フジマル・アフター・ライフ   作:のーん

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夏の特異点もいよいよ折り返しの第4エリア、清少納言が主ということに不安を抱えつつ向かった先に待ち受けるものとは?

感想頂けると嬉しいのでぜひお願いします。


第28話 藤丸、夏休みの宿題 その1

鈴鹿御前の治める第3エリア・【享店通覧】をクリアした翌日、正確には0時に終わったのでその当日、すっかり日も昇った9時頃にカルデア一同はいそいそと起きだした。

「ふわぁ〜あ、流石にスキル使った上にてっぺん越えるとよく眠れる」

魔力的な消費よりも精神的疲労のほうがキテいたのか、昨晩は何日かぶりに朝まで熟睡できた。

隣を見るとマシュはすでに居らず、ユゥユゥだけが規則正しい寝息を立てている。寝顔を見るのも良いがそろそろ起こしてあげよう。

「ユゥユゥ、起きられそう?」

「ん、むぁ、りつかちゃん……おきます……」

立香に軽くゆすられた楊貴妃はゆったりと起き上がると軽く腕を伸ばす。

そんな何気ない仕草でも、絶世の美女である彼女がすると映画の1場面のように目を奪われてしまい、立香は目を離すことができないでいた。

「ん? どうしたの?」

当然その様子は楊貴妃にもバレていて、悪戯っぽい笑みを浮かべると立香へ説明を求める。

最初は誤魔化そうとも考えた立香だが、ここで見栄をはっても仕方が無いと素直に白状する。

「私の恋人が綺麗すぎて見惚れていました」

「素直で偉い偉い。じゃ、着替えようか」

その後、着替えをする彼女に再び目を奪われてからかわれたのだが、コチラはマシュが来たお陰で事無きを得たのだった。

 

 

そうしてすっかり日の昇ったお昼頃、事前に言われた通りに立香、マシュ、楊貴妃の3人は望月千代女の案内で第4エリアに向かっていた。

「それにしても4つ目のエリア、なぎこさんが主なのがすんごく不安なんけど」

「清少納言様、普段から軽いといいますか適当な方なのに水着霊基はバーサーカーですからね」

「で、ですが鈴鹿御前さんがおっしゃるにはインドアとのことですし、過激なものは無いかと……たぶん……」

「皆様方、清少納言殿に対して辛辣でござりますな」

その道中マスターである自分が口火を切ったとはいえ、水着霊基のなぎこさんへの評価は割と酷い。

千代女さんすら直接は口にしなかったものの、是非もないヨネとばかりに首肯してたし。

そもそも、水着霊基自体が蒼輝銀河(ユニヴァース)由来な上にゴルディオンなハンマーにしか見えないピコハン、エモさで走るスケボーなんて物まで向こうから贈られているのだから仕方ない。

幸いなのは狂化のベクトルが理性が無くなるというより、普段よりハジけた感じになるだけで、此方の話は聞いてくれるところくらいか。

「でも、なんで私達だけなんだろうね?」

「確かに、第1エリアで巴御前さんは全員でクリアしないといけないと言っていました」

そんなことを考えているうちに2人の話題は次のエリアに移っていたらしく、その声を聞いて私も思考を切り替える。

ユゥユゥとマシュが言うとおり本来全員がクリアしなければ通れないはず、なのに何故か指定されたのは私達3人。

だがここで思い出したのは鬼女紅葉のエリアでのこと、あそこでは私達カルデアのマスター3組は最初からクリアしているので通過しても良かった。

「私達だけクリアしてないことがある?」

「謎ですね」

いつの間にか隣りに来ていたマシュが私の独り言にコメントしてくれたのでお礼に頭をナデナデ。

指に触れる髪は極上の絹糸のように滑らかで、夏の陽射しで暖まったソレを何時までも撫でたくなる。

「先輩、その、恥かしいです」

「ふふっ、りょ〜かい」

マシュの顔が赤いのは陽射しのせいだけじゃないと自惚れるくらいは許されるだろう、なにせ私の1番の後輩で恋人なんだ。

頭を撫でられた嬉しさと恥ずかしさでこうなったくらいは思っても自惚れじゃないはず。

「あっ、そろそろみたいだよ」

そんな2人の甘い空気を察した楊貴妃はそれを邪魔をする意図も含めて見えてきた次のエリアを指差す。

その意図を汲み取った立香はマシュに一言告げて2人で楊貴妃を挟むように手を握り、そのまま視線を向けた先に見えるのは白い家屋や塀とそこに施された無数のストリートアート。

一瞬あっけに取られたようだが、すぐに嬉しそうに手を握り返す楊貴妃と共に歩を進めれば、鬼や人々が自身の想いを表すようにグラフィティを描いているのも見えてくる。

その中心に居るのは勿論……。

「遅いぜちゃんマス、マシュっち、ユゥユゥ、お陰でアタシちゃんは半日ペインティングを……。ぐはぁっ!」

「なぎこさん!?」

いくらサーヴァントでも炎天下に半日はキツかったらしく、熱中症でダウンした清少納言に駆け寄ると、立香と楊貴妃の氷炎で冷やしながらマシュの盾で作った日陰に入れ、千代女の案内で彼女の庵に運ぶのがこのエリア最初の仕事だった。

 

 


 

 

「いやー、めんごめんご、いと助かりけり」

第4エリアの庵で応急処置を受けた清少納言は会話できる程度までは回復していた。

それでもまだ顔色は悪く発汗も続いているため、灰色の氷炎で彼女を冷やすと共に立香が吸口でスポーツドリンクを飲ませる。

「サーヴァントが熱中症とか笑い話にもならないよ」

氷炎を維持しながら彼女の傍で世話をする立香の言葉に、氷炎が灯る囲炉裏に吊るしたバケツでタオルを絞っていたマシュが真っ当な意見を口にする

「いえ先輩、そもそもサーヴァントは普通熱中症に罹らないかと」

額のタオルを変えながら放たれたマシュの怜悧なツッコミにも、清少納言は普段の軽い態度が嘘のようにシュンと答えるだけ。

「ほんと、めんぼくないー」

立香はそんな彼女に仕方がないなと呆れ半分心配半分の溜息をつく。

冷やす氷炎の1つを動かして体温を測ると37度、だいぶ冷えてきたとはいえまだ少し高いか。

もうしばらく冷やしてあげたいけど、スカディが持って来たグレイル・エンジンもコレだけ遠いと供給量が少ないし、氷炎に使う魔力はそろそろ限界なんだよね……。

「おまたせ! 氷作って来たよ!」

「スポーツドリンクと替えのタオルも此方に」

コレだけは絶やすまいと立香が囲炉裏の氷炎に魔力を集中して間もなく、外で氷を作っていた楊貴妃と買い出しに出ていた千代女が戻って来た。

これ幸いと氷炎を消し、清少納言を冷やすのを楊貴妃に任せた立香は尽きかけたの魔力を回復させるため外に出て深呼吸をする。

「すぅーーーー、ふぅっ」

目を瞑って周囲のマナを引き寄せるように長く深く吸い、空気だけを吐き出すよう短く一気に吐く。

段々と慣れてきたら吸う息でグレイル・エンジンの魔力を引き込むようにして更に呼吸を深める。

自身の内に魔力が満ちたのを感じた立香が再び目を開けたのはそこから30分後、日陰にいたとはいえ少しばかり汗ばんだ身体に水分でも摂るかと思案すれば、スッとスポーツドリンクが差し出される。

「お館様、こちらをお飲み下さい」

「ありがと、千代女さん」

それを飲みながら遠くを見れば入道雲が1つ、夕立でも降るのかな。

 

 


 

 

 

サーヴァントの熱中症という珍事(?)はあったものの、無事に回復した清少納言を囲んで一同は夕食後の団欒中。

という訳で早速本題に入る。

「それでなぎこさん、このエリアのお題は?」

食後のお茶を啜りながら尋ねる立香の問いに、清少納言は「ちょっち待ってて」と言うと千代女を連れて何処かへ。

彼女達が戻ってくるのを待つこと数分、ズパンッと勢いよく障子を開けて戻って来たのは清少納言1人。

千代女さんは?と訊く間もなく、彼女からエリア名と課題が告げられる。

「アタシちゃんの【路展照街(ろてんしょうがい)】の課題はズバリ、夏休みの宿題だぜーい!」

「夏休みの宿題、ですか」

「そうそう、特異点にいるって言ってもちゃんマス達は学生じゃん? 文化人系バーサーカーのあたしとしては宿題を放っておくのは如何なものかと思わない訳でもない訳よ。そ・こ・で、ドーン!」

マシュの問いかけに答えて効果音(自前)と共に天井から机の上に落ちて来たのは3人の夏休みの宿題+原稿用紙、一体どうやってと立香と楊貴妃が天井を見れば、其処には千代女の姿が。

千代女さんお疲れ様です、との意を込めて立香が無言で礼をすると軽く笑みを浮かべたその姿はスッと消える。

一先ず各々が手に取って中身を改めると、確かに宿題は自分のものであることが分かり傍らに置く。

残りの原稿用紙は立香とマシュの2人にとっては見覚えのあるもので、今年もコレと付き合うのかというある種の諦観が芽生えていた。

「あっ、ガッコの宿題は全部終わらせなくてオケ丸水産だけど、その原稿に絵日記描くのはガチでね。他人のとはいえ書き物を甘く評価するのは流石にムリゲーだわ」

そっかー、原稿に絵日記描くのはガチかー。

パリピでギャルでも清少納言、文に対する真摯な態度は揺るがないらしい。

「ちなみに清少納言様、私たちの宿題はどのように調達されたのでしょうか?」

原稿を前に悩む2人を差し置いて、当然の疑問を口にした楊貴妃に清少納言はケロッとした顔で答える。

「え? アマゾネス.COMに電話でお願いしたら即日で届いたよ?」

それが聞こえた立香は脳裏にCEOの姿を浮かべながら考えを放棄した。

ユニヴァースに常識は通用しないもんね、考えたら負けだよ。

「まぁ、今日は遅いし学校のだけ程々にやって寝るんだかんな。アタシちゃんはシャワー浴びて寝るから、グッナイ〜」

言うことだけはしっかり言った清少納言を見送ると、立香は先程天井に居た千代女を呼ぶ。

「千代女さん、悪いんだけどなぎこさんの見守りをお願いしても良いかな?」

「承知」

「大丈夫そうなら途中で引き上げてね」

あまり心配はないと思うけど、倒れたばかりだから少し過保護気味になるのは許してほしい。

そして、私達も宿題に取り組まないと……。

「とりあえず、学校のやりながら絵日記に何書くか考えようか」

「「はい」」

なんか高校生っぽいぞ、私達。





以下今回出て来たものの設定

・藤丸の使っていた灰色の氷炎
水着霊基の楊貴妃が使っているものと同質のもの。
邪神(の端末)の配偶者という縁を利用して藤丸本人が扱えるようになっている。
基本的に藤丸の魔力を燃やしているため広がることは無いが、いざとなれば無秩序に燃やすことも可能。
同様に通常霊基の碧い火炎も使用可能、地味に神性を帯びているため一部サーヴァントの持つ神性の無い攻撃無効を突破できる。

以上!

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