地球防衛軍“5”TACTICS 作:二次創作ブラザー
今日も仕事だ。
マザーシップが何隻あるかは知らないが、空軍が全て撃ち落としてくれるはず。私たちはそれまで粘り続けなければ。
10月も半ばに差し掛かったが、EDFと地球外文明人……これをプライマーと命名したが、このプライマーとの戦いは終わる気配を見せなかった。
総司令部は軍人以外の敷地への立ち入りを禁止し、今もまだマスコミと警備隊との間で、小規模なデモとその鎮圧とが疎らに発生しているらしい。
私はと言えばこの二ヶ月のあいだ、EDF空軍の打ち出す新鋭機とやらが配備されるまで敵航空機、ワシントンにある総司令本部によってテレポーションシップと呼称された大型輸送円盤に手出しすることすらできず、ただひたすら地上部隊を指揮して地上に降りた怪物を駆除し続けていた。
戦況は悪化の一途を辿りつつある。怪物の増える大元を叩くことが出来ず、駆除を続ける毎日……。
今日もまた怪物の出現情報を受けたエリアへ数個のレンジャー小隊を派兵していた。
「近隣住民からの通報です。怪物が街に入り込んでいるとのことですが、しかし妙ですよ、これは。なんでも怪物が出てきたのに円盤が確認されていないそうで」
「円盤が無いのに怪物? 確かにおかしい……」
コマンダーメアリは今回の怪物出現情報に不審点を見出していたが、しかしそれよりも市民の方に犠牲が出ることの方が問題であると認識していた。即座に司令室へ移動する。数名のオペレータがレーダーに映る反応をパトロール隊に伝えている。
私は椅子に座って無線機を取り、任務を発令した。
「聞け! 市民からの通報だ! 機甲部隊アルファ、及びレンジャーチーム1、2、3の4チームは速やかに出撃準備を整え、戦闘に参加せよ!」
『了解。直ちに向かう』
そう通信機にて発信し、歩兵部隊と戦車部隊を出撃させる。各部隊の返答を聞いたメアリはそのままオペレータに案内され、広域レーダーを一瞥したのち司令官の椅子に座った。机に置いてあるモニタにレーダーと前線の歩兵の映像が転送されると、メアリはそれを食い入るように見つめた。
小規模の作戦だとしても、いつ円盤が来て大規模戦に発展するか分からない以上、小勢が相手でもコマンダー自身が指揮を執る必要があった。
『こちらパトロールチーム、レッド1! 怪物です、怪物が街に入り込んでいます!!』
「レッド1へ、コマンダーだ。そちらにレンジャー三個小隊及びタンクが二両向かっている。怪物を押し止めろ」
『レッド1、了解! 全員撃て! 交戦開始!』
他エリアの基地へほとんどの部隊を派兵している都合上、比較的損害の薄いブルックリン基地は、少数の部隊での敵部隊撃破を強いられている。怪物は問題ないが、マザーシップと呼ばれる超規模の敵母船がやってきたら終わりだと言えるだろう。
メアリは仕事とプレッシャーの板挟みになりながら部隊を指揮していた。敵の襲来に怯えるのは市民だけでは無い。歩兵も、基地司令官もそれは同じだった。
権限の高さも前司令から受け継いでいる現状、ニューヨーク全土の基地をメアリ率いるブルックリン区316基地が担っている。
現在ニューヨークには五つの区と、それに対応する五つの基地がある。
メアリやジンらがいるニューヨーク防衛の要、ブルックリン区316駐屯基地。
316駐屯基地に次いで多くの戦力を保有するブロンクス区前哨基地2-6。
壊滅的被害を被りつつも各基地の戦力補充で殲滅を免れた、マンハッタン区ベース328。
地形の都合上戦術兵器……特にコンバットフレーム・ニクスB型(普及型ニクス)及び戦闘ヘリN9エウロス、YG10ヘロンなど多くの兵器を保有するスタテンアイランド区ベース17。
市街における怪物の被害が特に酷く、既に数多くの避難民を受け入れているクイーンズ区ベース201。
いずれもワシントンにある総司令部の保有する戦力には及ぶべくもないが、それでもかなりの規模のはずだ。今現在この五つの基地の中で最も脆弱なのは相対的にここ、316駐屯基地であり、それゆえ円盤が出現しない今の状況は、ありがたくもあった。
『こちらレッド1、レンジャーチームと合流した。怪物を駆除する!』
今現在自由に動かせる兵士・兵器は少ない。戦力の補填をパトロール隊に委ねるのも致し方なかった。
パトロールチームは、隊員の数が多いという特徴がある。これは怪物相手ではなく警邏隊……彼らはいわゆる警察官のような役割を持つ隊員であり、即ち対人を重視した部隊であるからだ。
それ故に装備の質はあまり良いとはいえず、標準装備のアサルトライフルPA-11以上のものは持たない。
パトロールチームには4つの編成が存在し、最も単純数が多く動員させやすいレッド、装備を変更し中・遠距離戦に適合させたブルー、負傷者の収容や予備員役めあるグリーン、レンジャーと同質の訓練を受けたイエローが主である。
レッドチームは火力よりも制圧力に重きを置く。この二ヶ月間で怪物相手には火力よりも集団による飽和攻撃が有利であると結論付けられていた。レッドチームはまさにうってつけの部隊だった。
『コマンダー、こちらレッド1。怪物の数は減っています。相当数を撃破し───おい、どうした?』
順調に終わるかと思われた制圧作戦は、レッド1リーダーの言葉で不穏な空気を醸し始めた。風向きが変わり、司令室に悪寒が走る。
『隊長! 後ろです!! 怪物が地中から!!』
『う、うわぁぁぁっ!?』
『どうなってる……怪物は地中に潜れるのか!!』
レッドチームが混乱していた。同行しているレンジャーチームは散開し、突如出現した敵影に対処しているが、戦闘経験の不足しがちなパトロール隊のメンバーは動揺を隠しきれないようだった。
怪物は地中に潜れる。その言葉の示すところは、ただ単に地面の中を移動できるというだけではないはずだ。地中に存在する敵はレーダーには捉えられない。それはつまりステルス能力を伴った群れが基地を襲撃してきてもおかしくなく、抵抗の間もなくこの基地が……それどころか、全ての基地が陥落しかねないことを表していた。
それに怪物の生態が全て解明されたわけではない。繁殖する可能性もある。どのような場所で、あるいはどのような条件下で繁殖するのか分からない以上、地下などで増えていた場合チームを地下に突入させる必要がある可能性まで出てくる。
そうならないよう、神に祈るのが精一杯だ。
『こちらレンジャー2、敵は地面を掘り進められるようです! タンクによる攻撃で、怪物を撃滅します!』
『レッドチーム離れろ! 砲撃で吹き飛ぶぞ!!』
戦線を支えるタンクの砲撃で敵の集団を破壊する。110ミリ榴弾砲にはそれをするだけの火力があった。
「歩兵部隊は1ブロック後退して部隊を再編しろ。タンクは歩兵の盾になれ! 歩兵はタンクに近付く敵の駆除をするんだ!」
『こちらアルファ1、了解した。歩兵は俺たちが守ってやる』
『アルファ2、後退開始。歩兵は逃げろ!』
火力をタンクで補い、タンクがカバーし切れない牽制・制圧能力は歩兵が補う。戦場にあっては普遍的な用兵術だが、怪物が相手となると、歩兵の火力以上の攻撃力で装甲を破壊される恐れもある。
歩兵にとって恐ろしいのは、怪物の鋭い牙だ。噛み付かれたなら引きずられて隊から離され、アーマーを砕く強靭な牙で身体を裂かれる。タンクならば多少は耐える。
互いが互いを守る。戦線ではこれが最も重要だと、メアリは認識していた。故に指揮も、攻撃的というよりは保守的、勝利を確信できない限り攻めない、守りを重視した運用である。
『ブルー3、現着。怪物を攻撃する』
「よろしい。戦闘を開始せよ!」
そして狙撃チームであるブルー3が到着すると、戦況は大きく動く。火力のタンク、足止めに長けたレッド・レンジャーチーム、確実に敵を処理するブルーチーム。
一方的な戦闘力の押しつけならば、この布陣は無敵と言って良い。敵の攻撃能力は牙による噛みつき……。それのみなのだから。
その時までは、少なくとも。
『こちらレンジャー1、ユウキ! 怪物を撃破しました!』
『……いや、まだ来る! 撃て! ……なんだあれは?』
何かの放射物を咄嗟に避けたレンジャー1リーダー、ユウキ。しかし、後方で敵を射撃していたレッド1隊員にその放射物が命中してしまう。それは隊員を跳ね飛ばすように着弾し、潰れる。液体状のものであったらしく、それが付着したコンクリートや歩兵のスーツからぶすぶすと白煙が吹き出てきていた。
『うわっ!
それは思い至るまでに長くはかからなかった。その隊員がもがき苦しみ死ぬと、怪物の狙いは敵を砲撃するタンクへと定まったのだから。
『酸だーっ!! これは酸だ、離れろ!!』
優勢に終わるかと誰もが考えていた戦場が、その姿を一変させる。レーダーに増えた敵の数は多くないが、それが奇妙な事に中距離を保っている。
「レンジャーチーム、どうした? 酸がどうしたんだ!?」
『こちらユウキ、怪物は酸を吐き出します! アルファ2の装甲が一瞬で融解しました!!』
「なんだと? そんなバカな!」
レーダーからタンク・アルファ2の反応が消失する。それと同時にユウキ隊員の通信から激しい爆発音。恐らくはタンク内部の弾薬庫に酸が付着し、誘爆したのだろう。
『狼狽えるな、俺達のスーツには耐酸性がある!』
『タンクだってそのはずだ! 酸が強いだけじゃない、吐き出す量も多いんだ、離れろ!!』
敵の、恐らくは上位種。
状況はここに来て、悪化しつつあった。
黒い怪物の武器は、その凄まじく鋭い牙のみではなかったのだ。どんな装甲をすら溶かしかねない強力な酸を持っているのだ。
「敵を殲滅しろ! 市民に計り知れない被害が出るぞ!」
『アルファ1、了解した! 歩兵部隊はタンクを盾にしろ!』
銃声が通信機越しに響く。オペレータたちも現場の兵士も、司令官であるメアリさえ、さらなる戦況の悪化に戦争の終結は当分先になるだろうと諦観していた。
『敵はライフルの有効射程以上の距離で撃ってくる!』
『アスファルトに大穴が開いてやがる、なんて強力な酸なんだ……!』
近距離に接近していた敵を排除した味方が集まる事で、前線は酸とライフルの射撃戦に移行している。市街の道路だけでなく、レーダーに映る情報をそのまま鵜呑みにするならば、ビルの壁を垂直に移動している個体も確認できる。
かなりの巨体のはずだが、それを支えるほど強靭な脚という事なのか?
それを考える間もなく、副司令が指示していたオペレータが伝言を話す。どうやら他地域からの通信のようだ。
「コマンダー、ブロンクス区からの通信です。敵の大型船から射出された
「塔だと? こちらも酸の怪物のせいで兵を割く余裕は無いというのに……。 仕方ない、クイーンズ区からダイバーチームを呼び戻せるか?」
「ベース201に問い合わせます」
「急いでくれ」
オペレータが自分の席に戻っていく。
レーダーによれば、ビル街の戦いはレンジャーチームの優勢に終わりそうだ。一部部隊が突出しているのが気になるが、恐らくは現地で打ち立てた作戦か。
生命反応の失われた怪物が一体、また一体とレーダー上からその数を減らしていく。
『オペレータ、怪物の残りは?!』
「後4体健在です! 残りも倒してください!」
『了解した!』
残る怪物を待ち受けるは、等しく注がれる鉄の雨だ。おびただしい数の鉛玉が敵を襲えば、堅牢な甲殻を持っていたとしても生き延びるのは難しいだろう。
『敵数残り2!』
『そっちへ行ったぞ! 撃て!!』
『仕留めた! ユウキ隊長、最後の1体です!』
『……キル1! ようし、殲滅完了だ!!』
ユウキの最後の言葉により、戦闘は終了した。
新戦力となる酸の怪物は、噛みつきをしないという報告がある。これはつまり、隊員を拘束する敵がいない、純粋な射撃戦特化の怪物であるということだ。
であれば、敵に肉薄し高い火力を以て制圧する、そんな部隊が必要だ。
そう思い至った理由の一つとして、作戦の最終局面において突撃し、敵を分断した部隊の存在が挙げられる。
アサルトライフルを装備した部隊は、近距離から中距離までの射撃戦において、圧倒的な汎用性による安定した戦果を挙げることが可能だった。しかしそれは、近距離で凄まじい攻撃力を発揮する怪物、今回で言えば酸の怪物に対する有効打では有り得ない。
タンクがあっという間に撃破されたことを踏まえ、向こうの方が数も火力も上である現状、新規の部隊を作り、それを有効活用していくことで敵と対等に張り合わねばならないだろう。
というわけでメアリは新規部隊を連れて兵舎に訪れていた。彼女とくだんの部隊を待つのは、今回戦闘に参加したレンジャーチームの面々である。
「───よって、諸君らの部隊にショットガン、スローターE21を優先配備した部隊、レッドブラスト隊を設立した。レッドブラスト、前へ」
「はっ! 本日を以てこの隊に配属となりました、レッドブラストリーダーのジェイムス・ベス少尉であります。ふつつかものですが、改めてよろしく願います!」
びしっと踵を付け、背筋を伸ばして敬礼するジェイムス少尉は、若くしてレンジャーチームの三番隊リーダーを任された男だった。彼の率いる部隊は特に勇猛で、聞けば彼のチームが突撃した為に敵の排除が容易くなったのだそうだ。
であれば、有効な装備を回してやればもっと戦果を挙げられるはず。これはメアリなりの期待だった。
「よっベス! 色男!」
「バカ、コマンダーの前だぞ」
茶化す隊員とそれを諌める隊員。漫才のように見えたそれが可笑しかったのだろう。メアリは大きく笑う。
「ははははっ! 私はいい、皆よくやってくれたな。 これからもどうか、市民のため励んで欲しい」
激励の言葉に、全員が敬礼を返した。
「「はっ、コマンダー!!」」
それを見て満足そうに頷くと、メアリはクイーンズ区ベース201基地司令官との対談を前に気を引き締めるのだった。
主要人物の呟き
コマンダー
今日も現場と資金繰りとの板挟みで胃が痛い。兵員の運用に問題が生じたせいで仕事が増えた。市民の犠牲を増やす訳には……。
ジン
出番が無かった。ユウキに負けてられないな。
ユウキ
あの恐ろしい酸を浴びずに済んだのはよかった……。
ジェイムス
先行量産モデルを受け取った以上、仕事をもっとこなすぞ! ショットガンの火力を見せてやる!