フジマル・アフター・ライフ   作:のーん

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突如発生した夏の特異点、その黒幕である茨木童子と酒呑童子に誘われるままレイシフトをしたカルデア一行。
案内役として待っていた夏霊基の望月千代女と合流し、最低限の情報と拠点となる【閻魔亭別館】を得た一行の前に現れたのは浴衣姿の酒呑童子。
そのまま藤丸の性別を一時的にだが女で固定、浴衣礼装を着せて去ってしまった。

そんな訳で序章その2です。

以下テンプレ
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第17話 藤丸、夏の恒例行事 その2

特異点初日、時間も遅いので最初のエリアには明朝から向かうことにした一行のもとに雀の仲居が1羽。

 

「失礼するでちゅ。もうすぐお食事の時間でちゅが、どちらでお食べになるちゅん?」

「じゃあ折角だから、ここで。千代女さんも一緒に食べない?」

 

今から部屋に案内してもらう手間や何処に泊まるのか分からない千代女のこともあり、立香はそんな提案をする。

 

「お館様のお誘いとあらば、謹んで」

「そうね、せっかくなら皆で食べましょうか」

 

千代女とアナスタシアに反対する者が居ないため、全員で食べることに決定。

仲居が部屋を出ていくと広げていたパンフレットやら持ち込んだ地図やらを片付け、食事のためのスペースを確保していると再び襖が開く。

 

「後輩ども、何か良い案でも出たの? どうせ出てないでしょうから、晩御飯でも食べながら一緒に考えてやるわ」

「虞よ、温泉を満喫した気恥ずかしさを隠すならばもう少し装うことを推奨する」

 

今度は虞美人&項羽夫妻、本音を解説された虞美人は違いますなど反論しているが、項羽の言うことなら図星である。

そして、立香の様子を見てふと気付く。

 

「後輩、アンタなんで女になってんのよ?」

 

女になれることを知っていても、酒呑童子とのアレコレを知らない彼女に立香が説明する

 

「カクカクシカジカというわけです、ぐっちゃんパイセン」

「ふーん、マルマルウマウマな訳ね。っていうか、ぐっちゃん呼ぶな!100年早い!」

 

逆に100年後なら良いのかなど一同思うが、一般人のリッカはそんなに長生きできるのかとマクラーレンは思う。

そして、今更突っ込みが1つ。

 

「というか後輩、バイタル大丈夫よね? ダヴィンチ!」

 

レイシフト直後の確認以降は黙っていた通信礼装を起動し、先輩らしく後輩の心配をする虞美人。

その呼び出しに青いホログラム越しで応じるのは技術顧問で万能天才美少女。

 

《やっほー、後輩が心配な先輩に呼ばれたダヴィンチちゃんだよ》

「心配じゃないわよ。で、どうなの?」

 

照れ隠しが分かりやすいな、と古参組は思うがまたも置いてきぼりのマクラーレン。

とはいえコレがカルデアかと深く気にはしていない、大木が嵐を感じても倒れぬよう、良い意味太い男だ。

 

《オールオッケー、急に性別が曖昧になった以外は酒呑童子の干渉後も平穏無事さ。それに、立香ちゃんのバイタルは近くでマシュが診てるからね、彼女が騒がないなら問題ないよ》

「立香、アンタは恋人に何握られてんのよ」

「アハハ、そこは私もマシュと経路(パス)で色々握ってるからお相子ってことで」

 

まったく、心配しただけ無駄だったと通信を切る虞美人は明らかに安堵していた。

 

(ありがとう、虞美人センパイ)

 

立香も心中で心配してくれたことに感謝しているが、調子に乗るので何も言わずにただニコニコ。

その後は運ばれて来た料理に舌鼓を打ちながら作戦会議、項羽による演算・検証も交えて必要な応援要員も決めてカルデアにレイシフトを依頼して準備は完了。

あまり遅くならないうちに温泉に行って就寝という運びとなったが問題が1つ。

 

「私、女湯入っても良いの?」

 

そう、肉体的にも魂的にも精神的にも女性格になっている立香だが元は男性、どっちのお風呂に入ったものか。

 

「そのことでちたら心配ありまちぇん。今日お宿にいるのはお前さん達だけ、ご主人も女湯を使ってくだちゃい」

「紅閻魔、ありがとう!」

 

まさに快刀乱麻を断つ、仲居雀を介して呼び出した紅閻魔の一声で立香も女湯入浴の運びとなった。

 

 

 

カポーン

石造りの露天風呂、頭上に輝く月と星を見ながら立香たちは湯に身体を沈めていた。

 

「あ〜、沁みる〜」

「ふや〜、温泉は良いですね〜」

「それには同意するわ〜」

 

立香、楊貴妃、虞美人の東アジアトリオはしっかり肩まで浸かり満喫中。

 

「ぎゅっ、っとしますね」

「うわぁユゥユゥのお肌、すべすべしっとりで気持ち良いし、その上に綺麗で羨ましいな」

「立香ちゃんのも」

 

すいっと近づき、立香に肌を密着させた楊貴妃はそのまま指で傷痕をなぞる。

 

「勇士として生き抜いた綺麗な身体だよ」

 

大小様々な傷痕を、その由来を思い出すように眺めるとやはり腹部の大きなモノが気になってつい触ってしまう。

 

「ありがとう、ユゥユゥ。けどコレは痛かったなー」

 

下総の酒呑童子にやられた調律、今日みたいに痛くなくもできるのに、わざと痛くされたヤツ。

 

「そんなもの消してしまえば良いのに、分かんないわね」

 

呆れたように虞美人が言うが、立香に傷痕を綺麗に消すつもりは毛頭ない。

どれも自分が無茶をした結果の物で、消してしまうとその経験や教訓も無くなりそうだから。

その気持ちを込めて首を横に振るとそれ以上は何も言わず、代わりに酌をするよう立香に命じていた。

 

 

 

一方のマシュ、アナスタシアの色白コンビ。

コチラは白い肌に薄い朱がさして、半身浴状態を楽しんでいた。

 

「あの3人、よくあんな浸かれるわね」

 

アナスタシアとて風呂嫌いではないが、暑がりの自分はあんなに長く全身を浸けておくなど無理だ。

隣のマシュも同意見のようで、頷きながらこんなことを言う。

 

「以前、先輩とユゥユゥさんと3人でお風呂に入ったのですが、その時も私が一番最初に出ていましたね」

 

補足だが別にいやらしい事はなく、水着着用のスパ施設での事である。

 

「やっぱり長湯の魔術でも東アジアにはあるのかしら。ところでマシュ、日本での暮らしはどうなのかしら?」

「先輩やカルデアの皆さんのお陰で楽しく過ごしていますよ。代わり映えの無い日常というのでしょうか、それが当たり前に過ぎて行くのが少しだけ嬉しいんです」

 

笑みを浮かべてそう言うマシュだが、アナスタシアの視線は違うことも教えてと訴えており、それが先輩とのことだと理解した。

 

「先輩とは毎日一緒に高校へ通ったり、ユゥユゥさんと3人や2人きりで、デ、デートなどをしました。先輩が一緒にいるとそれだけで世界が輝いて見えて、とても、とても良い気分です」

「そう、そうなのね。マシュ、今の貴方はとても幸せそうよ、その幸せを離さないでね」

「……はい!」

 

そんなアナスタシアにマシュもカドックとのことを尋ねると。

 

「そうね、前の私が信頼して、身を挺して生き残らせた魔術師。私にとってはからかい甲斐のある姉の想い人というところね。私も好きだけど、それは親愛だもの」

 

そう答え、コクコクと頷くマシュの眼の前で不意に雪玉を1つ放り投げたアナスタシア。

 

「へぶしっ! アナスタシア!!」

「ふふ、面白いでしょう? ごめんなさいねカドック、面白そうだったからつい」

「つい、で他人にぶつかったらどうする!?」

「あら、私はそんなヘマはしません」

 

ペロリと舌を出し、仕切りの壁を挟んでこんな言い争いが出来るならコレも1つの良い関係なのかとマシュは納得していた。

 

 

 

「まったく。ボーグ、少し見なかったことにしてくれ」

 

そう言うや、湯船に頭のてっぺんまで沈めて残った雪を溶かし尽くす。

直撃した雪球が易易と溶けるとは思えなかったのでそうしたが、カドックの考え通りにその欠片は湯の上をかなりの間残っていた。

 

「何故お湯を被るのを見なかったことにする必要が?」

「日本の風呂で髪を湯に浸すのはマナー違反なんだよ。藤丸がコッチにいれば他も説明出来たんだけど、今は向こうだからな」

 

ヤレヤレと言いたげに風呂に浸かるカドックも寛いではいる。

が、一緒にいるのはヘンリー5世とマクラーレンで深く知らない相手の為、自然と会話はなくなる。

 

「カドック・ゼムルプス、1つ尋ねても良いか」

 

そうしてしばらく経った頃、そろそろ上がるかと思っていたカドックにマクラーレンが問いかける。

 

「構わないが、風呂を出てからでもいいか?」

 

 

 

そうして脱衣所で火照った身体を冷ましているとビン牛乳を3本持ったマクラーレンが来た。

 

「以前リッカに聞いたことがある。日本の風呂上がりには冷たい牛乳だと」

「アイツ……」

 

時計塔の魔術師に何を教えているんだと思いつつ、冷たい牛乳の誘惑には抗えず受け取る。

 

「で、僕に何を訪ねたいんだ?」

「サーヴァントとどう向き合っているかを尋ねたい。リッカは1人の個人同士であり必要ならば敬意や信仰心を持って向き合うと言っていた。カドック・ゼムルプス、君はどう向き合っている?」

 

どう向き合っているか、意外な質問をしてくるものだと思った。

マクラーレンとヘンリー5世の関係は外から見ればビジネスパートナー、必要最低限の配慮はあるが逆に必要以上は触れない。

対して自分はどうか、自問しながら1つ先に告げる。

 

「フルネームじゃなくて名前でいい」

「そうか、ならば頼むカドック」

 

デイビットに似た無愛想な人間かと思ったが、大樹のように順応し揺るがない男とカドックの評価を改めた。

 

「僕、というよりも僕とアナスタシアの場合だが、未練の精算だよ。僕が異聞帯で契約したアナスタシアへの未練、生前に果たせなかった彼女の未練、その精算が僕とアナスタシアの向き合い方、というよりも関係の根底だ。あまり参考にはならないだろ」

 

獣国の皇女とそのマスターとしてロシア異聞帯で最期に遺した未練、いかなる奇縁によってか再会した以上は今度こそなんて無い、そんな関係を築きたいというのがカドックの偽らざる本音だ。

 

「未練の精算、サーヴァントがそれを目的にして召喚に応じる事があると聞いたことがあるが互いにか。なるほど、参考になった、感謝する」

 

話を終えた2人が廊下に出ると女性陣はまだ。

マクラーレンとヘンリー5世を見送ったカドックは1人、先程のイタズラにどんな説教をするか考えながら待つ。




ご飯も食べて、温泉入って、いよいよ次回から特異点攻略

という訳で作中で書かなかった裏設定とか補足とか

・藤丸立香のバイタル
マシュとの間にある経路に情報をいろいろ乗せるようにしています。
心拍・血圧・体温・呼吸数・脳波とかがモニタリング。
一応カルデアでも見れるけどあんまり気にされてない。

・傷跡あれこれ
ほとんどの傷跡は治療時に消しているが、消し切れなかった・敢えて残したなどのは普段は令呪含めて魔術で表面見えなくしている。
マナを吸って動作する術式なので低燃費だが、強く擦るとその部分は一時消失してしまうので注意が必要。
特異点とかだと解除しているので、意外とあちこちに傷跡が見える。

・男湯組
項羽は一回入ったので不要と辞退

他に分からんことがあったら感想にてどうぞ―


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