【星を守る逸般人】   作:白ノ宮

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無理だわぁ、続かんわぁ。
物を書くって難しいですね。


続かなかった連載予定の話 01〜04

01

 

「なんとも...愚かな話ですね」

 

夜中だというのに照明の付いていない暗い部屋。ノートパソコンの光だけが、光源で部屋の主を照らしていた。

 

彼女の視線の先には、『B小町のアイ、殺害。ファンによる犯行か?』という見出しに占領されたネットの検索結果一覧。

 

彼女が愚かと指したのは、罪を犯したファンにだけ向けた言葉ではなく、殺害されたアイドルにも向けていた。

 

眠たげな顔が特徴的な少女はなんの表情も感じさせない雰囲気で、マウスホイールを回して画面をスクロールする。

 

他にめぼしい記事がない事が分かるとため息を吐いて、動画サイトを開いた。

 

サイト内の検索欄に入力するのは勿論先程から見ているアイドル殺害事件についてだ。

 

『B小町 アイ』で調べるとアイがどういった人物かがわかるようなテレビ番組の切り抜きやライブ映像の切り抜きやらが投稿されている。

 

それに関する映像をいくつか見てから、少女はつまらなさそうに再びため息を吐いて、動画サイトのホーム画面までブラウザバックする。

 

(昔からアイドルが狂ったファンに殺されるような事案はあったはずなのに、それを目にしてもアイドルを目指す人間は一向に減らず。結局今回も死人が出てしまう。人気商売の逃れられない宿命とはいえ...なんだかなぁ)

 

「ふわぁ〜...。流石に今日は遅いですし、就寝してしまいましょうか」

 

あれから12年...。

 

階堂愛蘭 18歳は通信制大学に入学を果たした。

 

彼女はその独特な物事の考え方と少し冷たい性格のせいで友人に恵まれず、このまま登校し続けるのは時間の無駄なんじゃないかと高校二年の時に気付いた。そして通信制大学に進学する事を決めた。

 

一人を貫いて学校に登校するという選択肢もあったが、在宅で授業が受けられるのに加えて卒業可能であるということを知ってしまったらそちらを選んでしまうのが文明人の性というもの。

 

そうして彼女は効率よくカリキュラムをこなしつつ自由な時間を得る事に成功した。

 

 

「お金を稼ぐ必要は無いですけど、バイト経験はあった方がいいのでは...?」

 

大学生になって数日が経過し、昼ご飯の特製オムライスを食べながら思いついた事であった。

 

彼女の家は裕福な部類に入り、一人で生活するには余りあるお金が毎月振り込まれ、それとは別に大量のお小遣いが振り込まれる身だ。

 

生まれてこのかたお金の心配は無いものの、彼女は就職をするつもりでいるのでそのヒントになると思われる就労経験を積もうと考えついたのだ。

 

偶然点けていたテレビに映っていたのはドラマの再放送。それを見た彼女はすぐにスマホを取り出してブラウザを開いた。

 

愛蘭が検索したのは芸能関連の臨時スタッフの募集だ。

 

バイト募集サイトには偶然なのかドラマ撮影の雑用スタッフを募集しており、彼女はあらかじめ登録しておいていた情報を入れて応募した。

 

力仕事になったとしても彼女は華奢な体格に対して身体能力は鍛えてもいないのにそこらの人間よりも何故か高いのでなんの問題も無いだろう。

 

この数時間後、彼女の初バイトが決まった。

 

02

 

本日愛蘭が働くのはwebドラマ撮影に関する雑用スタッフだ。

彼女はキャップにトレーナーにカーゴパンツ、ランニングシューズという個人的に動きやすい組み合わせで現場に来ていた。

 

「あぁ、君が階堂くんだね。私が今日君に指示を出す大倉だ。なんか頼りない体つきしてるけど、給料分はしっかり働いてもらうからよろしくね」

 

「はい。改めまして、私が階堂愛蘭です。本日は精一杯働かせていただきます。よろしくお願いします」

 

大倉は愛蘭の全身を舐め回すように見てから、揶揄いを混ぜ込んだ挨拶をする。

愛蘭はその視線を無視して、綺麗な一礼をした。

 

「それじゃ、早速だけどあのバッグをあそこに運んでね。中身は落としても大丈夫なものだけどなるべく傷つけないでくれると嬉しいかな。よろしく」

 

「はい、わかりました。それでは行ってまいります」

 

大倉は力試しという目的で7kgの重さのバッグを運ぶように指示を出した。あれで運べないようでは、すぐさま突き返すつもりであったからだ。ちなみに正式に契約を行なっていないのでなんの問題もない。

 

どうなるものかと大倉は口角を微妙に引き上げて愛蘭の働きを見守る事にした。

 

しかし、全く根を上げずにギリギリ引きずらないぐらいの高さで運べれば合格を与えるつもりだった大倉は愛蘭の動きを見て、いい意味で期待を裏切られることとなった。

 

愛蘭は両手ではなく片手で空のバッグを持ち上げるかのような軽やかさで運んだのだった。特に表情を変えてる様子や踏ん張りを感じないので、彼女にとってこの程度はなんて事ないのだろう。

 

「...なかなか使えそうじゃないか」

 

大倉は愛蘭への評価を引き上げた。

見た目はあまり頼りないが、実力の方は確かである為、使ってやるべきだと考えを改めた。

 

その時、現場から一人の男が歩いてきた。

 

「あれ、大倉くん。あの娘って臨時の?」

 

声をかけて来たのは、このwebドラマを取りしきるプロデューサーだった。

 

「鏑木プロデューサー、お疲れ様です。えぇ、そうです。彼女...階堂愛蘭って言うんですが7kgのバッグを軽々と片手で持ち上げたんですよ。間違いなく使えます」

 

「ふーん...?」

 

大倉の評価を聞いた鏑木は、危なげなくバッグを運ぶ愛蘭を見る。

 

キャップや野暮ったい格好で隠れているが、それでも芸能人によくある溢れるオーラというものがにじみ出ている。

 

彼女が素人であるならばここで画面の中に加えれば何か面白い化学反応が観れるかもしれないと考えた鏑木は大倉にある提案をする。

 

「大倉くん」

 

「はいっ、なんでございましょうか?」

 

「折角キミが高い評価をしてまで気に入ってくれた人材なんだけどさ...」

 

「えっと...何か不手際でもございましたか?」

 

鏑木の思わせぶりな言い方に大倉が動揺する。

 

「いや?そんなことはないんだけどさ、ちょっとキャストの方で使いたいなって思ったのさ」

 

「えっ、でも彼女素人ですし、役の方はどうされるおつもりで!?」

 

大倉や他のスタッフからしても今日は最終話の撮影であり、予定もカツカツなのでこれ以上キャストを追加するとなると、撮影自体が破綻してしまう恐れがあるのだ。

 

ただでさえ評価が散々なドラマだというのに完結もできないとなれば、流石に撮影スタッフとしてのプライドが許せない部分があるのだ。これだけは絶対に捨てられないものである。

 

「そのぐらいは僕の方でどうにでもできるさ。これは間違いなくお金の香りがするよ」

 

そう言って気味の悪い笑顔を浮かべる鏑木プロデューサーにその場のスタッフ全員はただ黙って頷く他なかった。

 

03

 

用途不明のバッグを運び終わったら、大倉さんから待機しているように言われました。まだ運ぶべきものはたくさんあると思うのですが、やはり臨時スタッフとして雇われた身は信用されていないのでしょうか?

 

仕事が回ってこない事にガッカリしている自分を俯瞰して見ると、どれだけやる気に満ちていたかがよく分かります。学校生活でも高いクオリティで課題を提出して来た身としては、やった事に対してお金というリターンが発生するお仕事というものは、その高クオリティで物事を果たそうとする意識をさらにブーストをかける形で私のやる気につながったようでした。

 

あまり表に出さないようにその場にポツンと立っていると、奥の方から大倉さんと他に男性が一人こちらに歩いて来た。

 

「階堂くん、こちらはこの現場で一番偉い方であられる鏑木プロデューサーだ」

 

「こんにちは、鏑木という者だ。良ければ君の口から名前を聞かせてくれるかな?」

 

「はい、私は階堂愛蘭と申します。それで私に一体なんの御用でしょうか?」

 

愛蘭の自己紹介を聞いて満足げに微笑んで頷いた鏑木は、そのままの表情で本題を話す。

 

「愛蘭ちゃん、君にはこれからスタッフではなくキャストとして撮影に参加してほしい」

 

鏑木の衝撃的な一言に愛蘭は先ほどのスタッフ達と同様に表情が固まる。

 

「あの...私は演技に関して素人で...」

 

「いやいや、それは関係無いんだ。これは雇用主からの依頼だ。これをこなしてくれれば結果はどうであれ、スタッフの時の給料に色を付けた金額を渡そうじゃないか。大丈夫、セリフも一言二言しかないから安心しなさい」

 

愛蘭は鏑木の提案を遠回しに断ろうとするが、鏑木はそれに被せて断ることができないように多少無理矢理にでも請け負うように言い切る。

 

愛蘭は若干の不信感を感じたものの、現時点で怪しいものは感じないので、仕方なく提案に乗る事にした。

 

「...わかりました。その仕事、お引き受けします」

 

「うん、いい返事を聞けて嬉しいよ。それじゃ、大倉くんから台本と衣装を受け取ったら2番の番号が振られたテントに入ってほしい。そこのメイクスタッフに話は通してあるからね。よろしく」

 

自分の思い通りに事が運んで機嫌が良くなったのか、相変わらず薄気味悪い雰囲気だがそれが若干柔らかくなったのが感じ取れた愛蘭。

 

余計な一言が飛び出る前に彼女はテントに向かう事にした。

 

「...はい。では、また後ほど」

 

「楽しみにしてるよ」

 

なんでしょうか...、この敗北感。

別に鏑木プロデューサーと勝負していたわけでは無いはずなのに。

とにかく、やると決めたからにはしっかり熟さないと!

 

04

 

愛蘭がテントに入ると、鏑木の言っていたメイクスタッフと思わしき若い女性が待ち構えていた。

 

「あら!貴女が愛蘭ちゃんね〜。ささっ!そこのカーテンがかかってる場所で着替えちゃって!」

 

「あ、はい」

 

言われるがまま私はフィッティングルームに入って渡されたバッグを開けて衣装を取り出す。

 

「これは、どこかの高校の制服でしょうか...?」

 

おそらく偽物のはずだが、私が以前来ていたのと同じようなブレザータイプだったので着るのにたいした時間は掛からなかった。

 

軽くクルッと回って見ると懐かしさがこみ上げてくる。こういった制服は着なくなってまだ1ヶ月程度だが、もう着ないと思っていたものを再び着るというのは感じるものが違うのだ。

 

そして同封されていた台本を取り出すと表紙に『今日はあまくちで 最終話』と書かれていた。

 

「今日あま...そうか、あの漫画の実写ドラマでしたか。...?しかし、ドラマオリジナルの登場人物が多くありませんか?これじゃもはや原作再構成の二次創作みたいです」

 

私は台本を流し読みをして首を何度か傾げた。

これはただの実写ドラマ化ではなく、別の目的があると、芸能界素人の私でもわかりました。

 

今日が最終話の収録という事なので後で台本を読む際に過去回を二、三分見て自分の予想があっているか確認しよう。

 

「おーい、そろそろ着替え終わったカナー?」

 

向こうの方からメイクスタッフさんの声が聞こえてくる。これは少々時間をかけすぎたかもしれないと反省してから返答する。

 

「はい、ちょうど着替え終わりました!」

 

服をバッグに入れてフィッティングルームから出る。メイクスタッフさんの所まで行くと、そこにおいてある椅子に座るように手で指し示されたので素直に従った。

 

「それじゃ、メイク始めちゃうねー。と、言っても君って顔が綺麗だから照射用ライトからカバーするためのものを塗るだけでも良さそうだね。おねーさん、君のような肌質になりたかったかも」

 

「そんなに綺麗なんですか?」

 

色々な角度から見られて少し恥ずかしいが、これも作業を行うのに必要な観察作業の筈だ。正直言ってよくわからないが、身じろぎせずに正面の鏡だけ見ていよう。

 

ただ、メイクスタッフさんの一言だけ意味がよくわからなかったため聞き返してみた。

 

「本人が理解できてないのかー...。えっと、手入れとかは何してる?」

 

急にされた質問の意図がわからないが、これも必要な質問なのだろう。

 

「普通に洗顔です」

 

「ん...?それだけ?乳液とかパックは?」

 

「必要ないですね、以前それやってみたら逆に肌が荒れたので」

 

そう、本来乳液やパックなどは肌が荒れない様なもので作られている筈なのだが、過去に試してみた私には何故かどれも合わなかった。

 

病院で検査も行なったがアレルギーでもないらしい。

 

この事を電話で海外にいる母に伝えたのだが、「やらなくても綺麗なら別にする必要は無いってだけじゃ無い?大丈夫、愛蘭は私達の可愛い子供なのだから変に心配はする事ないわ」と言われて、後半はともかく前半については納得した。

 

そんなことがあったので今は洗顔だけだ。メイクスタッフさんの言う通りで私の肌が綺麗なものであるならば両親から授かった遺伝子がとても優秀だったという事だろう。

 

「愛蘭ちゃんって特殊な肌質してるんだね。あ、そうそう。そういえば愛蘭ちゃん、本当に今日が初めての撮影なの?」

 

「えぇ、今日は臨時スタッフとしてのバイトでここに来ましたから」

 

「それでその落ち着き様とは...。肝が座ってるんだね。微塵も緊張してる感じがしないよ?」

 

何かドン引きされている様な気もするが、それについては置いとこう。あと私は表情筋が死んでいるわけでは無いが、動揺の類いのものだけは昔からだんだん出なくなってきていた。

 

これで困ることは何もなかったが、自分としては機械的に思えて少し嫌だった。

 

「いえいえ、流石に緊張はしてますよ。ただそれが表に出にくいだけです」

 

「ホントにー?」

 

「本当です。一般人がwebドラマとはいえ、カメラに映るんですから、内心震えが止まりませんよ」

 

嘘は言っていない。

緊張で吐き気があるし、本音を言って良いのならば今すぐ自室のベッドに飛び込んでお気に入りのビッグぬいぐるみを抱いて寝てしまいたい程だ。

 

そんな私の言葉を聞いてメイクスタッフさんはあまり納得はしていない様子で作業を継続している。

 

「ふ〜ん?...よしっ!これで終わり。髪型も軽く整えとくねー♪今の内に愛蘭ちゃんは台本の確認しておいて?」

 

「わかりました。あの、過去の配信の方を軽く確認してもいいですか?雰囲気を知りたいので」

 

スマホで動画を再生してスタッフさんの集中力が乱れるかもしれないので一応確認を入れておく。

 

「いいよいいよー!私の集中力って凄いからイヤホンとかも無しで良いからねー♪」

 

「ありがとうございます」

 

確かにメイクスタッフさんの集中力は凄まじい。先程から普通に会話しているのに作業をしている手は一切止まらず、スムーズに行えている。高い練度と集中力を持っているという揺るぎない証拠である。

 

メイクスタッフさんに尊敬の意を抱きながら台本の付箋が貼ってある場所を開く。鏑木プロデューサーの言っていた通りで本当に二つ程度のセリフだ。

 

あってもなくても良い様なものなので鏑木プロデューサーが無理矢理ねじ込んだのだろう。

 

単純なモノなのでこれならばすぐ覚えられる。

 

同時にスマホで過去回を再生する。

 

そして主演となる人の演技を見た瞬間、私は首を傾げそうになったが、今はメイクスタッフさんが髪を整えて下さっているのでなんとか抑え込んだ。

 

(これが俗に言う大根役者ってヤツですか...)

 

主演は演技が下手すぎてセリフが片言になってしまっている。まだふざけて撮った学生の演劇動画の方がまともに見えるほどだ。

 

ドラマの評価が5点評価中、1.1なのも頷ける。

 

別タブで主演を調べるとモデルの様でドラマの経験なし...つまり演技はからっきしという事で他の共演者もビジュアルだけの残念な人たちばかりだった。

 

ただ、一人だけ目を惹く名前があった。

 

『有馬かな』

 

結構前に【10秒で泣ける天才子役』と一時期話題になっていた役者だ。消えたと思っていたがまだこの業界で活動していたことに驚きだが、この子の演技のレベルだけはわざと周りに合わせている。そんな感じがするので、この娘の本気の演技は我々見る側の視線を集めることが優に可能だろう。

 

この人の素晴らしい演技を生で見られれば、それだけでこの場に来た価値は大いにあるのだが、果たしてそれは叶うのだろうか?

 

─────

 

台本や過去回の確認が終わり、撮影現場に移動している最中に別のスタッフさんからいくつか聞いた話をまとめておく。

 

・今回の現場は演技というよりは容姿の良さを主線として売り出すためのもので、スタッフとしても役者に演技の期待はしていない。台本どおりやってくれればそれで良い。

 

・本来のストーカー役が契約破棄してしまい、急遽代役が用意された。代役の演技の技術がどれくらいのものか不明。

 

・今回演じる役は本来いない役の一つで、ストーカーに殺害をやめる様に止めるヒロインのクラスメイトという設定で、泣いたりとかはしなくて良いので言葉で止めることだけを意識してほしい。

 

色々と思うことはあるが、所詮私は芸能界となんら関わりがなくて、今日限りの素人である。こういうのは思い出として大人しく脳の記憶領域に仕舞っておこう。




階堂愛蘭っていうオリ主だけど、原作メインキャラに会えてないし。うーん...って感じ(語彙力低下)
結局芸能界に突っ込んだところでどうするんだってね(笑)
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