ここを通ったのが随分昔のような気がしているのは、きっと少数ではないだろう。
今度こそ本当に安心した表情で外に出て行ったり、広場で大の字になって倒れ込む生徒達。一様に生き残ったことを喜びあっているようだ。
だが、一部の生徒——未だ目を覚さない香織を背負った雫や光輝、その様子を見る龍太郎、恵里、鈴、優花など女子生徒などは暗い表情だ。そんな生徒達を横目に気にしつつ、受付に報告に行くメルド団長。
そしてもう一人香織と同じ状態のデンジ。今は、浩介と幸利からデンジを受け取った創魔が背負っている。
二十階層で見つかったトラップは危険すぎる。石橋が崩れ去ったので罠として未だ機能するかはわからないが報告は必須だ。そして、ハジメの死亡報告もしなければならない。憂鬱な気持ちを出さないように苦労しながら、それでも溜息を吐かずにはいられないメルド団長だった。
ホルアドの町に戻った一行は特に何かをする気力もなく部屋に入って、幾人かの生徒は生徒同士で話し合ったりしているようだが、ほとんどの者はベッドへダイブし、深い眠りに落ちた。
そんな中、檜山大介は一人、宿を出て町の一角にある目立たない場所で膝を抱え顔を膝に埋め微動だにしない感じに座り込んでいる。もし、クラスメイトが彼のこの姿を見れば激しく落ち込んでいるように見えるだろう。 だが実際は……
「ヒ、ヒヒヒ。ア、アイツが悪いんだ。公安のくせに……ちょ、調子に乗るから……て、天罰だ。……俺は間違ってない……白崎のためだ……あんな雑魚に……もうかかわらなくていい……俺は間違っている……ヒ、ヒヒ……………
クソッ!“三人„同時に落とせなかった!クソッ!クソッ!クソッ!」
暗い笑みと濁った瞳、そして狂った怒りで自己弁護しているだけだった。
そう、あの時、軌道を逸れてまるで誘導されるようにハジメ達に迫った火球は、この檜山が放ったものだった。階段への脱出とハジメ達の救出。それらを天秤にかけた時、ハジメを見つめる香織が視界に入った瞬間、檜山の中悪魔が囁いたのだ。「今なら殺っても誰も気づかれないぞ?」と。そして、檜山は悪魔に魂を売り渡した。
バレないように絶妙なタイミングを狙って誘導性を持たせた火球をハジメが着弾させたのだ。
檜山は元々ハジメを狙おうとしたが「アイツだけじゃなくあとの二人も当ててやろうか」と思い、創魔、デンジ。公安対魔三人を殺害しようと思った。だがハジメが気絶したデンジと支えた創魔の背中をグイッと押した影響でハジメと創魔の間に空間ができその空間に火球は着脱し、創魔とデンジは階段側、ハジメは襲ってくるベヒモスの方へ飛ばされてしまった。
流星の如く魔法が乱れ飛ぶあの状況では、誰が放った魔法か特定は難しいだろう。まして、檜山の魔法属性は「風」だ。証拠もないし分かるはずが不可能だ。
そう自分に言い聞かせながら暗い笑みを浮かべる檜山。
その時、突如背後から声を掛けられた。
「へぇ〜、やっぱり君だったんだ。異世界最初の殺人が偶然にも一緒に喚ばれた公安とは……中々やるね?」
「ッ⁉︎ だ、誰だ!」
檜山は慌てて振り返った。そこには見知ったクラスメイト一人が佇んでいた。
「お、お前、何でここに……」
「そんなことはどうでもいいんだよ。それより……人殺しさん? 今どんな気持ち? 恋敵をどさくさに紛れて殺すのってどんな気持ち?」
その人物はクスクスと笑いながら、まるで喜劇でも見るかのように楽しそうな顔をしていた。檜山自身がやったことこととは言え、公安一人死んだというのに、その人物はまるでついさっきまで、他のクラスメイト達と同様に、酷く疲れた表情でショックを受けていたはずなのに、そんな影は微塵もなかった。
それがお前の本性なのか?と、呆然と呟く檜山。
それを、その人物は馬鹿にするような見下した態度で嘲笑った。
「本性? そんな大層なものじゃないよ。誰だって猫の一、二匹被っているのが普通だよ。そんなことよりさこのこと、皆に言いふらしたらどうなるかな? 特にあの子に聞かれたら、そして最悪の場合あの二人に逮捕されるかもね」
「ッ⁉︎ た、逮捕だと⁉︎ そ、そんなこと信じるわけ証拠も
「ないって? でも、僕が話したら信じるんじゃないかな? あの窮地を招いた君の言葉には、既に力はないと思うけど?」
檜山は追い詰められていた。まるで、弱ったネズミを更に嬲るのような言動。まさか、こんな奴だったとは誰も想像不可能だろう。二重人格と言われた方がまだ信じられた。目の前で嗜虐的な表情で自分を見下される人物に、全身が悪寒を感じて震える。
「ど、どうしろってんだ⁉︎」
「うん? 心外だね。まるで僕が脅しているようじゃない? ふふ、別に直ぐにどうこうしろってわけじゃないよ。まぁ、取り敢えず、僕の手足となって従ってくれればいいよ」
「そ、そんなの」
それは、実質的な奴隷宣言みたいなものだ。流石に、躊躇する檜山。当然断りたいが、そうすれば目の前の人物は容赦なくハジメを殺害した犯人は檜山だと言いふらすだろう。
葛藤する檜山は、「いっそコイツも」と仄暗い思考に囚われ始める。しかし、その人物はそれを見越していたのか悪魔の誘惑をする。
「白崎香織、欲しくない?」
「ッ⁉︎ な、何を言って」
暗い考えを一瞬で吹き飛ばされ、檜山は驚愕に目を見開いてその人物を凝視した。そんな檜山の様子をニヤニヤと見下ろし、その人物は誘惑の言葉を続けた。
「僕に従うならいずれ彼女が手に入るよ。本当はこの話は南雲ハジメにしようと思っていたけど君が殺しちゃうから。まぁ、彼より君の方が適任だとは思うし結果オーライかな?」
「何が目的なんだ。お前は何がしたいんだ!」
あまりに訳の分からない状況に檜山が声を荒げた。
「ふふ、君には関係のないことだよ。それで、返答は?」
あくまで小バカにした態度を崩さないその人物に苛立ちを覚えるものの、それ以上に、あまりの変貌ぶりに恐怖を強く感じた檜山は、どちらにしろ自分に選択肢などないと諦めの表情で頷いた。
「……従う」
「アハハハハハ、それはよかった! 僕もクラスメイトを告発するのは心苦しかったからねぇ。まぁ、仲良くやろうよ、人殺しさん? アハハハハハハ」
楽しそうに笑いながら踵を返し宿の方へ歩き去っていくその人物の後ろ姿を見ながら、檜山は
「ちくしょう」と小さく呟いた。
「ヒヒ、だ、大丈夫だ。上手くいく。俺は間違ってない」
檜山は、今度は誰の邪魔も入ることなく膝を顔を埋め、ブツブツと呟き出した。
ハジメ達に火球を放った檜山とその光景を目撃していた人物が密会をしていた。その日の夕方、創魔と同室で意識を失っていたデンジが目を覚ました。
「……こ…ここは、どこだ? 」
「おっ! 気がつきましたか! デンジ様!」
デンジが目を覚ますと、そこは、木製の天井に照明器具が飾られ自分がベッドの上で寝かされていた。ふかふかの枕を頭を置かせて毛布をかけられていた。
まるで召喚される前に、泊まっていた宿泊客や救助に向かったデビルハンターが、行方不明となり「永遠の悪魔」の仕業で脱出不可能なホテルに閉じ込められた時に、デンジが永遠に眠れるベッドに入って「こんなにいいのがあんだ寝なきゃ損だろ。俺は悪魔に感謝してるぜ」と言いすぐさま就寝した。その時のベッドと同格な位だ。
ベッドの傍らには創魔、浩介、幸利の三人がいた。
「創魔、浩介、俺は恵里、優花とメルドさんに伝えてくる!」
「ええ、分かりました!」
「幸利!俺も行くぞ!」
「分かった!」
そう言って、デンジが目を覚ましたことを幼馴染の恵里、優花。そしてメルド団長に伝えに行き部屋のドアをガチャと開けて閉め出て行った浩介と幸利。こうして静まり返った部屋に橙色に輝く夕日が部屋を照らし、部屋には傍らにいる創魔とベッドの上に寝かされているデンジの二人だけだ。デンジは、上半身を起こし早速ここにはいないであろうハジメのことを創魔に訊ねた。
「なあ、創魔。ハジメは橋から落ちたんだよな? 俺はあの時見ていたぞ」
「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………ええ、そうです。主様は崩壊していく石橋から落ちました」
「そうかよ。俺が気絶していた間は、一体何があったのか教えてくれねえか?」
創魔はデンジがあの時気絶したあとのことを話した。聞き終わったデンジは、血が滲み出るほどの手を握りしめ歯噛みをし悔しい表情をし怒声を上げた。
「ハジメの野郎! 余計ことしやがってクソが! これじゃ早パイと同じみてえじゃねえか! もし生きていたら気絶するほどの一発を思いっきりぶん殴りってくらいだ! 俺を助けたって後悔させてやる! 胸ぐらを掴んで、そして早パイに言ったがハジメにも言わねえと気が収まらねえ!『あの時も言ったが、もう俺は誰かに貸し作んのはもううんざりなんだよ!』ってな!」
「ふふっ、そうですか」
「おう! あたりまえだ!」
デンジの気持ちをちゃんと最後まで口出しせずに聞いていた創魔。ハジメの相棒の創魔は、デンジの行動に驚愕したが、少しだけ微笑んだ。
「じゃあ早速助けに「デンジ、残念だがもう既に決められている」
そこには、いつからいたのかわからないが、ドアが開けていてメルド団長とハジメの幼馴染の三人がいた。恵里の姿がいないようだがどこかへ行ったらしい。おそらくデンジが怒声を上げている最中に入ってきたかもしれない。
「メルドさん? 残念ってどいうことすかっ?」
デンジがメルド団長に問う。
「すまないが今日は、このまま宿に一泊し、明日の早朝に高速馬車に乗り王国へ戻る。迷宮内で実戦訓練を続ける感じではないし、お前達の仲間が死んでしまったことを、国王や教会にも報告が必要なのだ。 本当に申し訳ない」
メルド団長はデンジと創魔に頭を下げた。デンジと創魔は黙りしてメルド団長を目を細めて見つめている。
静まり返った部屋を壊したのは、デンジの溜息だ。
「はあーわかりましたよ。助けに行けないなら俺と創魔だけで行くからな」
「えっ⁉︎ お前達二人だけで行くのか⁉︎」
「流石に危ないわよ!」
「嘘だろ……」
「階層に潜っていくごとに、魔物や固有魔法が強力になっていくぞ? ベヒモス以上に強い魔物がいるかもしれないんだぞ。それでも行くのか?」
デンジと創魔のたった二人だけでハジメの救助に行くことに、驚きの表情や反対の声を上がった。
「お忘れでしょうか?私、デンジ様、そして主様は、公安や冒険者なんですよ?」
「あっ、そうか」
幼馴染達しか見せていないが、冒険者登録をしたことを明かした時は、浩介と幸利が瞳をキラキラと輝かせ羨ましいそうな顔をしていた。
「それに、見せたよな?俺達とハジメのステータス」
「……確かにあの破格とも言えるステータスなら、お前達なら余裕かもしれない」
「じゃあ俺達は行くぜ。ハジメが待っているからな」
「待っているって⁉︎ ハジメが生きているのか⁉︎」
「たぶんだけどな」
そこへ
「あれ? デンジ君やっと目が覚めたのにどこへ?」
部屋に入ってきたのは、恵里だった。
「おー、恵里か。 ハジメを助けに行くつもりだ」
「えっ、ハ、ハジメが生きているの⁉︎」
恵里は、驚いて持っていた杖を強く握りしめた。
「ええ、可能性は低いかもしれませんがね」
「そっ、そうなんだ」
デンジは毛布を退け立ち上がり側にあった斧(ハジメ生成)を腰に入れ創魔は空間魔法の中に回復薬を大量に入れた。こうすることで、袋に入れて持ち歩かなくてもいいし、ジャラジャラと袋の中で回復薬が入っている容器同士が、当たり音を立たなかったり割れないのも便利だ。冒険者の依頼で得た金貨も空間魔法に入れている。
「よし! 準備終わったぜ!」
「此方もです。お互い今はバディがいないので、主様との再会までは今から私とデンジ様とのバディを作るのは、どうでしょうか?」
創魔がデンジに提案事は、ハジメがいない今は二人でバディを作るということだった。デンジのバディは、血の魔人パワーだがパワーは地球の方にいるのでどうせならハジメとの再会するまでは創魔がデンジのバディになるということだ。
「おう! それいいな!もちろんだぜ!」
「そうですか。なら決定ですね」
デンジはあっさりOKした。ここで創魔とデンジの異色のバディが誕生した。
いかがでしたか
創魔の「怒り出したら口調が荒々しく変わる」という隠れた特徴が出ました。普段、濃厚な人が突然怒り出したら表情が変わるという要素を入れてみました。
次回、奈落の底 です。