フジマル・アフター・ライフ   作:のーん

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健康診断を終えた藤丸は夕食を摂ろうと食堂へ向かうが、その道中でお誘いを受ける。
そんな感じの食事回です。


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第13話 藤丸、薬膳を堪能する

メディカルチェックついでに魔眼の注意点、というか思わぬ併せ技について說明を受けた藤丸は夕食を摂ろうと食堂へ。

 

「あれ、ユゥユゥからだ」

 

と向かう途中で楊貴妃から1通のメールが送られてきた。

 

”立香様、お疲れでしょうから不肖の身ながら夕餉をご用意させていただきました。是非ともご賞味ください”

 

この文面から察するに食堂を出てからマイルームで夕食の用意をしていたらしい。

恋人が自分を想って作ってくれた以上、食べに行かねばなるまい。

 

「よし、行こう」

 

行先を食堂から変更、その道中でマシュに夕食はマイルームで楊貴妃と食べることをメールで伝えておく。

 

「夕食を食べてないとか、体調崩したとか思われたくないし」

 

誰ともなくそう呟いくとすぐに返信が。

 

”了解しました、先輩。あとで私からのお誘いも受けてください”

 

少し対抗意識を乗せた文面に笑みが浮かび、楽しみに待っているねと返信する。

そこから程なくしてマイルームに着くと少し緊張しながらインターホンを鳴らす。

メールの文面から彼女は恐らく第3再臨、妖艶で美しい彼女に迎えられると思うとどうしても緊張してしまう。

 

「お待ちしておりました立香様。ささ、どうぞコチラへ」

「うん」

 

部屋から出てきた楊貴妃の姿は藤丸の予想通りに第3再臨。

少し緊張しながら、恭しく差し出された手を取って招かれた部屋はいつもの無機質な内装から一転、雲上に浮かぶ中華風離宮といった趣に改装されていた。

 

「凄い、ユゥユゥが1人でこれを?」

「仮にも蓬莱にて道術を修めた道士の端くれにて。太公望様のように部屋を拡げることは出来ませぬが、内装を変えて見せかけの風景を造る程度なら造作もない事です」

 

フフ、と片手で口元を隠しながら笑う楊貴妃はやはり綺麗で、藤丸はそれに見惚れてしまう。

 

「ユゥユゥ」

「立香様」

 

視線に気付いてコチラを向いた楊貴妃に呼び掛けると、それに返すように俺の名前を呼んでくれる。

それが嬉しくて、つい彼女と握った手を引いて腰に手を回しすと抱き寄せてしまった。

 

「ふふ、私を求めてくださるのは嬉しいですが折角の料理が冷めてしまいます。先ずはお腹を満たしてからに致しましょう」

「求めてって、そういう訳じゃなくて。ただ、ユゥユゥが俺に色々してくれたのが嬉しくて、思わず……」

 

誂われていると分かっても反論してしまった藤丸の言葉に楊貴妃が頬を赤く染めながら思う。

私の愛しい方は何時もこうやって私を困らせる。

容姿や音楽、料理に至るまで私にとっては褒められて当たり前だけど、この方はそこに至るまでの行為や気持ちに感謝や喜びを示してくれる。

賛美には慣れても感謝には不慣れで、どう応えればいいのか嬉しいのに困ってしまいます。

 

「立香様、その、ありがとうございます。うまく表せませんが、とても嬉しいです」

 

この胸にある想いを伝える言葉が見つからないのに、立香様を目の前にするとそのもどかしさすら愛おしい。

 

「では、お食事にいたしましょう」

 

 

 

ユゥユゥの用意した料理が侍女達によって運ばれ、隣に居る彼女の簡単な説明を聞きながら箸を進める。

使われている食材は枸杞や松の実、陳皮など日本であまり見かけない物もあったけど、食べ慣れた物が多い。

 

「あまり食べ慣れぬ物はかえって身体の毒になりますから。ですが調理法、添え物は吟味を重ね疲労回復・滋養増強に効果抜群の品々を揃えました」

 

なるほど、どうりで食べ進めると身体がポカポカと温まる訳だ。

 

「ありがとうユゥユゥ、お陰で元気になってきた気がする」

 

隣を向いてそう告げると貴妃としての顔ではなく、普段の幼馴染のような顔でユゥユゥがそれに応じた。

 

「うん、立香君が喜んでくれたのなら、私も嬉しいよ」

 

その笑顔がとても綺麗で可愛くて、それが自分だけに向けられていると思うと何だかドキドキしてくる。

 

「立香君?」

 

そんな様子を不思議に思ったのか、首を傾げてこちらを覗き込んでくるのが……。

 

「って、ユゥユゥ近い近い!」

「はわわ、ごめんなさい」

 

危なかった、あのまま近付かれたら抱き締めるか何かするところだった。

 

「そうだ、料理、まだ料理はあるの?」

 

誤魔化すように話題をふる。

中華のマナーでは満腹になるまでだから、残りのメニューを尋ねるのはさほど不自然じゃないはず。

 

「残りのメニューはロクジョウ入り海鮮蒸しと海老炒飯、あとはデザートだけど足りなかったかな? それとも多過ぎました?」

「ううん、むしろ丁度いいくらいだと思う。けど、ロクジョウ?」

 

ここに来て耳慣れない食材の登場、話ついでに尋ねておこう。

 

「では、侍女に運ばせますので食べながら説明致しますね」

 

そうして炎の侍女達が温度を保ちながら運んできたのは蒸籠、それをユゥユゥが開けるとニンニクの芽や蟹の身、帆立などに混ざって茶色の茸のような物が汁に浮いている。

 

「こちらは帆立、蟹、大蒜(にんにく)の芽とロクジョウの蒸物です。この茶色の物がロクジョウですよ」

 

よし、試しに1つ口に運んでみよう。

……それ自体の匂いはしないけど独特の旨味はある、食感はなんというか軟骨とキクラゲの中間みたいな感じ。

 

「いかがですか?」

「初めてだけど結構美味しいかも。けど、元はなんだろう」

 

うーん、食感と味が近いのは軟骨、キクラゲ、クラゲ系なんだけど断面はスポンジっぽい。

この断面は見覚えがある気がする。

 

「美味しかったなら何よりですが正解をお教えしましょうか?」

「1回答えさせて」

「では、シンキングタイムですね」

 

もう一切れ食べて考えてみよう。

 

「うーん」

 

ロクジョウ、ロク、そういえば鹿をロクと読むこともあったような。

 

「鹿の軟骨、かな」

 

あまり確信は無かったけどユゥユゥはその回答を少し驚いたようだった。

 

「惜しかったよ立香君。正解は鹿の若い角、漢字で書くと鹿の茸で鹿茸だね」

「鹿の角、輪切りで食べれるんだ」

 

意外な正体に驚くとともに、さすが中国の薬膳は違うと感嘆してしまう。

 

「ちなみに効能は疲労回復・滋養強壮と疲れた時にはもってこいなんですよ」

「へぇ」

 

そんな解説を受けた海戦蒸しを完食して残るは炒飯とデザート、こちらも絶品であっという間に完食してしまった。

 

「ごちそうさまでした」

「お粗末様でした」

 

食後のお茶を飲みながらゆっくりとした時間が流れていく。

こうしていると同じカルデアなのに人理焼却や漂白の時とは違った時間の過ごし方が出来て、ようやく本当の意味で平穏な時を過ごしているのだと実感する。

 

「ユゥユゥ、良ければだけどさ今夜は一緒に寝ない?」

「えっと、それはどっちの意味ででしょうか」

「普通にゆっくりとユゥユゥと話をしたくてさ」

 

身体を求めて、というはさすがに疲れ気味なのでなし。

あくまでものんびりと時間を過ごしたくて共寝を提案する。

 

「はい、ゆっくりとお話いたしましょう」

 

 

 

本当に何もなかったのか、真相は2人だけの秘密ということに……。




今回はご飯を食べて終わり!
ホントウニナニモナカッタヨ?

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