一方の立香たちは小休憩中、そこに向かった彼は何を知るのか。
以下テンプレ
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特異点修復の為とはいえ、なぜ自分は採掘なんぞしているのかとマクラーレン・ボーグは思っていた。
反英雄とはいえカルデア所属のサーヴァントが作った特異点、令呪で強制解決するのが難しくてもエリアを通させるくらいは出来るだろうに。
「お前、そこに化石があんぞ」
「これか?」
不満を抱えつつメアリー・アニング、化石婦人の異名を持つ近代の英霊に言われて丸い花弁のような模様の入った石を拾い上げる。
「そうそれ、細かいトコは調べないと分かんないけどウニの化石だよ。ココらへんはサメも出て新生代の地層っぽいからウチはジュラ紀のとこまで降りてくけど、アンタはどうするの?」
「そうだな、要領も分かったことだしリッカのところへ行くとしよう。アイツに尋ねたいこともあることだし」
「じゃあ、マスターに面白い化石が出たら伝えてくれって伝言頼むわ」
それだけ言うとマクラーレンに断る暇さえ与えず、アニングはいくつか下の段に降りて採掘を始めてしまった。
「アーチャー」
「なに用か、マスター?」
石掘りなど王の仕事ではない、と傍観していたヘンリー5世が呼び掛けに応じるとマクラーレンは立香達を探すように命じて採掘の道具を片付ける。
休憩中でバニヤンも小さくなっていたため見つけるのに少しばかり時間がかかってしまったが、今の状況下で取れる最善手があるのではと問い質すためにマクラーレンは立香のもとへ赴いた。
果たしてサーヴァントたちの行動に最後の責任を負うべき人物、カルデアのマスター藤丸立香はマクラーレンの考えなど眼中に無いよう、地面に掘った穴に天幕を掛けて休憩していた。
「何をしている、リッカ?」
「休憩だけどマクラーレンさんも入ります? 掘った地面って湿ってるから、こうやって天幕張ると快適なんですよ」
よく見てみれば天幕の中にはテーブルやその上に乗った飲み物・果物などがあって、ただの日除けレベルの場所ではないことが分かる。
「……2人で話したいんだ、いいか?」
「聞き耳をたててもいい、っていう条件付きでなら皆は離れてくれると思いますけど、急にどうしました?」
そこはまだ時計塔のマスターとして信頼しきれていない部分、というよりも当然の警戒心だろう。
マクラーレンも最初から2人きりで話せるとは思っていなかったので、その程度なら構わないと天幕の中で形だけの2人きりにさせてもらう。
そうして麦茶と果物を勧められ、それに一口だけ手を付けると単刀直入に話を切り出す。
「この特異点の閉鎖、それが出来なくてもこのエリアを通る許可を令呪で出せ」
「うん、そのうち言われるとは思っていたけど両方無理です」
即答であった。
そもそも特異点を作れるようなサーヴァントとなればカルデアの中でもほんの一握りの高ランク神性持ちか神霊、そうでなくともトップと呼ばれるような者たちでそんなサーヴァントが聖杯を持てば令呪で縛るなぞ不可能なのはマクラーレンにも分かっていた。
だから2つ目、それ以外のサーヴァントへ命令を出すよう立香に言ったのだが、それも無理とはどういうことか理由を問いただす。
「理由は2つかな、1つは紅葉さんがAランクの【狂化】持ちっていうこと。今は落ち着いてるけどエリアの主としての義務と令呪の命令で板挟みになったらどうなるか分からないし、令呪でサーヴァントの意志を歪めてっていうのは好きじゃないから」
最初の1つ目は理屈半分、私情半分によるものだが確かに納得できる理由だった。
付き合いの浅くサーヴァントの特性を理解していない自分ではそういう考えには至らなかっただろう。
「もう1つはそれでクリアしても酒呑童子は絶対に認めないから。忘れちゃいけないけど酒呑は鬼、ちょっと機嫌を損ねたらガブリだよ」
軽く冗談めかして言うが立香の言葉は本気で殺されると暗に忠告をしていた。
先ほどまで愛でていても壊し・殺すのが鬼、自身の価値観でが絶対であると疑わないのが神、付き合いの長い立香たちはそれを分かっているから必要も無いのに機嫌を損ねるような真似はしない。
それをするならアークティック・サマーワールドでの伊吹童子よろしく、本気を正面から打ち破って自分たちのやりたいようにすることを示す覚悟が必要だ。
「ソレを打ち破って先に進める自信があるなら令呪で命じようか? 『マクラーレン・ボーグを先に進ませろ』って」
「御館様、戯れもそこまでです」
マクラーレンにそう提案してニコリと嗤ったところで望月千代女が待ったをかけ、冗談だよと立香が朗らかに笑う。
その笑顔にこれまでの立香と真逆、底知れぬ空虚を感じて身を硬くしていたマクラーレンは千代女のお陰でその笑顔が消えたことに内心感謝しながら天幕から出る。
「マクラーレンさん、置いて行きたくは無いから頑張ってね」
その声は普段から掛けられるのと同じで、先程の提案の時に向けられた笑顔との落差がマクラーレンには恐ろしかった。
さてと、マクラーレンさんも居なくなったし、ぼちぼち採掘に戻りますか。
「それじゃあバニヤン、山を削るの任せたよ!」
「うん、任せてマスター」
「それでは先輩、私たちも宝探しといきましょう」
ひとまず段を作るのはバニヤンに任せ、立香とマシュは最初に崩した表土に何か埋まっていないか探してみることにした。
「うーん、なんとなくこのあたりかな?」
土砂に魔力を流して探った感覚を元に何か有りそうな場所をマシュと掘ってみる。
無いよりはマシ程度の探査だけど、当たると良いな。
そうしてあたりをつけた土砂はそのままマシュが持ったザルに入れて川まで運んでもらって、余計な泥や砂を落としてと。
「ここからは根気だね」
「何か見つかると良いのですが」
探査魔術も使ってマシュと一緒に原石や化石になりそうな物を探すけど、やっぱり簡単に見つかるものではなくてお喋りが弾んでしまう。
「けど、私達やカドック、パイセンにはあってマクラーレンさんには無い宝って何だろうね?」
「少なくとも化石ではありませんね」
そう言って悩むマシュが可愛い。
困った顔でもどんな表情でも、悲しんでなければ私の後輩は何時でも最高だ。
「『己の宝』……。私は間違い無く先輩とお答えしますが、先輩は何と答えますか?」
「当然、マシュとユゥユゥだよ。家族やサーヴァント、カルデアの皆も大切だけど、1番の宝物は2人に決まってる」
マシュの宝物と言われたことが嬉しくて、笑顔でそう答えると照れながらマシュも応じてくれる。
「は、はい、ありがとうございます」
「照れてるマシュも可愛い、ってコレ!」
その横顔を見て視線を手元に戻すと、そこにあったのは他の石と明らかに異なる輝きを放つ薄紫の石。
「透明じゃないけど宝石っぽいよね!」
「先輩、コチラも見てください」
そう言ってマシュが差し出した手の上にあったのは明らかに質感の異なる澄んだ茶色の石。
どっちも意識を集中すればギリギリ感じ取れる程度の魔力を帯びていて、少なくとも只の石じゃなさそう。
「まだ原石ですが琥珀だと思われます。先輩のそれは翡翠か瑪瑙でしょうか?」
「分かんないけど、1回鑑定してもらおうか」
最初に受けた紅葉さんの説明で入口近くに鑑定と最低限の研磨をしてくれる小屋があるのは確認済み。
バニヤンから離れると魔力供給がキツくなるけど、どうにかなるよね。
「という訳でバニヤン、ちょっと離れるね」
「良いけどマスターは無理しないでね。私、加減とか苦手だから」
「さすがに危なくなったら念話で伝えるから縮んでくれると嬉しいなー」
屈んで目線を合わせようとしてくれたバニヤンにそう伝えて、マシュと一緒に鑑定小屋まで歩く。
道中他の所を見れば鬼も人も居るけど普通な感じで、なんとも言えない不思議な感じ。
「平和なのは良いけど、やっぱり違和感があるよね」
「鬼の皆さんには申し訳ありませんが、普段はエネミーとして対峙することの方が多いですからね」
そんな平和な光景を眺めながら恋人の手を握り締めると握り返してくれた。
「ユゥユゥさんに知られたら怒られてしまいますよ」
「握り返したマシュも同罪だし、次のエリアはユゥユゥともイチャイチャするから大丈夫」
にひひと笑ってマシュと指を絡めるように手を握り直して、両腕でしがみつくと顔を赤くしたマシュは恥ずかしそうにそれを受け止めてくれた。
「もう、仕方ありませんね」
「やった!」
夏の魔力か同性だからか、普段よりも大胆な立香に内心満更でもないマシュはこの一瞬が何よりも尊いものだと感じて、男の時も少しくらい大胆にアプローチして欲しいと思う。
「先輩」
「マシュ?」
だから、ちょっとだけ意地悪をしてみる。
「男の先輩の時もこうしてくれますか?」
「……善処はします」
「約束してくれないとダメです」
わざとらしいかもしれませんけど、少しだけ頬を膨らませて怒った風にそう言うと先輩は慌てた様子で答えてくれました。
「じゃあ、日本に戻ったらデートの時にしよう」
「よ、よろしくお願いします」
具体的になると、恥ずかしいですね。
そのあとも2人でいちゃつきながら鑑定小屋に到着したけど、さすがに中に入る時は自重して手をつなぐだけ。
やっぱり宝石は出る数が少ないから待つ者はそんなに多くないけど、その中に見知った顔が揃っていた。
「あれ、皆も宝石を見つけたの?」
「皆も、ってことはお前も見つけたのか」
「そうそう、ちっちゃいけど多分宝石」
妙に疲れた様子のカドックに答えて見せる原石は片手で包めるくらい、加工したらコレより2回りは小さくなるだろうな。
「磨いてもらう順番を待っているのですか?」
「ええ、原石をあちらへ預けてここで待つのよ」
「ありがとうございます、アナスタシアさん」
マスター同士が会話している間にサーヴァント同士でそれを確認したマシュは立香の原石も預かり、2人分をまとめて預けてくる。
そうして並ぶ旧カルデア組、黙っている必要もないので立香は気になったことを訊いてみる。
「皆はどうやって宝石を探したの?」
このあとも採掘をするならヒントになるかと思って尋ねてみると、意外とあっさり答えてもらえた。
「私達はヴィイの魔眼よ。何処に埋まっているか視えれば、あとはカドックに掘らせるの」
なるほど透視の魔眼、そして肉体労働はカドックがやったんだ。
「カドック、お疲れ様だったんだね」
「……わざわざ深い所を教えられたから、本当に疲れた」
今日はちょっと、大人しくしておこう。
次はぐっちゃんだけど項羽さんは霊体化しているとのこと、小屋の中は狭いし仕方ないよね。
「全て項羽がやってくださったわ。槍を突き立て探ったかと思えば一心不乱に掘る勇姿、とても素晴らしかったわね」
「なるほど、ありがとうございます」
あ、これは惚気になると思ったので強引に切り上げる。
ぐっちゃんが項羽様語りを始めるとほぼエンドレスだから、本格的に始める前に止めないと危ない危ない。
《主導者よ、補足するならば我が槍を探針として発振した魔力により地中を探査、その結果より演算した埋蔵位置より虞の好む物を採掘した次第である》
《わざわざありがとうございます、項羽さん》
さすがに雑すぎた説明を項羽さんが補ってくれたのに感謝しつつ、最後に私とマシュのやり方を話す。
とは言っても古典的な人力採掘なので特段語ることは無かったけどね。
「さすが元一般人だな」
「まぁ、魔術の練習にはなったでしょう」
カドック、パイセン、目線が痛いです。
そしてそろそろ魔力供給が……。
《バニヤーン、そろそろ限界だから縮んで》
《分かったけどマスターは大丈夫?》
少し意識を澄まして身体に流れるマナとオドを確認、念のためマシュにも目配せして私の状態を確認してみると大丈夫と頷かれる
《今のところは大丈夫、慌てて縮まなくて良いからね》
《それじゃあ、ちょっとお休みするね》
《よろしく~》
そうしてバニヤンとの念話を切ると少しして魔力消費が格段に減る。
宝具を使った時とまではいかないけれどさすがはバーサーカー、燃費の悪さと遠隔供給のロスはなかなかだったみたい。
「ふぅー、楽になった」
「お疲れ様でした、魔力を回復するまでしっかりとお休みしましょう」
「うん、たっぷりと吸って休憩休憩」
お揃いの礼装を着たマシュにもたれて、ゆっくり周囲のマナを吸い上げる。
カルデアの炉から送られてくる魔力でサーヴァントの皆に供給する魔力のほとんどは賄えるけど、特異点だと私自身の魔力もそれなりに送らないといけない。
なので使った分はしっかりと補給しないとね。
「マシュから滲み出た魔力も混ざって善き善き」
「私から吸ったの美味しいですか?」
「分かるくらい吸ってる……?え?大丈夫?」
ちょっと不安になってマシュの両肩を掴むと顔も赤いし、本当に大丈夫か不安になる。
「マシュ、吸っちゃた? 顔が赤くなるなんて熱は?」
そのまま額を合せてみると熱はなさげ、だけど顔はますます赤くなってる。
「虞美人先輩、私ってそんなにマシュから吸ってたの!?」
半ばパニックになりながらその辺りが分かる先輩に訊く。
もしそうならマシュ、ごめんね。
「っはぁ、アンタみたいなヘッポコが普通に吸っただけでマシュから魔力吸えるわけが無いでしょ、マシュなりの冗談みたいなものよ」
「けど、顔赤いし……」
それになんだかボーッとしているような。
「アンタだってマシュや楊貴妃に肩掴まれたり、額が触れ合うとそうなるでしょ」
うん、女のままでもマシュやユゥユゥにされたら顔が赤くなるし、残ってる男な部分が百合の気配で燃える気がする。
「本当に大丈夫、マシュ?」
「ひゃ、はい、虞美人さんの言うとおり、ほんの冗談のつもりで……」
「良かったー」
本当に焦った、近くに居るから漏れた分でも味は分かるけど、吸われた自覚があるぐらい吸ったら危ないよ。
「そのですね、安心していただけたならそろそろ離して頂けるとありがたいのですが」
「あっ、ごめんね、苦しかった?」
「いえ、苦しくは無かったのですが、皆さんの前はさすがに恥ずかしくてですね」
「あっ……」
カドックとぐっちゃん先輩は呆れて、アナスタシアは楽しそうに写メ撮ってる。
アナスタシア、その写メあとで頂戴。
「失礼しました」
やっぱり女性格だとアグレッシブ過ぎない、私?
なんでかマシュの魔力の味が分かる立香。
なんでだろうね?
そしてメチャクチャ宝石やら化石のことを調べながら書いているので少し難産でしたが、次話も書き進めます。
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