塔を昇ってヒールを撮ったり、フェスの初日と2日目で分断されたりして大変な私ですが皆様いかがお過ごしでしょうか?
私は評価が頂けて嬉しくなっております(単純
では、お楽しみください。
2023/07/14、誤字報告ありがとうございます、修正しました
カリカリ、カリカリ
カリカリ、ペラリ、ゴシゴシ
なぎこさんを寝かせたあと、私とマシュ、ユゥユゥの3人はそれぞれ自分の宿題と向き合っていた。
会話は殆ど無いけどふとした拍子に目線が合えば何となく思ってることは伝わるし、シャーペンで書く、ページを捲る、消しゴムを擦る、そんな音がするので居心地も悪くない。
それでもキリの良い所で手を止めて時計を見ればもうすぐ10時、今日は遅起きだったから眠気はそこまででは無いけど、生活リズムが崩れるしな……。
「2人共、私はそろそろ寝ようかと思うんだけど、どうする?」
私の言葉にピタリと手を止めた2人は少しだけ考える素振りを見せる。
「先輩、一緒に寝たいのでもう少しだけ待っていただけますか? このページの問題がもうすぐ終わりますから」
マシュについては了解の意を込めて頷くと笑みが返って来た。……可愛すぎるんだが?
一方のユゥユゥはどんな感じかと振り向けば、既に広げていた勉強道具を片付けて準備万端の様子。
「立香ちゃんと寝れるのなら、宿題なんてポイです」
「うーん、嬉しいけどポイはダメだよ」
「ものの例えですよ〜」
という訳で、マシュが残りの問題を終わらせるまでユゥユゥと布団の準備、なぎこさんの手当や勉強で精神的に疲れた1日だったな。
「ユゥユゥもお疲れ様、氷を作ってくれて助かったよ」
「それを言うなら、立香ちゃんも氷炎で冷やしてたでしょ? 偉い偉い」
あぁ〜ユゥユゥに撫でられるの気持ちいい〜、ぷにぷにヒンヤリの手が心地良くて、ひと撫でごとに疲労が抜ける気がする。
そんなふうにユゥユゥセラピー(仮)を受けていると、隣に慣れ親しんだ気配が1つ。
「先輩、宿題が終わりました」
「あっ、マシュもお疲れ様。盾で日陰を作ったり、なぎこさんのお世話ありがとうね」
髪を指先で梳くようにして頭を撫でると最初は恥ずかしそうに、段々と嬉しそうにマシュが表情を変えていく。
その様子がどうしようもなく愛おしくて、ぎゅっと胸元に引き寄せる。
「ふふっ、捕まえた。こんな感じにくっついて寝ちゃおうか?」
「せ、先輩……」
振り解こうと思えばすぐ抜けれる弱い拘束だけど、マシュはそれを受け入れてコクコクと首を縦に振る。
あとはユゥユゥかな。
「むっ、私にはなしですか?」
ほら、やっぱり。
「どうしたいとかある?」
マシュを放して布団に収まりつつ、マシュとは逆側を叩いてこっちに来るよう促しながら尋ねる。
そのマシュは私と手を恋人握りでしっかり繋いで、離れないという意思表示中。
さて、何が出てくるか。
「じゃあ、立香ちゃんを抱き枕にさせてください」
「良いよ、一緒に寝ようか」
という訳で真ん中の私は右手をマシュと繋ぎ、左半身はユゥユゥの抱き枕となって寝ることに。2人とも体温低めだし、氷炎を冷房代わりにして室温もいい具合、そんな状態なので……。
「2人共、おやすみなさい」
「「おやすみなさい」」
私はそう言って目を瞑った直後に意識を沈めた。
という訳で翌朝、すっかり快復したなぎこさんに起こされた私達は朝食を摂って昨夜のやり残した宿題と絵日記をやっていた訳だけど……。
「全然、ダメじゃーい!!」
絵日記がボツったーーー。
「をかしというかエモみというか、何というか、ちゃんマス達の夏休みを伝えて欲しいんだよアタシちゃんは!」
「でも、内容的にコレ以上は難しいよ? というか、学校の夏休み始まる前にカルデアに来ちゃったし」
「そういうのじゃなくてさー、ここに来るまでいろいろあったわけじゃん? そういうので良いんだよ、そういうので。というか他のエリアで何してたかアタシちゃん知らないから教えろし!」
それはそれでまた難しいけど集合絵みたいな構図で一枚? うーん印象的なカットをいろいろ描いても微妙に余る。
それならいっそマシュとユゥユゥと合作で1ページ丸ごと使うのもありかな。
「なぎこさん、3人で1ページでも良い?」
「オッケまるオッケまる、いいものが出来るなら何でもありよー」
という訳でこうなりゃ人海戦術、私たち3人にそれぞれアシスタント付けて一気に執筆、そんで出来上がったものを合体していいものを作る!
なのでまずは千代女さんに戻ってもらって北斎さんを回収、ついでにお城に居るスカディさんにも声を掛けてもらいつつ、残る1人はレイシフトしてもらうとしますか。
「という訳で、どっちかのお手伝いをお願いします。具体的にはイラスト数枚とそのコラージュによる1ページぶち抜き作るのを、相方は私かマシュか選んでいいから」
執筆初心者のユゥユゥにはスカディさんのルーンサポート必須なので確定、なので北斎さんと今通信している相手のどっちかが私とマシュ、どっちかのアシスタントにつくことになる。
《へぇー、アンタがアシスタントを呼ぶなんてね》
そう、通信の相手はカルデアで1番付き合いの長い同人作家、ジャンヌ・ダルク・オルタ(水着)。ちなみに今年は珍しくジャンヌ達St.オルレアンと合同誌らしく、後ろにジャンヌとマリーちゃんの姿がちらちら見えている。
「たまには普段と逆もまた一興ということで、引き受けてくれないかな?」
そんな私たちは通信しながらもラフ描き、流石に描く内容が私事なのでここは他人に任せられない。
援軍が来るまでの間にコレを進めておかないと。あと、これで来てくれなかったら刑部姫か誰かを探して……。
《良いわよ、レイシフトするから受け入れ準備よろしく》
「え? 良いの?」
《せっかくマスターちゃんがアタシを頼ってくれた訳だし、恩を売るって考えれば悪くは無いでしょう》
「やったー! これで勝った!」
という訳で早速レイシフトしてくれたジャンヌ・オルタ、別のエリアから来てくれた北斎さんとスカディさんを交えて新作会議。ちょうど行ったエリアもバラけているし、私と邪ンヌは【
まったく、立香ってばこんな時に私を頼ってくれるなんて嬉しいことしてくれるじゃない。
2人きりじゃないのはすこし残念ですけれど、まぁ良いでしょう。すぐ近くで顔も見れるわけですし、何より会話は独り占めです。
「立香、ここの線はどうするの?」
「うーん、少し細目でお願い。水の部分は良い感じだからこのまま」
「分かったわ……。ねぇ、ココもっと目を強調しても良いんじゃない? 色ももっとアンタの目と似た色にして」
私が指摘したのはマシュが宝石を見つめるイラスト。見つけたのは色が変わる琥珀だったらしいけれどアイツならもっと目を大きく、その色彩の変化に瞳を輝かせてみている方が似合う。
「そうかな? 確かに私の眼に似てるっていうのは嬉しかったけど……」
「うるさいわね、私が良いと思ったら良いの!」
まったく、立香は他人のいい所は最大限に褒めるくせに、いまだに自分のこととなると過小評価気味で腹が立つ。
「いい立香、アナタは私が愛した人なのだからそれらしく自信を持ちなさい。復讐者が惚れるなんて、滅多にないことなのよ」
「ジャンヌ・オルタ」
「何よ」
ズルい、コイツが私のことを『邪ンヌ』じゃなくて『ジャンヌ・オルタ』って呼ぶときは決まって本気の時だ。その一言だけで続く言葉を聞きたくて、手を止めてそっちを向く程に私は立香を愛してしまってる。
「ありがと、私のことをそうやって認めてくれるから私はこのままでいられるんだよ」
「……そうやって賞賛を受け入れるなら、まぁ良いわよ」
にへら、と緩く笑うコイツの顔を見て抱いた不満も消え去ってしまった。
女の時の温かい日差しのような笑顔も男の時の抜けるような青空の笑顔も、それがコイツの幸せと共に浮かべるものなら大抵のことは許してもいい。
全く、私も随分甘くなったものね。
「よし、下書き終わり。私もペン入れやるね」
だけど、こうやっていきなり呼ばれて手伝わされたんだから報酬を要求するくらいは良いわよね。
コレが終わったら何をしてもらおうか、それを考えたらペンも進むってもんよ。
そうして絵日記という名の合作イラストを描くこと半日、各々が書き上げたイラストを集めて構図を決定、最後にコメントを入れたら。
「「「かんせいーーー!!!」」」
「お疲れ様、あとで報酬は相談させてもらうわよ」
「ふむ、寵姫もルーンありきとはいえ中々のモノでは無いか」
出来上がったのは浴衣を着た私たちを中心にこれ迄の3エリアの出来事で囲んだもの。
早速なぎこさんに見せるとじっと沈黙してから一度全体を眺め、細部を眺めていく。
今回のイラスト構図はざっとこんな感じ。
私が描いた【離水遊園】は私から見たマシュとユゥユゥがメインだけど、瞳や水面に映った私を邪ンヌをびっちり描き込んでくれたので面積的にはほぼ等分。さらにマシュとユゥユゥが相互に私とのツーショットを描いたので、それをコラージュして仕上げた。
マシュの【得捜探庭】は意外にもメインがククルカン、光を透かす翡翠の髪の微妙な質感が上手く表されているのと同時に後ろの翡翠の彫像との対比が美しい。その一角には当然私が描いたマシュのイラストもあるけど、それと対になるようにマシュが描いた私のイラストがあるから2枚合わせて見るのも趣がある。ほかにもユゥユゥが描いた宝石やほかのサーヴァントのデフォルメ絵があるのもいい感じ。
そしてユゥユゥがスカディのルーンの力も借りて描き上げた【通店享覧】。不安要素でもあったココは意外とそつなく、というよりもどうしてもタッチが似てしまう私とマシュのとは違う、幽玄なタッチで描かれている。それが提灯で照らされながら此方に向かって手を伸ばす構図の私でなければ素直に感心出来たけど、もはや羞恥心が限界突破寸前である。
そこを彩るのは私が描いた自分の■■スキルモード。どうしてもとせがまれたのでギリギリまで顔を見えなくして描いたけど、皆から相当なリテイクを喰らったので自分でもどうかと思うくらい格好良くなってる。
他が可愛い・綺麗系なのに、浮いてないかな?
不安と緊張が半分ずつといった様子の皆を前に、なぎこさんは絵を見つめている。時たまふんふんと頷いたり、ヤバッと驚いたりしているけど、感触としては初回よりも良さげ。
そうして吟味すること数分、私達に向けられた珍しく真剣な彼女の眼差しに息を呑んで結果に備える。
「ちゃんマス、マシュっち、ユゥユゥ」
その結果に備えてどうしても固くなる表情とともにゴクリと唾を飲み込み、合否を告げるその声に集中する。
半日で描いたとはいえ、この特異点で満喫した出来事を詰め込んだ1枚。コレで合格できなければ私達の画力不足。
そんな思いを知ってか知らずか、1度目を瞑った彼女から言葉が発せられる。
「サイッコーじゃん! 最初からこーいうのなら良いんだよ! エモみが溢れて見てるアタシにもをかしが伝わってくるし、1番良いのは他人を描いたやつ」
その感想に若干羞恥を感じてしまうが、甘んじて受け入れる。
「マシュっちとユゥユゥのちゃんマスとか目線とかバッチリキマってるし、ちゃんマスが描いた2人もぎゃんかわよ!?」
自分が描かれたイラストを指してべた褒めとか、勘弁してよー。けどそんな思いは無視されて、なぎこさんの論評は続行される。
「この水面と瞳のは絶対にジャルちゃんが監修したやつでしょ。ちゃんマスなら描かないけど、コレ無いと影の主役が見えなくていとわろしだかんな」
ふふん、と効果音が聞こえそうなくらい隣で邪ンヌがドヤ顔してる。作業中の原稿は見てないはずなのに、恐るべし平安歌人。
その後も続いた論評が終わり、改めて合格を頂いたところで絵日記(イラスト)はなぎこさんが一時回収。なんでもキッチリ印刷して関係者に配るらしい。
「原本はあとで返すかんな。あと、次のエリアは鬼一さんだから、死ぬなよみんな」
そっか、次は東の師匠か……。
西の師匠のキャンプを思い出してアンニュイな気分になりつつ、これにて第4エリアもクリア。
折返しを通過して、この特異点もそろそろ終わりが見えてきた。
そんなこんなの30話
読者の学生さんたちはそろそろ夏休みだと思いますが、楊貴妃みたいに宿題をポイしないでください。
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