紅閻魔の説教という不本意な目覚ましを喰らって目覚めた
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朝イチから不本意ながらも廊下で紅閻魔の説教を喰らった立香と虞美人は着替、というよりもマスターらしい格好を整える為に近くの脱衣所を借りていた。
「後輩が起きてないから閻魔ちゃんに怒られたじゃないの」
「先輩がお酒をあんなに呑ませたからでしょー」
どちらも酔って寝落ちしたので不毛な争いだが、それを分かってもなにか言わねば済まないのが虞美人の性格。
「次、付き合ってあげたら起きて部屋まで運びなさいよ」
「アッ、ハイ」
それでも夜更しに付き合わせたのは事実なので、酒とは別件の忠告は大人しく受け取る立香だった。
それにしても、と魔力で編んだ衣服を解いて中華風のカルデア戦闘服を着ながら虞美人が毒づく。
「いちいち服を着替えるなんて面倒ね、霊衣のままじゃ駄目なの?」
「今の先輩は”芥ヒナコ”なんですから自重してください。目の前でラメントって復活とか、マクラーレンさんが気絶しちゃいますよ」
眼の前で爆散して血の海になったはずの人間がシレッと復活したら、普通はトラウマ一直線である。
「はぁ、本当に人間て面倒ね」
「先輩が自由過ぎるだけでは?」
「うっさい、アンタもそのうち分かるわよ」
グダグダそんなことを喋りながら着替え終わり、朝食の待つ宴会場に着いた頃には他の全員もすっかり揃っていた。
「おっはよー」
「……おはよう」
「おはようございます、先輩、芥さん。昨晩はお2人ともご一緒に?」
目が覚めれば部屋に居なかった人物が別の誰かと一緒にいる、そんな状況から自然と湧く疑問を口にしながらマシュは立香に冷茶を渡す。
「そうだよ。眠れなくて夜空を見てたらパイセンがお酒を持って通りがかって、月見酒になっちゃった」
それを飲んで一息、お櫃からご飯をよそったら周りより少し遅くなったけど朝食にしよう。
今日の朝食は焼き鯖に小松菜のお浸し、冷奴と漬物色々、お味噌汁なにかなー?
「はいマスター、お味噌汁」
そう思っていたら横から湯気を立てるお碗が、具はオクラとナスかな?
「ありがとう、弐さん」
「ん」
無愛想そうに見えて気が利く徴弐さんにお礼を言って。
「いただきます」
遅くなった分、食べることに集中しないと。
そうして黙々と食べること暫し、綺麗に平らげた立香は空の食器を前に一言。
「ごちそうさまでした」
「では立香さん、食休みされたら再挑戦ですね」
楊貴妃の言う通り、今日こそ巴御前の離水遊園を突破すると、お茶を啜りながら藤丸立香は改めて決意をした。
ということで望月千代女のガイドにより、先日のように戦闘することなく離水遊園まで辿り着いたカルデア組は早速巴御前に挑もうとしたのだが。
「どうやってやろうか?」
「一応皆様揃っていますので代表1名で構いませんが、どういたしますか?」
今更だがマスターは4人、全員揃って来るようにと言われたが実際に挑むのは1人となると、誰がその役を担うかだが……。
「カドック、任せても良い?」
「僕がか? まぁ、負けても恨むなよ」
単体宝具持ちのアーチャー、しかも水着霊基なのでフィールド適正も有る。
そんなアナスタシアのマスター、カドックを代表に立てるのは理にかなっている。
「パイセンは私と一緒に皆へ魔力回す後方支援で」
「項羽様以外に魔力を送るのは気がすすまないけど、仕方無いわね」
回すほどの魔力があるのか? という疑問はあるが、無いよりはマシなはずと思ったマクラーレンはヘンリー5世共々見物に徹しようかと思っていると、巴御前からあることを頼まれる。
「申し訳ありませんが、まくらーれん様は小鬼たちの相手をお願いします。彼らも鬼、戦となればそれに惹かれて興奮しますので、それが行き過ぎないようにしてください」
「分かった、殺さない程度に努力しよう」
こうして分担が決まるとマスター組も落水対策として水着礼装に着替え、特設フィールドと呼ぶべき水上橋の上に移動する。
「巴殿と純粋な試合なんて、滾ってくるわね!」
「リツカに頼まれましたので、この一時は力を貸しましょう」
そこでカドックが編成したのは前衛に武蔵とアナスタシア、更に追加で立香に一時召喚してもらったアルトリア・アヴァロンという布陣。
武蔵が試合ということで第1再臨の競泳水着+スポンジ竹刀姿、同じく巴御前も第1再臨の競泳水着にレーザーブレードなので、2人が対峙するのはスポーツ感が強い。
そしてアルトリア・アヴァロンの豪奢さが浮く。
一応後衛には徴姉妹、北斎、マシュが控えているが、コチラの出番はあるか微妙なところか。
「そういえば巴さん、VR要素って頭のそれ以外に何かあるの?」
開始前、巻き込まれてはかなわないので安全確認も兼ねて立香がそう尋ねると千代女と巴が同じ向きを指差す。
全員揃ってそちらを見れば同じような橋の上でVRヘッドをつけた小鬼が2体、手に持ったコントローラーらしきモノを振るとヒットしたと思しきタイミングで水流が飛んでくる。
「あのように、ぶいあーるでの当たりが水流として再現される次第です」
「それで俺たちも水着を着せられたのか」
小鬼の当たりでも結構な勢いの水流、サーヴァントのそれなら余波でも辺り一面を水浸しにするなど余裕かとマクラーレンも納得する。
「では、始めると致しましょう!」
離水遊園の突破試練、いざ尋常に……。
「「勝負!!」」
そう言って武蔵と巴が切り結び始め、いきなり勝手をされたカドックは頭を抱えながらアナスタシアとアルトリアに指示を出す。
「アナスタシアは第1、第2スキルを使ったら武蔵の援護をしてやれ。アルトリア・アヴァロン、第1スキルを使ったらと第2、第3をアナスタシアに頼む。武蔵! スキル全部使って巴御前を抑えろ!」
そうは命じたものの巴御前はただでさえ強力なサーヴァント。
更にこのエリアの主というのも伊達ではなく、水面も足場にして自由自在に動き回る彼女を武蔵だけで抑えきれずに後方の自分たちにも四方八方から攻撃と付随した水流が飛んでくる。
「ぷはっ! 水着でなければ大変よ」
「こうも濡れると姉上や王の私が羨ましくなりますね」
フィールドの不利は否めないかと自分もびしょ濡れのカドックが悩むがアナスタシアとアルトリアは余裕、特にアルトリアは立香が魔力供給に専念しているのもあって普段よりも調子が良いくらいだ。
「アルトリア・アヴァロン、スキルは使えそうか?」
「そうですね、【アヴァロンの妖精】なら再使用出来るかと」
それを聞いたカドックはアナスタシアの魔力を確認して次の指示を。
「ならアナスタシアにかけてくれ。アナスタシアは第3スキル、使えるようになったら宝具も頼む」
アナスタシアの第3スキル【加速・精霊眼球】、必中付与と弱点暴露を持つヴィイの魔眼なら動き回る巴御前に当てられるはず、そう踏んだカドックはアナスタシアにスキルと宝具の開放を命じる。
「ならカドック、防寒の準備はいいかしら?」
「……お手柔らかに頼む」
フフッ、と悪戯っぽく笑ったアナスタシアは命じられたまま、ヴィイの魔眼で捕捉した巴御前に宝具の狙いを定めて開放する。
「夏は転じて冬となり、陽光は転じて雪となる。寒々しさこそ我が宿命、花のように凍りなさい。【
そんな誰へ向けてか分からない忠告をしながらヴィイの魔眼で季節を一時冬に反転、その中心にいる巴御前にはその反発力を丸々転嫁した膨大な魔力が極低温でもって襲いかかる。
「くっうう!」
しかもこの場所の特性故か水流も全方位から巴御前に注がれて、自前の炎熱では相殺しきれぬ氷塊が彼女を包み凍結させる。
「武蔵! どうせお前も使えるんだから宝具!」
「私だけお前呼び!? って言いながらも開放する武蔵ちゃんです!!」
珍しくお前呼びなカドックの言葉にノリノリで応えるあたりはバーサーカー、そんな彼女も対剣士特化ともいえる宝具を開放して止めを刺しに行く。
「冷やし剣豪、はじめましたー!!」
何処からともなく出て来た水上バイクにまたがる競泳水着、そんなふざけた見た目だが氷塊同然となった巴御前を武蔵が水柱で包み込むと更に水が噴き上がり常より派手な感じに。
「魔力が搾られるー」
「後輩、もっとマナ吸いなさい」
「こーれーでーもーやってますー」
後方から聞こえる会話がそれなら大丈夫だろう。
バーサーカーの宝具を使って立香が大丈夫かと思っていたカドックはそうして心配をヤメた。
「なんかカドックに切り捨てられた!?」
「そんだけ元気だからでしょうが」
呆れた虞美人からツッコミを受けながら立香はマナを吸って魔力供給、吸ったそばから出ていくが武蔵の燃費劣悪宝具にどうにか追い付いている。
「武蔵ちゃん、それで決めて!」
結構本気な立香の命を受けて、水着剣豪は跳ぶ。
「これぞ水懸の陣! 伊舎那水天象!」
対剣士対剣豪大結界【
セイバークラス限定で強力な宝具封印をするその効果、残念ながら今回は出番無しであった。
「げーむ、おーばー、にて……」
武蔵の宝具で氷塊から解放された巴御前、撃破された彼女はプカリと水面に浮かびながらそう言うので精一杯だった。
というわけで第1のエリア、離水遊園をクリアしたカルデア一行。
無事に次のエリアに行く権利を得たとはいえ慌てる旅路でも無し、巴御前を回復させると彼女の勧めもあってそのまま満喫することとなった。
「きゃっ、やりましたね!」
「隙を見せるからだよー」
「そう言う立香さんも!」
マシュ・立香・楊貴妃のカップルたちはそれらしく水を掛け合い戯れる。
「可愛い女の子のじゃれあい、眼福! 夏最高!」
「絵になるのは確かだけど、武蔵さんは変わらねぇなー」
水着剣豪師弟はそれを見ながら潤って、徴姉妹姉妹は苦笑しながらそれを見つめる。
「せっかくなので水着で遊びましょう」
「アルトリア、記念写真撮りましょうよ」
「巴も! 巴もお願いします!」
先程まで戦って居たはずのアナスタシアとアルトリア、巴御前は夏の思い出を1枚撮ってそのまま巴御前の案内で施設巡り。
「項羽様、暑くはありませんか?」
「問題ない。虞よ、そなたも入るがいい」
「はい」
項羽と虞美人夫妻は同じパラソルの下でデート中。
「はぁ、どうにかなったか」
「大変だったようだな」
「此方は雑兵ばかりでつまらなかったがな」
カドックが浮き輪で流されながら呟くと、そんな言葉を返したマクラーレンとヘンリー5世はそのままプールサイドで読書。
短い間だが確かな水遊びを全員は楽しんでいた。
流石にマスター3人が魔力供給万全とか言うのは巴御前に不利要素が多すぎる。
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